EA、「シムシティ」リードプロデューサーKip Katsarelis氏インタビュー

シングルもマルチも楽しい衝撃的進化を遂げたシリーズ最新作


9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1~8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料



 今年3月のGDCで正式発表され、全世界のシミュレーションゲームファンが待ち望む「シムシティ(SimCity)」。EAやGamescomでは実機で御披露目された本作だが、今回は残念ながら諸般の事情で出展は取りやめられ、メディア合同のインタビューのみが実施された。

Windows PC版「シムシティ」。Mac版も同時発売される
「シムシティ」のリードプロデューサーKip Katsarelis(キップ・カツァレリス)氏

 インタビューでは、最初に流通関係者向けに公開しているというトレーラーを見せ、開発が順調に進んでいることをアピール。

 トレーラーはわずか1分半ほどの短い内容だったが、“見えているものはすべてシミュレーションする”と豪語する非常にパワフルなシミュレーションエンジンであるGlassBoxによって実現された、マクロからミクロレベルのすべてに渡って精密にシミュレートされたリアルな「シムシティ」の世界が映し出された。

 ミニチュア風に見えるチルトシフトエフェクトが掛かった風景は、陽光や雲、粉じんなどの細かい表現により、空気感、生活感などを感じさせる見事なものに仕上がりつつある。

 驚いたのは、過去にみた実機デモやトレーラーとは、建物、クルマ、人々の密度が段違いであることで、まだゲームとして進化を継続していることと、2013年2月(日本はまだ未発表)の発売に向けて、開発が最終段階に入っていることを伺わせた。

 そしてトレーラーの後半では、フレンドとの非同期のマルチプレイにより、国際空港を共同で作成するシーンや、カジノ、ホテル街、工業都市といった多彩な都市計画が可能なこと、フレンド間での各種ランキング要素、スーパーヒーローのHQを建てることでスーパーヒーローが街を守ってくれる要素などが紹介され、過去のシリーズとは根本的に違った都市育成計画が建てられることがアピールされた。

 続いて行なわれたインタビューは、カリフォルニア州エメリーヴィルのMaxisスタジオとのテレビ会議システムで繋ぎ、「シムシティ」のリードプロデューサーKip Katsarelis(キップ・カツァレリス)氏に対して質問することができたので合同インタビューの模様をまとめておきたい。

 インタビュー中に驚いたのは、発売から半年を切ったこの段階でマルチプレイの人数が決まっていないことだ。何もかもシミュレーションするGlassBoxは、非常にリアルで精密なシミュレーションを可能にする一方で、シミュレーション処理が指数関数的になり、パフォーマンスや安定性に悪影響を及ぼす懸念があるが、現在ギリギリのところで、どこを落としどころにするかの調整が続いているのだろう。

 なお、最新のゲームの概要については
Gamescomレポートにまとめているのでそちらと、Gamescom終了後に改めてローカライズされたGamescomトレーラーを参照いただきたい。


【「シムシティ」Gamescomトレーラー(日本語版)】




この背景のボケが「シムシティ」の味わいであると同時に、絶妙に描画の負荷を軽減させる施策になっている
マルチプレイでは複数人で同一のチャレンジに挑むことができる

――日本ではエネルギー政策の転換が話題になっているが、「シムシティ」にはどのようなエネルギーが存在し、ゲームにどのような影響を及ぼすのか?

Kip Katsarelis氏: 現実の世界ではクリーンエネルギーや再生エネルギーなどが重要になってきており、それもシムシティに入れたかったので、太陽発電、風力、原子力発電なども取り入れている。マルチプレイでは協力することで、色んな方法でエネルギーを獲得することができますし、太陽光発電を採用して、クリーンで安全なエネルギー源とすることができるなど、様々なオプションを用意しています。みんなと協力してソーラーパネルを設置し、太陽光発電を可能にすることができます。もしくは自分の街で作ったエネルギーを他の街に供給することもできます。たとえば、原子力発電所に投資して、原子力発電を可能にして、生み出された電力を他の街に売ることもできます。

――Gamescomの試遊台は非常に楽しかったので、TGSで新しい体験できないのは残念。今回出展できなかった理由と、現在の開発状況、そして発売時期に変更はないのかどうか教えて欲しい

Kip Katsarelis氏: TGSで出展できず本当に申し訳ないです。日本の皆さんとお会いしたかったのでこういう機会を用意した。TGSに出展できなかったのは開発に集中しているためで、そのおかげもあって開発は順調に進んでおり、発売時期は遅れずに発売することができそうです。

――オンラインマルチプレイでお互いに影響し合うというゲームプレイが新しいと考えているが、シングルプレイではゲームプレイはどうなるのか? 他のプレーヤーの代わりに隣の街をAIが操作することになるのか?

