カプコンのオンラインチーム対戦アクションRPG「イクシオン サーガ」OBT本日開始

ゲームシステムからアニメ展開まで、完全新作に込めた思いをインタビュー(後編)


10月4日 OBT開始



 10月4日より開始されたWindows用オンラインチーム対戦アクションRPG「イクシオン サーガ」のオープンβテスト(OBT)。インタビューの後半では、より具体的な内容の解説と、アニメやコミックに広がるメディアミックス展開の狙いなどについて伺っていった。前編の記事はこちら




■ 大規模ユニオン戦「天承ノ儀」から、2大勢力が争う「国家戦」へ

右から、カプコン東京開発部部長の杉浦一徳氏、プロデューサーの早川泰彦氏。「天承ノ儀」で新登場となるNPCのイラストなども見せてくれた

――ユニオン関連の新コンテンツとなる「天承ノ儀」というのはどんなものですか?

早川泰彦氏: これまではユニオン同士が戦えるだけでしたが、「天承ノ儀」では「承者」という象徴的なキャラクターが登場し、ユニオン単位で支持する「承者」を選ぶことで、その勢力ごとに順位を競います。バトルに参加するとば「票(ポイント)」を入手できるというもので、勝てばより多くの「票」が手に入ります。最下位のチームは逆転しやすいよう「票」が入りやすいようになっていたりもします。

 順位に応じてキャラクターに発動するプラスアルファのスキルが設定されていて、承者ごとに攻撃力が上昇したり、報酬のゼニーが増量されたりといった効果が、ランキングに応じてリアルタイムに変わります。支持する勢力が勝利すれば、期間限定で特殊なアイテムの入手が可能で、その後の褒賞期間でそのアイテムを使ってバトルを有利に戦えます。

――期間限定の勢力のようなものができて、他の同じ勢力にいるユニオンの人たちと協力して戦おうというわけですね。

早川氏: そうです。その際には、これまでのテストでは使用不可になっていた国家チャットが、この勢力ごとに使えるチャットになります。全体の形としては、通常のバトルがあって、1段大きなものがユニオン単位の「天承ノ儀」で、そこで培ったユニオンでの連携の力を11月に実装する「国家戦」でさらに大きく試していくという流れになります。「国家戦」では、本作の設定としてあった、2大国家の戦いが描かれます。

――「国家戦」はどういう内容になりますか?

早川氏: 詳細は11月中にお伝えする予定です。今お話しできることとしては、「国家戦」はユニオンがメインになりますが、個人でも参加は受け付けようと思っています。ただユニオンの方がより大きなメリットが得られる形になります。「国家戦」は通常のバトルだけではなく、戦略マップを用意して、それぞれの領地の占有しあう陣取り合戦の要素も入れていこうと思います。ですので国家チャットで各ユニオンリーダー同士が話し合い、戦略的に狙う場所を決めるといったことができるようになるります。




■ ストーリーモードも実装しPvEも継続して強化

――その他で気になるところは、初心者へのフォローです。この辺りは何か対策はありますか?

早川氏: そこは2段階で考えています。OBTではしっかりしたチュートリアルを導入し、コロシアムタイプの小さなフィールドを使って、1つ1つの動作をきっちり練習できます。以前はトレーニングで動かない敵に対して練習できるものがありましたが、それはそれで残して、チュートリアルでは案内に加えて動く敵も登場させ、操作の基本的な練習ができるようにしています。

――つまりNPCを相手に戦えるというわけですか?

早川氏: はい。そしてさらに正式サービス時にはストーリーモードも実装する予定です。こちらはPvEの要素になります。初期のストーリーはチュートリアルとは言わないにしても、徐々にお客様をステップアップさせながらストーリーを楽しんでいただきましょうというものにしています。これは我々にとってはチャレンジであり高いハードルなのですが、お客様向けにPvPがメインであると言う点がぶれているわけではありません。PvPへステップアップさせる手順として、味気ないチュートリアルだけではなく、ストーリーも楽しみながら協力プレイで気軽に遊べるというものです。

ストーリーモードに登場する「ドライデン」

――そこはストーリー展開も楽しみですね。

早川氏: 後は12月の正式サービスに向けての流れになるのですが、NPCとして新キャラクターが何人か登場します。プレーヤーはエルピシエという傭兵都市の中にある傭兵企業イクスに所属する傭兵なのですが、そこのボスとなる「ドライデン」が登場します。過去にはWEB小説に登場していたのですが、OBTからはオープニングムービーの中で、プレーヤーがハイぺリオンとして覚醒するきっかけになる部分に登場してもらいます。「ドライデン」の秘書である「ライラ」も10月の段階ではオープニングムービーだけの登場ですが、ストーリーモードではこの2人を中心にストーリーが展開されていきます。

