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砂漠の熱戦「バトルフィールド1」オープンβレポート

シリーズ初の第一次世界大戦は両軍肉薄の激戦区!

8月31日βテスト開始

 エレクトロニック・アーツから10月21日発売予定の「バトルフィールド1(以下“BF1”)」のオープンβテストが、PS4/Xbox One/Windowsの3プラットフォームにて8月31日よりスタートしている。本作はマルチプレイFPSとして人気の「バトルフィールド」シリーズの最新作で、シリーズとしては初めて第一次世界大戦の戦場を描く作品だ。

オープンβでは広大な砂漠での戦いが展開

 オープンβには誰でも無料で参加できる。公開されたコンテンツは中東の砂漠での英軍とオスマン帝国の衝突を描く「SINAI DESERT(シナイ砂漠)」マップで、最大64人でプレイする「コンクエスト」と、最大24人でプレイする「ラッシュ」の2つのゲームルールをプレイ可能だ。

 本作がテーマとする第1次世界大戦というと、日本人の多くには馴染みが薄い時代背景ではある。おおまかなイメージでいうと、戦車や航空機が初めて戦線に本格投入され、凄惨な塹壕戦が展開した戦い。歩兵の装備は現代のように発達しておらず、騎兵も現役だ。両軍は塹壕を挟んで肉薄して対峙し、膠着した戦線では無数の銃撃戦と白兵戦が展開した。

 そんな戦場を本作ではどのように描き、対戦ゲームとして仕上げたのだろうか。オープンβでのプレイを通じての印象をレポートしよう。

【Battlefield 1 Official Gamescom Gameplay Trailer】

より多くの接近戦、白兵戦に主軸を置いた「BF」

「SINAI DESERT」のコンクエストルールのマップ。A~Gの7つもの拠点を奪い合う
アサルト兵ならこれくらいの距離が標準的な交戦距離
銃剣突撃で一撃必殺
分隊単位で行動し、敵の側面や背後を突くことが有効なゲームバランスだ

 まず全体の印象としては、第1次世界大戦の戦場を舞台としても、基本的なプレイフィールは従来の「BF」シリーズと大きく変わるところはない。戦車や航空機といった搭乗兵器はたっぷり登場するし、歩兵にも様々なガジェットが用意され、変化に富む戦いを楽しむことができる。

 1番の大きな違いと言えるのは、本作では両軍が近接しての遭遇戦、乱戦、接近戦が非常に多発する作りになっていることだ。これはマップの構造がそうなっているだけではなく、本作の様々な要素がそういった状況を促す作りになっているためだ。

 理由としてまず大きいのは、歩兵の主武器が、全体的に集弾率が悪く、遠距離での精度が出ないこと。本作の歩兵クラスは「アサルト」、「メディック」、「サポート」、「スカウト」の4種だが、スナイパーライフルを装備できるスカウトを除くと、およそ50メートルを超える距離ではほとんど弾が当たらないし、当たっても威力の減衰が起きるため決定打を与えることが難しい。特にマシンガンを装備するアサルトクラスに至っては肉薄しての近距離戦専門という感じで、敵を倒すためにはいかにして必殺距離まで接近するか、を考えることになる。現代戦を描いた「BF4」ではけっこうな距離でも射撃戦が成立していたので、その感覚でプレイするとフラストレーションが溜まってしまうのが難点だが、接近戦が好きなプレーヤーにとっては逆に好ましいバランシングだ。

 理由のもうひとつは、スポット機能が弱体化したことだ。「BF」シリーズでは伝統的に、スポットボタンを押すことで画面中央に捉えた敵の位置を報告することで、敵の頭上にアイコンを表示させて位置を把握しやすくする機能がある。本作にもそれはあるのだが、スポットを成功させるためには銃弾を命中させられるほど精密に対象を狙わなければならず、このため遠距離にいる敵を瞬時にスポットすることが非常に難しい。このため、戦場にはスポットされていない敵兵があふれることになり、分隊同士が不意に遭遇して乱戦に雪崩れ込む、という状況が頻発する。