Kip Katsarelis氏: 様々なやり方で楽しみたいという人がいるので、それが可能なようにバラエティ豊かな設計にしている。シングルで複数の街を作ることもできるし、1人で街を作り始めて広げていくこともできるし、他の街を広げていくこともできる。しかし、AIはいない。AIによるシミュレーションはあるが、街は全部自分でコントロールするようになっているので、協力相手としてのAIはいない。

――1人で特定の目的に特化した街を作っていった方が街作りがしやすいと思うが、複数で街作りを行なうマルチプレイのメリットを教えて欲しい。

Kip Katsarelis氏: まず、フレンドと一緒に建設していくとゲームの進みが速いので国際空港のような大きなプロジェクトも達成しやすくなります。それから、地域レベルで金、公害などの統計数値がランキングされるので、フレンドと協力することで目的を達成しやすくなる。そしてなんといっても友人と一緒にプレイすることで、別の人間が関わってくることで、オープンでソーシャル性が高まるし、相手がどう反応するかわからないところが手探り状態で楽しめます。

――マルチプレイは、最大何人で遊べるのか?

Kip Katsarelis氏: 設計段階なのでまだ決まっていない。3人以上にはなると思う(笑)。基本的にこぢんまりとした世界で和気藹々とプレイして貰いたいと考えている。現在どれがベストなのか調整を続けているところです。

――2人でプレイするとすれば、1人が3つの街を作り、2人目が5つの街を作るようなイメージでいいのか?

Kip Katsarelis氏: 1地域の中での街の最大数などの詳細はまだお話しできないが、どんな組み合わせでもできる。地域の中に2人がいて全部の街をコントロールすることも出来るし、1人でコントロールすることができる。

――マルチプレイはオンラインゲームのように同期プレイなのか、それとも非同期なのか?

Kip Katsarelis氏: 非同期。遊んでいない場合は、街が大きくなる、火災になることはない。遊んでいるときに生み出したもの、生産したものについては、その効果、利益は影響を及ぼし続ける。たとえば、電力、水は供給されるし、仕事を作れば雇用が増える。ゲームを止めたからといって、そこで止まってしまうわけではありません。

【マルチプレイ】
「シムシティ」のマルチプレイは非同期型のゆるいマルチプレイとなる。リーダーボードやマーケットの状況を見ながらお互い切磋琢磨しながら街を育てていくことになる

――Windows版とMac版の違いは?

Kip Katsarelis氏: PCとMacで違いはない。すべてが共有で同じ世界でゲームを楽しむことができる。同じ地域、シティログ、グローバルリーダーボードも共有となる。

――βテストは? 日本でやるのか

Kip Katsarelis氏: βテストはPC版で行なう。内容についてはまだ発表できない。日本での実施するかどうかについてもまだアナウンスできない。

――GlassBoxによるシミュレーションについて、どういったことが可能になっているのか、詳しく教えて欲しい。以前のシミュレーションエンジンとの違いは何か?

Kip Katsarelis氏: GlassBoxはパワフルなエンジンです。電力、水などを基本に、目に見えるものをすべてシミュレーションしています。たとえばビルの窓の明かりを見れば、そこにシムが何人いるかがわかります。それだけでなく、シムをクリックすれば、そのシムがどこに住んでいて、どこで働いていて、どこで買い物をするかがわかります。だから近くまで送り届けてやるということもできます。シミュレーションゲームとして内容がすごく詳細になったこと、シミュレーションが現実的でリアルさを増していると言えると思います。

 ミクロ的なシミュレーション、マクロ的なシミュレーションが、地域全体で行なわれていて、シミュレーション要素については語り尽くせないほどあって、その良さはゲームをプレイしてみないとその内容はフルにはわからない。オブジェクトベースのシミュレーションエンジンで、何時間でもプレイできる内容になっています。

――すべてのシムには固有の名前が割り当てられているのか?