 オープニングムービーでは、人間の候補生達がミッションで調査を命じらせる中で、ガオン族に襲撃されます。その候補生がやられているところを、空船(そらふね)という飛空船にいる「ドライデン」と「ライラ」が見つけて助けにきます。ちなみに「ドライデン」の声優は東地宏樹さんにお願いしました。

――このゲームはそういう設定も頑張って作られているのに、対戦をやっている中では見えないんですよね。

早川氏: 対戦ゲームはストーリーがなくても成立します。FPSでキャンペーンモードが薄いといった話がありますが、カプコンとしてはここは今後も継続的に手を入れていく部分にしていこうと思っています。


【登場NPC】
「ドライデン」の秘書「ライラ」イベント戦受付の「ドリス・エヴァンス」



■ 戦闘ルール調整やキャラメイクの大幅改良も

戦闘ルールにも調整が入った

――その他のリファイン要素としては、戦闘ルールの「アタック・ザ・ボス」の調整がありますね。

早川氏: 「アタック・ザ・ボス」は8月のクローズドβテストではワンサイドゲームになりがちだとご意見をいただきましたので、そこの調整を入れました。ボスにはふっ飛ばし攻撃があり、ブラスターが一撃当てれば吹き飛ばせるという気持ちいい部分があったのですが、ストライカーが不遇すぎないかというご意見がありました。そこでふっ飛ばし攻撃をなくし、代わりにボスの攻撃には特殊なエフェクトを付け、通常よりも威力が高いものにしました。ボスが引きこもって出てこないと面白くないので、ボスが前に出るメリットをしっかりつけようと思っています。

 またボスの移動速度を調整しています。以前は一律で遅くしていたのですが、職種によって若干のスピード差をつけています。あとはボスの近くにいると攻撃力や防御力が上がる特殊効果があったのですが、これの効果範囲や効果そのものを見直しました。今までは攻撃力と防御力が上がり、かなり強力だったためワンサイドゲームになりがちな要素でした。今回は防御にはボーナスがかからないようにしており、王冠レベルが高い相手でも倒せる可能性が以前よりも上がり、逆転しやすくなっています。それでも一定以上のスコアの差が出た場合、10分経たないとゲームが終わらないというのは辛いので、先に1,000ポイントに到達したり、500ポイント以上の差がついた場合に終了となるルールも入れています。

――ロビーも改修されていますね。

早川氏: これまではロビー全体の半分側に施設が集中していたので、反対側が無意味になっていました。また全体の見通しが悪く、人が集まりにくいデザインだったので、そこを見直しました。ロビーが広がった分だけ使いにくくなっては意味がないので、関連する施設は近づけて、使い勝手は殺さないようにしています。無駄に広すぎると、オンラインゲームのロビーでは辛くなるので、サイズ感としてはこのくらいに抑えながらも、印象としては開けた感じになるといいのかなと思っています。

――キャラメイクもリファインされているんですね。

早川氏: 今までが余りに選べなさすぎたのです(笑)。フェイスタイプは1種類がベースになっていましたし、スキンカラーも選べませんでした。今回から顔のバリエーションが50種類になったり、目の色や唇の色を選んだり、眉毛の色を選んだりと、普通にキャラクターを作れるようになります。キャラクターにも愛着を持ってOBTに臨んでいただけると思います。




■ 新バトルルールは正式サービスで実装予定

――バトルルールはOBTで追加されないようですが、増やす予定はあるのでしょうか?

早川氏: 正式サービス以降に向けて実装を考えているものが2つあります。そのうち1つは結構凝ったものなので、両方一気に入れてしまうとお客様の混乱を招きかねないという懸念があります。まずはしっかり作り上げたものを1つ出して、次のアップデートでもう1つ入れるという形を考えています。OBTでは「天承ノ儀」と「国家戦」という仕組みを入れますので、そちらを楽しんでいただければと思います。

――他に何かサブコンテンツ的なものを入れる予定はありますか? オンラインゲームですと育成物などがよくありますが。

早川氏: まだ詰めきれてはいないのですが、スマートフォンを使った連携は考えています。これは正式サービスに合わせようと努力していますが、時期はずれるかもしれません。ヘビーなオンラインゲームだからPCの前にいないとその世界に触れられない、というのはもったいない話です。普段から接点を持っていただくのに、スマートフォンは有効な手段だと思っています。

――他にOBTから正式サービスに向けての仕掛けはありますか?

