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【静岡ホビーショー】マックスファクトリーが挑戦する新作は「耕耘機」
戦後日本を、女性を支えたメカを、美少女と共に!
2017年5月12日 21:33
静岡ホビーショーの会場である「ツインメッセ静岡」は大展示場として“北館”と“南館”がある。実は北館にバンダイやタミヤ、ハセガワなど静岡の主要メーカーが集まっていて、南館は京商を中心にラジコンメーカーが集まる、ちょっと“地味”な雰囲気がある。そこに出展していたマックスファクトリーは、なんと「耕耘機(こううんき)」の実物を展示、道行く人の注目を浴びていた。マックスファクトリーの新作はこの耕耘機と美少女フィギュアのセットなのである。
都市部の人にはなじみがないかもしれないが、耕耘機はちょっとした地方ならば見慣れた農業機械である。エンジンによって“刃(耕耘刃)”を回転させ地面を掘り返す。鍬を使ったり、牛馬に鋤を引かせて地面を掘り返し、田んぼや畑を耕す作業を楽にできるようになったこの機械は、戦後の日本を支えた機械であり、現在も幅広く活用されている。コンパクトで優れた日本の耕耘機は、世界でも活躍している。
しかし……それでも美少女と耕耘機というモチーフを選んだのは何故なのか、今回は会場で担当者に話を聞けた。マックスファクトリーでは1/20スケールのフィギュアを展開している。このスケールはメカと美少女を並べ立たせたいのだが、車などにすると「次はどんな車に?」という固定イメージがついてしまうし、女の子とのバランスもとれなくなって車ばかりに傾倒する可能性もある。そこで何か、と考えたとき「メカ」としてのバランスを考え耕耘機を選んだという。
耕耘機の横に並ぶのは麦わら帽子にタンクトップの元気いっぱいの女の子だ。山下しゅんや氏がデザインしたみのり(仮称)は、かわいらしく、そしてたくましさも感じさせられる。1/20というスケールだと耕耘機は10cmほど、小さいサイズではあるがエンジンにフレームがついたその姿は濃密な“メカの雰囲気”を感じさせられる。
実際展示されている実物を見たのだが、バイクのようなエンジンと車輪のみと言うシンプルな基本構成に加え、たくさんの操作レバーや、ちょっと凶暴な感じの耕耘刃など、「メカ好き」の人のハートを刺激するものがある。会場では多くの人がしげしげと耕耘機を眺め「かっこいい」、「これはいいな」とつぶやいていた。確かに、メカ好き、模型好きの人の琴線を振るわせる魅力があるのだ。
様々な耕耘機から担当者が選んだモチーフがホンダの「ディーゼル耕耘機 F90」だ。ホンダが1966年に発売したホンダ初のディーゼル耕耘機であり、空冷4サイクル V型2気筒のディーゼルエンジンを搭載している。担当者によれば単純に耕耘機としてみれば多くの課題を持った製品であったという。耕耘機としては有り余るハイパワーであり、操作レバーは運転中に操作しにくい位置にあり、2つあるライトも必要以上と、その後耕耘機はよりコンパクトに、操作しやすくなっていく。機能、操作性共に、改善されていく。
しかし、そういった荒削りなところを差し引いてもこの「F90」は魅力的なマシンだと担当者は力説する。なんと言っても、時代を超越した、古さを感じさせないデザインが素晴らしいのだという。確かに、赤と銀のカラーリングと流線型のデザインは「ウルトラマン」の「ジェットビートル」を思わせるものもあり、パワフルでカッコイイ。2つのライトも力強い。
そしてこの耕耘機が生まれたバックストーリーもグッとくるものがあると担当者は言葉を続けた。この耕耘機の開発を命じたホンダの創始者・本田宗一郎氏は、F90のコンセプトとして「女性向け」を考えていたという。1960年代は集団就職で、農村や地方に働き手が少なくなってしまう時代だった。人手が少なくなる地方で、非力な女性でも大地を耕せる、成長する日本を支える機械を作りたい。その想いでF90は生まれたというのである。「女性と共にある機械」、やはり今回立体化して美少女と並べるメカはこれだと、担当者は確信したとのことだ。
マックスファクトリーとして、「プラモデル技術」も込められていて、F90で特徴的な側面の注意書きや上部のホンダのエンブレムは、銀の成型色で本体と同じパーツで一体化しており、上からかぶせる赤い部分の穴からエンブレムや注意書きが抜けるようになっている。塗装をしなくてもイメージに近いものになるような構成になっているとのことだ。
担当者はこのプラモデル製作にあたり、ホンダに企画を持ち込んだところ、快諾してもらい、様々な協力もしてもらったという。ホンダ社内でも「耕耘機のプラモデル」がユーザーからどんな反応をもらえるか楽しみにしているという。話を聞いて、試作品と、何より耕耘機の実物を見るとそのメカの魅力に引き込まれてしまった。これからのユーザーの反応は注目したいところだ。