 こうして、戦線における歩兵の戦いは、ほとんど殴り合いに近い接近戦の連続だ。そこで強い味方となるのが、ダッシュ中に近接攻撃ボタンで発動できる銃剣突撃である。これを発動するとしばらくの間いつも以上のスピードで前進でき、そのまま敵に突っ込めば銃剣を突き刺して1発でキルを取れるというものだ。肉薄した距離での戦いが多い本作ではこれが非常に強く、肉弾戦が好きなプレーヤーには楽しくてたまらないだろう。エイミングが苦手なプレーヤーでも、立ち回り次第では銃剣だけでだけでたくさんのキルを取れる可能性がある。

 両軍が接近しての戦いが頻発することになると、前線に単騎突入しても敵がどこから出てくるかわからず、側面や背後から奇襲を受けて何もできずに倒されることばかり。そこで最大5人で編成する分隊単位のチームプレイが重要になってくる。分隊単位でカバーし合えば死角からの攻撃に対処しやすくなるし、敵のいそうな場所を限定することもできる。蘇生キットを持ったメディックがしっかり働けば分隊まるごと全滅することも減り、前線に残った分隊員からの出撃を繰り返して粘り強く戦うことができる。

 接近戦主体のゲームバランスになったことでもうひとつ印象に残ったのは、唯一遠距離攻撃精度の高いスナイパーの存在感が高まっていることだ。「BF4」などであれば他のクラスでもそれなりの距離でスナイパーに対抗できる状況も多かったが、本作で開けた場所にいると、ほぼ抵抗の機会もなく狙撃される羽目になる。このため本作でもスナイパーは人気のある兵種なのだが、安全な距離から狙撃するプレーヤーが多くなると、今度は前線を維持できなくなる。「コンクエスト」にしても「ラッシュ」にしても、拠点の確保はある程度入り組んだ場所での接近戦で決まるためだ。個人成績ばかりを気にしていると今度はチームが勝てなくなるという、ある意味絶妙なバランスである。

開けた場所ではスナイパーが活躍する。他の兵科は障害物を利用して回りこむしかない
スポットされていない敵がほとんどのため、出会ったら目の前、ということも多い。出会い頭に備えよう

戦車が器が強い!馬が面白い!そして「装甲列車」によるお祭り騒ぎ

前線で大活躍する軽戦車。全方位に素早く砲撃できる
重戦車の蜂の巣のような銃座から、敵歩兵を掃討
対戦車手榴弾で対抗。肉薄しないといけないため、決死の戦いになる
対空砲で航空機を撃墜。ドカドカ落とせる
騎兵の対決

 歩兵戦とともに「BF」の面白さの軸となる要素、それはもちろん戦車や航空機といった多種多様な搭乗兵器の存在だ。嬉しいことに本作では馬を使った騎兵プレイもできる。さてどんなプレイが展開するだろう。

 まず圧倒的な存在感を誇るのが戦車である。本作の戦車は第一次世界大戦当時の、後の時代から見ればオモチャみたいな戦車だ。小さな砲塔を載せた1人乗りの軽戦車、左右両舷に2つの大砲を載せたランドシップ、全方位に多数の機関銃座を持つ重戦車という3系等とも、全速前進でも歩兵のダッシュよりちょっと速い程度の機動力である。馬のほうがずっと速いくらいだ。

 この戦車が脅威なのは、歩兵の側にあまり有効な対戦車兵器がないためだ。唯一有効な対戦車能力を持つアサルト兵にしても、デフォルトで装備する対戦車手榴弾は肉薄して投げ込まないといけないため、開けた場所で戦車に遭遇すると絶望である。ランクアップすると対戦車ロケットを装備できるようになるが、撃つためには伏せるか腰の高さの障害物を用いてバイポット展開する必要がある上、直撃してもダメージは2割程度と、単独で戦車を撃破するには少々威力不足だ。

