インタビュー

iOS「デーモントライヴ」インタビュー

世界観を保ちつつ“遊びやすくすべき”を切り分け。デーモンのデザインもより見た目で楽しめる方向へ

世界観を保ちつつ“遊びやすくすべき”を切り分け。デーモンのデザインもより見た目で楽しめる方向へ

新たに公開された新デーモンの「クー=フーリン」(画像上)と、「ロキ」(画像下)。「2.0」以降にはコアなデザインもありつつ、よりメジャーで親しみやすいモチーフのデーモンが登場する

――世界観の話なのですが、今回「2.0」になってインターフェイスやデザインが変わって、要素が整理されわかりやすくされています。それによって印象も結構変わってくるのかなと。ダークで重厚なところが少しとっつきやすいライトさが入ったというか。その辺はどのように考えているのでしょう?

河井氏:わりと僕が独断に近いところで「こうすべきだろう」という感じで、ガンガン変えています。独特な世界観というのは僕も魅力だと思いますし、大事にしたいと思います。でも、例えばデーモンの価値が見た目にわかりづらいかなというところは、世界観とはちょっと違った話で。そういう事務的な情報の見せ方も、世界観というカテゴリーに一色単に入れてしまっていたと思うんですよね。そこを切り分けて、世界観は凝った見せ方で。情報はそれとは別に最適な見せ方をしましょうという考えです。

久井氏:河井が参加して提案したことのなかに、「デーモンの選定が渋い」というものがありました。デーモンはクトゥルフとかをモチーフにしたコアなものになっていて、わかりづらいというところがあったのかなと。もっと派手にわかりやすくという方向がいいのでは、というものでした。

 最初にプレーヤーに配布されるデーモンに「ボギー」というデーモンがいて、僕らスタッフは「ボギーは使ってみると案外強いんですよ」と河井に説明したんですが、河井は「そんなの初見のユーザーさんはわからないんじゃないか」という話になって。もっと見栄えが良くて嬉しくなるようなデーモンを最初に配るべきでは、となったんですよね。

河井氏:ボギーファンの人に怒られそうですが(苦笑)。僕が最初にプレイした時はまずそのボギーが出て、次がラプチャースパイダーっていう蜘蛛だったんですけど。この時点で、「僕はこいつらを育てていけばいいんだな」っていう安心感が持てなかったんですよね。他のゲームで初期モンスターとかっていうと、属性を選んだらドラゴンだったり、かっこいい戦士なりをもらえるポジションだと思うんです。ある程度それでやっていこうと思えるような頼れる存在ですよね。

 ボギーもそうですが、“使ってみると強い”っていうのが「デーモントライヴ」には多くて。でも、それも伝わらないと意味がないところで。新規の人はそういうのがわからなくて、楽しそうとかの見た目のイメージで入りますよね。そういう“やってみるとわかる良さ”と、“見た目でわかる良さ”を使い分けていくべきだなという話をしました。今後に追加するデーモンに関しても、その2つの意図は入れていきたいと思っていますね。

――これまでは使ってみるとわかるような表面に見えない魅力、ある意味で渋いスタンスだけだったものを、もっとわかりやすいものを増やしていくと。

河井氏:そうですね。あと個人的な考えですが、例えば蜘蛛っぽいものをこれ以上増やしても……というのがあるので。もう少しストレートに「かっこいい」って思えるデーモンを増やしたり。わかりやすいものを入れつつ、「デーモントライヴ」の世界観を良い意味で広げて行けるようなものも入れていきたいなと。

 今までのデーモン制作はデザイン先行で作っていて、デザインができてからその能力を決めるという流れだったんですが、本来は逆のやり方が望ましくて。ゲームとしてこの時期にこういうデーモンを出したい、こういうポジションのデーモンを登場させたい。そこから能力とデザインを並行して考えていくのが良いのではと思います。先にコンセプトをきちんと決めることで、デザインにもそれをより反映できると思っています。

岩濱氏:切り分けの話ですよね、やはり。全部を世界観に合わせてやる必要はなくて、ユーザーさんにわかりやすくしたほうがいいところはそっちにする。一方で、物語は逆に世界観をもっと楽しめるようになったと思います。グループSNEさんの監修は今後も続けていきますし、アートディレクターの植田もいるので。ゲームとしての世界観を発揮する場所を絞ることでより伝わるようにする、という感じですね。普段の触り心地、インターフェイスに雰囲気を出すあまり、わかりづらくなってしまってはいけないよねという切り分けですね。

スマートフォン向けならではのポイントを押さえ、より“デーモンに要素をわかりやすく楽しむゲーム”へと改善を続けていく

「2.0」を新しい始まりとして、今後も改善や進化を続けていくと語ってくれたお2人。その考え方の軸にはコンシューマーにないスマホアプリ独特なものや、オンラインゲーム作りに近いものがある

――お話の中で、「2.0」のキーになっているのは“スマートフォン向けゲーム”に適した考え方で整理するという考えが重要なんだなと思えます。コンシューマー向けとスマホ向けでのゲーム開発における考え方の違いというのはどんなものでしょう?

