SCEA、「E3 2011」プレスカンファレンスレポート

「NGP」は「PlayStation Vita」に。“人生”を変えるプレイステーションをアナタに


6月7日~9日 開催(現地時間)


■ オーブニングトークは1カ月にわたったPSN不調について言及


SCEA、President & CEO Jack Tretton氏

 Sony Computer Entertainment America(SCEA)は、ロサンゼルス市内のMemorial Sports Arenaにて、プレスカンファレンスを開催した。

 まず最初に登壇したSCEA、President & CEOのJack Tretton氏は、情報流出事件を発端にした約1カ月間に渡るPlayStation Network(PSN)の休止問題について触れて謝罪すると共に「今日のプレスカンファレンスに皆さんが来てくれたことに感謝する」と謝辞を述べた。


PSN対応の映像配信サービス

 PSNはPlayStationファミリーを構成する最も重要なサービスであり、ソニーグループ全体としても今やかなり割合の同社製品がPSNと無関係でなくなってきていることを強調し、今後はこれまで以上のセキュリティ面の強化に努めていくことを約束した。

 なお、北米で提供されているビデオオンデマンドサービスの「NETFLIX」のユーザーの30%がPSN経由のユーザーだということで、PSNが北米ユーザーのデジタルライフにおいて大きな存在となっていることをアピールした。また、今年後半から新たに「CINEMA NOW」のサービスも加わることが報告された。


■ PS3のビッグタイトル、注目のタイトルを矢継ぎ早に紹介

 プレスカンファレンスは続いて、プレイステーション 3の今年後半から来年にかけての新作タイトルの紹介に移った。

 まず、紹介されたのはサブタイトルまでが決定した「Uncharted 3 DRAKE'S DECEPTION」(直訳:ドレイクの幻想)だ。デモンストレーションでは、嵐の海を航海するドレイクが単身船に乗り込むが、彼の行き当たりばったりの行動に加えドミノ倒し的にトラブルを連鎖反応で引き寄せる不運さにより、船自体が沈没の危機に陥る……というシーケンスが公開された。今作も、ゲームシーン全体が変形して主人公ドレイクを襲うチャレンジングな内容になっており、完成が非常に楽しみである。なお、北米での発売は2011年11月1日とアナウンスされた。


Naughty DogのCo-Presidentの2人、Evan Wells氏とChristophe Balestra氏今作も、この3人達がドタバタ考古学アドベンチャーを展開する

 続いて、紹介されたのはPS3のローンチタイトルであり人気シリーズに成長した「RESISTANCE」シリーズの最新作「RESISTANCE 3」だ。今作は前作「2」から4年後の物語となる。「1」、「2」と回を重ねるごとに敵のエイリアン種族(キメラ)の謎が徐々に明らかになってきているだけに、シリーズファンにとっては待ちわびた作品となるに違いない。

 北米では9月6日に発売を予定。PS MOVEへの対応も表明しており、PS MOVE一式とナビゲーションコントローラー、ガンアタッチメント「Sharp Shooter」までを1パックにしたオールインワンパッケージの「DOOMSDAY EDITION」も同時発売となる。


キメラの能力を受け継いだ超人ネイサンの運命やいかに日本では「Sharp Shooter」自体が未発売。日本でもこのパッケージの発売に期待したい

 PS3初期タイトルとして人気を博した「WARHAWK」の開発チームが、同エンジンを用いて開発したSF世界観の3人称視点シューティングゲーム「STARHAWK」、そしてTretton氏の元にシリーズ復活の声が大量に寄せられたことをうけて復活が決定されたという「SLY COOPER」シリーズの新作もアナウンスされた。


「STARHAWK」は2012年、PSN専用ソフトとして登場予定「SLY COOPER Thievs in Time」も2012発売予定。最新作の「3」は2005年発売のPS2用だったので、意外にもPS3ではこれが初回作


