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ハイクオリティのVR謎解きから新進気鋭のVRドローンまで完成間近のVRスタートアップ! Tokyo VR Startups Demo Dayレポート

6月29日開催

会場:ベルサール秋葉原

 Tokyo VR Startup(TVS)は6月29日、ベルサール秋葉原において第1期プログラムに参加しているメーカー5社によるVRコンテンツの御披露目会「Demo Day」を実施した。

会場の様子
Tokyo VR Startups代表取締役社長 國光宏尚氏
「エニグマスフィア~透明球の謎」を手がけるよむネコ代表取締役社長新清士氏(右)、取締役杉山智則氏
「Chaine Man」を手がける桜花一門代表取締役社長高橋建滋氏
「InstaVR」を手がけるInstaVR代表取締役社長の芳賀洋行氏
ハシラスが出展した「出張型のVR遊園地」

 TVSは、gumiが100%出資して2015年11月に設立されたVR特化型のインキュベーションプログラム。2016年1月に第1期のプログラム参加チームが決定し、開発拠点となるオフィスの開所式が実施された。今回実施されたDemo Dayは、TVSがプログラム参加チームに対して提供するサポートプログラムの1つで、国内外のメディアや投資家を集め、プログラム参加チームによるプレゼンテーションや実機による試遊の機会が提供された。本稿では、開所式から約半年が経過し、ようやく完成が見えてきた各VRコンテンツのインプレッションをお届けしたい。

 今回、プログラム参加チームからそれぞれ最新バージョンのVRコンテンツが出展され、参加者は自由にプレイして、開発者に直接質問することができた。興味深かったのは、1月に公開されたプロトタイプとは、タイトルどころか、内容まで大きく変わっていたVRコンテンツが多かったところだ。

 個人を含む少数開発が基本のインディタイトルでは、当初の発表から、方向性を大きく変更することはあまりないが、TVSには旗振り役であるgumi代表取締役社長 國光宏尚氏をはじめ、メンターとしてTVSに参画している和田洋一氏や五反田義治氏といった大物アドバイザーが多いため、そのあたりは単なるインディデベロッパーの集まりとはひと味違う印象だ。

 たとえば、よむネコの「フェイクソーシャルネットワークVR(仮)」は「エニグマスフィア~透明球の謎」となり、ゲーム性がソーシャルから、CO-OPスタイルの謎解きゲームに進化し、完成に向けて方向性がキチッと定まっていた。桜花一門の「時間停止 ピタゴラ救出スイッチ!」は、「Chaine Man」となり、物理演算パズルから、物理演算を活かしたVRアクションゲームに進化していた。

 「出張型のVR遊園地」を発表したハシラスは、前回は企画発表のみだったが、今回は具体的な形で、様々な出張型のVRアトラクションを出展し、国内における業務用VRの現状を目の当たりにすることができた。しかも、今回の出展は、Demo Dayのために用意したものではなく、すでに全国展開している採用事例のある筐体ばかり。メジャーものでは、長崎のハウステンボスや東京のサンシャイン60などがあり、すでに成功を収めつつある。

 ただ、ハシラスのVRアトラクションを体験した印象は、あくまで個人的な感想だが、いずれのコンテンツもVR酔いから逃れられなかった。もっともひどくVR酔いしたのは、乗馬レースが楽しめるVRコンテンツで、Oculus DK2を被り、パナソニックのフィットネス機器ジョーバに乗って、取っ手をムチを振る感覚で繰り返し前後運動を繰り返すことで馬が加速し、1位を目指すというものだが、ジョーバの動きが不規則で、かつ激しく、加速する分には楽しめたが、アップダウンが激しい丘を上がり下りした際は、結構ベロベロに酔ってしまった。

 酔いの一因に、採用しているVRデバイスがOculus DK2ということもあるように感じたが、担当者によれば、DK2を使い続けている理由は、Oculus Riftは密閉感が高く、メガネを使用した際に窮屈なので不評なためということで、VRデバイスとしての性能よりも装着感が重視されているところがいかにも業務用らしいと感じた。ハウステンボスでも1回400円で人気コンテンツになっているということで、コンシューマーVRと、アーケードVRは、評価基準の違いを感じた。

【VR遊園地】
まさに“VR遊園地”という表現がピッタリだったハシラスの出展。ヘッドセットを被った状態で土台を動かす、あるいは不安定な状態に置くというところが共通点で、様々な非日常を味わうことができる。構造上VR酔いしやすいのが弱点か。また、VRは13歳以上指定となるため、ドーム型のシアターも用意し、プラネタリウムの原理でVR映像をドーム内に映し出し、擬似的にVRを楽しめる施設も出展するなど、業務用VRとしてはトータルでよく考えられている

