「AKRACING Nitro Gaming Chair」レビュー

AKRACING Nitro Gaming Chair

包み込まれるフィット感で座ってよし、寝てもよし?
レーシングシートを改装した“ゲーミングチェア”

ジャンル:
ゲーミングチェア
発売元:
テックウィンド
開発元:
AKRacing
プラットフォーム:
Windows PC
価格:
42,800円(税込) [AKRACING Nitro Gaming Chair]
42,800円 [TEKWIND オフィス&ゲーミングチェア AKRACING NITRO-RED(赤色) / TEKWIND オフィス&ゲーミングチェア AKRACING NITRO-GREEN(緑色) / TEKWIND オフィス&ゲーミングチェア AKRACING NITRO-BLUE(青色) / TEKWIND オフィス&ゲーミングチェア AKRACING NITRO-ORANGE(橙色) / TEKWIND オフィス&ゲーミングチェア AKRACING NITRO-WHITE(白色)]
発売日:
8月14日

 様々なPC周辺機器を扱うテックウインドより、ゲーミングチェア「AKRACING Nitro Gaming Chair」が8月14日に発売された。価格は42,800円(税込)。

 ゲーミングチェア、という言葉自体が聞き慣れないものだが、ゲームプレイに最適化した椅子であろうということはわかる。製品写真を見ると、レーシングシートをオフィスチェアにしたという印象だ。その実がどんなものか、ゲームプレイを幸せにしてくれるのかといったところを、実際の商品を試しながらお伝えしたい。

 本体カラーは5色展開されており、今回評価に使用したレッドのほかに、ブルー、グリーン、オレンジ、ホワイトがある。

まずは組み立てから……男性なら1人でも組み立て可能

パーツの数はそれほど多くない。手順を見ながら組み立てれば大丈夫だ

 レビューのために商品をお借りした際、筆者宅に巨大な椅子が届くものだと思っていたのだが、実際には割と小さな箱で届けられた。本製品は組み立て式となっており、座面や背もたれ、脚部などがいくつかのパーツに分かれた状態でやってくる。製品ページにも、箱の寸法は88×68×38cmと書かれており、実際の製品でも組み立てが必要だ。総重量も25kgあるので、購入の際は組み立て作業ができるスペースと搬入路を確認しておきたい。

 組み立て方法は簡易マニュアルに書かれている。今回試用したものは英語のマニュアルが付属し、「実際の製品とモデルが異なる場合もあるが、組み立て手順は一緒」とされていた。実際、マニュアルの写真にある製品とは細部が異なるものだったが、組み立て手順自体はさほど難しくない。必要な工具も同梱されている。

 組み立て時の注意点としては、一部のパーツが既に本体に取り付け済みだったりするので、臨機応変に対応すること(おかげで取り付け位置を間違えないで済むので、個人的にはよかった)。またプラスチックパーツを挟んで締める場所がいくつかあるが、締めすぎるとプラスチックが割れる可能性があるので、あまり力を入れないでパーツが固定された程度で止めておく。

 またマニュアルには、「作業は2人ですること」、「座面の組み立てはテーブルなど少し高い位置に置くこと」といったお薦めが書かれているが、筆者は地べたに並べて1人で作業した。座面と背もたれはそれなりに重さがあり、2つをボルトで繋ぐ作業に若干手間取ったが、大きな問題はなく、実作業時間としては1時間ほどで組み立てが完了した。

座面と背もたれをボルトで繋いで固定する。左右2個ずつのボルトがしっかり固定されているか確認する
座面の底に、脚部を接続するためのパーツを取り付ける。これもボルトで固定する
脚部にキャスターを取り付ける。脚の先に空いている穴にキャスターを押し込むだけ
座面の底に取り付けたパーツに、ガスシリンダーを挿し込む
ガスシリンダーは挿し込むだけで固定はしないでいい。向きだけは間違えないように
ガスシリンダーに脚部を挿し込む。これも固定はしない。あとはサイドのプラスチックパーツをボルトで留めたら完成

高い可動性と堅牢性。外見は高級感も漂う

完成図。座面は一番下、アームレストは一番上の位置

 それでは完成したシートを見てみよう。シートのカラーは黒と赤の2色で、その他のパーツは全て黒で統一されている。脚部はツヤのある金属製。全体として見ると、写真で見るよりも高級感がある。背もたれは肩や頭までフォローする高さがあるので、部屋に置いた時には存在感がある。

 シートはPU(ポリウレタン)ラバーで、しっとりした手触り。座った時には適度なグリップ感がある。見た目はがっしりとして固そうな印象なのだが、座面はクッション性が高く、体に適度にフィットする。背もたれは触るとやや固く感じるが、もたれかかるとたわんで体を包み込む感触がある。

 背もたれの角度は、自動車のシートを動かす要領で、右側のレバーを引けば調整できる。可動範囲はほぼ垂直から水平まで90度ほど。水平にするとほぼ寝られる姿勢まで倒すことができる。後ろにひっくり返りそうなバランスに見えるが、実際にやってみると意外と安定していて問題なさそうだった。

 座面の高さはガスシリンダーで調整が可能。座面までの高さは最低42cm、最高50cmとなっている。アームレストも付いており、こちらは手動で7cmほど上下できる。脚部はキャスターが5個装着されており、大き目のキャスターを採用しているためか、かなり転がりがいい印象だ。

 他に頭と腰のサポート(小さいクッションのようなもの)も付属する。腰はあえて前傾姿勢でプレイしたい時に使うと、ほどよく腰にフィットして快適になる。頭は普段付けていると邪魔に感じることもあるが、背もたれを大きく倒してリラックスした姿勢の時には具合がいい。