Kip Katsarelis氏: 独自のネーミングシステムがあって、名字、名前がいっぱいリスト化されていて、犯罪者にはおもしろいミドルネームもついている。同じ家庭のシムは全員同じ名字です。今のところ同じ名前のシムは見たことがありません(笑)。

――時間、時代の概念はあるのか? 過去の作品では時間の進みをコントロールすることもできたが、今回もできるのか?

Kip Katsarelis氏: 過去の作品より25年ぐらい歴史が進んで、1940年代からはじまって、現在より少し時代が進んでるぐらいまでが設定されています。マルチプレイの時間の進みについては、非対称的になっているので、スピードがスロー、ミディアム、ファストの3段階で変えられる。だから、プレーヤーの街によって時間帯が違うこともあってこちらは日中で、フレンドは夜かも知れないし、自分が頻繁にプレイする人なら、他のフレンドより、50年ぐらい時間が進んでいるかも知れない。ゲームとしてはもともと非対称の設計になっているのでそれはそれで問題ないようになっている。あくまでプレーヤーの望むペースで遊ぶことができる。

――先ほど犯罪者の話があったが、「シムシティ」というと自然災害や公害などマクロなレベルの事件のイメージが強いが、新しい「シムシティ」では犯罪者が犯罪を犯したり、交通事故で渋滞が起こったりなど、そういったミクロレベルの事件も起こるのか?

Kip Katsarelis氏: 今回はマクロ、ミクロの両方の災害が入っていて、ギャングがいたり、落書きが壁に書かれていたりするし、大規模な災害も起こる。トレーラーのドクターブーと子分達による街の乗っ取りのようなこともあります。

――という点では、安定した街を築いた後は、街を見ているだけで、色んなことが起こる?

Kip Katsarelis氏: そのとおり。遊んでいないと何も起きないようになっているが、オンラインで公害が発生していたり、犯罪者がいる状態でオフラインになると、隣のフレンドの街に悪い影響をもたらしたりする(笑)。

【災害】
悪の組織ドクターブーと魔の手から街を守るMaxismanのHQ

――シムに対して結婚や子供、子供が成人するなどの「The Sims」的な要素もあるのか?

Kip Katsarelis氏: そこまでのシミュレーションはしていない(笑)。子供はいて、子供の人口、学校、教育、大学といった要素はあるが、それ以上深くしていない。街を作るということにシミュレーションしているので、結婚して家族を作って子供を育ててということがやりたいなら「The Sims」を遊んで欲しい(笑)。

――現実世界では地域、国毎に独特の景観が存在するが、「シムシティ」では統一性を持たせた街作りといったことはできるのか?

Kip Katsarelis氏: もちろんできます。その特徴を持たせるのが今回の「シムシティ」の大きな目的のひとつでした。街ごとに個性がわかれており、石炭の火力発電、大学都市、カジノなど、大きな会社やビジネスが入ってくることで、それが街の経済の中心となり、街の景観を作っていくことになる。街がどういう特製を持っているかは作ってみないとわからない。石炭が眠っているかもしれないし、自然がたくさんあれば観光に向いているかもしれない。ロケーションによって街作りが変わってくるのは確かだが、基本的にはプレーヤーの皆さんが何を作りたいかということだと思います。

――Katsarelisさんが考える理想の街はどのような街ですか?

Kip Katsarelis氏: 今のお気に入りは、ラスベガスが好きなのでギャンブリングシティで遊ぶのが好きです(笑)。ラスベガスを再現して、お金も儲かるし、犯罪も起こるし、見た目も楽しいという。

【ラスベガス】
ラスベガスのギャンブルシティも再現可能。お金が稼げる反面、犯罪率が上がるようだ

——Gamescomではヨーロッパ地域のランドマークが発表されたが、日本向けのランドマークはどのようなものを検討しているのか? それからDLCの計画について教えて欲しい。

Kip Katsarelis氏: ランドマークについては、我々にとっても大きな部分で、たくさん出していくつもり。日本で大きな市場で、「シムシティ」ファンが多いので、日本のこともちゃんと考えているが、現時点ではそれ以上はまだお話しできません。DLCに関しても同様に、現在はゲームのコアの部分の開発に専念しているのでまだお話しできません。

【ランドマーク】
Gamescomで発表されたランドマーク。左が英国で、右がフランス

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(2012年 9月 23日)

[Reported by 中村聖司]