早川氏: ゲーム外との連携として、アニメやコミック、ライトノベルといったメディアミックスの部分を、ゲーム内にどう反映させていくかということですね。ストーリーモードを活用して、別々だった複数の作品がゲームの中で合わさってくるなど、楽しんでいただけるものを用意したいと思います。




■ メディアミックスはゲームの宣伝が「半分」

アニメ、コミック、ライトノベルとメディアミックス展開も決定している
先日試写会も開催されたアニメ「イクシオン サーガ DT」。内容はかなりハチャメチャ

――そのアニメですね。アニメ化というのはどういう経緯で始まったのでしょうか?

杉浦一徳氏: そこは私が話を始めたものです。オリジナルのオンラインゲームを始めるにあたり、色々とメディアミックス展開することで、IPを育てたいという思いがありました。当時ヒットしていたアニメを私の古巣の後輩がやっていたので、連絡して「アニメ業界にコネクションがないから紹介して欲しい」と言ったら、アニメーションビジネスを手がけるジェンコさんを紹介してくれました。そこからアニメ専門チャンネルのAT-Xさんやポニーキャニオンさんとスタートしたというのが2年前くらいになると思います。ただアニメ単体だけではメディアミックスになりませんし話題性も乏しいので、コミックや小説もやりたいなと話を広げていきました。

――アニメを見た人をゲームに取り込んでいきたいという狙いはあると思うのですが、それ以上にタイトルの価値を上げていくというところを重視したという感じでしょうか?

杉浦氏: そこは2つあると思います。1つは当然、ゲームの宣伝としての部分です。もう1つは、組むパートナーさんのビジネスもきちんと成功させていくということです。ゲームのお客様が取れることが最優先で、他は二の次ですということになると、組んでくれる相手はいません。だからといってアニメの製作委員会や、本だったらライターさんの原稿料だったりを、全部カプコンが負担すればいいでしょうという話でもありません。それぞれのパートナーさんが利益を出して始めて仕事になります。宣伝は半分で、各プロジェクトごとにカプコンさんと組んでよかったと言ってもらえるようにしなければいけません。そのどちらかを優先するわけにはいかないのです。ただ、ゲームが原作になっているコミックや小説、アニメは売れていないのが多いんですよね。

――特にオンラインゲームは……。

杉浦氏: そうなんです、オンラインゲームの原作は本当に売れていません。アニメの製作委員会で最初に集まった時、不安視されたのはそこでした。そこで、ゲームが原作だという形でどんどん押していくより、「イクシオン サーガ」というタイトルやキーワードをなるべく浸透させていきましょうという話になりました。アニメの内容は、監督の高松信司さんや脚本家の大和屋暁さんとお酒を飲みながら色々と話もして、最終的には煮るなり焼くなりしてもらうことにしました。

 オンラインゲームはRPGが多いですから、アニメにすると剣戟とか、ヒロイックファンタジーでは軍隊や大群とかが出てきます。そういうのはアニメで表現するのはすごく大変なんです。中途半端にやるとまずいことになるので、戦闘は逆に少なくして、1回の戦闘のクオリティはいいものにしましょうということにしました。後は今の視聴者の傾向に合わせて、1話か2話見て切られてしまわないよう、シナリオ的にも王道ファンタジーではダメで、ネタ出しを毎回やっていきました。

 カプコンもそれなりに気合の入った監修はしましたが、アニメ業界の皆さんが自信を込めて作った作品なので、そういう目線で見てもらえれば、楽しみ方も変わるかなと思います。なんだかんだ言っても2クールやる大作なんです。2クール25話のオチは、ゲームがやりたくなるというか、ゲームのストーリーも気になる感じになっています。そういう押さえるべきところは押さえたので、最後までちゃんと見て欲しいです。

――そうなると、アニメがこうだったからゲームにもこうフィードバックしなきゃ、というところもありそうですね。

杉浦氏: 2クールとなると半年ありますので、結構な期間じゃないですか。ゲームの方で何か作って実装するくらいの期間なので、アニメが始まって、アニメユーザーの中で話題性のあるようなことがあれば、早川とチームの方で話し合って、ゲームに反映させることもできるんじゃないかと思います。

――アニメも楽しみな感じですが、ゲームにも期待する側としては、アニメとの連動要素も期待したいところです。そこは何か予定されていますか?

早川氏: 9月に発表させていただきましたが、アニメのBD(ブルーレイディスク)にゲーム内で使える主人公達の武器のイベントコードを入れていきます。後はストーリーモードでアニメのキャラクターと連動性を持たせたイベントがプレイできるコンテンツを用意していきたいと思います。

――アニメはゲームの前の時代を描いているんですよね? そこはストーリーに入れられるんですか?

