PS3/Xbox360ゲームレビュー

今年も熱いサッカーシーズンが開幕!
11vs11対戦に対応しシリーズ最高の完成度に

「FIFA 11 ワールドクラスサッカー」

  • ジャンル:サッカーゲーム
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 開発元:Electronic Arts
  • プラットフォーム:プレイステーション3 / Xbox 360 / PSP
  • 価格:7,665円(PS3/Xbox 360) / 4,980円(PSP)
  • 発売日:10月21日(発売中)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)
  • プレイ人数:1~22人(PS3/Xbox 360)、1~2人(PSP)


 ついに最大同時22人でプレイできる究極のサッカーゲームが発売された。エレクトロニック・アーツが10月21日に発売した「FIFA 11 ワールドクラスサッカー」は、1人プレイから多人数対戦まで、幅広い遊び方を最新のクオリティで堪能できるサッカーゲームだ。欧州を中心に世界30のリーグ、500のクラブチームを完全実名で収録するほか、プレーヤー自身の分身となる仮想選手(バーチャルプロ)を育て上げて活躍するすることもできる。

 本作最大のポイントとなるのはやはり、ゴールキーパーも操作可能になったことで実現した22人対戦機能。しかし本作ではそれだけにとどまらず、既に高い完成度を誇っていた前作「FIFA 10」に多数の改良・調整を加えて、非常に手ごたえのある、遊びやすいサッカーゲームに仕上がっている。サッカーとしての面白さ、ゲームとしての面白さ、そのどちらも充実した作品として、全てのゲームファンにとって見逃せないタイトルだ。



■ 強化されたディフェンス、サッカーらしさの追求。試合挙動はシリーズ最高の“本物っぽさ”

今年もサッカーゲームの季節がやってきた
有名選手は顔を「スキャン」して本物同様に作られている
正確なパスを出すためには方向、姿勢、プレッシャーなどの状況を把握する必要がある
ディフェンダーのプレッシャーは相当きつい。高難易度ではわずかなスペースを見つけるのにも苦労するだろう
苦労の末のゴールはやはり嬉しい

 EAの「FIFA」シリーズは、国際サッカー連盟(FIFA)公認唯一のサッカーゲームとして長い歴史を持つ作品だ。シリーズが新エンジンを採用し、大きな転機となった「FIFA 07」から毎年のように改良が重ねられており、「FIFA 08」では10人対戦、「FIFA 09」では20人対戦、そして本作「FIFA 11」でついに22人対戦を実現したという流れになっている。ちなみに同時発売されるPSP版は、いくつかの機能を制限した簡易版となっているため、本稿ではフルスペック版のPS3/Xbox 360に絞ってゲーム内容をご紹介する。

 

 まず、本作の基本的なゲーム内容について触れたい。本作ではシリーズの正当進化形としてシングルプレイ、マルチプレイの双方に多数のゲームモードを備えている。いずれのモードでも、実在のチーム・選手を使って試合をする、あるいは自分で作成した仮想選手「バーチャルプロ」を使って試合をすることが可能だ。

 実名で収録されたリーグは欧州の有名リーグを中心に30もあり、今回からは日本代表の本田圭祐選手が所属するCSKAモスクワを含むロシアリーグも収録。収録された各リーグとチームについては「ライブシーズン」(1リーグ500円/400MSP、全リーグ1,000円/800MSP)という有料機能により、現実のリーグ戦の状況や結果、選手の調子といったものをゲーム内にリンクした状態で遊ぶことも可能と、リアルサッカーファンも納得の機能が充実している。

 肝心の試合中の挙動に関しては、前作に比べてかなりの部分がブラッシュアップされている。特に大きなポイントとなるのは「プロ パッシングシステム」と呼ばれるパス出しまわりの挙動と、「パーソナリティ+」と呼ばれる選手個性再現の部分、そしてディフェンスAIの強化といった部分だ。

 まず「プロ パッシングシステム」は、前作までグラウンダーや浮き球のパスがどんな状況でも正確に飛びすぎ、ピンポンパスと呼ばれる非現実的なゲーム展開につながっていた部分に対する反省から生まれたシステムだ。本作ではパス操作時に選手個々の能力だけでなく、その瞬間の姿勢、プレッシャー、受け手の状況によって厳しくパスの成否が変化する。特にプレイしていて感じるのが、出し手の姿勢はもちろん、受け手の動きをきちんと見極めなければまるでパスが通らない、ということだ。このため高難易度設定でプレイするときなどは、パスを出すか否か、出すならどういった形に持ち込むべきか、ということを考えることになる。このため結果的に、細かいドリブルでのキープと姿勢変更が非常に重要だ。

 「パーソナリティ+」と呼ばれる要素は、映像面における選手の見栄えはもとより、各選手個々の能力再現についてこだわりを見せている要素だ。前作に比べて選手の身長・体重の違いによる体型の見栄えがより自然になったほか、例えばドリブルのスキルが高いとダッシュ時でも細かいタッチが可能という形で、前作以上に選手個々の動きと戦術の違いが反映されている。また新パラメータとして「ワークレート(献身性)」が設定されており、これが高い選手は熱心にボールを追いかけ、ライン裏に走りこみ、低い選手はほとんどプレッシャーをかけにいかないといったAI挙動の違いにも新たな個性が現われるようになっている。

