東京ゲームショウ 2011レポート

リアルサッカーゲームの決定版「FIFA」はここまで進化した!
プロデューサー牧田和也氏が語る「FIFA 12」ゲームプレイの魅力


10月20日発売予定

7,655円

CEROレーティング:A(全年齢対象)


 エレクトロニック・アーツから10月20日に発売予定の「FIFA 12 ワールドクラスサッカー(FIFA12)」。リアルサッカーゲームの決定版として世界中で高い人気を誇る「FIFA」シリーズの2011/2012シーズン版である本作は、前作「FIFA 11」から様々な点において大幅な進化を遂げている。

 「FIFA 08」にてオンライン5対5対戦を実現して以降、「FIFA 11」までに22人対戦を実現し一定の到達点に達した本シリーズは、今作では根本的なゲームプレイ要素の刷新が図られた。東京ゲームショウ 2011にあわせて来日したFIFAシリーズ統括プロデューサーの牧田和也氏にそのあたりを詳しく聞いてみたので、サッカーゲームファンの皆さんはぜひご覧いただきたい。

ちなみに「FIFA 12」はセガブース内にプレイアブル出展。内容は体験版と同様のものだが、「インパクトエンジン」をはじめ、本作の様々な新要素をしっかり体験することができる



■ シリーズ中でも特に長足の進化を遂げた「FIFA 12」。どう変わったのか?

「FIFA」シリーズ統括プロデューサー牧田和也氏
実機を使いつつ新規要素を解説してくれた
激しい球際がさらにリアルに

 ここ数年「FIFA」シリーズ新作お披露目の度に来日している牧田氏だが、「FIFA10から11への進化と、11から12への進化を比べると、格段に後者のほうが大きいと思っているんですよ」と、今年の「FIFA」では特にゲームプレイ面の進化に大きな自信を覗かせている。

 本作における第1のポイントとして、選手アニメーションと物理シミュレーションを融合させた「インパクトエンジン」の存在が挙げられる。これはどうゲームに影響したのだろうか。

牧田氏:「やっぱり、アニメーションを全てのパターンに対して作るという作業は、どこかで止めなければならない部分だと思っていました。そこを物理処理で補っていくというのは、より人間らしい動きを見せる上で不可欠だったと思っています。特に選手と選手のぶつかりあい、体を使ったシールディングの部分ですとか、玉際のせめぎ合いといった部分に力を入れてチューニングしています。あとは選手の能力値をそれにどう生かしていくか、そういった部分ですね」。

 このように選手同士のインタラクションをよりリアルなものに進化させる上で不可欠だったという「インパクトエンジン」だが、その実現には2年を要したという。どのあたりに苦労があったのだろうか?

牧田氏:「エンジンそのものを作ることそのものにも時間がかかったのはもちろんですけれども、もっと苦労したのはチューニングです。最初はもう、ぶつかった選手みんなが全部転んでしまって(笑)。ゲームが成り立たない状態から入っていったので、それをどの部分でどう使うかというところに苦労しました。それからパフォーマンスですね。選手数が多いので、どこまで処理を軽くできるかという点です」。

 このようなベースに基づいて、「FIFA 12」では様々な点で根本的なゲームプレイ要素の改良、変更が行なわれている。例えば、より細かなボールコントロールを可能とする「プレシジョンドリブル」、そしてプレスボタンの廃止、それに伴う「タクティカルディフェンス」の導入などである。そこに注ぎ込まれたエネルギーは、いったいどのような目標に向かって使われたのだろうか。そこに牧田氏をはじめとする「FIFA」開発チームのサッカー愛を垣間見ることができる。

牧田氏:「まず方針として、いろんなサッカーのバリエーションをゲームの中で実現したい、ということを考えていました。今までの「FIFA」だと、どうしてもパターン化している部分がありましたよね。中央突破はやたら難しいので、どうしてもサイドを上がって、クロス、シュートという流れが効率いいと。でも、実際のサッカーって、それだけじゃないですよね」。

