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SCEJAデピュティプレジデント織田博之氏特別インタビュー

アジアでのPS4ヒットの理由。アジア先行発売に「あり得ないことが起こった!」

アジアでのPS4ヒットの理由。アジア先行発売に「あり得ないことが起こった!」

東京ゲームショウ 2013最大のサプライズは会期前日のSCEJA主催のプレスカンファレンス「SCEJA Press Conference Asia Session」で発生した
誰もが驚いたアジア先行発売
しかも、国産タイトル「真・三國無双7 with 猛将伝」が中文化で先行発売
「真・三國無双7 with 猛将伝」スクリーンショット
台湾で人気のコンパニオンを日本に呼んでのアジア先行発売の発表。かつては教育のためにコンパニオンを日本から台湾に派遣していたものだが、すべてが逆の展開にSCEのプラットフォームビジネスが新たなフェイズに突入したことを印象づけた

――PS4のアジア先行発売についてもう少し掘り下げて質問したいのですが、昨年12月から今年1月にかけてアジアでPS4のローンチが行われたわけですが、私が漏れ聞く限りどの地域でも大きなセールスを上げていると。この成功の要因はなんだと感じていますか?

織田氏:そうですね、やはり商品が魅力的ということにつきると思います。後はやはりバズの作り方が、去年2月にNYで発表してから、E3なども含めて、1年間かけてコミュニケーションをやってきて、PS4に対する期待値が凄く上がったのと、先行発売した欧米の反響が伝わってきて、お客さんの中でマインドシェアがすごく上がったのではないかと。

 そこに「どうやら凄いらしいぜ、楽しいらしいぜ」、「特にライブストリーム、あれでゲームスクリーンが見れるらしいぜ」と、ソーシャルネットワーク系の新しい楽しみ方が一気に米国から伝わって、PS4では新しい遊び方できるというのがまず土壌としてあって、年内アジアにお届けしますというのも相まって、すべてが非常に上手くかみ合ったかなと感じます。あとはやはりタイトル数が多かったもの良かったですね。PS4独自のスペシャルタイトルというのはまだないですが、PS4に移植して、アジアでは24タイトルを揃えることができました。PS3と比較すると、最初から20以上のタイトルが揃っていたことが大きかったのではないかとおもいます。

――SCETではどのような施策を打ちましたか?

江口氏:やはり段階的に情報を出してきました。エポックメイキングだったなと思うのが9月18日という日付です。東京ゲームショウの前日にアジアのメディアさんを東京に集めて、あそこで発表した内容が、やはりアジアでかなりのインパクトを持って伝わりました。

――そうでしたよね。「アジア先行発売」というのは、日本でもある意味インパクト抜群でしたからね。

江口氏:台湾でも「あり得ないことが起こった!」という感じがゲーマーさんの中に広がって。

――なるほど、日本の発売から何カ月後かなと思っていたってことですよね。

江口氏:そうです。1人残らずそう思ってましたから。

――それがアジアが先というのはやっぱり嬉しいですよね。

江口氏:あの発表の時に台湾メディアの方で、泣いてる記者さんもいたぐらいです。そこでコアゲーマーの中でぽっと火が付いて、織田が言ったように欧米で売れているというところで、もっと広いライトユーザーの皆さんにも火が付いて。タイミング的にもよかったです。旧正月の前と後ではやはりアジア圏ではお金の使い方が違います。こちらでは、旧正月に買って、連休を遊んで過ごすというライフスタイルなので、そこに間に合ったのが大きいなと。

 あとは台湾での発売イベントが大成功しまして、Webや雑誌、新聞だけでなく、地上波テレビの全局が発売イベントを報じてくれました。3カ所で400人以上のファンが行列を作ってくれたのですが、1番早いファンは、1週間も光華商場の前で野宿したことと、その方達がPS4を手にして喜ぶ姿が大きな話題となっていました。行列の先頭の3人は、今回Taipei Game Showにも来てらっしゃるんですよ。私が現場に建っていたら、ぽんぽんと肩叩かれて、1番目と2番目の人が「来たよ!」って(笑)。

――熱心なファンですね。

江口氏:みんな友達になっています(笑)。発売イベントでもメディアに対して、自分がどれほどプレイステーションを愛しているかを熱く語ってくれました。我々の想定よりずっと早く行列ができはじめたものの、7日間まったくトラブルもなく発売日を迎えることができましたが、実はそれは1番目の方が自作の整理券、プラカードを準備し、次から次に来る人に整理券を配ってくれていたんですね。

 それだけでなく、光華商場のガードマンと話をして行列の場所や、雨が降ってきたらここに入って良いかといった交渉もボランティアでやってくれたおかげで、トラブル無くイベントを成功させることができたのです。あるメディアへのインタビューで彼が言っていたのが、「台湾のプレイステーションファンはどれだけ質が高いかを見せないといけないと思ってやりました」と。嬉しかったですよね。

