ニュース
韓国産大型MMORPG「Tree of Savior」OBTレポート
あの「ラグナロクオンライン」を超えられるか? 大盛況もトラブルも頻発の幕開け
2016年9月12日 00:00
ネクソンのWindows用MMORPG「Tree of Savior(ツリーオブセイヴァー)」(以下、「ToS」)のオープンβテストがいよいよスタートした。「ToS」は「ラグナロクオンライン」にも携わった韓国のゲームデザイナーキム・ハッキュ氏がCEOを務めるIMC GAMESが開発した、「RO」ライクな斜め見下ろし画面のMMORPG。
インスタンスやストーリーをメインにした3DMMORPGが多いこのご時世に、「ToS」は敢えて2D見下ろし方のドット絵や、フィールドでのレベル上げというクラシックなスタイルを、大きな魅力として全面的に押し出している。
本作のキャラクターは、一度3Dでモデリングしたキャラクターを、2Dで打ち直すという手間のかかる工程を経て作られている。そのため動きはなめらかで、細かい。マップのいたるところには、プレーヤーを載せて動く吊り橋やエレベータがあり、中には川下りをするタライ船もあったりと、あちこちに細かい遊びがちりばめられている。
自由な視点移動に慣れたプレーヤーにとっては、視点の角度を変えられないことへの不満もあるだろう。そんなマイナス要因を甘受してまでこだわっただけに、絵画的なビジュアルは一目見ると忘れられない鮮烈さがある。そんな画面に華を添える、愁いを帯びたBGMも印象的だ。
日本でも大ヒットした「RO」の後継的な作品として、発表以来日本でのサービスを待望する声は大きかった。OBTのスタート直後から、連日のようにサーバーが追加されるなど大盛況を博している。
様々な魅力に満ちた「ToS」だが、すでに韓国で正式サービスを開始しているにも関わらず、ストップバグのような致命的なバグが残っていたり、クライアントが非常に不安定でトラブルが頻発していたりと問題も抱えている。
今回OBTから数日間、「ToS」で遊んでみたので、システム面のおさらいなども含め、インプレッションを紹介したい。
7回の転職によって、様々なキャラが育成可能
本作のシステム的な売りはキャラクタービルドの豊富さだ。OBTからは7次職が開放され、4つの1次職から派生する48種類のクラスを自由に組み合わせることで、個性的な唯一無二のキャラクターを作り上げることができるようになった。
「RO」はその発展形とともにキャラビルドのツリーが形成されたため、現在では非常に複雑なツリーになっているが、「ToS」はよりわかりやすくスッキリしたシステムになっている。
プレーヤーはスタート地点で、ソードマン、クレリック、アーチャー、ウィザードのいずれかを選び、それぞれの系統の中でキャラクターを作っていく。筆者は今回、攻撃魔法クラスのウィザードでスタートした。ウィザードは、クラスレベルが15になるとウィザードの2サークル目、パイロマンサー、クリオマンサーのいずれかに転職できるようになる。
転職するとクラスレベル1から育て直しになり、15になると2度目の転職で、今度はリンカーとサイコキノも選ぶことができるようになる。現在のバージョンでは、最大7回までの転職が可能。一度覚えたスキルは転職後も使えるので、それぞれのクラスの特性を見つつ、攻撃型にするか支援型にするかといった作りたいキャラのイメージに合わせてクラスを選んでいく必要がある。
現在の仕様では、一度選んだクラスを変更することはできないので、最初の段階から、最終的なキャラクターのイメージをしっかり持っていないと、どっちつかずになってしまう危険がある。そのために公式サイトには育成シミュレーターが用意されており、クラスの組み合わせや覚えられるスキルを試すことができる。
キーボード、マウス、ゲームパッドでの操作が可能
操作方法は「キーボード」、「マウス」、「ゲームパッド」、「自動」の4種類。キーボードでは移動が矢印キー、攻撃が「Z」キーで、「WASD」移動に慣れているとやや癖を感じる。マウス移動はクリック移動と右クリックでのショートカットキー使用が可能。ゲームパッドは、「ファイナルファンタジーXIV」に似たクロスホットバー方式の操作が可能だ。今回はPS4のDUALSHOCK 4を差してみたが、特に調整しなくても、快適に動作した。
ボス戦では、ボスの足元に表示される予告範囲を見て攻撃を避けつつ攻撃をする、アクション性の高い操作が必要になる。いろいろ試してみた結果、とっさの回避や、スキルの使いやすさなどで、ゲームパッドでの操作が筆者には一番遊びやすかった。ただ、筆者が操作していたパイロマンサーは設置型のスキルが多いクラスで、ゲームパッドではマウスのように設置場所を自由に選んで素早く設置するのが難しかったりと弱点もあった。
キーは操作方法ごとにキーバインドが可能なので、「WASD」にマウスを組み合わせた操作にしたりと、遊び慣れた方法にカスタマイズすることができる。組み合わせやカスタマイズで、自分に合う操作方法を作り上げれば、かなり遊びやすくなるのでひと手間かける価値はあるだろう。
「神樹の日」の謎を追いかけつつレベル上げ