 そしてAIと言えば、本作で非常に強化されたのがディフェンスだ。前作「FIFA 10」の段階でも十分に堅かったAIのディフェンスだが、本作では「プロ パッシングシステム」の採用と同時にディフェンス選手の反応も強化されており、輪をかけてディフェンスが堅くなっている。特に、チームのレベルを問わず、バイタルエリアを鬼のような勢いで埋め、守備ブロックを作り、ボールホルダーだけでなくその他の攻撃選手にもスペースを与えないという点が徹底している。ボールホルダーへの対応は、危険なエリアへのパスコースを常に消しつつ、サイドへ追いやるような動きで、完璧だ。そう簡単に前を向くことはできない。このため攻撃においては、スピードとフィジカルだけの強引なドリブルはもってのほか。ボールキープのための低速ドリブルや、隙を突いて一気に抜きさるためのスキルムーブの活用がよりいっそう高まっているのだ。

 こうして「FIFA 11」の試合では、選手を細かく制御し、ボールの置き所を考え、上手にキープし、マークをずらして、次の一手につながるパスを出す、という一連のプレイに一層の精度が要求されるようになり、結果として全体的なゲームスピードは下がった。そこに現われるのは、より「本物っぽい」試合の流れだ。守備ブロックを整える相手を前に、サイドバックのオーバーラップを待ち、数的優位を作って突破、クロスを上げて得点機を伺う。あるいは戦術的準備を整えてからしっかり守り、相手が深く攻め込んできたところでボールを奪いしカウンター攻撃、といった現実でも有効な戦術が、本作でも非常に有効というわけである。


「FIFA 10」で導入された天候システムなど良いところはそのまま継承し、ゲームシステムの様々な部分にブラッシュアップを図った本作。グラフィックスもさらに見やすくリアル感のあるものになった



■ わかりやすく統合された「キャリアモード」や、「バーチャルプロ」育成という楽しみ

各種のシーズン系プレイ要素は「キャリアモード」に統合。選手として、監督としてリーグ戦を戦う
インターフェイスが新しくなり、より遊びやすくなった
バーチャルプロ。400ものチャレンジを達成していくことで成長する
チャレンジは初級、中級、上級に分かれ、中には相当のテクニックと運が必要なものも

 シングルプレイ志向の遊びで大きく変わったのが、シーズンを通してリーグ戦をプレイするモードだ。前作では、監督としてチームを率いる「マネージャーモード」、プレーヤーの分身を任意チームに参加させてキャリアアップを目指す「Be A Pro シーズン」の2系統のゲームが用意されていたが、本作ではこれらが「キャリアモード」という新ゲームモードに統合され、よりわかりやすくなった。

 

 「キャリアモード」では、開始時に選手としてプレイするか、監督としてプレイするか、あるいは選手兼監督としてプレイするかを選択することができる。選手としてプレイする場合は前作における「Be A Pro シーズン」と同様に選手個人のキャリアアップを目指し、監督としてプレイする場合はリーグ・カップ戦の勝利が目標となる。その双方でインターフェイスは全面的に作り変えられ、より遊びやすくなったのが好印象だ。

 「キャリアモード」を選手としてプレイする場合は、実在の選手あるいは「バーチャルプロ」を使用することが可能。各試合で6.0以上の評点を取るごとに評価がアップしていく仕組みだ。はじめは育成選手として、次にリザーブ、スタメン、キープレーヤー、キャプテン、そしてレジェンドプレーヤーとなることが目標となるが、リザーブ時代に目立った活躍ができないと、評価を上げたいのにそもそも試合に出してもらえないというリアルの選手にもありそうな苦しみを味わえる。まずは出場機会を掴むために、スタミナを全部使い切ってでも存在感をアピールしたい。

 この「キャリアモード」をより深く楽しめるようにしてくれる要素のひとつが、前作から引き続き搭載された「バーチャルプロ」の成長要素だ。「バーチャルプロ」はプレーヤー自身の分身、仮想選手としてプレイすることを想定された要素で、プレーヤーのアカウント1つにつき1選手のみが作成可能。始めは総合評価65程度の微妙な能力の選手として生まれるのだが、試合中の様々な動作によって達成できる400もの「チャレンジ」をこなしていくことで、大きく成長していくのだ。

 また選手のポジション適正や体型、フィジカル要素について、前作以上に細かくカスタマイズできるようになっている。ポジションは大別してFW、MF、DF、GKに分類され、FW、MF、DFについてはそれぞれ3タイプほどのサブ適正があり、それによって各能力値が変化する。例えばFWであれば、フィニッシャータイプなら決定力が高く、ターゲットマンタイプならヘディングに強く、クリエイタータイプならパス能力とロングシュートに優れるという格好だ。

 これにあわせて身長・体重の設定によりスピード、スタミナといったフィジカル要素が非常に細かく変動するようになっており、選手のカスタマイズは非常に悩ましく、そして楽しい要素に昇華されている。本作では玉際の競り合いにおいて特にスピードと力強さがトレードオフの関係にあり、万能選手は作りにくい。プレーヤー自身のスタイルに合わせることが1番の方法だ。

