Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート

ピーター・モリニュー、「FABLE III」について語る!
Project Natalに対応し、日本マーケットでのヒットを目指す


3月9~13日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ

Lionhead Studios、Creative Director、MGS Europe、ピーター・モリニュー氏

 イギリス・ゲーム開発者の長として知られるピーター・モリニュー氏。彼ほど有名で実績があるイギリスゲーム開発者でも、毎回、大ヒット作を生み出せているわけではない。そこがゲーム業界の難しいところなのだが、しかし、彼は常にチャレンジングな姿勢を貫いており、この業界の人々は否応なしに彼の視線の先を追ってしまう。それは時に一般の人の感性とかけ離れている場合もあるが、だがしかし、彼にしか達することのできない領域であることはたしかであり、その彼ならではのオリジナリティこそが彼の魅力である。

 そんなモリニュー氏の新作は、彼の近作群としては安定感のある完成度で高い評価を得てきた「FABLE」シリーズの冠を付けることとなった。

 「FABLE III」。彼の新作がどのようなものになるのか、どんな魅力が秘められているのか……彼とのインタビューの中で語られた内容を元にまとめた。

■ 冒険の前編と支配の後編 ~「FABLE III」では日本向けのデザインカスタマイズを行なう?

「FABLE III」は「産業革命後の世界」が舞台。前編は普通のRPGのゲームプレイとなる

 挨拶を交わしたあと、モリニュー氏の方から「『FABLE』シリーズの日本での評判についてどうだったのか」と切り出してきた。欧米と比べれば、日本ではXbox 360市場がそれほど成功していないこともあって「FABLE」シリーズのセールスはそこそこ、といったところだ。

 これを告げる前に彼はこういう。

「日本では『FABLE II』のような見栄えのキャラクターは受けられないんだろう?」

 彼は、「FABLE II」をこう振り返り、「FABLE III」では、日本市場に適合させたキャラクターデザインを採用してみたい、ということを日本のメディアに対して開口一番、つぶやいた。親日家の彼らしい、リップサービスかもしれないが、これが本当に実現されれば、かなり凄いことだ。

 さて、「FABLE III」は、大きく分けると前編と後編の2部構成になるという。

 前編は、プレーヤーが、FABLEユニバースのアルビオン王国にて、ヒーローとなるための冒険のお話になる。今作は「FABLE II」から60年が経過した時代が舞台となる。時代的には地球上で言うと17世紀ごろ、産業革命を迎えたアルビオン王国という設定となり、この時代、市民は身勝手な王の圧政と、新産業の発展と旧産業の荒廃により巻き起こった貧富の差に苦しんでいるというような状況。前編でのプレーヤーはこの王を打ち倒すことが目的となる。

 プレーヤーキャラクターは新規作成も可能だが、愛着があるのであれば前作「FABLE II」のものをコンバートして引き継ぐことが可能で、その場合は、「FABLE II」のキャラクターそのものではなく、その遺伝子を受け継いだ子孫(息子や娘)が新たな主人公となるという。「前編パートのゲームの目的やストーリーは、いってみれば伝統的なRPGストーリーのスタイルを踏襲したものである」と自らも述べる。

 この目的を達成しても、ゲームが終わらないのが「FABLE III」なのだとモリニュー氏は語る。

 「FABLE III」では、前王を打ち倒して、プレーヤー自らが王座についたあとは、プレーヤーの判断でアルビオン王国を支配していくことになるのだという。これが「FABLE III」の後編部分になる。

 王国の支配、すなわち内政ゲームにも「FABLE」シリーズ特有の善悪の振る舞いを適用できる。前王よりもさらに市民を苦しめるような圧政を敷いて私腹を肥やすのか、あるいは市民の笑顔が耐えないユートピアを構築していくのか……それは全くの自由なのだ。

 王国の支配について、どのようなゲームになるのか詳細は明かされていないが、王国支配モードではGUIが一新され、王国の全土を神の視点(俯瞰視点)で眺めることができるようになる。大陸を虫眼鏡でなめるようにして見て、興味のある地点で虫眼鏡をズームインさせると、その土地に存在する街が見えるようになり、さらにその街を神の視点で眺めていくと、どの家にどんな人々が暮らしているのか、何屋さんを営んでいるのかといったことがわかる。こうした広大なマップを俯瞰視点でなめていくビュー・スタイルは、数々のゴッドシム(神の視点タイプのRTS)を手がけてきたモリニュー氏からすれば、手慣れたテーマなのだろう。

アルビオン王国の支配が後編のテーマとなる

■ 「FABLE III」の新要素「手を引いて導く」~「子供をあやす」から「物乞いを働かせる」まで

彼との会話の中には「日本のゲーム」が登場することが多い。日本人を相手にしているときだけなのかもしれないが

 モリニュー氏「私はかつてソニーの『ICO』をプレイした。あれは素晴らしいゲームで、少女の手を引きながら冒険していくという要素がよいアイディアだったと思う。私は『ICO』のような“ゲーム内で誰かに触れる”という要素を「FABLE III」で盛り込んでみたくなったのだ」。

