E3 2011レポート
CCP初のPS3向けFPS「DUST 514」プレビュー
「EVE ONLINE」と完全連動。PS3ユーザーが銀河の歴史を変える?!
現地時間の6月6日に行なわれたSCEAのプレスカンファレンスにて、プレイステーション 3専用のオンラインFPSとして発表された「Dust 514」(関連記事)。プラットフォーマーのイチオシタイトルとなったことで一躍有名になった本作は、ただのFPSではない、これまで例のない新概念にチャレンジした作品だ。
「Dust 514」を開発するのは、アイスランドのオンラインゲームデベロッパーCCP Games。全世界でコアな人気を集めるMMORPG「EVE Online」を開発・運営する企業だ。「Dust 514」が新概念の作品であるという理由は、本作がこの「EVE Online」の世界と密接に連動する点にある。同時接続数6万人以上を誇る銀河宇宙のMMORPGと、オンラインFPSが連動し、全体としてひとつの世界を構築するわけだ。
E3開幕初日となった現地時間6月7日、この「Dust 514」を詳しく取材することができたので、必見クオリティの動画を交えつつご紹介していきたい。「Dust 514」はPlayStation Network独占配信で2012年夏サービス開始予定。ビジネスモデルはアイテム課金の導入を検討しているという。日本展開は未定。
■ 異なるプラットフォーム、全く異なるゲームシステムで、ひとつの世界が躍動する
「EVE Online」と「Dust 514」のコンセプトを紹介したHalldor Fannar氏 |
光点のひとつひとつが「恒星系」。巨大なプレーヤーによる連合同士が版図をめぐって争っている |
2003年にスタートした「EVE Online」は、およそ半年に1回の大規模アップデートを行ない、最先端のMMORPGであり続けている |
「Dust 514」はジャンル的にはオンラインFPSで、プレイステーション 3専用タイトルとして2012年夏に発売が予定されている作品だ。本作で各プレーヤーはひとりの兵士となり、様々な惑星上で繰り広げられる戦いに参加していくことになる。広大な戦場には様々な武器、登場兵器が存在し、全てが入り乱れつつ激しい戦闘が進んでいく。
「ただのFPSではない」と言うのは、本作の開発を統括するCCP GamesのCTO、Halldor Fannar氏。長年CCP Gameのゲーム開発に携わってきたFannar氏は、「Dust 514」の世界のバックグラウンドとなるPC用MMORPG「EVE Online」のシステムを説明した。
「EVE Online」は2003年にサービスが開始されたSF-MMORPG。EVEと呼ばれる銀河系を舞台とし、プレーヤーは宇宙船の艦長となって星の海を駆け巡る。EVEの宇宙は数千の星、数万の惑星から成っており、そこではプレーヤー駆動の物流・経済システムがダイナミックに躍動している。またプレーヤーが協同して創りだす「企業(Corporation)」やその連合体「アライアンス(Alliance)」はときに数千人規模にもなる。
Fannar氏は、「World of Warcraft」が遊園地タイプのMMORPGだとすれば、「EVE Online」はサンドボックスタイプのMMORPGだという。この宇宙で起きる大きな出来事は、すべてプレーヤーたちの欲望と、利害の一致や対立によって生まれる。宙域を奪い合い、日々熾烈な艦隊戦が行なわれ、膨大な富が深宇宙の藻屑と消えていく。その中でも特に、高利益を生み出す希少資源の産出地となる無数の惑星が、艦長たちの投資・開発と、戦闘による奪い合いの対象となっているのだ。
このように躍動する“サンドボックス”のディティールを埋めるFPSが「Dust 514」だ。惑星を奪い合う宇宙船の艦長たちの、その戦いの細部にある、ひとりひとりの兵士の戦いがプレイステーション 3上で展開する。その結果はEVE宇宙にフィードバックされ、ときには巨大アライアンスの興亡にも影響を及ぼす。こうして、異なるプラットフォーム、異なるゲームシステムで、ひとつの世界が躍動していく。
百聞は一見に如かずというわけで、CCP Gamesが描く「EVE Online」と「Dust 514」の連動コンセプトを表現したムービーをご覧いただきたい。
【「Dust 514」コンセプトムービー】 |
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連合の仲間と歓談する宇宙船の艦長が、携帯端末で戦線の異状を知る。指揮室に戻り、立体映像で状況を報告する兵士に叱咤するや、シーンは地上の情景へ。分の悪い戦いが続く中、艦長は戦艦からの砲撃によって、全てを破壊することを選択する。強力なハイブリッド・タレットの直撃により戦線は爆風に飲み込まれていく…… |
