インタビュー
「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(後編)
8月27日正式サービス開始の発表について
(2013/6/13 00:00)
8月27日正式サービス開始の発表について
――今回発売日を8月27日と発表されました。発売時期的には予想通りでしたが、発表のタイミングはちょっと予想外でした。私はE3後にβフェーズ3がスタートして、PS3版もひっくるめてサーバーが安定してきてから、満を持して発表するのかなと思っていました。発表を知った際、「リスク取ったなあ」と思ったのですが、このタイミングで発表した意図はなんでしょう?
吉田氏: もちろんそのリスクも理解した上でなのですが、例えば受注、それからマスPR、それから印刷物もそうですし、E3のSCEAさんのプレスカンファレンスの後ですと、PS4がメインに来て、いまさらPS3かよという、ネガティブな声がでてしまうこともありますし、大々的なことをやろうと思うと、正直、発売日を決め、告知をしないと何もできないのです。
あとはやっぱり世界中のディストリビューターさんが、「いつ出るの?」、「本当に出るの?」、「いつ発表するんだよ?」という心配があって、発売日が決まらないと受注もしてくれないし、すべてが発売日の告知にかかっているんですね。じゃあ、E3の後にざわざわしている中で、そこで発表したところでじゃあどこまで注目が集まるの?というところが大きかったです。
ただ僕は、やっぱりまずは触って欲しい。僕自身、昼夜問わず触ってきて、もう大丈夫だという確信がありますし、後は本当に細かいフィードバックをいただいたところを地道に調整していけばいけるだろうと。
――ちょっと意地悪な質問をさせてください。まだPS3版は1度もβテストをしてないわけですが、βテストって本当になにがあるかわかりませんよね。これで大きなトラブルが発生したり、過去の事例のように吉田さんが「ここは絶対に気に入らない」ということになったらどうするのですか?
吉田氏: 頭を下げて発売を延期しますよ。だってそれほかのゲームでも一緒ですよ。このゲームに限らずです。
――その通りですが、オンラインゲームではそのリスクがある程度あるうちは、なかなかリリース時期を発表できないのではないかと思ったのです。
吉田氏: でもそれを言っていたら、どのゲームタイトルも発表できないですよ。だって別に「新生FFXIV」じゃなくても今までマスターを上げてきたゲームの中で、発売日を告知してからS級のバグが出て「どうする?」っていうシチュエーションはいくらでもあったので。バグがとりきれて、疲労困憊の中、予定通りのスケジュールで発売したものもあれば、こんなのありえないと延期したこともある。それはゲーム業界にいたら当たり前のことだと思います。
――なるほど。
吉田氏: すべてのバグが取れてから発売日発表するゲーム会社はないと思いますし、それは意地悪というか、さすがに質問がおかしいですよ(笑)。さすがに2,000時間連続プレイして、1回ハングしましたというなら僕は流しますよ。だけど2時間プレイした中で4回ハングしましたってなったら、それはS級だろ絶対に直せよと。それが修正できないんだったら発売延期するしかないというのは、どのゲームでも当たり前で、「新生FFXIV」に限ったことではないので。
――その通りですね。吉田さんはそう回答すると確信してました(笑)。私自身そうですが、やはりその回答を聞いて安心するプレーヤーさんは多いと思いますよ。なぜなら「旧FFXIV」は、それで大失敗しましたからね。
吉田氏: うーん、本当に信用していただく、というのは難しいことですね。
――吉田さんは百も承知だと思いますが、ゲーム業界は、吉田さんのような考えがある一方で、クオリティをちょっと妥協してでも、発売を優先させるという判断もあるわけです。とりわけ、吉田さんはスクウェア・エニックスのコーポレートエグゼクティブでもあるので、会社的にこれ以上納期は遅らせられないという判断を下してもおかしくない。ただ吉田さんは、これまで見てきていて、そういう人じゃないだろうなと。
吉田氏: そう思っていただけているのであれば、それは開発者として幸せなことですね。
――しかし、ということは、PS3版のバグフィクスは、もうすでにかなり終わりつつあるわけですか?
吉田氏: そうですね。たぶん起きるとしたら、表示限界に達したときに、僕らの社内テスターと開発人数を総動員したテストですら、カバーできかったようなシチュエーションが発生したときでしょうね。だからこそのβテストなんです。ただ、それ以外は本当に細かいところまで来たので、大丈夫じゃないかなと。
――じゃあ例えば街に数百人一気に集まってもクラッシュしないわけですね。
吉田氏: ええ、そのレベルのバグはもう取っています。その状態で、どうしたらというケースバイケースが僕らじゃとりきれないものをテストさせていただきたいんですよ。
――コレクターズエディションはさっそく売り切れ続出でしたね。
吉田氏: あれはほんとに嬉しかったですね。
――追加生産の予定はあるのですか?
吉田氏: いや、豪華で足の長い商品ばかりで、作るのが大変なんですよ。再生産しようと思ったら3カ月くらいはかかってしまうので、追加はあまり考えていないですね。あとは市場に余らせたくないという意図もあります。それはやはり「旧FFXIV」があったからなのですけれど、とにかくその尻尾を捕まえて叩きたいという方もいらっしゃいますし、それくらい恨み節な方がいっぱいいらっしゃるので。まあそれだけのことをしてしまったのだからなのですけれど、「やっぱり余ってるじゃん」とか、「ワゴンになってるじゃん」というのをとにかくやめたいから、コレクターズエディションは即予約完売でいいよねという想いがあります。本当に下げられない値段まで下げて、とにかく触ってもらうことを重視しようと。だから価格も1年半くらい前から決めてたんですよ。
――βフェーズ3は何人ぐらいの規模を想定していますか?