 モリニュー氏は、「FABLE III」の開発途上バージョンで、その“誰かに触れる”という要素を見せてくれた。

 画面に映し出されたのは、プレーヤーキャラクターの娘だという少女が迷子になって泣いているシーン。プレーヤーキャラクターはこの少女を見つけ、妻のところに連れて行かなければならない。一般的なRPGだと、少女を見つけ出せば、それでクエストが完了となるが、「FABLE III」では少々異なる。

 プレーヤーはまずは泣き叫ぶ少女を慰める動作をしなければならない。そこで「誰かに触れる」という要素が効いてくるのだ。デモでは、プレーヤーキャラクターは、少女を抱きかかえてなで回し、さらに日本で言うところの“高い高い”に相当する、子供を高く持ち上げてあやす動作をする様を見せてくれた。

 気持ちの落ち着いた少女は父親であるプレーヤーキャラクターと手を繋ぎ歩き出す。なるほど、これが「ICO」に影響を受けた部分というわけだ。

迷子となった娘を発見したら……「高い高い」をして気分を落ち着かせて……うちに連れて帰ろう
パブには入れない迷子の娘が戻って妻は大喜び

「プレーヤーが取れる行動の自由度は『FABLE III』以上だよ」(モリニュー氏)
物乞いに何かを恵んでやるのか、働かせるのか。こうしたブラックジョーク的なテーマは、モリニュー氏が大得意とするところ

 ただ「FABLE III」では、プレーヤーと手を繋いだ少女は「ICO」の少女よりも活発で元気がいい。プレーヤーキャラクターの歩みについてくるし、未成年が入れないパブにプレーヤーが連れて行こうとすると「子供は入れないの」と、自分の意見を言って入ろうとしない。

 今まで、仲間を引き連れて練り歩くRPGは存在したが、実際にNPCの手を引いたり、抱きかかえたりといった“触れあい”を表現したRPGはあまりないはず。妻のもとへ娘を連れて行ければ、この小クエストは成功。ひとまずの終わりを迎えることになる。

 ここで1つの疑問が生まれる。見ず知らずの子供に“高い高い”をして安心させ、誘拐してしまうようなことはできるのか。モリニュー氏に聞いてみたところ、「できる」と笑いながら答えてくれた。善悪がテーマの「FABLE」シリーズでは、当然そうした悪行を働くことはできるのだ。

 今作の時代設定は、産業革命時代。この時代は我々の地球上でも、孤児達が奴隷のように働かされるという黒歴史があったわけだが、ブラックな世界観も大好きなモリニュー氏は、そうした風刺を行なわないはずがない。

 モリニュー氏「物乞いが金をせびってくることがある。彼の手を引いてパブで食事を奢ることもできるが、彼を工場に引き渡して働かせることもできる(笑)」。

 実際にモリニュー氏は、人気のない暗がりにしゃがみ込んで恵みを訴える物乞いの手を引いて工場に連れて行くデモを見せてくれた。

 最初は、食事にありつけると勘違いしてなごやかについてくる物乞いだったが、工場が見え始めると、とたんに歩くのを拒絶し出し、これをプレーヤーキャラクターが引きずるようにして工場に連れて行くという流れに変貌する。これは非常にブラックで笑えるシーンだ。果たして食事を奢るのが善なのか、それとも工場で働かせるのが善なのか……その判断をゲームシステムがどう行なうのか興味があるところだ。

■ 「FABLE III」の戦闘システム ~オーラが出て刀剣が変形する!

 「FABLE III」は、戦闘システムも一新されている。

 モリニュー氏「『FABLE III』では戦闘操作がシンプルで遊びやすくなっている。戦闘システムのゲーム性を改善したのだ」。

 「FABLE III」では、X、Y、Bの3ボタンを押すことで、そのボタンに割り当てられた攻撃がダイレクトに発動するシステムとなっている。魔法や武器を選んで発動/使用という流れではなく、そのボタンを押せばその攻撃が出るという仕組みになったということだ。

 前作から、時代設定としての文明が進んでいることもあって銃火器が扱えるようになり、銃火器をメインに使ってプレイしていると、3人称視点シューティング(TPS)ライクなゲームプレイになるという。

 戦闘は、アクションゲームの要素を前作よりもさらに強く取り込んでいるとのことで、TPS的なゲーム性は「SOCOM」シリーズから、肉弾戦的なゲーム性は「ストリートファイター」シリーズをよく研究したとのこと。RPGの戦闘はどうしても「作業」のようになってしまいがちだが、これを顧みて「ゲームらしいゲーム」をRPGに盛り込んだと言うことのようだ。

 また「FABLE III」では、武器がプレーヤーキャラクターの容姿と同じくらい重要な外観要素になるという。使用している武器がプレーヤーの行動によってプロシージャル的にモーフィング(変形)していくのだ。