【「Dust 514」】 | ||
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「EVE Online」のアップデート計画と連動して開発が進められている「Dust 514」。グラフィックスエンジンには「UnrealEngine 3」を採用し、バックエンドのエンジンとして「EVE」と同じCCP Games内製の「Carbon」エンジンを使用しているという。非常にスケール感に溢れる映像だ |
■ スケール感たっぷりの「Dust 514」は、長く遊べるFPSに
「Dust 514」プロデューサーTom Farrer氏 |
兵器のカスタマイズ。「EVE」と同じ“Fitting”という用語が使われている |
ラグに敏感なFPSの特性に合わせ各地に「バトルサーバー」を設置。アジア圏ではまず上海にサーバーが置かれる |
FPSパートである「Dust 514」の開発指揮を取るのは、CCP Asiaで本作プロデューサーを務めるTom Farrer氏。ちなみにFarrer氏はCCPに所属する前はEA DICEにて「Battlefield」シリーズの開発に携わり、「Mirror's Edge」のプロデューサーも務めた経歴を持つ、FPS系に強いクリエイターだ。
Farrer氏は「Dust 514」内のシステムをより詳しく紹介した。「Dust 514」の世界では「EVE Online」の艦長たちの都合で各戦場が形作られていくが、「Dust 514」の世界に身を投じるプレイステーション 3のゲーマーは、そんな事情を知らずともカジュアルに遊べるものになるという。しかし、長期間に渡って遊べる成長・蓄積要素がたっぷりと用意されているのがポイントだ。
「Dust 514」の世界では「EVE Online」同じく、“ISK”と呼ばれる通貨単位が用いられ、プレーヤーは戦場で戦うことでこれを稼ぎ、装備や兵器の購入に費やす。「EVE Online」と連動するような、プレーヤードリブンの経済も組み込まれるという。下に掲載するトレイラームービーでは、各種兵器の価格が確認できる。兵士のボディアーマーは37万ISK、戦車は140万ISK、戦線指揮艦は1億2千万ISKで、さらにその上には数億、数十億ISKの巨大戦艦が飛び交っている……。
またプレーヤーは銃や兵器の扱いを「EVE Online」同様のスキルシステムで向上させていく。つまり「セットして放置していれば勝手に成長する」という形になる。その上で、Farrer氏は「Dust 514」を“ただ撃つだけのFPS”にはしたくないという。直接的な照準のスキルよりも、各武器の選択や扱い方、搭乗兵器のカスタマイズや習熟により重きをおいたゲームバランスを目指しているようだ。
ビジネスモデルとしては、ゲーム本体はPlayStation Network上でダウンロード販売を行ない、それに加えて何らかの形でアイテム課金方式のサービスを展開していく計画があるようだ。これを踏まえて「Dust 514」では、およそ3ヶ月毎にメジャーアップデートを加えていきたいと語っていた。進化し続ける「EVE Online」と連動する作品である以上、「Dust 514」も変化を続けていくというわけだ。
ちなみに「Dust 514」がプレイステーション 3のみに提供される理由も明かされた。本作を実現するためには独自のサーバーシステムを使用する必要があるが、Xbox 360ではXbox LIVEに準拠する必要があったため、難しかったという。しかしSCEは独自のサーバーシステムの使用を許してくれた、というのが理由。またCCP Gamesでは「Dust 514」によって全く新しいプレーヤー層を開拓したいと考えていることが、PC版を出さない理由だという。
とにかくも、銃弾飛び交う戦場が広大な銀河宇宙とリンクするという、空前のスケール感を持つ「Dust 514」。ゲームファンの皆さんは血わき肉踊る本作のコンセプトを楽しみつつ、来年夏に予定されているリリースを心待ちにしていてほしい。
【「Dust 514」トレイラームービー】 |
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惑星上で展開する激しい戦闘の結果、巨大な砲が宇宙へ向けて発砲される。その衝撃で吹き飛ばされた兵士、戦車、防衛兵器、指揮艦の“ケタ違い”な経済価値が示され……宇宙に浮かぶ戦艦が砲撃に貫かれる |
□Electronic Entertainment Expo(E3)のホームページ(英語)
http://www.e3expo.com/
(2011年 6月 8日)