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Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート

SCEAが「PlayStation Move」に関する設計思想を公開
原点は「EyeToy」。「PlayStation Eye」とのコラボによる次世代ARを提案


3月9〜13日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコMoscone Center



 GDC2日目終了後に開催されたSCEA主催のプレスカンファレンス「Playstation GDC Press Conference 2010」において、昨年のE3で初公開されたプレイステーション 3用「Motion Controller(仮)」を、「PlayStation Move」として2010年秋に全世界で発売することを正式発表した。その詳細についてはカンファレンスレポート試遊レポートで詳しくご紹介したとおりである。

GDC ExpoのSCEAブースにも「PlayStation Move」がプレイアブル出展されていた

 価格は、「PlayStation Move」コントローラーと、モーションセンサーの検知に利用するカメラデバイス「PlayStation Eye」、そして「PlayStation Move」対応タイトル1本が同梱されて「100ドル以下(約9,000円以下)」。「PlayStation Move」コントローラー単体や、追加アタッチメントの「PlayStation Move」サブコントローラー、そして対応ソフトウェアの価格などは発表されなかったが、5,000円のカメラが付いて1万円未満というのは、ライバルを意識した意欲的な価格設定と言えそうだ。発表会では対応ソフトはファーストパーティー製のみだったが、すでに日本欧米の大手メーカーを含む36社が参入を表明しており、サードパーティー製のローンチタイトルに含みを持たせている。

 プラットフォーマーのプレスカンファレンスでは、プラットフォーム、ソフトウェア、ハードウェア、オンラインサービスと、各分野の担当者が互いに競い合うようにネタを出し合い、その前後をエグゼクティブがまとめるという形が多いが、今回は珍しく「PlayStation Move」のみにネタを絞り、翌日からスタートしたGDC Expoでは試遊コーナーを設けるなど、「PlayStation Move」の売り込みに注力していたのが印象的だった。

 そして当然のことながら「PlayStation Move」に関する技術セッションも行なわれた。セッションタイトルは、「PlayStation Move」発表前に付けられたため、「PlayStation3 Motion Controller」という従来の名称になっていたが、発表直後ということもあり、比較的狭い会場は立ち見が出るほどの人気だった。本稿ではそのセッションの模様をお伝えしたい。

【Playstation GDC Press Conference 2010】
SCEAのGDCのプレスカンファレンスは「PlayStation Home」を発表した2007年以来、実に3年ぶり。内容的には「PlayStation Move」のみという非常にGDCらしい割り切った発表会となった



■ スフィアを通じて精密な検知を行なう「PlayStation Move」

講演を行なうSCEAのKirk Bender氏
「PlayStation Move」の基本設計

 セッションでは、「PlayStation Move」の基本仕様から紹介された。「PlayStation Move」はコントローラーに内蔵された慣性センサーの動きを、PlayStation Eyeで検知することで、ゲーム内の動きに変えるモーションコントローラーだ。具体的にはそれぞれ3軸のアクセロメーター、ジャイロスコープ、マグネトロメーターの3つで構成されている。センサーの具体的な性能は非公表だが、任天堂の「Wii Motion Plus」や、Microsoftの「Project Natal」より高い検知精度を実現しており、これにより「次世代のモーションゲーミングを実現する」としている。

 「PlayStation Move」の慣性センサーの仕様上の制限は2つある。ひとつはコントローラーの先端に取り付けられている光球状のスフィアを通じて検知を行なうため、このスフィアが使用者や遮蔽物によりカメラから遮られると検知できなくなるところだ。もうひとつは、スフィアに似た光を放つ環境、たとえばイベントスタジオのような無数の光が散乱する環境では、誤検知が発生する恐れがある。この場合は、外野の光が単色であれば、スフィアの色を変えることで問題は解決できる。ちなみにスフィアの色は、好みの色に固定することもできるし、仕様としてはスフィアの位置に応じて動的に色を変える“レインボーカラー”の状態で遊ぶことも可能だ。

