東京ゲームショウ2010レポート
米Microsoftコーポレートバイスプレジデント フィル・スペンサー氏インタビュー
将来的にすべてのタイトルはKinect対応に。「Halo」シリーズの開発は343 Industriesが担当
東京ゲームショウ 2010のTGSフォーラムで基調講演を務めた米Microsoftコーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏。
Xbox事業を統括する米Microsoftシニアバイスプレジデントのドン・マトリック氏の右腕として、Xbox 360のファーストパーティータイトルを扱うMicrosoft Game Studios(MGS)を担当している。今回の基調講演では、日本発のMGSタイトルを立て続けに5本も発表し、話題を集めた。
今回はMGSの日本戦略と、MGSの新たな柱となるKinectへの取り組み、そして「Halo」や「Forza」といった有力フランチャイズの今後の展開について話を伺った。
■ 水口氏の最新作「Child of Eden」がお気に入り
編: TGSフォーラム2010の基調講演では実力派クリエイターによる複数の新作が発表され、非常にエキサイティングでした。
フィル・スペンサー氏: 優れた才能を持ったクリエイターの皆様からあれだけのサポートをいただいたことを光栄に思っております。日本は良いゲームを作ってきた長い歴史があります。Xbox 360、Xbox LIVE、Kinect上にそうした優れたタイトルを発表できたことは、我々だけではなくユーザーの皆様にとっても良いことだと考えています。
編: 今回発表したタイトルの中でどれが一番好みですか。
スペンサー氏: それは私の口からは言えない(笑)。あくまで個人の趣味ということでお話しすると、水口(哲也氏、キューエンタテインメント)さんの「Child of Eden」です。私はずっと水口さんのファンなのです。「Rez」も大好きな作品ですし、また、水口さんの良い友達だと思っています。
編: 今回発表されたのはXbox LIVEアーケードとKinectタイトルのみで、メインのXbox 360向けのブロックバスタータイトルがありませんでした。これは何か意図があるのですか?
スペンサー氏: わざとブロックバスターを出さなかったわけではなくて、純粋にクリエイター達の意思に従ったわけです。「重鉄騎」にしても「Child of Eden」もファーストパーティータイトルでもありません。ただ、我々としては、Kinectが成功するためには小売り販売もデジタル配信もいずれも重要だと考えています。
編: 近年は「ロストオデッセイ」のような日本発の大型RPGタイトルも発売しましたが、今後もこうした取り組みは続いていくのでしょうか?
スペンサー氏: 日本の優れた才能を持ったクリエイターの方たちと協力していくことはMicrosoftの世界戦略でも重要な位置を占めています。例えば坂口(博信氏、ミストウォーカー)さんは「ロストオデッセイ」で協力していただきました。今回も須田(剛一氏、グラスホッパーマニュファクチュア)さんや水口さんの協力を得ましたので今後も日本のクリエイターの方とは協力関係を続けていきたいと考えていきます。
編: 少々気の早い話ですが、次は日本のどのメーカーと組んでMicrosoft Game Studiosのタイトルを出したいですか?
スペンサー氏: 良いゲームを作ってくれるところですね(笑)。私たちはここがターゲットだというところを探すのではなく、ターゲットになりうる人たちと考え方を共有しあいます。そこで意見を交わす中で、私たちのプラットフォームでアイデアがきちっとマッチするなという場合にパートナーシップを結ぶという考えです。
編: スペンサーさんは今日の日本のゲームマーケットをどのようにご覧になっていますか。
スペンサー氏: 日本のゲーム市場はかなり多様化していると思います。コンソール型のものを使う人も居れば、携帯型のものを使う人もいますし、オンラインゲーム市場も間違いなく伸びています。私たちにとっては異なるデバイスを繋ぐことができるXbox LIVEというものが重要な戦略になっていると思います。
編: Xbox LIVEの新サービスとして、ZUNEがいよいよ日本でもサービスされますが、日本展開についての抱負をお願いします。
スペンサー氏: 私たちはユーザーさんというのはゲームで遊びたいこともあるし、ビデオを見たいこともあるし、音楽を聴きたいこともある。そういった様々なエンターテインメントで楽しみたい人だと考えています。私たちのエンターテインメントを通じて、家の中で多くの人たちが様々な遊び方ができるようにしたいです。それをZUNEでお届けしたいと考えています。私はそのエンターテインメントの中で、例えば映画をプラットフォームの一部と考えたいのです。Kinectとzuneは繋がっていますが、Xbox 360でゲームをやっていた人が、ゲームをポーズしたまま映画が始まるというようなことをやっていきたいです。