「それを、プレシジョンドリブルで細かいタッチをして、真ん中を抜くチャンスができる。オートプレス機能をやめることでスペースを持たせて、オフェンス側がもっと自由度の高いサッカーができる。一方、ディフェンスはもっと考えてポジションを取らなければならない、という面白さが出てくるわけです。そういう部分で、いろんなパターンの試合展開が見れるようになったんではないかなと思いますね。」

 ちなみに、「プレシジョンドリブル」が導入されたことで、ドリブルのペースコントロールに要するボタン(とその組み合わせ)は4種類にもなり、操作の難しさという問題が頭をもたげてきた。そこは開発チームとしても強く認識しており、スティック操作だけでも、選手のドリブルスピードに応じて自動的にプレシジョンドリブルの動きが出るように調整したそうだ。プレーヤーのスキルレベルの違いにあわせた、行き届いた配慮といえる。

 ソロプレイや1on1対戦、一人の選手となってプレイする「BE A PRO」においてゲームプレイの質を決めるポイントとなるのは、コンピューター操作選手のAIである。この点についても「FIFA 12」では抜本的な改善を行ない、よりバリエーションの広いサッカーが展開するように工夫されている。それが「プロ プレーヤー インテリジェンシー」と呼ばれる新機能だ。

牧田氏:「例えばカカ、ルーニーのようなロングシュートをよく狙う選手がいますよね。それが狙える場所に実際にルーニーが行こうとしているとき、それを味方の選手が把握していて、そこにすぐパスを出す。というように、選手間が互いの特徴を認識してプレーするようになっています。それがあるので、AIもこれまでと違ういろいろな試合展開をしてきますし、キャリアモードで選手を獲得する意味というのがこれでまた変わってきますよね。」

 AIキャラクターが、他のキャラクターの志向を理解した上でプレーを選択する。ゲームAIの仕組みとしても面白いが、これがサッカーゲーム上で実現されたのだからさらに面白い。キャリアモードで特徴的な選手を獲得したら、チームが展開するサッカーがガラリと変わることもありそうである。

 また、キャリアモードは「インパクトエンジン」の採用でも面白い変化があったようだ。それは怪我の表現である。前作「FIFA 11」までは、選手同士の接触時に、かなりランダムに怪我をするかどうか、怪我ならばどういう重さかが根拠なく決まってしまうところがあった。ところが今回、物理処理により正確な衝撃評価ができるようになったことで、ぐっと現実的な表現が提供されるようになっている。

牧田氏:「衝突した部位、慣性の強さなどいろんな情報が持てるようになったので、各選手の怪我が実際どの程度のものなのか、キャリアモードの中で反映されていきます。その選手をいつ、どういう状態でスタメンに戻すのか、あるいは下げるのか、という遊び方ができますし、それによっていろんなストーリーが出てくるんですよ。治ってないのにまた同じところをぶつけたら、もっと重い怪我になるということも起こります」。

【FIFA 12 トレイラームービー】



■ オンラインモードの拡張、そして日本向けの展開も?

オンラインコミュニティ要素「EA SPORTS FOOTBALL CLUB」
ゲーム中の本田圭佑選手
ゲーム中の長谷部誠選手

 様々な点で素晴らしい進化を遂げた「FIFA 12」だが、熱心なファンにとって特に気になるのはオンラインモードについてだろう。牧田氏によれば前作「FIFA 11」は全世界で延べ10億回以上のオンライン対戦が行なわれたとのことで、今作でも注力するポイントのひとつとなっている。特に今回改善を加えたのがマッチングの部分だ。

牧田氏:「ひとつ懸念していた部分は、新しいユーザーさんがいきなりオンラインで強い人と対戦して、やめちゃうというパターンです。それを避けるために、1シーズンを10試合として、10段階のディビジョン制的なストラクチャーを作りました。まず一番下から初めて、成績がよければ昇格する、というものになっています。同じようなレベルの相手が常にそこにいる、そういう仕組みですね。」