久井氏:「デーモントライヴ」の初期からのスタッフはコンシューマー向けタイトルを多く手がけてきた人間がほとんどで、がっつり作り込んだんですよね。

河井氏:そこは良い部分がもちろんあるんですけど、ソーシャルゲームのスピード感ですとか、幅広く受け口を作っておくという感覚ですとか。コンシューマーは発売までに詰めて詰めて、最適化をしてパッケージで完了になるわけですが、ソーシャルは作って終わりではなくてそこから手を入れていく想定で作り続けていきます。バッファと言うか、いわゆる“遊び”を残しておくような考え方も、ある意味で必要になっていきます。

――残しておくと言っても、手を抜けるわけではないですもんね。アイデアを入れるか、取っておくのかの選択も正解はなくて難しい。

久井氏:開発当初の話になりますが、コンシューマー組で「デーモントライヴ」を作ったスタッフとしてはそのあたりにジレンマがあって。バトルを重ねて経験値を得てというプレイの積み重ねを大事にしたいんですけど、一方でこういうスタイルのゲームは無料で提供する分、ゲーム内のどこかに有料の部分を設けないといけない。それがガチャであったり、合成であったりで、それらをどうバランスを取っていくのか。そのあたりに苦労というか、悩んだところがありましたね。

――そこのさじ加減次第で売り上げが変わってきますし、課金がシビアすぎれば「課金ゲーかよ」って言われてしまうわけで。無料で遊べるなかで、どういったところに課金要素を設けるのか。それがバランスにどう影響するのか。それはこういう基本無料ゲーム専用の目線やノウハウが必要なのかなと。

久井氏:そうですね。そのあたりが自分にとっては初めての事でしたし。例えば「スキル」って重要なものなんですが、その強さのバランスを作る上で、CP(有料ポイント)の利用ありなしでどう変わるか、最適なバランスはどのあたりになるのか。すごく悩みましたね。

――課金してもほとんど意味がなかったりしても、それはそれで問題ですし。課金しないと勝てないっていうのもおかしいし。

河井氏:普通に遊んでもらうぶんには、シングルプレイやクラン協力戦では強さの差がデメリットにはなりませんし、課金をそれほど意識せずに遊べると思います。でも、対戦では強さの差は重要で、課金によって時間短縮したほうが早く強くなれるのは間違いないです。

――適したところに見合った課金要素が入れてあると。「2.0」以降も課金バランスについては大きく変えず、今のお話のコンセプトで作っていくということですね?

河井氏:そうですね。逆に「2.0」以降の方がそういうところも整理されて遊びやすくなっているかなと思います。アクション要素やプレーヤースキルの要素のあるゲームですので、そこはプレイ時間を費やしてくれた人が強い。格闘ゲームなんかに近いニュアンスであるのが望ましいと思います。お金をいっぱいかけた方が単純に強いとはならないのは、他のゲームとはひと味違いますね。

――「2.0」以降の将来的なところも含めてですが、「デーモントライヴ」を今後どのようなゲームにしていきたいと考えていますか?

河井氏:デーモン以外の要素が多いので。もっとデーモンに絞り込んで、育成して、デッキを構築するというのが、プレーヤーさんの個性になるようにしたいですね。今はそこに横並びに入ってくる要素が多くて。整理していきたいところですね。プレイスタイルを「デーモン5枚だけ」でもっと示せるゲームにしていきたいです。

久井氏:バトル部分の根本的なシステムはもう完成していると思います。ただ、NPCのAIはもっと改良する余地があるなと思っていて、敵も味方もですね。もっと色んなパターンとしてトリッキーな動きのAIですとか。入れていきたいですね。

 シミュレーションの部分では、河井と同じでデーモンにもっと特化していこうというのがあります。エージェントの武器の強化などはもっと簡単にするなど、デーモン以外のところはあまり差が出ないようにして、フラットになるようにしていく。それよりもデーモンで差がつくように、ですね。

河井氏:そのあたりは「2.0」以降ずっと取り組んでいくところというか。これから、ですね。あとはマルチプレイをもっともっと遊びやすく。バトルのルールなどのバリエーションも増やしたいですし、マッチング精度などの“集まりやすさ”も改善していきたいですね。

久井氏:内部的な話ではありますが、ユーザーさんや運営サイドから出てくる意見に、データの作り方の問題で応えづらいところがあったので。汎用性の高いデータ作りにして、いろんな要求に応えられるようにしていきたいですね。

――それは、最初に作っていたところで、最初に必要なものを形にできるよう作ったからというのがあるのでしょうか?