織田氏:行列が長かったのは台湾と韓国ですが、各国やはりトラブルなく行列を作っていて、これ余談的な話ですが、全部のイベントにこのポロシャツ着て行ったのですね。お客さんとメーカー側の一体感、お客さんと我々がサプライヤーといった関係性ではなく、1つのコミュニティみたいな皮膚感覚があって、それがすべてみんなで支えてきているビジネスなのだなと改めて感じました。お客さんってプレイステーションというチーム、コミュニティにいたいという帰属意識というか、一緒に楽しもうという気持ちがあるので、それなら我々も一緒に楽しもうという気持ちが大事かなと改めて思いました。だからゲームショウではこれを制服として着ているわけです。そういう一体感は非常に感じたイベントだったと思います。

――ちょっと余談になりますが、国自体がトラブルを抱えているタイではどのようなローンチを迎えたのですか?

織田氏:タイとフィリピンは私もとてもよく訪問していて、今回もイベントの準備をしていたのですが、実は1月13日から例のデモが始まるというニュースが直前に入ってきました。1月14日にローンチイベントの予定でしたが、取りやめました。大規模な人を集めてのイベントは控えましたが、商品の発売は予定通りさせていただきました。フィリピンは台風の影響が残っておりますので、あまり大きなイベントをしないでおこうということになり、残念ながらタイとフィリピンはイベントはなしです。しかし、タイもフィリピンも既に完売という状況で、アジア中で販売が好調です。

――アジアではどの地域でも受け入れられたというのは凄いですね。

織田氏:おしなべてどこもですね。これは誤解なく伝えるのが難しいのですが、シンガポールの方は非常にクールだと感じています。非常にさばけているというか。そのシンガポールの方が100人以上列をなしたって聞いたことがないのです。それが今回PS4では100人以上列が出来て、各ゲームストアに数十人ずつ並ばれていたのです。

――それは実はマレーシアの方とかそういうことではないわけですか(笑)

織田氏:違います(笑)。シンガポールの翌日はマレーシアのローンチだったので(笑)。もちろんシンガポールは多国籍の方なので、そういう方もいらっしゃると思いますが、ちょっと語弊がありますが、あのシンガポールがあれだけ盛り上がったというのは非常に象徴的だったなと。

――台湾・香港に関してエポックメイキングだったなと思うのはやはり、「真・三國無双7 with 猛将伝」が日本よりも先に中文版が出たことですよね。あれはアジアビジネスで今までまったくなかったことですね。

江口氏:そうですね。配信版の中へはそういったものもあったりはしたのですが、やはりそれは大きかったですね。台湾、香港をを向いてくれているという感じをユーザーさんも感じ取ったということが大きいですね。

――ちなみに日本では、PS4の発売と同時にβテストに参加できる「FFXIV」に対する期待が非常に高いですが、アジアにもプレイしたいという方は多いと思います。SCEJAさん主導でのアジア展開などは考えていないのですか?

江口氏:当然、そこは先々考えて行くべきところですね。

――これは言い方が難しいのですが、客観的に見て、PS4のコンペティターがまったくいない状況がアジアに生まれています。これはちょっとやりにくいところもあるのではないですか?

織田氏:おっしゃるとおりです。これは私も誤解なくお伝えしたいのですが、Xbox Oneが発売され、やはりちゃんと競争していく中で、いろいろな魅力を違う方法で伝えながら、ゲームマーケットそのもののインダストリーを広げていくというのが1番大事だと思うのです。よく聞かれるのですよ、「Xbox Oneが来たらどうしますか?」と、「ウェルカムです」と答えています。

――PS4のセールスは好調ですが、ライバルがいないと本当に勝っているのかわかりませんものね。

織田氏:おっしゃるとおりです。

――後はPS4の機能として、PS Vitaを使ったリモートプレイという遊び方がありますけど、PS4の販売によってPS Vitaの販売は加速したのでしょうか?

江口氏:相当活性化しています。今回、会場で30分で売り切れてしまうPS4ですが、2割以上のお客様が同時にPS Vitaを購入していただいてます。同時購入です。

――既にPS Vitaを持っている人は当然買わないわけだから、それを除いて2割の人が買うというのは相当ですね。

江口氏:ゲームショウのお祭りの現場だということもあると思いますが、ソフトでいうとちょっとした装着率ですよね。やはりリモートプレイをしたいというお客様に訴求できているということでしょうか。我々も「楽しいですよ」とお伝えしておりますが、PS4購入者の2割が同時購入というのは我々もびっくりしたところです。

織田氏:PS Vitaのタイトルも中文タイトルがどんどん売れるようになっていますし、非常に良かったです。「リモートプレイは思ったよりもクオリティが高い」というのが、触っていただいた皆さんの感覚なのですね。特にPS4の画面がVITAの画面に凝縮されて映るとものすごく綺麗に見えるというのもありますし、確かにワイヤレスLANの中という制限は付きますけれど、リモートプレイは1つの新しい遊び方ということが、特にコアゲーマーの方は認識されていますね。

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(中村聖司)