ゲームのスタート地点は2カ所あり、キャラクター作成の時にクラペダかオルシャの2つから拠点にする街を選ぶ。2つの街からは、別のストーリーが進行していく。筆者はオルシャルートで進んだ。主人公は、謎の夢の意味を求めて、司教ウルボナスに会いにいくが、行方不明になっており、序盤はこの司教の行方を探す旅になる。世界は、4年前に世界に「神樹の日」という事件が起こり、この日を境にモンスターが多数出現するようになっている。
随所に「RO」っぽさが感じられる本作だが、レベル上げは最近のMMOの例に漏れず、メインクエストを追いかけつつ、近くにあるサブクエストをこなしていくストーリードリブン型だ。クエストクリアの報酬として、経験値カードがもらえる。このカードはストックできるので、レベルが上がりやすい序盤には温存しておいて、後半一気に消費するという使い方もできる。
クエストは、雑魚モンスターを倒したり、アイテムを集めてきたり、人探しをしたりといったものが主だが、そのエリアのストーリーを追っていくと後半にはインスタンスゾーンでの巨大ボス戦もかなりの回数用意されており、単調にならないよう気配りされている。クエストをクリアすると、その場から報告場所へテレポートできるのも非常に便利だ。
クラス、スキル、特性、強化と多彩な成長要素
レベル上げには、キャラクターレベルとクラスレベルという2種類の成長要素がある。
キャラクターレベルは文字通りキャラクター自体のレベルでOBTでの上限は280。レベルが上がるごとに、力、体力、知能、精神、敏捷という5つのステータスにポイントを振り分けて基礎ステータスを上げていく。
クラスレベルはそのとき転職している職業のレベル。キャラクターレベルに比べて、やや成長が遅いが、上限は15とそれほど高くない。
クラスレベルが上がるごとに1もらえるポイントでスキルを覚えていく。クラスレベルは15が上限なので、1回の転職で振ることができるのは15ポイント。1サークル目の転職で覚えることができるスキルは5つあり、それぞれ5段階まで強化できる。5つのスキルをすべて習得すると、1つも上限まで強化できないことになる。よく使うスキルを5段階まで強化しつつ、有効だが使用頻度が高くないものは覚えるだけにしておいたりと、スキルの覚え方でもキャラ性能に差が出る。
転職したクラスのクラスレベルが15になると、転職クエストが受けられるようになる。転職したいクラスを選んでから、そのクラスマスターのところでクエストを受諾する。それほど難しくないクエストを終了すると、新しいクラスに転職できる。
別のクラスに転職すると、まったく新しいスキルを1から覚えることになるが、同じクラスの2サークル目なら、上限に達していたスキルにさらなるポイントを振ることができるようになる。
このとき、同じクラスの2サークル目を取れば、スキル強化の上限が10段階まで引き上げられる。レベルが低いうちは強く思えたスキルでも、強化しないでいるとレベルアップとともに力不足が目立ってくるので、1つを集中的に強化するか、まんべんなく育てるかで戦い方も変わってくる。3段階目の転職あたりになると、ダンジョンなどで同じクラスのキャラに会っても、人によって使うスキルが違っていて、かなり個性を感じるようになった。
スキルのほかに、クラスごとにたくさんの「特性」が用意されている。特性には、例えばスキルの威力アップや、武器のチェンジ、攻撃の追加効果など多彩な種類があり、ゲーム内通貨で覚えたり、強化していく。中には覚えるために実時間が必要なものもある。強力なものがそろっているが、成長させるのはかなり大変なので、プレイの中で少しずつ充実させていくやり込み要素的なポジションになりそうだ。
武器も「金床」を使って強化することができる。このとき、成功したら強化されるが、失敗すると「ポテンシャル」という数値が1つ下がってしまう。装備のポテンシャルは、強化やマーケットでの取引で1つずつ減っていき、0になるとアイテムが消えてしまうというもの。さらに、武器にジェムという宝石をはめて強化するソケットの追加でもポテンシャルが減少する。ポテンシャルが高い装備ほど、様々な強化ができるので、この数値はかなり重要だ。
フィールドでのソロ狩りは意外と大変
レベル39まではストーリー仕立てになっているクエストを追っていくだけで、順調にレベルが上がっていったのだが、ノヴァハ公会所というエリアに入ったところで、突然敵のレベルが40代後半になり、行き詰ってしまった。
ここに来るまでのクエストはすべて受注済みだったため、レベルを上げる手段がなく、仕方なく、同じダダンの森からは、特にクエストも何もないネバレット鉱山という場所で、本当に久々にファーミングのレベル上げをした。本作は、フィールドにたくさんのモンスターが配置されており、それをまとめて一気に範囲攻撃で倒す、いわゆるまとめ狩りができる。狩りを初めてすぐの頃は、後から後からどんどんわいて、こちらがピンチに陥るほどの数で攻めてくる。
しかし、一定時間狩り続けていると、だんだんと沸く間隔が開いていき、最後には枯れてしまった。1カ所で長く狩りをさせないシステムは、BOTが蔓延しがちな現代のMMOには必須といえる対策だが、別の場所ではクエストキャラが狩りつくされて沸き待ちをしなければならないこともあった。