 プレーヤーキャラクターのレベルが上がり強力になれば、身につけている刀剣は見栄えとして大きく鋭くなる。これは、グラフィックスエンジン側の専用の武器モーフィングエンジンによって実現されている。悪人を倒せば倒すほど勇ましい装飾が付き、善人を殺したり、残虐な殺し方を極めていくと、恐ろしい形状へと変化していく。

 さらに、キャラクターの成長の善悪の方向性によって、キャラクター自身の体格の風貌だけでなく、オーラの形状が現われるようになったのも「FABLE III」の特徴だ。

 オーラは、背中に映えた、通常は目には見えにくい半透明な翼のような姿をしており、戦闘アクションなどにおいて決めポーズのようなシチュエーションで、短時間の間だけ実体化して見えるようになる。デモで使用されていたキャラクターの背中には、悪行を繰り返したためなのだろうか、悪魔の翼ような醜い模様のオーラが出現していた。このオーラの翼は、自分の手下や信者が増えても大きくなるらしく、このゲーム世界においては大きければ大きいほど権力を持った人物ということになるらしい。

戦闘システムをデモしてくれた、Lionhead Studioの「FABLE III」リードデザイナーを務めるJosh Atkins氏「FABLE III」では、プレーヤーキャラクターの容姿、オーラ、武器がその善悪属性を反映してプロシージャルに変形していく。画面右に見えるアゲハチョウのような羽が、そのオーラになる

■ GUIの見直し ~モンティ・パイソンのジョン・クリーズがインベントリー画面に登場!?

衣装メニュー画面
着せ替えが楽しくなる新GUI

 「君は『FABLE II』をクリアしたというが、『FABLE II』では、衣装はどんなときに着替えたかね?」というモリニュー氏の質問に、「新しい衣装を手に入れたときにそれに着替えていた」と答えると、「はぁ」とため息をつき、残念そうに一言「多くのプレーヤーがそうだったんだ」と語った。

 モリニュー氏「『FABLE II』では、プレーヤーキャラクターの衣装の見栄えは、他のNPCの反応に影響を与えていたんだ。だが、しかし、多くのプレーヤーがあまりそれを意識してくれなかった」。

 残念そうに言うモリニュー氏だが、「それはプレーヤー達の責任ではなく、自分たちのGUIデザインに問題があったからだ」と補足した。

 「FABLE II」では、アイテム管理を、いわゆるクラシックな階層型管理メニューで行なっていた。思い返してみると、たしかにまるでWindowsのエクスプローラでファイルをまさぐるようなGUIだった。

 それが「FABLE III」では、インベントリー画面をバーチャルワールド的な3Dインタラクティブタイプに再設計し、したいことがすぐに行なえるような、直感的なものに変更されているという。

 例えば、衣装変更に関して言えば、手に入れた衣装は、そのジャンル/テーマごとにカテゴライズされて、バーチャルワールド内のマネキンに着付けられており、そこから、好みのものをピックアップして着られるような仕組みへと変更された。これはナイスアイディアだ。

 海賊風の衣装から、中世の戦闘服、外交時に着るような正装、派手な民族衣装などの各衣装が、各マネキンに着せられており、どんな衣装を所有しているのかを、プレーヤーは俯瞰視点ですべて見られるので一覧性に優れることになる。さらに人型のマネキンが着ているため、衣装単体のサムネイル表示があるだけのアイコン表示よりも、プレーヤーキャラクターが着たらどんな感じになるかをイメージしやすい。もちろん、海賊風の帽子に、民族衣装のズボンを組み合わせるといった具合で、独創的なコーディネイトも可能だ。

 こうした俯瞰視点でのアイテムエントリーの展望と、使用したときのプレビュー確認は、すべてのメニュー要素において再現されているとのこと。

 モリニュー氏「イギリスでは有名なコメディシリーズ、『モンティ・パイソン』は知っているかい?これに出演していたコメディ俳優ジョン・クリーズ氏が、このインベントリー画面のガイドの執事役でボイスオーバーを担当しているんだ。凄いことだよ」。

 まさにトリビアといった情報で、これに響く人は日本ではごく一部の人になるだろうが、とにかく、モンティ・パイソン・ファンにはたまらない要素であることに間違いない。

■ 「FABLE III」、Project Natalへの対応を表明

「『FABLE III』は日本で売れると思うかね?」(モリニュー氏)

 インタビューの最後に、モリニュー氏は1つ気になることを発表した。

「『FABLE III』は、Project Natalによるモーション入力に対応したゲームになる。これは時期を見て改めて概要を発表する」。

 Project Natalは、マイクロソフトがXbox 360向けにリリースする予定のモーションセンシング型ゲーミングデバイスだ。何も持たずに体の動きと声だけでゲーム操作を可能にするものだが、これがRPGでどのように活用されるのか興味深い。

 モリニュー氏「『FABLE III』は、通常のXbox 360パッドでプレイできるが、NATALがあればより楽しくなるようなゲームデザインを考えている」。

 これについては、E3などの次の大きなイベント等で明らかになるのかも知れない。

【スクリーンショット】

(2010年3月13日)

[Reported by トライゼット西川善司 ]