 またオンライン要素のひとつとして、今作ではソーシャル的な部分にも力が入れられている。それが「EA SPORTS FOOTBALL CLUB」というインゲームコミュニティ要素だ。この機能はフレンド間の競争、あるいはリアルのクラブサポーター間の競争や一体感を刺激するものとなっている。「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ」版にあった「BATTLE OF NATIONS」(各国を支持するプレーヤーそれぞれの経験ポイントの日別向上度合い平均によって国ランクが決まる仕組み)に近い、クラブをサポートして競争する機能も組み込まれている。

「南アフリカに入っていたのは、今回実現したFOOTBALL CLUBのほんの一部です。もっといろんな要素がありますよ。最初はおそらく週に2回くらい送る予定なんですけど、与えられるチャレンジをプレイしていただくと、EXPがもらえて加算される、それでお互いに争っていくという要素ですね。ひとりあたり、その日どれくらいのEXPを稼いだかでクラブのランクが決まります。世界のユーザーの方々とつながって遊ぶという、新しい試みです。1週間が1シーズンとしてやりますので、その週にどのチームが1位になるかで争っていただくという感じになっています」。

 本作では日本代表MFの本田圭佑選手、長谷部誠選手が国内版イメージキャラクターとして採用され、ゲーム内でも固有フェイスが作成されてそっくりなキャラクターを楽しめるようになった。このとおり、本作では日本向けのマーケティングにも力を入れている。この背景には、日本人選手が多く欧州のトップチームで活躍するようになった近年の流れがある。世界の舞台で活躍する日本人選手について、牧田氏はどう思っているのだろうか。

牧田氏:「どんどん活躍してもらいたいですね。我々としてもワールドのサッカーを題材に作っていますから、日本人の選手がどんどん外で活躍するというのは、我々にとってもいいビジネスチャンスになりますし、こういうサムライ魂みたいなものって、いいじゃないですか。そういう意味では、是非応援したいと思っています。あと若い選手に成長してほしいですね。宮市選手とか」。

 宮市亮選手の名前が飛び出したので話題はリアルのアーセナルに。牧田氏、実はアーセナルのファンなのだという。つい最近は中核選手の流出の影響か、マンチェスター・ユナイテッドに大量失点で敗北するなど、厳しい状況にあるアーセナルだが……。

牧田氏:「アーセナルちょっとヤバイんですよ。ぼくはアーセナルのファンなんですけど、ヤバいんです今年は。辛いんです。みんないなくなっちゃったんで(笑)。ほんとに今年は厳しい一年になりそうな感じですね。若手に頑張って欲しいですねぇ……」

 と、アーセナルの話になるとただのサッカーファンになってしまう牧田氏。最後に、サッカーを愛する「FIFA」シリーズのファン、これから「FIFA」シリーズをプレイする人々へのメッセージを頂いた。

牧田氏:「毎年同じことを言っちゃうんですけど、まず一度触って欲しいということですね。『FIFA』の良さというのは、1試合触らないとわからないと思うんです。まずそこから、判断していただければと。そこからご意見をいただくことができれば、また我々のほうで次のプロジェクトに反映をしていく、それは今後も続けていきたいと考えています。」

 ちなみに牧田氏は、日本での「FIFA」シリーズの盛り上げのために、色々なコミュニティイベントを実施する必要を感じているという。「FIFA 11」の時点から現在までは、ほそぼそとしたユーザーイベントや、ユーザーによるリーグ戦が行われてきている経緯があるが、PRスタッフとしてはそういった方々からの意見を聞きたがっているとのこと。是非、そういった切っ掛けで「FIFA 12」がどんどん盛り上がっていけば、ファンの皆さんももっと楽しめるゲームになっていくことだろう。まずは10月20日の発売日を楽しみに待ちたい。


【スクリーンショット】

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(2011年 9月 16日)

[Reported by 佐藤カフジ]