東京ゲームショウ2010レポート

TGSフォーラム2010基調講演「Xbox 360のビジョンおよび2010事業戦略」
「重鉄騎」、「Rise of Nightmares」など日本発のKinect専用タイトル5本を発表


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


満席となった基調講演会場
米Microsoftコーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏(右)と、マイクロソフト執行役常務 ホーム&エンターテインメント事業本部長 泉水敬氏(左)

 東京ゲームショウビジネスデイのメインイベントのひとつであるTGSフォーラム。その開幕イベントとなる基調講演は、Xbox 360を擁するマイクロソフトが担当し、「Xbox 360のビジョンおよび2010事業戦略」と題して、ファーストパーティータイトルを扱うMicrosoft Game Studiosの事業戦略と、いよいよ11月に全世界で発売を迎えるKinectの日本発のキラーコンテンツを披露した。

 同社がTGSフォーラムの基調講演を務めるのは2008年以来。当時は米Microsoftコーポレートバイスプレジデントのジョン・シャパート氏(現Electronic Arts COO)が来日し、Xbox 360が日本でも勢いを増しつつあることをデータで示しながら、「鉄拳6」や「Halo 3:ODST」といったキラーコンテンツを紹介。さらにLIVE担当としてNew Xbox Experienceを披露した。

 今年、基調講演を担当したのは、Microsoft Game Studiosを担当する米Microsoftコーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏と、マイクロソフト執行役常務 ホーム&エンターテインメント事業本部長 泉水敬氏の2人。関係者席には、MicrosoftのXbox事業のトップであるシニアバイスプレジデントのドン・マトリック氏やKinectの責任者であるクドー ツノダ氏、そして国内外の著名なゲームクリエイターの姿も散見されるなど、今回の基調講演をMicrosoftとしても非常に重要度の高いセレモニーとして位置づけていることが伝わってきた。




■ Xbox 360は「日本のゲームファンに世界最高のゲームを届けると同時に、日本のゲームクリエイターの作品を世界に届ける」ためのゲームプラットフォーム

基調講演を行なう泉水氏
最初のタイトルはKONAMIの「METAL GEAR SOLID RISING」
スイカを斬る雷電。真ん中からぱっくりと割れ、切断面が見える

 基調講演のトップバッターを務めたのは泉水氏。まず始めに泉水氏は、Xboxの役割について、「日本のゲームファンに世界最高のゲームを届けると同時に、日本のゲームクリエイターの作品を世界に届けること」と定義。「本日は日本のゲームクリエイターの取り組みを紹介したい」と続け、「今回は日本のゲームクリエイターが開発中の10タイトルを紹介したい」と、国産タイトル祭りになることを宣言した。

 泉水氏に「日本でもっとも著名なクリエイターが作ったシリーズの最新作です」と最初に紹介されたのは、KONAMIの「METAL GEAR SOLID RISING」。E3 2010で公開されたトレーラーの公開を挟んで、同作プロデューサーの松山重信氏が登壇し、史上初となる実機によるデモンストレーションが行なわれた。

 といっても披露されたのは、“斬奪”という同作のキャッチコピーを裏付けるような激しいバトルシーンではなく、E3トレーラーのオチとして使われていたスイカの輪切りシーン。あれを実機で披露しようというものだ。

 もちろんスイカの切断デモは、単なるネタではなく、「RISING」のゲーム性を示唆する重要なヒントになっている。「RISING」の重要なゲームコンセプトのひとつとして位置づけられているのが、自由切断。破壊可能なオブジェクトを好きな角度から切りつけることで、リアルタイムの物理計算によってオブジェクトは指定した角度で切断され、切断面も自動生成されるという、物理処理を活かした新たなゲーム性の提案となっている。

 デモを担当したのはクリエイティブディレクターの木村氏。「『RISING』には自由切断というコンセプトがあるが、そのテクニカルデモをお見せしたい」と切り出し、木村氏は街の市場のような広場のテーブルに置かれたピンボールのピンやスイカを次々に斬っていった。

 最後に山積みされたスイカを切ると、そこから「MGS4」にも登場した小型UGVの“小月光”、社内コードネーム“フンコロガシ”が出現。今度は小月光が指一本で回すスイカや、ピンボールのピン3本のジャグリングを斬ることに。ミスをしながらも無事成功させた後は、さらにもう1体の小月光が現われ、上に乗っている小月光が真剣白羽取りにチャレンジすることに。今後は見事に失敗し、数秒ずつのタイムラグを挟んで2体の小月光が真っ二つになるというオチ。

 松山氏は「ゆる~い感じのプレゼンテーションで失礼しました」と笑いを誘いながら、「RISING」の開発は順調に進んでいることを報告し、「“この場”で発売の発表をしたい」と東京ゲームショウあるいは日本での発表に含みを持たせた。


