インターネットカードゲーム「ガンダムクロニクルバトライン」インタビュー
リアルなカードとオンラインの融合したゲームの開拓、そして6月以降の展開を聞く


稼働中

価格:第1弾 スターターキット:2,625円
   第1弾 ブースターパック:315円
   第2弾 「-戦場は宇宙へ-」:ブースターパック 315円


 株式会社バンダイから発売、稼動中のインターネットカードゲーム「ガンダムクロニクルバトライン」は、ブラウザでネットゲームの気軽さと、カードゲームの戦略性を併せ持つ、全く新しいジャンルのゲームだ。本誌でも、これまで2回にわけてその遊び方を紹介してきた。

 今回は、同作のディレクターであるバンダイカード事業部のマネージャー・上床威一郎氏と同じく開発チームの中村泰良氏に、ゲームへ込めた思いやこれからの展開についてお話をうかがった。




■ カードをネットと融合させるプロジェクトとしてスタート

バンダイのカード事業部マネージャー・上床威一郎氏(向かって右)と、開発チームの中村泰良氏

── 「ガンダムクロニクルバトライン」開発の経緯とコンセプトについて教えていただけますか?

上床氏:バンダイカード事業部でデジタルとカードの融合にチャレンジし続けています。「データカードダス」や、「カードビルダー」などがその代表的な例でして。

 次は自宅で楽しめるデジタルカードゲームを目指し、2007年ごろから本格的にプロジェクトをスタートさせました。

中村氏:僕は、ずっとコンシューマゲームの製作をやっていました。開発チームに入ったときにはカードゲームとネットの融合というコンセプトが決まっていましたので、主にゲーム制作を担当しました。アーケードのカードゲームをよくやっていましたので、実際にそこにあるカードは、デジタルのみのカードよりも嬉しいものですし、カードを物として所有できることは魅力だなと当初から思っていました。

上床氏:コンセプトとしては、まずは、カードを集めて楽しんでもらい、さらに付加価値としてネットで楽しむカードゲームを用意してみました。一般的なアナログカードゲームは、ルールが難しかったり、対戦相手が必要だったり……。そこで誰でも楽しめるようにと。

中村氏:はじめは、とにかく遊びやすくライトなものを意識しましたね。


「ガンダムクロニクルバトライン」製作時の苦労を語る中村氏(左写真)と、コレクションを披露する上床氏。当然と言えば当然だが、全てのカードが揃っており、分厚いカードホルダーは壮観だ

── カード登録に使うコスカペンは特徴的なガジェットですが、これは企画段階からあったものなんでしょうか?

上床氏:コスカペンは、ある時期に他社から紹介を受けたものです。これを何かに使えないかと聞かれたときに、ちょうどネットカードダスを考えていて、スキャンさせれば色々なことができるなと思いました。それと、セキュリティに使っているシリアルバーコードも同じですね。これはコスカペンと対になっています。

 家庭用のバーコードリーダーは高価なものが多く、なかなかおもちゃとして商品化が難しかったのですが、これは比較的安価にできて、パソコンとの連携もよく、ネットワークにも適しているという長所があったので、採用することができました。本当にタイミングが良かったですね。

── 「ガンダムクロニクルバトライン」はユーザー同士の直接対戦ではなく、誰かが作ってアップロードしたデッキと戦うゲームですが、この独特な対戦形式を採用したのはなぜですか?

 

上床氏:「ガンダムクロニクルバトライン」には、ひとりでも遊べるという敷居の低さを作りたかったんです。そこを可能にするシステムは何だろうと考えたときに、デッキのアップロードと迎撃戦のシステムを考えつきました。

中村氏:ネットゲームにはリアルタイムで対戦する面白さもありますが、そこが怖い方も多いと思うんです。擬似対戦とすることで怖さが軽減されますし、プレイングよりカードの組み合わせ重視なので、誰でも楽しめるものだと考えています。

── 月額料金などが発生しないのも、「ガンダムクロニクルバトライン」の特徴ですね。

上床氏:ネットゲームには、クレジットカードやウェブマネーなどの課金が発生することが多いですね。しかし、「ガンダムクロニクルバトライン」は課金せずに楽しめるゲームにしたかったんです。カードを買ってもらえれば、ゲームは実質的に無料で楽しんでいただける仕組みを作りました。

── 「ガンダムクロニクルバトライン」の対戦はアップロードされた相手デッキと戦う「出撃戦」と、自分のデッキをアップロードしておき自動的に対戦させる「迎撃戦」のふたつがありますね。「出撃戦」ではランダムに手札が入ってきますが、この理由はなぜでしょう?