 このため、前線に戦車が現われた時に、その相手が有効な対抗手段を持たないケースが多くなるのである。こうなると前線は戦車のやりたい放題で、一方的な殺戮が発生することも珍しくない。しかも軽戦車は全方位に素早く狙いをつけられる上、戦車の特徴である搭乗しながらの自己修復機能もあり、延々と前線に居座って暴虐をほしいままにできる。だが対抗手段もある。複数のアサルト兵が対戦車グレネードや対戦車ロケットで畳み掛ければ、どの戦車であれアッサリと撃破可能だ。臨機応変なチームワークが求められるのである。

 一方、空の花形である航空機は戦車に比べるといまひとつ存在感が薄いが、これには2つの理由がある。ひとつは、対地攻撃の要である爆撃機の視界が非常に劣悪なこと。なにしろコックピットの前方に銃座があり、下方向がほぼ見えないのだ。無照準で爆弾を投下する必要があり、ピンポイントで打撃を与えるのが非常に難しい。まあ、攻撃力そのものはかなり高いため、プレーヤー各位が経験を積めば、暴風のように地上部隊を蹴散らすこともできるだろうから、βテスト開始から数日の印象で語るのは時期尚早かもしれない。

 2つ目の理由は、地上のいくつかの拠点にある対空砲の威力が極めて高いことだ。飛行機のスピードが遅いため簡単に当てられる上、数発当たれば飛行機は無力化される。歩兵にとっては飛行機に自由に暴れられると地味にやっかいなため、こういった陣地備え付けの砲座を上手く使うことは本作における重要テクニックのひとつだ。

 そして特に面白いのが馬である。馬に乗って騎兵と化したプレーヤーは、本作においてトップレベルの機動力を手に入れるだけでなく、敵の歩兵に馬ごと体当たりしてロードキルしたり、馬上からサーベルを振るって倒すといった一撃必殺の攻撃力をも手に入れることができる。馬上でのダッシュは非常にスピードがあるため、前線で打ち合っている敵の側面や背後をとることも簡単だ。迂回して回り込み、一気に突撃してサーベルを食らわせ、そのまま離脱する。後方撹乱と遊撃は騎兵の得意技である。それが本作でもきちんと再現されている上、馬上での戦いは迫力とスピード感があって非常に面白く、爽快だ。

騎馬での突撃はうまくやると大活躍でき、スピード感もたっぷり

負けチームに出現する装甲列車
近づく敵は皆殺し

 そして「コンクエスト」ルールでは、両チームのスコア差が50を上回ると、負け側のチームに“最終兵器”が登場する。これはマップによって異なるものが登場するらしいが、オープンβのシナイ砂漠マップで出てくるのは「装甲列車」である。列車だけにマップ中央を貫くレールの上しか走れないが、6つの砲座・銃座があり、凄まじい耐久力を誇る。膨大な火力で沿線の敵戦車・敵歩兵を蹴散らし、レール沿いはお祭り騒ぎだ。沿線の拠点をそのまま占領することも可能なので、歩兵戦力を沿線以外の拠点に振り向けることでき、チームとしてもリードされている状況を一気に詰めることができるようになる。

 とはいえ、装甲列車に試合をひっくり返せるほどの力があるかどうかは怪しい。筆者がプレイした限り、装甲列車が出現したチームが逆転したケースを1度も見たことがない。そもそも50ポイント差をつけられたチーム側の総合力が足りていないということもあるだろうが、スコアの伸びが相手チームを上回ったとしても、およそ20分というラウンドの時間制限において時既に遅し、というケースが多いようである。製品版に向けて戦車は弱体化されるらしいが、装甲列車に関してはもう少し強化してもよさそうだ。

 というわけで本作「バトルフィールド1」は、全体としてしっかり「BF」シリーズの雰囲気を備えつつも、第1次世界大戦という時代背景を活かした、これまでにないバランシングが施された作品に仕上がっているようである。惜しむらくは今回プレイできたシナイ砂漠マップが比較的開けた場所が多いマップのため、スナイパーや戦車に有利になっており、塹壕を挟んで接近戦を行なうといった時代性を活かしたプレイにいまひとつ欠けていた印象があることである。このあたり製品版でどのようなマップが用意されてくるかが、本作の評価を大きく分けるポイントになりそうだ。