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SCEJA、プレイステーション 4をアジアで12月発売を発表
ローンチタイトルに中文版「真・三國無双7 with 猛将伝」など15本以上を用意。新型PS VitaやPS Vita TVも投入
(2013/9/18 22:52)
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは9月18日、SCEJA本社会議室にて東京ゲームショウで来日したアジアメディアを対象にしたプレスカンファレンス「SCEJA Press Conference Asia Session」を開催し、次世代ゲームコンソール「プレイステーション 4」を日本市場より2カ月早い2013年12月に投入することを明らかにした。対象地域は韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシアで、具体的な発売日と価格は、各地域で11月に行なわれるプレスイベントで発表するとしている。新型PS Vitaは11月、PS Vita TVは1月の発売をそれぞれ予定している。
SCEグループは2013年4月の組織改編で、SCEJとSCE Asiaが統合されSCEJAという新たな組織が誕生したが、アジア部門は元SCE Asiaプレジデントで、現SCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)の織田博之氏が引き続き担当している。今回のカンファレンスで司会進行役を務めたのも織田氏。冒頭の挨拶で、6月にシンガポールオフィスを設立したことや、5月に台湾で自社流通を始めたことなどに触れながら、従来通りの全プラットフォームでの攻めの姿勢をアピール。先週の日本向けの発表会と同様に、新型PS Vitaの紹介から始まり、PS Vita TV、PS3、そしてPS4と、4つにまたがるプラットフォームについて紹介を行なった。
既存のPS3やPS Vitaでは中文版や韓国語版にローカライズされるタイトルがさらに増えており、Taipei Game Showレポートでも触れたようにSCEグループのアジア部門は大きな実りの時期を迎えているという印象を受けた。東南アジアのハブとしてのシンガポール法人の設立や、台湾での自社流通のスタートなど、ビジネススキームに手を加えている点も心強い。
内容のほとんどは9月9日に行なわれた「SCEJA Press Conference 2013」を踏襲しており、PS Vitaの紹介では、「ソウルサクリファイス デルタ」の紹介では稲舟敬二が登壇し、PS4の紹介ではローンチタイトルのひとつとして「Watch Dog」クリエイティブディレクターのJonathan Morin氏が登壇したりなど、全体として数は少なかったもののアジアも意識して開発を進めていることをアピールしていた。
今回のプレスイベントで、もっとも大きなサプライズは、日本では2014年2月22日と発表されたPS4について、アジアでは2013年12月に発売すると発表したことだ。SCEグループにおけるアジア先行は今回が初では無く、過去にもPS3やPSPにおいてたびたび行なわれている。理由は単純で、市場規模に従って発売を遅らせると、日本や欧米から並行品が大量に入ってきてしまうため、発売時期が遅れると正規品がビジネスにならなくなってしまうためだ。これは多くの正規店と共に護送船団方式のスタイルを採るSCEJAのアジア部門としては断固として守らなければならない部分となる。
おそらく織田氏の本音は、北米と同じ11月15日に発売したかったはずだが、北米の11月15日、欧州/南米の11月29日に続く、第3グループに付けており、12月の発売がよほど遅れない限りは、欧米からの並行品はほぼ潰せるタイミングとなる。展開地域は冒頭でも触れたように台湾、韓国、香港、マレーシア、シンガポールという関税がゼロか安い、比較的リスクの少ない5地域からはじめ、時期未定ながらタイ、インドネシア、フィリピンといったその他の地域にも広げていく。
パッケージやマニュアル、PS4内の言語については、PS3と同様にユニバーサル対応なので、彼らが使用する簡体中文、繁体中文、韓国語、英語に標準で対応する。また、今回の発表で、「おっ」と思ったのは、ローンチタイトルの紹介の中に「真・三國無双7 with 猛将伝」が含まれていたことだ。つまり、「真・三國無双7 with 猛将伝」もまた、日本より2カ月先にリリースされることになる。しかも、中文繁体字にローカライズした状態でである。
発表会にはプロデューサーの鈴木亮浩氏が招かれ、日本語版ながら最新ビルドのデモを行ない、PS4のパワフルなマシンスペックを活かした美しいグラフィックスや、表示数が増えた敵兵士達、火炎などの美麗エフェクトなどを見せつけた。鈴木氏は今回、日本より優先してアジア版をリリースしたいと考えたきっかけとして、今年のTaipei Game Showに出展したことを挙げた。SCE Asia(当時)ブースで「真・三國無双7」ステージで登壇した際、台湾のゲームファンに歓迎されたことで、「真・三國無双7 with 猛将伝」は台湾で早く出したいと考えたという。
日本市場をメインターゲットとした純国産タイトルがアジアが先にリリースされるのは異例で、ゲームのグローバルビジネスにおいて新しい時代の扉が開いたという印象を強く受けた。こうした従来は考えられなかったことが可能になっているのは、1つは、アジア地域が市場として魅力的になっていること、もう1つはSCEJAのアジア部門がSCE Asiaから蒔いてきた種が大きく実りつつあり、サードパーティーの信頼を勝ち得ていること。そして最後が1番重要だと思われるが、SCE AsiaがSCEJと一体化したことで、日本語版とアジア版の話が単一の組織として交渉が可能となり、ビジネスのスピードが上がっていることだ。
SCEJA設立の理由のひとつとして、ヘッドクォーターとしてバリエーション豊富な人材を擁するSCEJのスタッフと、元SCEアジアの人材をシャッフルすることで、ヒューマンリソースの最適化、最大効率化を発揮したいという狙いがあると言われているが、それが早くも効果を挙げつつある印象だ。
織田氏に、発売時期の選択について直接その狙いについて尋ねたところ、「並行品対策もあるが、それだけではなく、全社的なグローバル戦略の一環」としていた。11月のアジアローンチイベントでは、織田氏自身が5地域に行って、PS4を自らアピールして回るつもりだという。今回の決定はアジアのゲームファンや新しいもの好きの富裕層には嬉しいニュースだろう。
今回の発表について、日本で当然巻き起こる議論は、「SCEJAは日本市場よりアジア市場を重視したのか」という点に尽きると思われる。実際は逆で、日本でキッチリ成功させるためのアジア優先だ。1つは繰り返し述べているように並行品対策。これは欧米と発売時期を合わせることで、並行業者にビジネスをさせないだけでなく、日本から発売時期を優先させることで、日本の製品をアジア向けの並行業者に大量に確保され、肝心の日本のゲームファンが買えないという悲劇を避けることができる。
もう1つは、そもそも論として、SCEJAの枠内で、11月、12月の段階ではPS4を日本の需要に応えきるだけの数を用意できないことが予測される。だから、市場としては有望なものの、絶対数はまだ限られるアジアを先にリリースし、日本向けはコンテンツの準備をするだけでなく、ハードのストックも十分にした上で発売を開始したいという戦略だと思われる。
最後に、プレイステーションというブランドは、アジアでは日本のエンターテインメントそのもののような認知をされている部分があり、とりわけアジア市場で大きな影響を受ける日本のローンチには細心の注意を払った結果だと思われる。PS3のローンチでは、値段の高さに加えて、在庫の少なさが大きくクローズアップされたこともあり、そうしたネガティブな影響がアジアビジネスに響くのを避けるためにも、PS3と同じ失敗は絶対に避けたいのだろう。結果としてアジア優先という判断になったのではないだろうか。会場後方では、SCEJAプレジデントの河野弘氏が発表会の模様を見守っていたが、このアジア優先という戦略がSCEJAとして吉と出るかどうか。今後の進展を見守りたいところだ。
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