 検知した情報の処理の仕方は、PS3が誇るCellプロセッサーのSPUを割り当てる形で行なう。この部分は、他のプラットフォームと比較してもPS3の明確なアドバンテージのひとつであり、Microsoftの「Project Natal」は、すでに実装時のパフォーマンスの遅延が心配されているが、PS3ではほとんどのゲームタイトルがSPUを“余らせている”ため、その心配がない。また、これはあくまで現時点の仕様となるが、Cellが搭載している8基のSPUのうち、1基を割り当てるだけで、現在の上限の4つのコントローラーを割り当てることができるという。

 ちなみに最大4つまで登録できるコントローラーは、メインで1つ、サブでも1つとカウントされる。WiiではWiiリモコンとヌンチャクのセットで1つだが、「PlayStation Move」では2つとカウントされる点が大きく異なる。また、メイン+サブという標準的な組み合わせに加えて、メイン+メインで遊ぶスタイルが多いのも違いのひとつ。メインとサブの組み合わせで両手で操作する場合は最大2人、メインのみの場合は最大4人の同時プレイが楽しめることになる。


【スフィアの色を動的に変えるデモ】
両手の「PlayStation Move」コントローラーを動かすと、モニタの色の指定位置が変化し、それに応じてスフィアの色が変わるというデモ。実効性はあまりなさそうだが、携帯電話のイルミネーションのような新たな楽しさをもたらしてくれそうだ



■ 「PlayStation Move」は「EyeToy」の延長線上のプロダクト

SCEは常に新しいインターフェイスを追い求めてきた
デモを担当したSCEAのDavid Coombes氏。「PlayStation Move」を地球儀に変形して回しているところ

 さて、次に「PlayStation Move」の誕生経緯が語られた。なぜ技術セッションでそういうことが語られるのかというと、これはもう間違いなく、E3の発表直後から世界中で言われていた“Wiiリモコンのパクリ”という避けがたい汚名をエンジニアとして少しでも払拭したいからだろう。

 「PlayStation Move」は、ライバル意識としてWiiリモコンとNatalを念頭に置いていることはその言葉の端々からも感じられたが、発想の原点はWiiリモコンではなく、SCEE(ヨーロッパ)発のソーシャルゲームとして一世を風靡した「EyeToy」だという。SCEEの「EyeToy」は、プレイステーション 2を同名のカメラデバイスに繋いで2003年に欧米でリリースされた現在のモーションゲームの先駆けとなるプロダクトだ。奥行きすら検知できない技術的には制限の多いデバイスだったが、欧米で非ゲーマー層を巻き込んで累計1,000万台の大ヒットを記録した。

 その後もSCEEの中核スタジオであるSCE Londonは、「Eye of Judgement」、「Eye Pet」、「Eye Create」、「SingStar」、「BUZZ!」といった体感型のデバイスを企画を進めていく。そのカメラ側の後継機がPlayStation Eyeであり、プロダクトとしての後継作品が今回の「PlayStation Move」ということになるわけだ。

 今回追及した項目は、「表現力」、「精度」、「即時性」の3つで、結果としてカジュアルなインターフェイスでありながら、違和感をまったく感じさせない直感的な操作が可能なモーションコントローラーを目指して設計されている。

 まず表現力については、モーションセンサーに加えて、メインとサブとの2つのコントローラーに多数のボタンを用意することにより、既存のデュアルショックと遜色のない操作を可能にしている。メインコントローラーには、スフィアによる検知に加えて、手前の親指部分に5つのデジタルボタン、その下にはPSボタンが配置されている。人差し指で操作する裏手のトリガーはアナログボタン(Tボタン)となっている。また、メインコントローラーはデュアルショックの機能もサポートし、デュアルショック3とは異なる振動体験を提供できるようだ。

 サブコントローラーはアナログスティックに、方向キー、○、×、L1、L2ボタンを装備。モーションセンサーや振動機能は非搭載で、あくまでメインのサブ的なコントローラーという位置づけになる。

 精度については、プレーヤーの意図通りの精密な検知が可能と言うだけでなく、ゲームに応じて、個々に精度の設定を変えられるようになっている。ファミリーゲームで子供のオーバーアクションを避けるために精度を下げて単位当たりの移動幅を大きくしたり、コアゲーマー向けのFPSなどを遊ぶ際には、PC向けのFPSでマウスの設定を自分好みにいじるような感覚で調整が可能なようだ。

 3点目の即時性については、レーテンシーを低く抑えることで、入力のラグを無くすとというシンプルにして究極の目標を掲げる。現時点で1フレーム以下を実現しており、複数個のコントローラーで遊んでいてもレーテンシーを低く保てるように工夫を重ねているという。


【「PlayStation Move」のデザイン】
「PlayStation Move」はゲームコントローラーとしてもデュアルショック3に準ずる性能を持つ。「PlayStation Move」単体で、ゲームの操作は一通りできる設計になっている



■ 「PlayStation Move」+「PlayStation Eye」で、新時代のAR体験を!

