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Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート

Games Beat@GDCレポート
クラウド型のゲーム配信サービス「OnLive」に衝撃
ソーシャルゲーム時代の「Steam」になりえるのか!?


3月9〜13日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコMoscone Center


 GDC前半に実施されるチュートリアル&サミットの2日目は、ベンチャービジネスを専門に扱うWEBメディアであるVentureBeatをホストに、ゲームビジネスのカッティングエッジを取り上げるサミットGames Beat@GDCに参加した。

 Games Beat@GDCは、開発サイドからの話が過半数を占めるGDCのチュートリアル&サミットの中にあって、ビジネスサイドからゲームを語るという、一風変わった存在である。物珍しさもあって、参加できる範囲内で参加してみたところ、これがなかなかおもしろかった。

 サミットのテーマは「Disruption 2.0」。意訳すれば、“新世代の創造的破壊”といったニュアンスになるだろうか。内容的にはそうした破壊的なビジネスモデルやプラットフォームは何なのかをメーカートップに聞きまくるという単純明快なもので、先端的なテーマが好まれるGDCらしいサミットである。残念ながらすべてのセッションには参加することができなかったが、拾えた範囲内で紹介したい。

【Mythbusting Fireside Chat】
本セッションは、内容よりむしろ元Microsoft Xbox Live担当バイスプレジデントのJohn Schappert氏の出席が話題となった。Schappert氏は現在EAのCOOという形で古巣への出戻りを果たしている。ディスカッションの内容は、EAの方向性ではなく、彼のCOO就任後の最初の大きな事業となったPlayFishの買収とその狙いについてだった。Schappert氏は、Xbox 360を筆頭としたコンシューマーゲームに感謝を述べ、近年急成長を遂げつつあるソーシャルゲームの革新性について語りながら、買収したPlayFishを軸に今後、EAがソーシャルゲーム事業を拡大していくことを明かした



■ クラウド型のゲームオンデマンドサービス「OnLive」がついに完成か?

基調講演を行なうOnLive CEO Steve Perlman氏
OnLiveのゲームオンデマンドサービス「OnLive」のトップメニュー。プラットフォームを問わずに操作しやすいようにシンプルになっている
Gamesからゲームを選び起動する。ストリーミング映像が流れるまで若干のウェイトが存在するが、流れ出したらあとは通常のゲームプレイとまったく変わらない。この美しさと滑らかさは衝撃的だ

 サミットの基調講演を務めたのは、昨年のGDCで発表されたPCゲームのストリーミング配信サービスOnLive CEO Steve Perlman氏。「OnLive」は、昨年のGDC Expoで電撃出展され、話題を集めたPCゲームのオンデマンドサービスだ。北米で昨年中のサービスインが予定されていたが延期になっていた。

 このため基調講演も「OnLive」の開発経験を通じて、ゲームのオンデマンドサービスの未来を語るような内容になると思いきや、実機による「OnLive」の正式バージョンのデモをたっぷり紹介しただけでなく、その次のビジネスとしてiPhone向けのサービスのデモも行ない、朝から来場者の度肝を抜いてくれた。

 「OnLive」の具体的なサービス内容は、専用のランチャーから「OnLive」にログインすることにより、「OnLive」の専用サーバーからストリーミング配信される各種ゲーミングサービスを受けられるというもの。「OnLive」のクライアントは、Xbox 360のダッシュボードのようなスタイリッシュなインターフェイスを採用しており、フレンドリスト機能やチャット機能、動画クリップ機能等を備えている。

 デモではメインメニューから「Games」を選択して、ゲームを起動したり、レジューム中のゲームを再開したり、あるいは自らが撮影した膨大な動画クリップを再生するシーンなどを見ることができた。解像度は720pでフレームレートは60pfs。家庭のハイデフゲーム環境そのままの映像が流れているため、言われなければこれがストリーミング映像であることが信じられないほどだった。

 「OnLive」の対抗馬として想定されているのは、PCゲーム界唯一のプラットフォーマーであるMicrosoftの「Games for Windows Live」であり、Valveの「Steam」だが、「OnLive」はソーシャルサービスは前2サービスと同等かそれ以上の水準のものを整えつつ、さらにその上にクライアントのインストールもアップデートの必要もない完全なゲームオンデマンドサービスを実現しており、そのサービスの差は圧倒的だ。

 対応プラットフォームは、Windows PC、Mac、TV、Handheld Device。要するに独自技術のストリーミング映像が過不足無く再生できればプラットフォームは問われない。TV向けの「OnLive」サービスは、ストリーミング再生を実現するための専用のセットトップボックスが用意されており、既存のゲームプラットフォーマーが「yes」といえば(言うはずがないが)、各種ゲーム機で「OnLive」を配信できるだけのポテンシャルを備えている。

 さらにデモの後半では、iPhoneで「OnLive」サービスの実演を行ない場内をどよめかせた。iPhone上で、ハイエンドのPCゲームがさくさくっと遊べてしまうという、クラウド時代のゲームシーンを象徴するような衝撃的なデモンストレーションだった。


【「OnLive」の各種機能】
デモの様子。上段は、ゲーム選択画面やレジュームしたゲームを再開するクイックランチ機能、フレンド機能。下段は、You Tubeのような使い方が想定されている動画クリッピング機能。こちらもデータはサーバー側でストックされる



■ 課題は参入タイトルと、コンシューマーの壁。「OnLive」はゲーム産業に革命を起こせるか?