吉田氏: 同時接続者数のキャパシティ5,000のワールドが「旧FFXIV」のレガシーワールドが開いたところで35です。途中で人数を見てもう少しワールド追加できる状態にはしています。
――おーー、βとは思えない規模ですね。
吉田氏: テスター登録自体は70万人以上になるので、これぐらいじゃないと(笑)。
――フェーズ3の実施期間なのですが、8月まできっちり2カ月間やるのですか?
吉田氏: そこまで長くありません。
――それでは6月14日からいつくらいまで?
吉田氏: だいたい1カ月くらいを想定しています。
――予定通りに行けば7月中旬で閉じることになりますが、そこから再開発に入るような形ですか?
吉田氏: いや、もう現状で上がってきたフィードバックをそのまま見ながら。ここからはもうどちらかというと運営に近いですね。僕ら運営チームは必ず朝に前の日のQA報告を確認したり、プレーヤーからのフィードバックを見たり、運営朝会というものでチェックしてるんですが、修正するか、するとしたらいつ? ホットフィックスにするのか? などを即時判断しながら進んでいるので、まあたぶん同じような状態に突入します。まあフェーズ1もフェーズ2も、ずっとその朝会をやってきているので、僕がこのフィードバックは対応するけれど、これはフェーズ4送りだとか、これは正式サービス、これはパッチでいいよというのがあって今の状態があるのです。最後の詰めに入ります。
――それではオープンテストとなって、誰でもプレイできるようになるフェーズ4はいつからやるのですか?
吉田氏: まだ決めていないです。なぜなら、まだフェーズ3をやっていないからです。
――フェーズ3次第ということですか。
吉田氏: はい、それこそバグが出たりする可能性があるので。
――フェーズ3が順調に7月中旬に終了したら、フェーズ4はいつぐらいになりますか?
吉田氏: フェーズ4は「完成したのでやりたい人は全員触ってください」っていうものなので、フェーズ3の結果次第ですね。
――コレクターズエディション特典のアーリーアクセスは大体5日間という話ですが、オープンβもだいたい1週間くらい?
吉田氏: 短めにはなると思いますが、期間はまだお答えできないです。
――仮に発売直前ということなら、オープンβ(フェーズ4)とアーリーアクセスをなぜ分けたのですか?
吉田氏: オープンβはあくまでも世界中の人に試してもらって、アーリーアクセスは予約特典です。アーリーアクセスを全員にしないのは、ご存知のとおりサーバーラッシュの波を分けたいからです(笑)。
――オープンβではキャラクターのワイプは行ないますか?
吉田氏: オープンβはオープンなので、よほどクリティカルなバグがなければワイプはしない予定です。データ系のバグがない限りはワイプせずにそのまま正式サービスに移行します。
――でもオープンβでキャラワイプがないとしたら、アーリーアクセスのメリットが減りませんか?
吉田氏: そうですかね?
――オープンβでキャラクターを作って、そのキャラクターでそのまま正式サービスで遊べるなら、わざわざコレクターズエディションを購入してまでアーリーアクセスに参加する意味が薄れてしまうかなと。
吉田氏: 3~5日のアドバンテージは、MMORPGの場合、一刻も早くプレイしたい人にとっては大きいと思いますよ。
――なるほど。実質的にOBTからスタートダッシュする流れになると思いますが、それはそれでかまわない?
吉田氏: はい。構いません。
――あとはフェーズ3以降で予期せぬトラブルが起こらず、8月に無事正式サービスを迎えられたらいいですね。
吉田氏: そうですね。これだけのボリュームで、これだけ複雑なシステムをできるだけ簡易に、それでいて描画は限界までやっているので楽しみでもあります。
――今回は、PS3版にフォーカスしたインタビューをさせていただきましたが、「当然、俺はPC版で遊ぶぜ!」という人も多いと思います。推奨PCだったり、推奨のゲームパッドだったり、この辺りの発表はいつ頃を予定していますか?
吉田氏: もうまもなくです。まもなく6月に入れば情報が出てくると思います。
――今年はHaswellとGeForceの700番台が同じタイミングで出てくるので、その組み合わせによる推奨PCがどんどん出てきそうですね?
吉田氏: ですからまもなくです(笑)。
――βテストフェーズ3に向けてユーザーさんにメッセージをお願いします。
吉田氏: ここまでの2年半は、本当に濃すぎて長かったし、皆さん本当にお待たせしました。PC版、PS3版それぞれいいところがあると思います。メリットデメリットいろいろあると思うのですが、MMORPGがこのスケール、このクオリティで、特に日本の場合だと国産で遊べるチャンスはもうそう多くはないのかなと思うので、ぜひβで触っていただいて、表示周りをもうちょっとNPCを優先して表示して欲しいなとか、手触り感をぜひフィードバックしていただければと思います。「面白かったよ」なのか、「ここ飽きたわ」なのか、そんなフィードバックでかまわないので、どんどんいただけると最後の調整に役立てることができると思います。
――ありがとうございました。βフェーズ3楽しみにしています。