「SAINT ROW3」はPS3専用ゲームモードを搭載して11月15日に発売予定

 また、世界中に多くのファンを抱える宇宙生活型MMORPG「EVE ONLINE」の開発元CCP Gamesが新作MMO型1人称シューティング「DUST 514」を発表した。PS3専用でリリースされるというのも驚きだが、PS MOVE対応、この日発表されたPS Vitaとの連動サポート、さらには「EVE ONLINE」との連動クエストなども計画中だとのことで、相当な大作になる見込みだ。日本での展開は不明。


「EVE ONLINE」の世界観で展開するMMO型1人称シューティング「DUST 514」。2011年末にβテスト、2012年春にPSNで提供予定

■ PS3の立体視対応強化策は新フェーズへ~低価格なPlaystation純正3Dディスプレイが発表に

 話題はソニーが力を入れている3D立体視へと移った。

 PS3では、2011年内に3D対応ゲームが100タイトル以上になることを強調し、最も3Dコンテンツが充実したプラットフォームはPS3以外にないということを宣言した。

 なお、前出の「Uncharted 3」、「RESISTANCE 3」はいずれも3Dに対応しており、「Ratchet & Clank: All 4 One」も3D対応になることが告げられ、PS2時代の「ICO」、「ワンダと巨像」、PSPゲームの「ゴッド・オブ・ウォー 落日の悲愴曲」、「ゴッド・オブ・ウォー 降誕の刻印」がPS3対応プラス3D対応のリメイク版で登場することも報告された。


過去の名作品群も立体視対応でリメイクに!PS3の立体視対応ゲームは100以上に。現行機ではもっとも立体視対応ゲームが多いのはPS3だと強調

 ただ、現状として、3Dテレビが、画面サイズのわりには値段がやや割高で、ゲームユーザーがゲームのために3Dテレビに買い替えるというモチベーションが生まれにくいという問題がある。

 これに対し、ソニーは、この立体視ゲーミング環境の普及を加速させるために、安価なPlayStationブランドの立体視対応ディスプレイモニタを製品化し発売することを明らかにした。

 この製品は、画面サイズは24インチで、HDMI1.4a対応(3D対応)の入力端子を持ち、ハイビジョン解像度(パネル解像度は不明)の立体映像が得られると説明された。TVチューナーは無いのでテレビ放送は楽しめないが、HDMI1.4a対応なのでブルーレイ3Dの3D映画は楽しめる。3Dメガネはアクティブシャッターグラス方式を採用。

 発売は今秋を予定。発売記念モデルは、「RESISTANCE 3」と6フィート(約1.8m)のHDMIケーブル、3Dメガネとディスプレイ本体が付いて価格は499ドルとなる。アクティブシャッターグラス方式で、これだけのおまけが付いてこの値段はなかなかの衝撃だ。

 さらに、この3Dメガネは単体売りも予定されており、なんと、設定を変更することで、他社製の3Dテレビにも対応できるという。つまり、既存の3Dテレビユーザーは、追加3Dメガネとして、このPlayStation 3Dメガネを利用できると言うことだ。

 また、このPS 3Dメガネは、3D表示をキャンセルし、3Dメガネレンズ内の液晶シャッターを左右のレンズで同時開閉する動作モードを搭載しており、これを利用することで、2人のプレーヤーにフル画面サイズで別画面の表示を見せる機能を提供する。対戦ゲームなどで互いのゲーム画面を見せず、さらに全画面表示できるという2プレーヤーゲーミングはきっと新感覚なものになることだろう。


PlayStationブランドの24インチ3Dディスプレイが発表に新しい2画面表示の形
3Dメガネはアクティブシャッターグラス方式。他社製3Dテレビにも対応これだけがセットになって499ドルは安い。日本での発売は?

