カプコンのオンラインチーム対戦アクションRPG「イクシオン サーガ」OBT本日開始

ゲームシステムからアニメ展開まで、完全新作に込めた思いをインタビュー(前編)


10月4日 OBT開始



 株式会社カプコンは、Windows用オンラインチーム対戦アクションRPG「イクシオン サーガ」のオープンβテスト(OBT)を10月4日より開始した。

 本作は「モンスターハンター フロンティア オンライン」(MHF)を開発・運営するカプコン東京開発部が、初めて提供する完全オリジナルのオンラインゲームとなる。最大8対8によるチーム対戦型のアクションRPGで、スピード感のあるアクションと、スキルや連携による戦略が特徴。これまで約1年かけてクローズドのテストが繰り返し行なわれ、今回満を持してオープンでのテストが行なわれることになった。

 カプコンというメーカーのブランドはあるものの、完全新作で知名度がない純国産の新作オンラインゲームという、挑戦的なタイトルである。本作がどのように作られ、今後どう育てようとしているのか、カプコン東京開発部部長の杉浦一徳氏と、「イクシオン サーガ」プロデューサーの早川泰彦氏に聞いた。

 なお基本的なゲーム内容については、過去の体験記事をご覧いただきたい。

【プロモーションムービー】




■ “カプコン純正”の新作オンラインアクションRPG

カプコン東京開発部部長の杉浦一徳氏
プロデューサーの早川泰彦氏

――まず、これまで本作の顔として出られていた杉浦さんから早川さんへ、プロデューサーを交代した経緯について教えていただけますか?

杉浦一徳氏: 「イクシオン サーガ」は、立ち上げ当時は東京開発部においては「MHF」に続く2タイトル目だったのですが、現在はソーシャルゲームやコンソールゲームも入れると、20本近くが立ち上がっています。早川は元々「イクシオン サーガ」のアシスタントプロデューサーとして、大部分はずっとやってくれていました。お客様からは急に変わったように見えるかもしれませんが、東京開発部としてのチーム構成はあまり変わっていません。正直に言えば、裏方だった早川を正式にプロデューサーにしたというだけで、大してドラマチックなことはありません(笑)。

――では早川さん、簡単に自己紹介をお願いします。

早川泰彦氏: 杉浦の下でアシスタントプロデューサーとしてやらせていただき、今回正式にプロデューサーとして表に出させていただきました。これまでは東京開発部の幅広いプロジェクトに関わってきました。プロデューサーとして担当するのは今回が初めてです。

――東京開発部では「MHF」の大規模なアップデートもありますし、他のソーシャルゲームなども立ち上がっています。その中で本作の開発はどのような形で進められているのでしょうか?

杉浦氏: 基本的に内部開発で進めています。オンラインゲームはBtoCなので、開発担当と運営担当のスピードと連携が求められます。オリジナルのオンラインゲームというだけでハードルが高いので、内部開発で頑張らなければいけないという話になりました。

――カプコンのオンラインゲームといえばやはり「MHF」があります。プレーヤーからは、そちらのスタッフが持っていかれるのではという心配もあると思いますが、その点はいかがでしょうか?

杉浦氏: 例えばグラフィックスについては1つのセクションがあります。その中に「MHF」担当もいれば、本作の担当もいます。タイトルごとに担当は分かれていますが、ノウハウを共有し、お互いに高めあう部分が残るようにしています。

 先ほど申し上げました通り、東京開発部も、20本近くのタイトルが立ち上がって、スタッフの数もかなりの大所帯になりました。最近はソーシャルゲームの好調さもあって、開発スタッフの採用は大変だという声をよく聞くのですが、カプコンはおかげさまで先輩方の築いてきたブランドがありますから、全く人がいないというような状況にはなっていません。大変なのは大変ですが。




■ カプコンならではの対戦格闘のエッセンスを注入

――ではゲームについての話に移っていきたいと思います。まずは完全オリジナルの新作に、8対8のオンラインアクションという形を選んだのはなぜでしょうか?

早川氏: 東京開発部には代表作として「MHF」があります。これを協力プレイでの代表作だとするならば、カプコンには対戦格闘もあります。ただその分野は、「ストリートファイター4」で確立されたものがあります。オンラインゲームとして次に打ち出すべきものは何かと考えた時、そことの明確な違いとして、チーム対戦であるところが挙げられると思います。今まであったアクションのノウハウを活かしながら、これまでカプコンとして提供していなかった遊びの部分を考え、グラフィックスの質や通信部分も考慮して、この8対8という数字に現状では落ち着いています。この形で、1年前からお客様と一緒に進めさせていただいています。

約1年に渡って様々な意見が交わされた「イクシオンサーガ開発隊」のサイト

――その1年かけたテストで、プレーヤーとゲームを作っていくというのが珍しい手法ですね。これを選んだ狙いを教えてください。

早川氏: 対戦ゲームである以上、半分は勝ち、半分は負けるというのが宿命です。そこの勝ち負けを納得できるかという点に関して、より納得度の高いものを作るためには、こちらから100%できあがったものをお出しするのではなく、実際に一緒に作ってみませんかと呼びかけるほうがいいのではないかと考えました。新規のIPであるということは、当初は弱みが大きいかもしれませんが、こういった思い切ったことにチャレンジできる部分が強みだと思います。

――実際に1年に渡るテストをやってみて手ごたえはいかがですか?