編: 今後は日本の映像コンテンツがZUNEを通じてグローバルで配信されるようになるのでしょうか。
スペンサー氏: ZUNEは直接私が担当しているわけではないので分かりません。ムービーの配信についてはいちいち映画会社との交渉を各地域でやらなければならず、少し複雑なのですが、私たちの希望としてはなるべく多くのコンテンツを世界中で見られるようにしたいです。
■ 将来的にはすべてのXbox 360タイトルがKinectへ
編: 基調講演の内容から、日本のコンテンツを世界に配信するという話はよく理解できましたが、世界のコンテンツを日本に持ってきてヒットさせる流れはまだ十分に浸透しているとは言えないのではないかと思います。今後Microsoft Game Studioの日本展開戦略を教えてください。
スペンサー氏: Microsoft Game Studioの開発したほとんど全てのコンテンツを日本市場に提供しています。日本市場に対するローカライズも寸暇を惜しまずやってきていると思います。また、「Halo」、「Fable」、「Gears of War」シリーズなどのグローバルなブロックバスタータイトルを日本市場に投入しようと考えています。
編: 今回の基調講演で、ようやくKinect向けのコア向けのコンテンツが見えてきましたが、Microsoft Game Studioの中では現在どういったキラーコンテンツが開発されているのでしょうか?
スペンサー氏: Xbox LIVEをまず私たちがローンチしたとき、おそらくXbox LIVE用に使えるジャンルは限られていると多くの人が言っていたと思います。しかし、現在では、Xbox LIVE向けに出ているタイトルはほとんどすべてのジャンルをカバーしていると思います。私もKinectも同様の進化を遂げると確信を持っています。
将来的にはほとんど全てのものがKinectを利用していくようになっていくと思います。ボイスやジェスチャーやコントロールフリーという意味では全てのジャンルでそれが可能になると考えています。現在はほんの一定の機能で一定のゲームの中で使われるものに過ぎないですが、将来的にはKinectは間違いなく成功して、ほとんどすべてのジャンルで使われるものと思います。
編: 今後発表されるMicrosoft Game StudioのタイトルについてはほとんどすべてがKinectに対応すると考えてよろしいのでしょうか。
スペンサー氏: 私がコメントしたことはあくまで将来の話です。現在の状況としては、Kinect対応のゲームもあれば非対応のゲームもあるという状況です。そのような状況がしばらくは続くと思います。私たちにとって大事なのはクリエイターのビジョンなのです。Kinectがその将来的なビジョンにどれだけ影響を与えていくかということがまず大事なことです。どのフランチャイズにどのKinect対応ができるようになるかというのは、各フランチャイズのトップクリエイターの判断になります。
編: 将来的には「Halo」の新作をKinectで遊ぶこともできそうですね。
スペンサー氏: 現時点では将来的な「Halo」フランチャイズとKinectの可能性について申し上げることはありません。しかし、2点をどうつなげていくかは「Halo」の開発を担当する343 Industriesが考え、実行していくことだと思います。
編: 今後「Halo」フランチャイズの開発は343 Industriesが担当するという理解でいいですか?
スペンサー氏: そうです。Kinectの発売を私たちが決断したときにこれは間違いなくXbox LIVEのときのような重要な柱になる、そしてコンソールのようなプラットフォームになると考えました。Kinectについては長期的なコミットメントをしています。
編: E3では、あの「Forza」がKinectで操作できて驚きましたが、現在の開発状況はいかがでしょうか。
スペンサー氏: 開発は順調に進んでいます。Turn 10という開発スタジオが開発を担当していまして、レースゲームにおいては定評のある人材が揃っています。彼らは現在Kinectと車をどのように連動させるかを考えながら開発を行なっていると思います。
編: 日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
スペンサー氏: いつもサポートしていただいてありがとうございます。TGS2010で発表した内容は私たちが引き続き私たちのプラットフォームから優れたコンテンツをリリースしていくというお約束でございます。これらは、すでに実績のある日本の開発者のリーダーの方々にご協力を仰いで、その協力のもと私たちのプラットフォームをより成長させていくというコミットメントの現われだとお考え下さい。
編: ありがとうございました。
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(2010年 9月 19日)