さらにウィザードでソロ狩りをしていると、すぐにSPがなくなってしまう。店買いのポーションで回復することもできるのだが、序盤に獲得できる金額に対して、かなり高額な設定になっているため、座っての回復待ちをしなければならないこともあった。ポーションはクエストをこなしていけば報酬としてもらえるので、これも狩りBOT対策の一部なのだろう。ちなみに死ぬと、持っているアイテムの一部を落としてしまう。
クラシックなMMOといっても、フィールドで延々狩りをするようなシステムは、現代の状況では難しいということなのだろう。OBTでは、経験値ボーナスアイテムが大盤振る舞いされたこともあり、レベル上げでファーミングをしたのはこの時だけで、あとは終始サクサクと上げることができた。
複数用意されたパーティマッチング方法
パーティを募集するには、何通りかの方法がある。「TP」というポイントで手に入るメガホンを使うと、全エリアに届くシャウトを使えるので、そこにメッセージとともに、パーティ参加のリンクを貼って募集するのが一般的だ。この場合、最初に自分だけが参加しているパーティを作っておく必要がある。
パーティ募集から参加することもできるが、現状では4つしか募集が表示されないため、なかなか自分に会う募集に巡り合うチャンスがない。近くにいる、公開パーティの情報が画面の左に表示されるので、そこから手近なパーティにワンクリックで参加の意思を送ることもできる。
もっとも簡単な方法は、インスタンスダンジョンの入り口などにある、自動マッチングシステムを使うことだ。このシステムが初めて使えるようになるのは、レベル50から入れるようになるインスタンスダンジョン「聖堂地下ダンジョン」だ。レベル上げ専用のこのダンジョンは、5人用で、中には1人では倒せないエリートクラスのモンスターがひしめいている。
下限レベルで入ると、1回で2~3レベルも一気に上がるほどで、経験値取得の効率は抜群なのだが、1日に入れる回数には制限がある。レベル240までのIDは1日2回(トークンを使うことで+1回)、それ以降は1日1回となっている。レベル100を超えると、デイリーミッションが受けられるようになる。こちらもインスタンスダンジョン同様の入場制限がある。ちなみに、IDに入れるようになるまでは、薬代にも困る金欠で苦しんでいたのだが、IDに行き初めて一気に懐具合に余裕ができたことも書き添えておこう。
久々の大作MMORPGに将来性は感じるが、まだまだブラッシュアップが必要
今回のOBTでは、押し寄せたテストプレーヤーによってサーバーが大混雑し、連日何時間にも及ぶログイン待ちが発生する事態となった。期待の大作ともなれば、ログイン待ちは風物詩のようなものではあるのだが、「ToS」の場合、OBT開始から数日はゴールデンタイムのログインには2時間、3時間という長時間の待機時間が発生し、プレイしたくてもログインすらできないという状況になってしまった。
さらに、ゲーム内でもかなりラグが発生した。ひどいときには、フレームレートが一桁に落ちてしまい、アイコンを押してもまったくスキルが発動しなかったりと、ゲームのプレイに支障が出るレベルになることもしばしばあった。クライアントも不安定で、起動時にエラーが多発したり、パーティを組むと発生するストップバグも報告されていた。パーティの自動マッチングシステムも一時は機能しなくなったりと、不安定さとバグの多さはかなり気になるレベルだ。
しかし、頻発しているトラブルの多くは、人数が多すぎることに起因しており、本作への期待度の高さが運営の想定以上だったという嬉しい誤算でもある。筆者も実際にプレイしていて、何日経ってもどの時間帯でもパーティ募集が途切れない活気を感じた。MMORPGを続ける大きな要素の1つとして、その世界に魅力を感じるかどうかがある。「ToS」はその部分においては、かなり高得点をあげられるゲームだろう。
今はまだ、大多数がレベル上げの最中なので、本作がレベル上げ後の方向性として、ギルド戦を中心とした対人ゲームになるのか、装備強化ゲームになるのか、ワールドモンスターなどを討伐するレイドゲームになるのか、未来は不確定だ。今後ギルドが作れる唯一のクラスであるテンプラーが増えて、本作のエンドコンテンツであるギルド対抗戦が盛り上がるようになれば、キャラビルドの研究も同時に進んでいくだろう。
昔ながらのMMOで遊びたいという声はありつつも、そのニーズに応えられるタイトルがなかったところに現われた「ToS」は、2DスタイルMMOの新しいスタンダードになりうる潜在力は十分持ちあわせている。だが、システム的に未成熟な部分も多く、そういった部分をいかにブラッシュアップさせていけるかにかかっているとも言える。今ゲームを楽しんでいる人たちが、これから長く本作を遊び続けることができるよう、開発や運営の頑張りに期待したい。
Copyright (C) 2015 NEXON Co., Ltd. All Rights Reserved.
Copyright (C) 2015 IMCGAMES CO., LTD. All Rights Reserved.