早川氏: 回数を重ねるごとに新規の方にきっちり入っていただけましたし、継続してプレイしていただける方々もいらっしゃって、「イクシオン サーガ開発隊」(“開発隊員”ことテスターが意見を投稿し、開発者とやり取りできるサイト)でも熱心なコメントをいただきました。これは大きな財産だと思っています。それが何よりの手ごたえですね。「イクシオン サーガ開発隊」をいったんクローズした後も、ブログでご意見をまとめた記事を掲載させていただき、そこでも「こういう理由でこうしています」、「こういうものを準備しています」とご説明させていただいています。もしご自分の意見が取り入れられていないという方がいらっしゃいましたら、ご面倒かもしれませんがそちらを1度、ご覧いただければと思います。それでもということでしたら、ご意見ご要望をさらにいただければと思います。

――その辺りの参加者とのやりとりはゲームの改善にも役立ったと思いますか?

早川氏: 現状ではうまくいっていると思います。お客様のご意見やご要望は、今後も継続して取り入れていきます。それを常に受け入れられる体制を考えていきたいと思います。

――OBT以降は「イクシオン サーガ開発隊」とは別のコミュニケーションを取りやすいものを用意していきたいということですか?

早川氏: そうですね。「イクシオン サーガ開発隊」は短期集中型の議論には向いていると思うのですが、長期的な運用では議論がやや埋没したりと難しいところがあります。公式メンバーサイトからいただいたご意見ご要望をまとめて、現在検証中のものや検討中のもの、実装済みのものと分けて表示したいと思っています。ただ今後、よりお客様のご意見を集中して聞くべき新コンテンツをご用意させていただく場合は、テストサーバーを開け、「イクシオン サーガ開発隊」のような短期集中型でご意見を募ろうという計画もあります。

――本作で訴求したいプレーヤー層はどの辺りになりますか?

早川氏: 対戦ゲームとして代表的なところで、FPSやTPSを遊ばれている方ですね。それからファンタジーの世界での対戦アクションは既にいくつかありますので、そういったゲームをプレイしているお客様にはぜひ遊んでいただきたいです。

――ジャンルとして競合するタイトルも既にいくつかあると思いますが、本作の強み、差別化できるポイントはどこにあると思いますか?

早川氏: 非常にカプコンらしいダイナミックなアクションの部分が持ち味だと思っています。また「MHF」で培ってきた運営ノウハウ、お客様に対する姿勢という部分でもきっちり差別化できると思います。

――カプコンならではのアクション、というのはどの辺りにありますか?

早川氏: 駆け引きの部分などですね。格闘ゲームっぽい、読みの要素も入っています。ただここがあまりに強すぎると、今度は難易度が上がってハードルが高くなるという逆のジレンマがありますので、調整は常に気を配りながらやっています。いわゆるノンターゲットアクションと言われる他社のアクションゲームと比べれば、かなり差が出せているのではないかと思います。

杉浦氏: 東京開発部には、過去にアーケードゲームや大型のコンソールゲームを作っていたスタッフもいます。なので、「イクシオン サーガ」チームは全くの新規のスタッフだけをかき集めて作っているわけではありません。カプコンのDNAでいい部分は受け継がせて欲しいと、私からも彼らにお願いしています。そういうところをお客様にも感じていただけると嬉しいです。

【スクリーンショット】



■ 3段階のマッチングでプレーヤーの純粋な腕を競う

公開されている今後のスケジュール

――では10月4日からのOBTについてお伺いします。まず全体のスケジュールを教えてください。

早川氏: 10月4日からは、長期OBTという形で運用して約2カ月続けます。11月にはOBT中に1回、「国家戦」アップデートとしてコンテンツを追加し、年内には正式サービスに移行するというスケジュールを考えています。OBT時のアップデートとしては、大きく4つのポイントがあります。まずユニオン(ギルド)が関わる大きなコンテンツが増えます。それから成長関連として「スタイルスロット」、それからマッチングの大きな改修、最後はリファインという形です。

――アップデートで気になるのは、対戦ゲームだけにマッチングの部分ですね。プレーヤーにレーティングをつけて、マッチングの重み付けをするような仕組みは入るのでしょうか?