早川氏: ハイペリオンは歳を取らないんです(笑)。

――ナチュラルにサザエさんワールドなんですね(笑)。

早川氏: アニメの方の姫達が所属しているセントピリア帝国がラガルト皇国の元になっているなどバックボーンはありますので、そこを文字だらけにしないように気をつけながら、お客様に伝えていきます。歴史としてどう繋がってきたか、その後の勢力がどのように分かれいったかを、わかりやすい形で伝えていけるものにしたいと思っています。

――アニメのほかにもメディアミックスをされますが、今のところ決まっているのは?

早川氏: 講談社さんの「別冊少年マガジン」でのコミック連載と、講談社ラノベ文庫のライトノベル、それから一迅社さんの「月刊コミック ZERO-SUM」にて、アニメをベースにしたコミック連載も決定しています。これらは全てアニメが放映されている半年内に並行して展開されます。

――メディアミックス以外の展開はどんな予定がありますか?

早川氏: 10月の頭には、講談社さんのコミックとは別に、少年マガジンの人気の漫画家さんとの武器デザインのコラボを予定しています。さらにいくつか予定もあるので楽しみにお待ちいただければと思います。




■ ビジネスモデルは基本無料。詳細は未定

――再びゲームのお話しに戻りたいと思います。本作のビジネスモデルについてまだ発表がありませんが、どのような形になりますか?

早川氏: 正式サービスは12月に予定していますので、11月に入ってからお客様に向けてアナウンスしたいと思っています。

杉浦氏: OBTを2カ月取ったのは、集まったお客様の遊び方を見て、ビジネスモデルを考えるためでもあります。基本無料のアイテム課金型になることは間違いないと思いますが、どこまで無料で、何にお金をいただくかというのは、考える時間をいただきたいと思います。

――パッケージの販売は予定されていますか?

早川氏: その予定はありません。

――それはカプコンさんとしては珍しいですね。

杉浦氏: 今回はアニメでBDが出ますので、それをもってパッケージとしたいくらいの感じでやっています。「MHF」で私が話してきたとおり、オンラインビジネスではパッケージは店頭販促に近く、売上だけ考えたら店頭で並べる必要はないのです。そうなると店頭販促としてどう攻めるかということですが、PCゲーム売り場は今は相当厳しくて、「MHF」でこそ別格でスペースを取ってもらえますが、オリジナルゲームや中途半端なオンラインゲームでは相当厳しい状態になっていることは聞いています。そこに満を持してパッケージを出すのは費用対効果的によくないのではという話になりました。ではどうしようとなった時に、店頭展開ということなら今回はDVDやBDの売り場をうまく使えないかと考えたのです。ポニーキャニオンと組んで、そういう宣伝もしていきましょうという話をしました。BDがたくさん売れて欲しいなと思いますし、それが売れることによって、私たちのゲームも何らかの形で店頭露出できたと考えることにしています。

――BDの1本目はおそらく正式サービスと同じくらいのタイミングで出てくる、という感じですか。

杉浦氏: 近いタイミングにはなると思います。

――あと今回はWindows向けとなっていますが、「MHF」ではXbox 360でも出されています。他のプラットフォーム展開についてはいかがですか?

早川氏: 現状、今後のあらゆる可能性は残しています、としかお答えできません。

――ゲーム自体はパッドで操作もできますし、やろうと思えばできるデザインを意識しては作られていますよね。

早川氏: はい、そこは考えています。

――では最後にOBTに向けて、一言ずつコメントをいただけますでしょうか。

早川氏: カプコンとして、初めての完全オリジナルのオンラインゲームになります。これまでも1年間の開発の中で様々な挑戦をさせていただき、OBTも2カ月を前提とし、途中でのアップデートも計画に挟んだ挑戦的な内容になっています。アニメの展開も含めて、様々なことを盛り込んでいるタイトルです。OBTは無料なので、この期間にぜひプレイしていただければと思います。

杉浦氏: カプコンというブランド、「MHF」を開発運営している東京開発部が作るということで、興味を持たれている方々も多いと思っています。カプコンのオンラインゲームの開発・運営は他社さんに比べるとユーザー寄りでいい感じだよね、と言われることを1番気にしながらやっています。他社さんからも色々とPvP系のオンラインゲームが出ていますが、そのサービスクオリティを見ていると、早川達ならサービスという面でもトップレベルのものを築いてもらえるという自信を感じているところです。後はアニメなどメディアミックスもいっぱいやります。ゲームを遊んでいる皆様に、他の時間でも楽しんでいただけるものとして提供しているので、そういう意味でも「イクシオン サーガ」は飽きさせない、面白いものになっていると思います。ここで色々と喋るよりは、OBTは無料ですので、やっていただいた方が説得力があると思います。ぜひやってみてください。

――ありがとうございました。


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(2012年 10月 5日)

[Reported by 石田賀津男]