久井氏:そうですね。それがあります。

河井氏:コンシューマーの決め打ちに近いやり方というか。独自の作り方でチューンナップして最適化していたので。

久井氏:運営側から面白い意見もあがってくるんですけど、作り方の問題から実現できなくて残念だったりしたこともありましたので。「このタイミングで変えていこう」というところですね。

――マッチングの精度を高めたい、とありましたが、すごく難しいですよね。「あれが完璧にできたら発明レベルなんじゃないか」って思うぐらいで。他社さん含め苦労しているところかと思います。

河井氏:マッチングそのものの話をすると、まずは遊んでいる人がいっぱいいる事が大事で。それで解決するところは多いかなと思いますね。「デーモントライヴ」のこれまでのマッチング方式の話では、プレーヤーの対戦クラスの分け方や捉え方が、ちょっと最適ではなかったところがあって。対戦経験の少ない人でもマッチングシステム側からは強いプレーヤーと捉えていたり。これからは対戦をやっている人ほど強いというように、シングルプレイをやりこんでいる人は強いにしてもある程度という捉え方にするよう、仕組みを変えています。実力以上のところにマッチングされるというケースが少なくなるかなと思います。

――数値的なプレーヤー資産の部分と、プレイングの部分をわけたということですね。

河井氏:そうですね。これはもう今後も精度が上がるように取り組んでいきます。

オメガ・サベイラスのキャラクターモデルは開発スタッフ? 硬派な世界観に隠れている裏話

実は開発スタッフがモデルのキャラもちらほら。画像の施設建設の時に登場する「カツヤ」は、今回インタビューに参加頂いたリードプランナーの久井氏がモデルだ。顔立ちの特徴がしっかりと捉えられている

――そういえば、ゲーム内に登場する「カツヤ」というキャラが、実は開発スタッフさんがモデルになっているいうことですが……?

久井氏:これ、僕がすごく出たがりスタッフみたいに見られそうで嫌なんですけど(笑)。カツヤというキャラのモデルが僕なんですよ。ただ、他にもオメガ・サベイラスで働いているスタッフには、結構な割合で、アートディレクターの植田が知り合いをモデルにしたキャラクターが紛れ込んでいたりします。ある日、モチーフにする人のネタが無くなってきたのか「誰かいない?」みたいに聞かれたので、軽い気持ちで「じゃあ僕を出して下さいよ」と冗談で言ったら、2日後ぐらいにはできあがっていて(苦笑)。しかもすごい似ていて。

河井氏:ゲーム中だとちょっとイラッとさせるキャラクターにされてるね(笑)。

久井氏:今までのバージョンだとカツヤはアジトの部屋を増やしたりする建設担当のキャラだったので頻繁に出てきたんですけど。「2.0」では大幅に登場の機会がカットされています(笑)。

――カットしたのは誰なんですか?(笑)

久井氏:カットを決めたのは河井です。僕ではないですよ。

河井氏:別に久井をゲームから消したいわけではなくて(笑)。これまでのバージョンを遊んでみて、バトルやデーモン育成以外にも武器を作ったり施設を建てたりと要素の多いゲームですから。それをチュートリアルでは触れずに、後から触ってもらおうっていうものにしています。その結果、カツヤはあんまり出てこないキャラになったというだけで。

久井氏:どうでもいい情報かもしれないですけど、オーナメント担当で出てくるヨウコというキャラクターは、うちのデザイナースタッフがモデルですね。

河井氏:あ、そうなんだ(笑)。

――それも久井さんの時と同じような流れで?

久井氏:そうですね、植田が「誰かモチーフにできる人いないかな」となった時に、眼を付けられてという感じです。

――昔はそういうゲーム内のキャラなりが実は開発スタッフだったりっていう裏話はよくあったと思うんですが、最近はそういうの減りましたよね?

河井氏:難しいところですよね。人によるというか。僕は開発の内輪ウケ感はあまり好きではないんですけどね(笑)。「ユーザーさんのマイナスにならなければ、まぁいいかな」というところで。

「2.0」をスタートにこれからもどんどん変わっていく「デーモントライヴ」

――それでは最後に、ユーザーさんに向けて一言頂けますでしょうか?

久井氏:「2.0」という大刷新ですので。新しいユーザーさんはもちろんどんどん触ってもらいたいんですけど、以前にちょっと触ったんだけど投げ出しちゃったという人や、一旦お休み中という人にも、もう1度やってみてもらいたいですね。

河井氏:「2.0」でも結構変わっているんですけど、個人的には変えていきたいところがまだまだたくさんあります。今回の「2.0」を触ってもらって、「これからもどんどん良くなっていく」という期待を持って頂ければと思います。ここがゴールとは全く思っていなくて、「やっとスタートラインに立てたかな」と思っているくらいですので。ぜひプレイしてみてもらいたいなと思います。

――ありがとうございました。

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(山村智美)