「OnLive」を通じてゲームを配信するとゲームメーカーの利益率も向上するというスライド
2011年まで開発ロードマップはすでに完成しているという。2011年には1080p、60fpsのストリーミング映像を実現するという
Social & Online Games Summitでも「OnLive」のセッションがあり、こちらも盛況だった

 「OnLive」の衝撃は上記に留まらない。ゲームのストリーミング配信サービスが実現すると、ゲーム業界の様々な懸案が一気に解決する可能性がある。たとえば、クロスプラットフォーム対戦が簡単に実現するだけでなく、ゲームプラットフォームそのものを意識する必要がなくなる。当然のことながらハードウェアスペックに依存しないため、最先端技術の導入も容易になる。さらに、体験版やβテストの実施も従来より格段に手軽になるし、「製品版を30分だけ開放する」という真の意味での体験プレイが柔軟に行なえるようになる。

 また、「OnLive」もまたデジタルディストリビューションの範疇に含まれるため、そのメリットとして中間コストをカットして利益率の向上も図ることができるし、パッケージソフトを買う必要がないため、中古や海賊版の問題からも開放される。最後に、コンテンツあたりの利用料金が未発表であるため、現時点ではまだ断定はできないが、エンドユーザーのゲームにかかるコストが「Steam」よりさらに安くなる可能性が高い。

 今後の拡張予定については、ゲーマータグシステムの実装、ライブビデオ観戦システムの導入、ゲームに縛られないチャットシステムやメッセンジャーシステムの導入、アドオン等の導入を促進する独自のゲームマーケットプレイスの導入などを挙げた。宿願である1080p、60fps表示は2011年対応予定だという。

 さて、最後に気になる情報をまとめておきたい。まず、サービス開始時期は、米国48州限定で、E3 2010の会期中に当たる2010年の6月17日を予定し、利用料金は月額14.95ドルより。この利用料金には、個々のゲームコンテンツの使用料は含まれず、さらに安い複数月コースも後日の発表が予定されている。日本展開は直接聞いてみたが、いまはノープランで、北米市場で成功してから他の地域の展開も考えていきたいということだ。

 「OnLive」に参加を表明しているメーカーは、ATARI、Codemasters、Eidos、Electronic Arts、Epic Games、Take 2 Interactive、THQ、Warner Brothersなど北米大手のメーカーを中心に12社。デモで確認できたタイトルとしては、「Assassin's Creed II」(Ubisoft)、「Bioshock」(Take 2)、「Borderlands」(Take 2)、「Brain Challenge」(Gameloft)、「Burnout Paradise」(EA)、「Call of Juarez」(Ubisoft)、「Company of Heroes」(THQ)、「Crysis Warhead」(EA)、「Unreal Tournament III」(Epic Games)などがある。いわゆる旧作に該当する名作、大作が多い印象だが、最近のタイトルも含まれているところに注目したい。

 現時点での参入メーカーはPCゲームに熱心なメーカーに限られ、独自でゲームポータルサービスを展開しているMicrosoftとValveは不参加となっている。もちろん、任天堂やSCEといったプラットフォーマーも不参加だ。「OnLive」のテクノロジーはプラットフォームにはまったく依存していないため、これらのゲーム専用機のゲームの映像を配信することも技術的には十分に可能だ。ただ、これに関しては、ゲームプラットフォーマーから黙殺される可能性が高く、革命の成就は簡単ではないだろう。現時点でもっともホットな“Disruption Platform”と言える「OnLive」。新たなゲームオンデマンドサービスがどのような形で軟着陸を果たすのか、引き続き注目したいところだ。


【「OnLive」スクリーンショット】
ゲームの利用料金は、レンタルと買い切りの2パターン。そのほかに製品版の制限時間付きの無料体験やバーゲンセールなども用意される模様だ



【GamesBeat@GDC】
GamesBeat@GDCは、様々な人物が参加してのディスカッションが終日行なわれたが、もっとも多かったテーマはソーシャルゲームだった。自社のアドバンテージやソーシャルゲームの優位性、ユーザーオプティマイズの重要性はどのセッションでも語られていたが、彼らが異口同音に発言する“ソーシャルドリブンのゲームデザイン”に関して、サミットテーマである“Disruption 2.0”に相当する話題は出ていないように感じられた。ソーシャルゲームが、いわゆるAAAタイトルの対極を行くひとつの集大成的存在であることは論を待たないが、それは一体なんなのかというと依然として曖昧模糊としており、実は経営者自身が、その成功体験を飲み込み切れていないという印象を受けた。2002、2003年前後の日本を含むアジアでのオンラインゲームブームを彷彿とさせる風景に近い。2日間のチュートリアルとサミットを通じて、妙な表現だが「日本はそんなに遅れていない」。そんな印象を持った

(2010年 3月 11日)

[Reported by 中村聖司 ]