【自由切断のデモ】
「METAL GEAR SOLID RISING」の自由切断のデモ。スイカやピンを切断してもテーブルは切断されないため、すべてが切断できるというわけではなさそうだが、スイカを細かく切り刻んだり、どういう風に斬っても切断面が用意されているなど、様々な分野に転用ができそうな演出だ



■ Microsoft Game Studiosから続々生まれる日本発の新作タイトルたち

基調講演を行なうスペンサー氏。スライドに表示されている5タイトルが、日本発のMicrosoft Game Studiosとなる。2本がXbox LIVEアーケード向け。3本がKinect専用タイトルとなる

 KONAMIのデモの後は、もうひとりの基調講演スピーカーであるフィル・スペンサー氏が登壇。「ミナサンコンニチハ、フィル・スペンサーデス」と日本語で挨拶し、「ドンキーコング」の宮本茂氏、「パックマン」の岩谷徹氏、「バーチャファイター」の鈴木裕氏といったアーケードゲームを例に挙げながら「日本のゲームは世界に愛されてきた」と誉めあげた。

 スペンサー氏は、日本のメーカーが開発を手がける新たなMicrosoft Game Studiosタイトル、つまりマイクロソフトのファーストパーティータイトルを、一気に5本披露した。Kinect専用タイトルについては、それぞれクリエイターがコメントを寄せ、概要紹介に加え、デモやトレーラーを披露してくれた。以下順番に紹介していきたい。


【Microsoft Game Studios】
スペンサー氏は、日本のゲームを絶賛しながら、自らが率いるMicrosoft Game Studiosと、Xboxプラットフォームの優位性を解説する。今週発売された「Halo Reach」は、ゲームの分野では今年最高額となる1日で2億ドル(約170億円)を売り上げたという

【スパイク「Fire Pro Wrestling(仮称)」】
ヒューマンの名作プロレスゲーム「ファイヤープロレスリング」が生まれ変わってXbox LIVE アーケードに登場。Xbox LIVEの自分のアバターをレスラーとして利用可能。2011年発売予定 (開発元:株式会社スパイク / 販売元:Microsoft Game Studios)

【トレジャー「RADIANT SILVERGUN」】
「斑鳩」の前作に当たる作品がXbox LIVEアーケードタイトルとしてリバイバル。セガサターン版以来の今回の発表は、日本以外では史上初となる。シングルプレイのほか、オンラインでの協力プレイもサポート。2011年発売予定(開発元:株式会社トレジャー / 販売元:Microsoft Game Studios)

【七音社「Haunt(仮称)」】
「パラッパラッパー」や「ビブリボン」といったタイトルで有名な七音社がXbox 360 Kinect 専用タイトルとして開発を進めているお化け屋敷を探索するホラーゲーム。七音社代表取締役社長の松浦氏がビデオレターでコメントを寄せ、「私どもが作ろうとしているのは実はホラーゲームです。Kinectという環境を使うことによって今までにない斬新で楽しい、というと変ですが、怖いゲームが作れているのではないかと自負しています」と抱負を述べてくれた。2011年発売予定(開発元 : 株式会社七音社 / 発売元 : Microsoft Game Studios)

【グラスホッパー・マニファクチュア「codename D(仮称)」】
昨日のElectronic Artsに続き、「本日は『ファイプロ』のディレクターとして来たわけではありません」という欧米人好みのウィットの効いた喋りで場内を沸かせたグラスホッパーの須田剛一氏が手がけるKinect 専用タイトル。「今回は僕の中でも一番ハードコアでパンクスタイルで、一番ふざけたタイトルを提案したら、すぐやりましょうということになった」と開発経緯を披露した後、肝心のゲームについては「僕たちはコントローラーに縛られてゲームを作ってきたが、Kinectは手に何も持たず、クリエイターの手でまったく新しい革命を生み出すことができる。詳しいことはまだお話しできないが、今回のプロジェクトでは、銃や剣といった武器を使わないコアなアクションゲームとなっている」と語ってくれた。2011年発売予定(開発元 : 株式会社グラスホッパー・マニファクチュア / 発売元 : Microsoft Game Studios)

【グランディング「Project Draco (仮称)」】
「ファントムダスト」や「パンツァードラグーン」シリーズのディレクター二木幸生氏が手がけるKinect専用タイトル。飛翔感たっぷりの3Dフライトシューティングとなっており、二木氏は「操縦桿ではなく、巨大な生き物に乗り、バランスを取って手綱を握って指を指して敵を攻撃する。そういうような形で空を飛び戦うことができる」と興奮混じりに語ってくれた。2011年発売予定(開発元 : グランディング株式会社 / 発売元 : Microsoft Game Studios)



■ 国内大手メーカーからもKinect対応タイトルが続々登場!