■ PS MOVE対応タイトルの本格化

 2010年9月に発売されたPS MOVEは、ワールドワイドで880万台のセールスを記録し、PS3ゲーミングの新スタイルとして認知され、採用タイトルが増加の一途を辿っていると述べ、2011年後半以降のPS MOVE対応の注目タイトルの紹介を行なった。

 北米ではスポーツゲームは非常に人気の高いゲームジャンルであり、PS MOVEの体を動かしてコントロールする操作系は、率先してスポーツゲームへ採用される傾向にある。そんなPS MOVE対応スポーゲームとして期待されているのがバスケットボールゲームの「NBA2K12」だ。

 会場には地元ロサンゼルス・レイカーズのスタープレーヤー、コビー・ブライアント氏をステージに招き、このゲームの完成度について聞くステージミニイベントも行なわれた。


「NBA2K12」もPS MOVE対応に。2011年秋発売予定KB24の愛称で知られるコビー・ブライアントがゲーム内の自分のキャラクターの動きに感心する場面も

 この他、PS MOVEを魔法の杖のようにして操るアクションRPG的な「MEDIEVAL MOVES DEADMUND'S QUEST」や、北米では6月7日に発売される「INFAMOUS2」が、注目のPS MOVE対応タイトルとして紹介された。

 さらに、「Little Big Planet 2」に、9月中にPS MOVE対応化パッチが提供されることも同時アナウンスされた。


PS MOVE「MEDIEVAL MOVES DEADMUND'S QUEST」
「INFAMOUS2」もPS3版はPS MOVE対応で発売「Little Big Planet 2」もPS MOVE対応パッチがリリース予定PS MOVE対応のビッグタイトルが続々登場中とアピール

 当初はPS MOVEに対して批判的な意見を持っていたとされる「BIOSHOCK」開発元のIRRATIONAL GAMESは、積極的なソニーからのPS MOVEのアピールに根負けし(?)、新作の「BIOSHOCK INFINITE」ではPS MOVE対応を表明したという逸話がジョーク混じりで公開された。登壇したIRRATIONAL GAMESのKen Levine氏は、最近ではPS Vitaに興味があるとおどけて見せ、「BIOSHOCK」シリーズの新作をPS Vitaにも展開させることをほのめかした。


「BIOSHOCK INFINITE」はPS MOVE対応で発売
コメディアンのような口調でSCEとのやりとりを面白おかしく暴露するIRRATIONAL GAMESのKen Levine氏「STAR TREK」シリーズの新作もPS MOVE対応に。最新映画と同じ、若かりし頃のカーク船長の物語となる模様

■ 次世代PSPは「PS Vita」に


SCE、President & Group CEO、平井一夫氏
NGPの正式名は「PS Vita」に。漢字表記するならば「遊駅人生」か、あるいは「遊駅活力」?

 そして、これまで「NGP」と仮称されてきた、次世代「PlayStation Portable(PSP)」への話題へとついに移った。

 次世代PSP(NGP)と呼ばれてきた新ハードは、詳細なスペックについては1月に開催されたPlayStation Meetingや、GDC2011でも公開されてきているため、平井氏は、今回のプレスカンファレンスではスペックを紐解くような語り口はせず、「NGP」のコンセプトや新ハードを発売する意義を解説するスピーチに終始した。

 平井氏は、この高性能で様々なセンサー類を統合した新しいゲームプラットフォームはデジタルコンテンツとの接し方を変える力を持っていると主張。拡張現実型ゲームまでを可能にする「NGP」は、モバイルゲーミングの価値を変え、友人とのネットワークに新しい価値を与えるものだとし、それは“人生”や“生活”を変えうるものだと力説した。

 これらを踏まえ、「NGP」の正式名は「PS Vita」となったことを報告した。

 Vitaはイタリア語で人生、生活を意味する言葉で、英語ではLIFEに相当する意味の単語だ。さらにはVitaには活力……の意もあり、ビタミンの語源だとする説もある。


既報の通り、PS Vitaには6軸モーションセンサーは、3軸加速度センサーと3軸ジャイロスコープが内蔵され、デュアルアナログスティックも実装されるため、機能的にはPS3用コントローラーと同等の操作系を実現している
世にも珍しい両面タッチパッド機能を搭載。液晶ではなく有機ELパネル採用はソニーとしてのこだわりの部分。表示応答速度は液晶の数百倍の速さとなる。平井氏のお気に入りは、両面に実装されたカメラ機能だとのこと

 PS Vitaは、2モデル構成での発売が予定されており、1モデルは現行PSPと同じWi-Fi(無線LAN)オンリー搭載モデルで、もう1モデルはWi-Fiに加えて3Gネットワーク(携帯電話通信網)を搭載したモデルだ。