対応ツールセットはWiiにも使われている「LiveMove2」
「PlayStation Move」は、「PlayStation Eye」の活用次第で大きな可能性がある
ソニーの顔検出技術が、「PlayStation Move」成功の鍵となる!?

 セッションの後半では、対応ミドルウェアやPlayStation Eyeのポテンシャルについての話が行なわれた後、実機によるデモンストレーションが実施された。

 今回紹介された「PlayStation Move」用のミドルウェアは、AiLiveの「LiveMove2」。昨年のE3のSCEAのプレスカンファレンスで「Motion Controller(仮)」が紹介された後、PS3への対応を正式表明していた。

 「LiveMove2」は、開発者ならご存じの通り、Wii Motion Plusにフル対応したツールセットとしてすでに多くの実績を備えている。「PlayStation Move」が対応したことで、これまでWiiと「LiveMove2」で培ってきたモーショントラッキングに関する開発ノウハウをそのまま受け継ぐことになる。これはサードパーティーにとっては開発のしやすさという面で大きなメリットになるし、マルチプラットフォーム展開が格段にしやすくなる。SCEとしては、独自のツールを一から手がける方法もあったはずだが、参入のハードルを下げて、多くのメーカーにソフトを提供して貰うという名より実を取った恰好となる。

 印象的だったのは、「PlayStation Eye」の併用的な活用が提案されたことだ。「PlayStation Move」というサービスにおいて「PlayStation Eye」の役割は、Wiiにおけるセンサーバーに当たるが、その本来の効果はなくなるわけではない。トラッキングの役割と、「PlayStation Eye」本来の機能を活かすことで、「PlayStation Move」のゲーミングシーンをさらにリッチなものにできる。

 「PlayStation Move」において活用できる「PlayStation Eye」本来の機能とは、AR(Augmented Reality:拡張現実)、ヘッド(フェイス)トラッキング機能、プレーヤー自身のモニタリング機能などが挙げられる。ARは、いわば「EyeToy」シリーズが提供してきた遊びそのものとも言えるが、「PlayStation Eye」にはイメージプロセッシング機能を備えており、よりAR的な遊びを導入しやすくなっている。

 ヘッドトラッキング技術は、ソニーのスマイルシャッター技術に代表されるソニー直伝の認識技術をPS3に転用したものだ。顔に関しては、笑顔だけでなく、性差、年齢、目の開け閉め、メガネの有無まで検知する。そしてモニタリング機能を利用して、個々の個体を認識し、頭や顔の動きを入力に変換する。

 たとえば、パーティーゲームでは、個々の個体を識別した上で、頭や顔のジェスチャーでクイズに答えるといった遊びも可能だという。こうした機能自体はすでに「PlayStation Eye」で実現されているものばかりだが、同じくモニタリング機能を持つMicrosoftの「Project Natal」的な遊びもできるということをアピールするのが狙いだろうか。

 最後にKirk Bender氏は、「PlayStation Move」の表現力、精度、即時性における優秀さを改めてアピールし、その上でPlayStation Eyeの機能を活用することのメリットを強調。また、PS3が誇るCellパワーによるローメモリー、ハイパフォーマンスによる新しいエンターテインメントであることをアピールしてセッションを終えた。


【「Move! Party」のデモ】
セッションの終盤にはパーティーゲーム「Move! Party」の実演が行なわれた。まさに「EyeToy」の発展版で、見ているだけで楽しめる内容だが、「PlayStation Move」は正確に手の動きを検知するため、ゲーム性は格段に上がっている

(2010年 3月 14日)

[Reported by 中村聖司 ]