早川氏: マッチングと一言で言っても、自分のチームを作るパーティーマッチング部分と、敵チームと組み合わせるマッチング部分とがあります。前回のテストでは、フリー対戦とユニオン対戦の2つしかなく、この2つは完全に分かれていました。仲間内で戦う場合にはユニオン対戦で、1人の場合はフリー対戦でという形でしたが、フリー対戦でも知り合い同士で戦いたいがために、知らない人が入ってくるとキックしてしまうという問題がありました。それを解決する参戦方式として、パーティーマッチングがあります。ロビーにいる段階で、2人から8人のチームに入るプレーヤーを組めるもので、組んだ人数でラウンジに入る仕組みです。

――先に組んだチームを分離させずに参加させる仕組みですね。

早川氏: そうです。5人でチームを組めば3人分の空きがあるラウンジに入れますし、8人のチームならその8人でラウンジを形成するという形です。チームではグループチャットも使えますので、バトルに行かなくてもコミュニケーションのためにも使えます。

 こうしてチームを作ると、今度は慣れた人同士と野良のパーティーでは実力差があって勝負にならないという懸念が生まれます。これを解消するために、バトルグレードの仕組みをマッチングに入れています。まず個人の勝敗結果に応じてレーティングがされます。それを元に、チームで組んだ時にチームとしてのグレードを決定します。そしてそのチームとグレードが同じチームを最優先でマッチングさせます。

 ここで正確なマッチングをさせようとすると、対戦が成立するまでの時間がかかってしまいます。以前はここをゆるくしていたため、マッチングはスムーズでした。そのスムーズさをなくさない調整として、まずは最優先で同じグレードのマッチング、それで見つからない時にはグレードの差が1の中でマッチング、それでもいなければ2の差でマッチングという形で相手を探す仕組みを取っています。以前よりもマッチングに時間がかかるかもしれませんが、大きな問題にはならない範囲に収めようと思っています。

 それでもある程度の差は発生しますので、以前からあるレベルによるパラメーター補正で最終調整します。組み方、マッチングのさせ方、それでも吸収しきれない分は戦闘部分でのパラメーター補正によってもう少し調整する、という3段階で、より実力の合った人たちと戦いやすくし、多少ずれたとしても、そこを持ち上げてあげる補正をかけていきたいと思います。

――レベルの補正は以前からかけられていましたが、その際には低レベルほど攻撃力や防御力が高いという形でした。今回もそういう形ですか?

早川氏: 基本的にはそうです。ただ今回はバトルグレードが入ったことで、以前よりもマッチングで実力の近い人たちが遊べるようになりますので、以前の極端なものよりは補正値を抑えたものにはなります。




■ 武器種と成長タイプを組み合わせた成長システム「スタイルスロット」

武器種と成長タイプが結びついた「スタイルスロット」システム

――ではレベルが低いうちには基本値が高いけれどもスキルが少ない、という形になるわけですね。

早川氏: その点は、成長要素の話に繋がります。今まではキャラクターレベルが1つだけだったのですが、OBTからはキャラクターの中のスタイル(職業)を明確に打ち出し、1つのキャラクターの中で複数のスタイルを育成できるものを考えています。今までキャラクターレベルだったものは、スタイルごとのスタイルレベルになります。

 スタイルは武器種と成長タイプを組み合わせたものです。例えば現状ではストライカーの武器種は片手剣タイプのブレイドしかありませんが、今後は他の武器種が増えることで、スタイルが増えていきます。成長タイプは腕力特化、技力特化、心力特化の3タイプがあります。OBT開始初期では、今後の調整を検討するため、ブレイドには腕力、ライフルには技力といったように固定でやらせていただきます。よってスタイルは3種類となります。

 OBTの途中で、その組み合わせを開放するタイミングを設けようと思っています。成長タイプが違うと、腕力、知力、体力、運などのパラメーターの伸び方がまるで違ってきます。先に説明したレベル補正での影響は、基本的な攻撃力と防御力の部分に特化しています。そうするとレベルが高い人ほど、特定の能力に特化したことになります。今後はパラメーターの項目も増え、移動のスピードも上げられるよう考えていますので、より自分のプレイしたい特性に合わせた伸ばし方ができます。同じブレイドを使っているストライカーでも、心力に特化してスキル中心に組み立てたり、ひたすらガンガン攻めたい人は腕力特化にしたりという風に考えられます。

――ではOBTをしばらく進めていくと、武器種3つと成長特化3つの掛け算で9種類のスタイル選択ができるということですね。ではキャラクターレベルはなくなるのですか?

早川氏: キャラクターに付随するレベルではなく、スタイルに付随するレベルになります。プレーヤーが選べるスタイルはOBT時点では3スロットになるので、固定スタイルの解放後であればブレイドで腕力特化、技力特化、心力特化の3スタイルを選ぶということも可能です。ゆくゆくはスタイルのスロットも増やしていく予定ですので、お客様の選択肢も増えていくと思います。もちろん職種ごとの武器種も増やしていく計画ですので、スタイルそのものも増えていきます。

――なかなかやり込みもできそうな仕様ですね。

早川氏: その他11月のアップデートで以前から予告していた装備の性能と外見を完全に切り離して自由な組み合わせでコーディネートできるようにする仕様も入れます。成長と合わせてコーディネートも楽しんでいただきたいですね。




 前編はここまで。後編では、「国家戦」や「ストーリーモード」からアニメ展開まで、より掘り下げたインタビューをお届けする。


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(2012年 10月 4日)

[Reported by 石田賀津男]