 3Gネットワーク搭載モデルでは、常時PSN/ブロードバンドネットワークへの接続が可能となり、ソーシャルネットワーク対応ゲームや、現実世界での現在位置をもとにしたリアルタイムロケーション対応ゲームがプレイ可能になるという。

 3Gネットワーク対応モデルは北米ではAT&Tが専任キャリアとなることも報告された。


3Gネットワーク搭載で常時PSN/ブロードバンドネットワーク接続によって新たなゲームの可能性が生まれるのだろうか? AT&TはPS Vitaの3Gネットワークの専用キャリアに

 AT&Tとの契約料金についての詳細は後日アナウンスするとのことだが、恐らく「PS Vitaコース」といったような形でAT&Tの3Gネットワークを契約する方式になると思われる。なお、PS Vitaで3Gネットワークを契約したユーザーは、北米24,000カ所のAT&Tが提供するWi-Fiホットスポットを無料で利用できるとのことだ。

 PS Vitaでは、常時PSN/ブロードバンド接続が可能になることから、この機能を活用するシステム・ビルトイン・ソフトウェアが2つ紹介された。

 1つは、仲間同士のオンラインチャットやゲームプレイマッチングを行なえる「PARTY」、もう1つは、近隣のPS Vitaとのコンテンツ/アイテム交換やメッセージ交換などを行なえる「NEAR」だ。既存の類似他社システムで喩えるならば、前者はXbox Liveのパーティシステム、後者は任天堂DS/3DSの「すれ違い通信」に相当する感じだ。


PS Vita「PARTY」PS Vita「NEAR」

 気になるのはPS Vita専用ソフトということになるが、これについては、SCEグループ内スタジオやファーストパーティのスタジオの作品を中心に紹介された。

 PS3向けで人気を博した「MOD NATION RACER」や「Liitle Big Planet」のPS Vitaリメイク版提供のアナウンスには、それほど沸かなかった会場も、今やPSファミリーの看板シリーズとなった「Uncharted」シリーズの完全新作の提供には歓喜の声が上がる。新ハードの立ち上げには安定感のあるキラータイトルが不可欠だが、「Uncharted」シリーズならば、「世界中のファンも納得」といったところか。


PS Vitaのキラータイトルとなるか「Uncharted GOLDEN ABYSS」PS Vita向けの新シリーズ「RUIN」(仮称)は斜め見下ろし視点のアクションRPGも紹介された
指で画面に軌跡を描くだけでレーシングコースが作れる「MOD Nation RACERS」PS Vitaにも進出する「Liitle Big Planet」

 また、最後にはビッグサプライズとして、「ストリートファイター」シリーズのプロデューサとして知られるカプコンの小野義徳プロデューサーが登壇。小野氏は現在、PS3、Xbox 360向けに開発中の「STREET FIGHTER X 鉄拳」を、PS Vitaにも提供することを明らかにし、その開発途中版の実機プレイデモを公開。さらに、「INFAMOUS」シリーズの主人公、コール・マグラスがゲストキャラとしてこの作品に登場することをアナウンス。

 小野氏は、実際に最新のビルドをPS Vitaで実行し、コールが動き、必殺ワザを出して戦えることを実演し、会場内を涌かせたのだった。

 サードパーティ作品の紹介は、この「STREET FIGHTER X 鉄拳」のみ。これ以外のサードパーティ作品は、東京ゲームショウでの続報を待て……といったところだろうか。


カプコンの小野義徳プロデューサー「STREET FIGHTER X 鉄拳」「STREET FIGHTER X 鉄拳」にコール・マグラスが参戦!? 電気系の超常現象系必殺技で大暴れ!?

 プレスカンファレンスの終幕の挨拶とともに、平井氏は、PS Vitaの発売時期と価格を発表。発売時期は2011年末。価格は、WiFiモデルが日本円で24,980円、Wi-Fi + 3Gモデルが29,980円となる。

 なお、日本での3Gネットワークのキャリアやサービスの詳細仕様についての告知はなし。これも続報を待て……ということになるようだ。

(2011年 6月 7日)

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