 自分でこんな椅子を組み立てるという経験は初めてだったので、上手く組み立てられずにがたつきが出るのでは……と心配していたのだが、実際は何の問題もなかった。むしろがっしりした堅牢さを感じるほどで、「この椅子は自分で作った」と他人に自慢したくなるクオリティだ(笑)。

横から見たところ。背もたれは高さと厚みがある
後ろから見るとシンプルなデザイン
背もたれは左右から包み込むような形になっている
座面は後方から前方に少し広がる形状で、左右が立ち上がっている
脚部はツヤのある金属製で、全体の高級感を高めている
座面右側に、背もたれを動かすレバーと座面を上げるガスのレバーがある
アームレストは7cmほど上下できる。左が一番下、右が一番上の位置
頭と腰のサポートを取り付けたところ。常時このままだと使いづらいので、必要に応じて取り付ける

腰が沈み込む抜群のフィット感。集中もリラックスも思いのまま

筆者のPC環境に置いてみたところ。やはり結構な存在感がある
背もたれを限界まで倒すとほぼ水平になる。心地よく寝られそう?

 続いて、筆者が数日間使用して感じたことをレポートしていく。参考までに、筆者の身長は174cm、体重は60kg。

 まず素直に腰かけてみると、腰の辺りの収まりがとてもいいと感じた。座面の奥の方がやや低くなるよう作られているようで、深く腰掛けるのが一番収まりがいい。これで背もたれに背中を付ける姿勢がとても楽に感じられる。

 今回、シートの高さは、筆者は最大に下げたところで使ってみた。深く腰をかけた状態で足の裏がぴったりつくくらいの高さなので、おそらく丁度いい高さなのだと思われる。座面の長さも背もたれの高さも、筆者にはぴったりなサイズだと感じた。もう少し背が低い人だと、足が浮いてしまったり、座面が長くて深く腰かけられないこともありそう。日本人的には、もう一回り小さなサイズがあってもいいなと思う。

 数日使って感じたのは、肩や腰が楽なこと。筆者は長時間の執筆作業に加え、趣味がゲームなので、1日のほぼ全てをPCの前で過ごしている。仕事にせよ趣味にせよ、没頭していると肩や腰が痛くなるのが常だ。特に筆者は、集中すると顔がモニターに寄ってしまい前傾姿勢になりがち。しかしこの椅子だと自然と深く腰かけ、背筋も伸びるので、いつもより疲労感がない。特に腰には負担が小さいようだ。

 背もたれを後ろに大きく倒してフラットにすると、車のシートを後ろに倒すのと同じような感じで、かなりリラックスできる。背中のクッション性もしっかりあるし、横幅もあるので体がはみ出す感覚もない。膝から上の全身をしっかりフォローしてくれている。ゲームに疲れたらシートを倒して寝るというダメな生活も、このシートなら問題なく実現できそうだ(笑)。

 ゲームプレイに関しては、ゲームパッドを使うなどしてリラックスした姿勢で遊べるものは背もたれを倒し気味に、キーボードとマウスで遊びたいものは背もたれを垂直近くにして腰のサポートを入れるなど、状況に応じて変えられるのがいい。どちらの姿勢にせよ、シートのフィット感は本当に素晴らしい。

 ただし、気になる点もある。ゲームに熱中して長時間座っていると、座面に熱がこもってしまうことがあった。記録的な猛暑の最中というタイミングの悪さもあるのだが、材質的にやむを得ないところだろう。またPUレザー部分に素肌が当たると、汗がじっとりと貼りつくような感覚があり、あまり快適ではない。汚れは簡単に拭き取れるが、あまりラフな格好で使うのには向いていない。

 他の不安要素として、PUレザーの耐久性が挙げられる。座面は摩擦によるダメージが大きくなるので、どの程度無事に持ってくれるのかが気になる。保証期間は1年なので、その先がどうなるか。車のシートと同じと考えれば、何かカバーをかけた方が安心感はあるし、より好みの感触にもできるだろう。

 1脚4万円超という値段からすると、比較相手としては高級オフィスチェアになるだろう。筆者はオフィスチェアでは定番のアーロンチェアを使用しているが、座面のフィット感や背中を広くサポートするカバー性はこちらが上だ。アーロンチェアを含め最近のオフィスチェアは、座面がメッシュ(網状)になっており、通気性とクッション性を両立しているものが多い。通気性の点ではこれには敵わないが、筆者は冬場になるとメッシュでは寒いので、座布団を敷いて使っている。できれば季節ごとにこの椅子と入れ替えたいぐらいだ。

 ゲーミングチェアというカテゴリが新しすぎてその点での評価は、より多くの競合の登場を待たなければならないが、オフィスチェアとしての見方も含めると、非常にフィット感が高く、使用感のよい椅子だと感じた。背もたれの厚みと高さがあるので、オフィスに置いてあると存在感がありすぎるが、自宅で好きで使う分には問題ないだろう。ネットカフェに置いてあれば満足度が高そうだし、e-Sportsの大会などで使うのもいいだろう。

 実際の製品を試す前には、正直なところ「わざわざレーシングシートを椅子にしなくてもいいのに」という気持ちもあった。しかし実際に使ってみると、このフィット感は病みつきになる。高級車のシートに座った時にある、あの腰が沈み込むような収まりのよさが、自室の椅子でも体感できる。断じてアイデア1発物ではない、座った瞬間に「なるほどなあ」と言いたくなる、よく考えられた製品だ。

 なお本製品は、マウスが秋葉原に展開しているゲーミングPCショップ「G-Tune : Garage」に実機展示される予定。お近くの方はぜひ一度お試しいただきたい。

(石田賀津男)