【Chaine Man】
PC向けVRに加えてPS VRにも対応している「Chaine Man」。ゲームデザインは、手錠で手を繋がれてしまった男を主人公に、テレキネシスを駆使して武器や道具を使って、パズルやボスと対峙していく。2017年リリース予定

 成功という点では、もっとも先行しているのが、VR向けのオーサリングツール「InstaVR」を手がけるInstaVR。こちらもすでにFree to Playスタイルでサービスを開始しており、すでにスミソニアン博物館をはじめ1,300社に採用されているというから凄い。

 「InstaVR」は、一言でいうと、今後VRの普及に合わせて普遍的な存在になっていくことが予想される“360度写真”に、ワンタッチで情報が埋め込めるというもの。たとえば、不動産メーカーが公開した新築物件の360度写真に対して、クリックひとつで再生される動画や、テキスト情報を任意のポイントに埋め込むことができる。これにより、物件の臨場感と情報の両方をワンストップで提供することが可能となる。

 そして今回出展されたVRコンテンツの中で、もっとも完成度が高く、ゲームとして存分に楽しめたのが、「エニグマスフィア~透明球の謎」だ。ゲームジャーナリストであり、VRエヴァンジェリストとしても著名な新清士氏が設立した新会社よむネコのデビュー作だが、開発には、ヴァンガードで長年にわたってゲーム開発を手がけてきた杉山智則氏が携わっており、ゲームとしてのクオリティの高さ、とりわけ手触り感の良さが好印象だった。

 ゲームデザインは、奇しくも5月にHTC Vive向けにリリースされた「Portal 2」のVRMOD「Portal Stories: VR」(関連記事にそっくりで、「Portal」のような空間パズルをVRで楽しむタイプのVRパズルゲーム。革新的なのは、2人で協力して遊ぶCO-OPが前提になっているところと、HTC ViveとOculus Riftの両方に対応し、Oculus touch前提のゲームデザインになっているところだ。

 ゲームは、サブタイトルにある“透明球の謎”が示すように、ステージ内にある透明な玉をすべて割ること。割り方は、ステージの至る所に落ちているハンマーでかち割ってもいいし、ハンマーを投げつけても良いし、天井のガラスを割ってその破片をぶつけてもいい。透明な玉をすべて割ることで次のステージのポータルが開く仕組み。基本操作は「Portal Stories: VR」と同じように、ポインタで指し示した地面に一気にワープするワープスタイルを採用しており、移動に伴うVR酔いは生じない。

 ちなみにバディとなるもうひとりのユーザーは、VR内では頭と手だけが表示されており、立ち位置が重なっても邪魔にならないようになっている。手と手を合わせると火花のようなエフェクトが表示されて、ハイタッチ的な簡単なコミュニケーションが楽しめる。今回のデモは1人でもクリアできるように、極端な協力プレイ要素は意図的に排除されていたが、1人が扉を開け続けて、もう1人が空いた扉の奥にある透明な玉を割る、といった協力要素が増えていくようだ。

 ゲーム性はとにかくステージの至る所に隠されている透明な玉を見つけ、割る方法を見つけ出して割るだけ。割ることに成功すると、ガシャーンという派手にガラスが割れた音がしてなかなか爽快で、ジャンジャン割りたくなってくる。今回のデモは最終ステージがボーナスステージになっており、すり鉢状のステージの縁から次々に玉が投げ込まれ、中央でジャンジャン割ることができた。ハンマーを振るという適度なインタラクションに、派手な効果音と演出が加わり、生理的な快感があり、これまでのVRタイトルにはない国産ならではの手触りの良さを感じた。

 発売時期は11月ということで、Steamを通じてOculus RiftとHTC Vive向けに展開する予定。価格は未定だが、現行のVRタイトルに多い2,000~3,00円円程度になる見込み。将来的にはソーシャル要素をより強化したり、ステージを自作してシェアできる機能や、PS VR向けにも提供していきたいという。VRユーザーは「エニグマスフィア~透明球の謎」というタイトルは覚えておきたいところだ。

【エニグマスフィア~透明球の謎】
HTC Vive版、Oculus Rift版ともに2人1組でプレイできた。空間検知はHTC Vive版が優れ、手に持った感じはOculus touch擁するOculus Riftが優れている

【「エニグマスフィア~透明球の謎」スクリーンショット】