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世界に羽ばたくVRコンテンツを箱崎から! Tokyo VR Startups開所式レポート
プログラムに参加する5チームと、サポートするメンター11名が発表
(2016/1/13 00:00)
Tokyo VR Startups(TVS)は1月12日、プログラム開始にあわせて拠点となる箱崎インキュベーションセンターにおいて、TVSインキュベーションセンター開所式を開催した。
TVSは、2015年11月にスタートしたばかりのバーチャルリアリティ(VR)に特化したインキュベーションプログラム。審査に合格したプログラム参加チームは、最大500万円の開発資金と、TVSインキュベーションセンターが無料で利用できる開発環境、そして開発に集中するためのバックオフィス業務が提供される。
プログラム参加希望チームへの審査は12月に行なわれ、1月から早くも審査を通過したチームへの支援プログラムがスタートする。TVSの発表からわずか2カ月あまりでのスピードスタートとなる。
今回は、開発現場となるTVSインキュベーションセンターに、TVS代表取締役社長 國光宏尚氏をはじめとしたTVSの関係者と、プログラム参加チームメンバー、そしてサプライズ発表されたメンター9名(2名欠席)が集結し、開所式が盛大に行なわれた。
開所式では、オープニング前から会場がざわついていた。理由は本日会場で発表されたメンターのメンバーがあまりにも豪華だったことだ。ソニー・コンピュータエンタテインメント創業メンバーのひとりである丸山茂雄氏、前スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏が相次いで姿を現わし、“来賓”として最前列に着席し、メディアを驚かせた。
そのほか、グリー取締役執行役員常務の青柳直樹氏や、グリー取締役執行役員 荒木英士氏、フジテレビジョン コンテンツ事業局長 山口真氏(gumi社外取締役)、元タイトーの庄司顕仁氏(gumi社外取締役)といったgumiと親密な関係にあるパートナー、そしてトライエース代表取締役社長 五反田義治氏、ヒストリア代表取締役社長 佐々木瞬氏、4Dブレイン代表取締役社長 秋山貴彦氏といったプロデューサー/エンジニアも参加。國光氏と、TVS取締役の新清士氏の人脈をフル活用した陣容となっている。
この9人に、今回欠席した橋本和幸氏(NVIDIA Japanシニアディレクター・エンタテインメントテクノロジー)とティパタット・チェーンナワーシン氏(The Venture Reality Fundパートナー)の2人を加えた、総勢11名がTVSのメンターとなり、プログラム参加者のプロトタイプ開発に関して経営、ビジネス、マネタイズ、エンジニアリングなど様々な方面からアドバイスを行なっていく。
このメンタープログラムは、これがそのままTVSの支援企業にもなれるところがポイントとなっている。TVSは、現時点では國光氏が代表を務めるgumiの全額出資で設立されており、gumiがすべてのリスクを取っている。ただし、このインキュベーションプログラムは、事業化のプロセスにおいて企業や投資家による出資が前提となっており、また、第一期で終わりではなく、第二期、第三期と継続していくことが予定されており、今後、メンターの所属企業が共同出資者として加わったり、プロジェクトそのものを買い取る可能性もある。プロジェクトの推移次第では、TVSそのものが大きくスケールする可能性を秘めた座組になっているわけだ。
さて、今回、審査を通過したプログラム参加チームは5組。チームメンバー達は、東京大学の学生だったり、バリバリの開発者だったり、はたまたマジシャンだったり、その経歴は実に多種多様だ。彼らの共通点は、VRコンテンツの開発に凄まじい情熱を持っており、ビジネスとしての有望性よりむしろ、イノベーティブかどうか、成功した場合にスケールするかどうかが評価されていることだ。
東京大学工学部に在籍している村下熙(むらしたひろき)氏が設立したIcARusのプロジェクトはまさにその最たるケースといえる。“人類と空のつながり”という壮大過ぎるテーマのVRコンテンツで、ドローンにカメラを据え付け、それをVRヘッドセットでコックピットビューで見ながら、敵ドローンとバーチャルな弾丸を撃ち合って空中戦を繰り広げるというVRとARとドローンの3つをミックスさせた欲張りなプロジェクトとなっている。
村下氏は、自ら作成したというドローンを持参し、実際に飛ばすと危険なため飛ばさず、村下氏自身がドローンを動かしてデモの説明を行なっていた。今回持参したドローンはゆうに1kg以上はあろうかという巨大なもので、これでは国が定める改正航空法に抵触する。そこで村下氏は、実際に事業化する際のドローンは、規制対象外となる超軽量機体(200g以下)の枠組みで実用化を目指すという。ビジネスモデルについては「まだ言えない」ということだったが、村下氏自身はどこまでも真剣で、実現可能性云々以前にプロジェクトの壮大さに驚かされた。
ちなみに國光氏は、IcARusのプロジェクトについて、審査を通過させるかどうか最後の最後まで揉め、村下氏とも事業の遂行性について何度もディスカッションを重ねたという。最終的に村下氏のビジョンと夢に共感し出資が決まったということで、今回の第一期に限って言えば、スタートアップ特有のいわゆるイグジット(投資金の回収)を意識した生臭さはまったく感じられず、情熱や夢が優先された熱量の高いスタートアップになっていると感じた。
審査に通過した5チームは、今後TVSインキュベーションセンターを拠点に6カ月にわたってプロトタイプの開発に尽力していくことになる。3月と6月に2度デモ(TVSによる審査)があり、この2度のデモを通過したプロジェクトは、具体的な事業提携や出資の話へと進んでいくことになる。
國光氏自身は、今回審査に通過させた5チームをすべて次のステージまで引き上げるつもりで、第2期、第3期と出資者を増やし盛り上げていきたいとしている。次のステージまでいってもgumi自体が出資することは考えていないようで、VRがブレイクする3年後を目指して、コミュニティを活性化させ、ノウハウを蓄積することが狙いだとしている。
開所式終了後はデモの時間となったが、どのプロジェクトもプロトタイプ前のものばかりで、完成にはまだ時間が掛かりそうだが、その情熱は確かなものを感じた。日本のVRスタートアップがどうなるのか、今後の進展に注目していきたい。