 そして本作で初めてプレイ可能になったゴールキーパーも「バーチャルプロ」で作成、プレイすることができる。GKのプレイは他のフィールドプレーヤーに比べて特殊で、試合中にフィールドを眺めているだけの退屈な時間が非常に多い。しかし、相手が深く攻め込み、クロスやシュートを撃つ瞬間に最大限の集中力を発揮しなければならない。ワンミスで試合が壊れるという、その緊張感。これはいちど体験する価値がある。ちなみに味方チームがポゼッションしている間は、パス・シュートボタンによってコーチングすることも可能なので、常に集中を切らさないようにプレイしたいところだ。

 ちなみに「バーチャルプロ」選手は1人しか作成できないが、そのポジション適正やフィジカル要素はいつでもエディット可能なので、FWからGKまで各ポジションの「キャリアモード」を同時に進めることも可能。好きな部分をつまみ食いするように少しづつプレイするもよし、各ポジションを極めるまでプレイするもよし、自由に成長していくことができる。


好みのチームにバーチャルプロを所属させて活躍させよう

ゴールキーパーとしてのプレイは、暇な時間と極度に緊張する一瞬とのメリハリが凄い。ひとつのミスでゲームが壊れてしまう緊張感に晒される



■ スポーツゲーム初の22人対戦。それ以下の人数でもチームプレイはより堅くつながる

より遊びやすくなったプロクラブマッチ
最大22人、11対11での対戦が可能だ。そこまで集まらなくても、最低1チーム2人からプレイすることができる
ゴールが決まったらみんなでセレブレーション! ものすごい数の種類があるので、コマンドを覚えるのが大変だ

 オンライン要素は本作で絶対に遊ぶべき要素である。本作では1対1のオーソドックスな対戦から、最大22人がランダムに参加する野良試合、固定チームを組んで最大22人で対戦する「プロクラブマッチ」まで、幅広いマルチプレイモードを備えているからだ。ちなみに22人対戦というのは、商用のスポーツゲームでは初めて実現した要素でもある。

 

 特に本作だけで楽しめる要素といえば、プレーヤー同士でクラブチームを作り、固定チームとして戦績を重ねていく「プロクラブマッチ」。前作に比べて大幅にブラッシュアップされた要素のひとつでもあり、ユーザーインターフェイスの改良によりサクサクとプレイできるようになったのが非常に嬉しいところだ。前作ではプロクラブマッチを始めるまでにメニューの奥深くまで行く必要があり、ボタン操作が非常に多かったのだが、本作ではトップメニューから「バーチャルプロ」→「プロクラブ」と2回のボタン操作だけでマッチロビーへ行くことができる。

 「プロクラブ」に参戦するのはもちろん、プレーヤー自身の分身であるバーチャルプロ選手。FWからGKまで、どのポジションをプレイするかはクラブメンバーとの調整によって決めることになるだろうが、いずれにしてもチームの中で特定の役割を与えられ、その中で活躍を目指すというのは非常にやりがいがあり、面白い体験だ。「バーチャルプロ」を育成して強力な選手に育てるという部分にも、いきおい力が入ってしまう。

 そして本作で以外に嬉しいのが、AIディフェンスが非常に強化されたことで、クラブメンバーが操作する選手以外の全ポジションを操作する、いわゆる「ANY」担当のプレーヤーの必要性が下がっていることだ。へたに人間が操作してディフェンスするよりも、AIに任せてしまったほうが堅い守りになる傾向があるためだ。もちろん、これは各メンバーの上手さにもよってくるが、筆者のチームでは当分ディフェンスはAIに任せて、人間は前のポジションをプレイすることにしている。

 というわけで本作では最大22人でプレイ可能だが、それ以下の1チーム4、5人といった半端な人数でも深い楽しみを得られるようになっている。基本的にディフェンスが堅いので、前線の選手間での連携、クリエイティビティ、そしてスキルが非常に重要かつ、面白い要素になっており、ゴールを決めたときの喜びはひときわ大きい。チーム全体でゴールセレブレーションを連携して行なうという要素もあるので、自チームならではのスタイルをそういう部分で確立するのも面白いだろう。

 というわけで本作の華であるオンライン対戦を楽しむためにも、どこかのクラブチームに属して、あるいは自分でチームを作って、勝手知ったる仲間たちと一緒に継続的にプレイを重ねていくという遊び方は強くオススメしたい。筆者は「FIFA 10」を1年間遊び倒したクチだが、おそらくは本作「FIFA 11」も、次回作が出る来年まで遊び倒し続けることだろう。


【スクリーンショット】
本文でご紹介した要素のほか、チームごとに好みの入場・応援などのサウンドを設定できるカスタムセレブレーション機能や、試合中のハイライトを保存・共有できるリプレイシアター機能など、本作で追加された嬉しい機能は多数に上る。シリーズ最高傑作として申し分のないサッカーゲームに仕上がっている

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(2010年10月21日)

[Reported by 佐藤カフジ ]