上床氏:カードゲームの楽しさは、デッキ構築が大きな部分だと思っています。プレイングで燃えるのは、デッキから今このカードがほしい! というカードが来るかどうか、というところなので、来ないジレンマと来たときのカタルシスがほしかったんです。

 出撃戦にはドロー要素を入れ、迎撃は思い通りにユニットを出せる積み込み要素を入れました。迎撃戦にも、自分で考えたルーチンが正しく作動するかという楽しみがあります。そうした違いを出すことで、ひとつのゲームで複数の楽しみかたをして頂きたいと思っています。

中村氏:迎撃設定をアップロードしておいて、帰ってきたら結果をチェックするというのが、当初考えていた理想のプレイスタイルだったんです。でも、ユーザーが会社や学校に行っている間は、他のみんなも出かけていることが多いんですよね。だから、なかなか迎撃戦が発生しなかった(笑)。そういうわけで3月から、アップロードしたデッキ同士が自動的に対戦する方式を新たに実装しました。


デッキに「迎撃設定」をほどこしておけば、3時間ごとに自動で対戦が行なわれる。結果はあとから見ることが可能だ



■ 第2弾「-戦場は宇宙へ-」の導入とその意味

── 3月に第2弾「-戦場は宇宙へ-」が発売され、その導入と同時に、ゲームのルールが大きく変化しました。まさに文字通り、第1弾とは環境が激変したわけですが、この反響はいかがでしょうか?

中村氏:第2弾の発売とほぼ同時にCPの初期値が上がり、従来よりも様々な戦略が可能になったので、面白くなったという評判を頂いています。動くユニットが増えたぶん、バトル時間は若干長くなったのですが、すべてのバトルを消化しなくてもランキングには入れるシステムですので、プレーヤーの方々の都合に合わせて遊んで頂ければと思います。

── 出撃戦の想定プレイスタイルは、毎日少しずつ遊ぶものでしょうか?

中村氏:今までのネットゲームやカードゲームに比べてライトな層を取り込もうと思っていますので、1日に2戦、3戦ずつといった形で少しずつ遊ぶことを想定しています。迎撃戦もそのための仕組みで、忙しくて出撃はできないユーザーがアップロードだけしておいて、帰ってきたときに結果を確認できます。忙しい人にも楽しんでいただける仕様です。

── 第2弾のカードでお気に入りはありますか?

上床氏:ヒルドルブです。出撃したときに敵に隣接するへックスへ移動できるのですが、そこに母艦のみを狙うパイロットをつけておくと、近くにいるモビルスーツを無視して母艦を攻撃し続けることができるんです。すると、敵が攻めてくる前にやっつけられる。でも、なかなか決まらないですね。

中村氏:私は陸戦型ガンダム(シロー・アマダ機)ですね。

上床氏:私のと同じ系統の特殊能力だ(笑)。

中村氏:ただ能力を上げるだけではなく、ギミックとして特殊な効果があるのがいいですね。今後は見た目にも楽しい特殊能力を増やしていこうと思っています。使ってみて面白いことを大事にしたいですね。


上床氏と中村氏お気に入りの、“MZ-029/II ヒルドルブ”と“ME-026/II 陸戦型ガンダム(シロー・アマダ機)”。大量に出てくると実に手ごわい



■ 6月の導入に向けて開発が進む第3弾と構築済みパックとは?

「ガンダムクロニクルバトライン」はまだまだ進化を続けていきます」と語る中村氏

── 第3弾以降の展開予定についてお聞かせください。

中村氏:6月に構築済みパックと第3弾、ふたつのタイトルが発売されますので、それに合わせて大幅なアップデートを考えています。今は、初心者がいきなり強い人と当たってしまうこともありますので、そこを調整しようかと考えています。

 具体的には実力差によるクラス分けを考えており、強さの近い人同士でマッチングするようになります。また、今はアカウントを作成したときにカードが1枚もないんですが、最初に1デッキあげてしまおうとも思っています。デッキは20ユニットで作られますが、これを全部そろえるのも大変なので、その調整も考えています。

── デッキあたりのユニット数を減らすということでしょうか?

中村氏:そうですね。ユニット数を減らした大会も開催してみたいと思っています。

── 構築済みパックには、どんなカードが登場するのでしょう?

中村氏:ジョニー・ライデンや、フルアーマーガンダムなど、エース級を取り揃えた「MSV」のラインアップです。900円でカードが9枚、それに加えて「特別部隊カード」というものが入っています。特別部隊カードを登録すると、17枚のメカニクスが1度に手に入ります。構築済みパックをひとつ買っていただければ、それだけでデッキができるわけです。ジオンと連邦で、それぞれ1セットずつ発売されます。

 中に入っている通常のカードは9枚なんですが、それに加えてデジタルカードが17枚ということです。公式のオンデマンド販売「ネットカードダスダイレクト」を通していただければ、この17枚のデジタルカードをリアルカードにすることも可能です。

── ネットカードダスダイレクトについて、ユーザーの反響はいかがでしょう。

上床氏:シリアルコードと連動したデジタルカードのリアル化は新しい試みとして、コレクターに評判がいいですね。お店に行かなくても直接デジタルカードのブースターパックを買えるのですが、これが非常に好評です。

── カードが届くときの封筒も特徴的ですね。

上床氏:ミデアの封筒ですか。あれがなくなったらパプワにしようかと思っています(笑)。




■ 「艦長などのキャラクターも出して!」ユーザーの声は届くのか?