「Child of Eden」の魅力を説明するキューエンタテインメントの水口哲也氏。Kinectと聞いて、指揮者をイメージしたという
カプコン稲船敬二氏を、今日一番の笑顔で出迎えた泉水氏
「重鉄騎」エグゼクティブプロデューサーの稲船氏は、「カプコンとしてはコアなゲーマー向けにゲームを作っており、これは意識しているというか、カプコンはそれしかできない。だったら徹底的にやろうということで、Kinectであってもコアに向けたゲーム作りをしていく」とコアゲーム宣言

 スペンサー氏がMicrosoft Game Studiosタイトル5本を紹介した後は、再び泉水氏が登壇し、サードパーティータイトルの紹介を行なった。

 まず最初に泉水氏が取り上げたのは、先日のPress Briefingの目玉タイトルのひとつとして紹介されたバンダイナムコゲームスのKinect専用タイトル「体で答える新しい脳トレ」。泉水氏の口からは、北米、欧州、アジアの各地域においても発売されることが発表された。タイトルは「Dr. Kawashima's Body and Brain Exercises」で、欧米では来年の早いタイミングで発売できる見込みだという。

 次に紹介されたのは、E3 2010で発表された水口哲也氏の最新作「Child of Eden」。会場では開発の進捗を示すかのように最新のトレーラーが公開され、続いてキューエンタテインメントの水口哲也氏が登壇した。

 水口氏は、「『Child of Eden』は僕がずっと追い続けてきた“ゲームと映像と音楽の融合”をテーマに、新しいゲーム表現を目指して開発しています」と挨拶し、「電脳世界的な“マトリックス”、花や光、空などに満たされた“ビューティー”といった僕らがアーカイブと呼んでいるいくつかのステージがあって、ウィルスに冒されてしまったエデンを浄化していく。シューティングゲームなんだけど世界をピューリファイして、よりハッピーでホープ溢れる世界に変えていく。そこに音楽と映像の力を融合させて、その化学反応を味わっていただくというゲームです」と、水口氏独特の表現でゲームの魅力を説明した。

 3つ目のサードパーティータイトルは、セガの「Rise of Nightmares」。こちらはトレーラーを挟みながら泉水氏自らが説明を担当し、「これまでの作品よりもリアルな緊張感とスリルを味わえるそうです。2011年リリース予定ということですが、どのようにKinectを使ってユーザーの皆様をホラーワールドへ引き込むのか今後の情報を待ちたいと思います」と説明した。

 そして最後に紹介されたのがカプコンの「鉄騎」シリーズ最新作「重鉄騎」。泉水氏は「なんとあのタイトルがKinect対応でXbox戻ってきます」とやや興奮気味に語りながらトレーラーを紹介し、「重鉄騎」エグゼクティブプロデューサーの稲船氏を笑顔で出迎えた。

 稲船氏は「『鉄騎』というカプコンの名作をご存じの方は多いと思うのですが、帰ってきました。カプコンとフロムソフトウェアの合作によって、新しい解釈の『鉄騎』が生まれます。時代は2082年。もしこの世界にコンピューターがなくなればという設定のもと作られている。コンピューターがなくなれば世界が一変するのではないか。一変した中で世界の勢力図が大きく変わるんじゃないか。トレーラーではマンハッタンに上陸するという作戦を米軍が執っています。他国にホームを奪われて、それを奪い返すという設定の元、『重鉄騎』というゲームは始まります」と基本設定を一気に説明。

 続いて稲船氏は「カプコンにおけるKinect第1弾ということで、Kinectを使ってあの『鉄騎』がどう帰ってくるのか。以前はあの大型コントローラーを使ったゲーム性だったが、あのコントローラーがどうKinectで再現されるのかを注目していただきたい」と、Kinectの使い方にも自信を覗かせた。


【バンダイナムコゲームス「Dr. Kawashima's Body and Brain Exercises」】
Kinectでプレイする新感覚の脳トレ「体で答える新しい脳トレ」の海外版「Dr. Kawashima's Body and Brain Exercises」。欧米アジア3地域で2011年初頭発売予定 (開発元 / 発売元 : 株式会社バンダイナムコゲームス)

【ユービーアイソフト「Child of Eden」】
まさに水口ワールド全開のスクリーンショット

【セガ「Rise of Nightmares」】
セガの「Rise of Nightmares」は、Kinect 専用のホラーアドベンチャー。トレーラーではどのように遊ぶのかすらわからないが、全身を使って操作行なうことで、未体験の恐怖や緊張を味わえるという(開発元 / 発売元 : 株式会社セガ)

【カプコン「重鉄騎」】
公開されたトレーラーからのワンシーン。コンピューターの存在しないフルアナログの世界における唯一の決戦兵器として重鉄騎が登場する。2011年発売予定(開発元 : 株式会社カプコン、株式会社フロム ソフトウェア / 発売元 : 株式会社カプコン)

(C) 2010 Microsoft Corporation. All Rights Reserved

(2010年 9月 16日)

[Reported by 中村聖司]