「ユーザーのご要望に答える形でカードを増やしていきたいです」と答える上床氏。「機動戦士ガンダムSEED」と「機動戦士ガンダムOO」の要望が多いようだ

── 今後は、どんな作品がカード化されるでしょうか?

上床氏:第3弾では「0080」ですね。また、ゲーム系も多数収録していく形です。今後は「0083」も仕込んでいますのでご期待ください。ガンダムには、まだまだたくさんの魅力的なモビルスーツがありますのでご期待ください。

── ユーザーから、欲しいカードについての要望もたくさん来そうですね。

上床氏:ユーザーの方々からの要望が高いのは、艦長的なキャラクターですね。例えば、ブライトやギレンです。その辺りも、うまく入れていけたらなと画策しています。ただ、彼らはモビルスーツに乗らないので、彼らに脚光を浴びてもらうためには何か方法を考えないといけません。これは2009年度のバージョンアップの課題ですね。

 それから、原作ではパイロットでも艦長でもなかった民間人のキャラクターも入れてみたいですし、そういうカードを増やして、幅の広い遊び方ができるようにしたいとも考えています。まだまだ課題や要望がありますので、少しでも満足してもらえるように改良していきたいと思います。

── 今のところ、一年戦争を時系列順に追っているラインナップですが、そこからはずれたガンダムが出るような予定はありますか?

上床氏:何を入れてほしいというアンケートをとりましたが、やはりバラエティに富んでいて、一年戦争ものと「機動戦士ガンダムSEED」と「機動戦士ガンダムOO」も人気でした。今、勢力は連邦とジオンのふたつですが、今後どうやって楽しんで頂くか模索中です。新しい勢力を加えていけたらいいですね。

── 第2弾でゲームのルールに大きな変更が加わりましたが、第3弾でもルールの変更はありますか?

中村氏:第2弾では、カードに「特殊能力」という要素が入りました。第3弾では、よりゲームが楽しくなるような特殊能力がさらに増えます。また、ルールについても、大会ごとに変化するようになっていきます。

 デッキの最大コストやユニット数の制限など、毎回レギュレーションを変えて楽しんでいただけるようにしようかと考えています。大会ごとに違う制限の中で、強いデッキを探しだせるユーザーが勝つ、というゲームになっていきます。

特殊能力はカードのステータス画面のほか、公式サイトのリストでも確認できる

── イベントの予定などはありますか?

上床氏:「ガンダムウォー」というカードゲームでは、大きな会場を借りきって数千人規模のイベントを半年ごとにやっているのですが、バトラインももっと大きくなったらぜひやってみたいですね。せっかくリアルなカードがあるのですから、リアルなコミュニティーができるとそれは素晴らしい事だと思います。

── 意見といえば、ネットカードダスにログインしたところにアンケートフォームもありますよね。

上床氏:アンケートをとると確実に意見が返ってきます。厳しいご意見も多々ありますが、1人1人のコメントをまとめていくといくつかの方向性が見えてくるので、非常に参考にさせてもらっています。

── その他、これからの変更の予定について教えてください。

中村氏:なるべく無料で遊んでいただいて、バトラインの魅力が伝わったらカードを買ってもらえたらと思っています。サイトのデザインも、反省を活かし初心者にもわかりやすくガラっと変えようかと思っています。

上床氏:それと、勝ち負けにかかわらず楽しめるようにしたいですね。ランキング以外の楽しみも入れていきたいところです。

 今のシステムでは、ランキングに入賞したユーザーに勲章カードをプレゼントしているのですが、もっと色々なプレゼントの仕方ができるようにしていきます。

中村氏:6月からは、ランキングに応じたポイントが入り、そのポイントと勲章カード・褒章カードを交換する形に変更します。ポイントはカードを購入したときにも入り、ランキングのポイントとあわせて使用できます。ランキングで上位入賞を狙うだけでなく、忙しい合間に遊んでくださっている方にも特別なカードを入手できるように変更したいと思います。

── それでは、最後に読者に一言お願いします。

中村氏:第2弾の発売で、ユーザーのみなさまからいい評価をいただいてます。今後、第3弾、第4弾とアップデートを続けて、みなさまの満足度をどんどん高めていきたいと思っています。ぜひ、末永く「ガンダムクロニクルバトライン」をよろしくお願いします。

── 本日はありがとうございました。

(C)創通・サンライズ

(2009年 5月 1日)

[Reported by 斉藤高吉/冒険企画局 ]