KONAMI、PS3/Xbox 360「NeverDead」
開発チームの野尻真太氏と藤松信也氏にスペシャルインタビュー!

2月2日 発売

価格:各6,980円

CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 

 KONAMIが放つ完全新作のサードパーソン・シューテング/アクション「NeverDead」。頭や手足がバラバラになる仕掛けを、単なる演出ではなくシステムとして中核に据えた意欲作だ。

 今回、「NeverDead」監督・脚本・ゲームデザイナー・プロデューサーの野尻真太氏、アシスタントプロデューサーの藤松信也氏から、それぞれお話をうかがう機会を得た。サービス精神旺盛な方々ということもあり、企画の立ち上げから渡英中のエピソード、さらには一部ボス話まで、さまざまな逸話が披露された。実はインタビューに先立ち、ファースト・インプレッションに関するトークもあったのだが、それは本インタビュー記事の末尾に別枠でまとめさせていただいた。

 とにもかくにも「NeverDead」が気になって仕方がないという方々は、ぜひ本インタビューに目を通していただきたい。なお、インタビュー後のセンテンスは、ある意味“ネタバレ”的な要素が含まれるため「やり方から何から、すべてを自力でクリアしたい!」という人は、スキップしていただければ幸いだ。



■ 新規IPを作りたいという情念から生まれた“不死身”の主人公

監督・脚本・ゲームデザイナー・プロデューサーの野尻真太氏
アシスタントプロデューサーの藤松信也氏

GAME Watch編集部: まず最初に「NeverDead」を作ろうと考えたキッカケを教えてください。

野尻真太氏(以下:野尻氏): 元々が企画ありきではない、というと変なんですけど、KONAMIは、海外の制作スタジオと一緒に仕事をやっていなかったわけではないのですが、そんなに慣れていない。定期的にバンバンだしてきたわけでもないですし。アメリカやヨーロッパのオフィスが現地の外注とやるっていうのは結構あったんですけど、日本人が(プロジェクトを)コントロールするのは、頻度、素地、知識もそんなになかったんです。

編: 日本起点で海外とやるプロジェクトは、これまでほとんどなかったのですか?

野尻氏: 基本的に、ほとんどないですね。「Castlevania: Lords of Shadow」のほかは、何があるかというと「METAL GEAR SOLID THE TWIN SNAKES」と……他に何があったかな? アメリカのKONAMIが作っているのは、あるんですけど。別に我々も日本だけでやっているわけではなく、海外でやるというとき、それは対峙的な考え方だけではなく、そうではないバリエーション。一緒につきあってゲームを作るという趣旨のプロジェクトを、やるという大前提から始めました。

 その前に、実は私、完全オリジナルの新規IPがやりたかったんです。何とか突破口を見つけるために「海外のディベロッパーと一緒にやろう!」と社内で言っていた時期があったんです。そのときは完全に無視されていたのですが、それを社内の偉い人がききつけて「野尻くん、君は英語が喋れるらしいな?」と。この人、何か勘違いしているな? みたいな(一同笑)。もちろん高校英語くらいはイケるんですけど、全然しゃべれなかったんですが、即答で「しゃべれます!」と答えました。

編: ……なんでそんなこといっちゃったんですか。

野尻氏: 「ならばお前に作らせてやろう!」という雰囲気だったんです。そうしたら、新規IP……海外のディベロッパーと一緒にやるやつを始めてみなさいといわれたのが、たしか2009年の7月。速攻で企画を立ち上げて、さっさと通して……というのは(偉い人の)気が変わったら終わっちゃいますから、企画なんてものは。その年に海外のゲームイベントに出展して、カナダ、アメリカ、スウェーデンに行ったんです。

 英「Rebellion developments」と一緒にやることになったのは、最終的にはタイミング的なものが1番大きいですね。条件をお話して、企画はもうこちらにあったので説明して、サード・パーソン・シューティングアクション……あのときは確か、偽企画を作ったんです。「デモンズ・ゲート」っていう、絵はほぼ同じという謎の企画。不死身というところだけ伏せて。一緒にやるときは技術的用件しか問題になりませんから。フィジックス(または物理)を使います、と。それをDestruction(破壊表現)で背景に埋め込みます。あとRagdoll(人体関節の物理表現)を使用する。他所のゲームですとRagdollってだいたい死亡っていうのがシーケンシャルなんですけど、うちはRagdollからリニア補間でアニメーションに戻るっていうのが必須だった。

 それを作れそうな会社を、という形でやりましたね。で、契約する段階になって「実は主人公は不死身で、死なないんだ」みたいな話をした。開発自体は2010年の1月から私が渡英して、終了は2011年12月。

編: 主人公の頭や手足がちぎれるなど、過激な表現は「こういう内容は勘弁してくれ」となりがちです。企画を通すとき、どのような勝算をもって臨まれたのでしょうか? 大変だったんじゃないですか?

野尻氏: そういうのは、結構苛烈でした。もちろん、最初に私にオーダーした偉い人は押してくれるんですけど、倫理的な問題もないわけではなく。僕の英語力も、すぐバレた。当然、あちこち回って交渉してきたんですけど……今考えると、結構危ない感じですねぇ。2011年1月の時点では、不思議な英語を喋る日本人がきて、しょっちゅうよくわからないことをいっていた。社内的にも「大丈夫なのか」という話が……英語を駆使してる奴ならともかく、大いに疑問な感じだった。

編: 説明に絵的なものを使ったり?

野尻氏: それはもちろん。始まっちゃえば、当然試作から含めて色々なマイルストーンがあります。まずE3に出す前に審査があって、そこでだいたい趣旨を話して。あのときも、たしか何も素材が無いなか、無理やり作りました。最初の6カ月で作ったんですけど、バーティカル・スライスまでいかなかった。クオリティというよりはコア・ゲームメカニック、本当にもう、基礎の基礎。なんとなく、煙に巻いて通したみたいな……みんなちょっと首をかしげているところはありました。まぁでも、趣旨自体は理解していたので。不死身である、酷い目にあってもそのまま戦闘が続く、むしろ不死身を使う。企画はブレずにやっていった。

編: そういうときって「ここ、もうちょっと変えたほうが企画が通りやすいんじゃないか?」などと日和りがちですが、ブレずに頑張ったことが勝因でしょうか。

野尻氏: どうなんですかねぇ……私自身が企画もやっていたので、どんな質問でも答えられる状態にあったので、変な言い方かもしれませんけど“安定感”はありますよね。たとえば、人の企画だと答えられなくなって「どうなの?」みたいなこともあるかもしれませんが、これに関しては仕様レベルから書いていますので、答えられないことがない。

編: 説得力、といいますか。

野尻氏: 企画としては当たり前なんですけど、ビジョン、スケール感、マイルストーン、ステージ、キャラクター、モデル数……さすがにアニメーションの数までは答えられませんけど、プレイ時間とか、そういう具体的な話。ここらへんは、ずっと仕事をやってきているので不安はなかったです。


完全オリジナルの新規IPを作るべく、野尻氏が生み出したのは不死身の主人公ブライス。燃やされようが、爆発して手足が四散しようが、それこそ頭ひとつになっても大丈夫。それが演出ではなくシステムの中核に据えられているのが凄い


■ 海外ディベロッパーとの仕事 ~激しくぶつかりあう文化と価値観の相違~

編: 渡英して作業をされるわけですが、作業量的にはひとりで相当な範疇を負担されたのでしょうか?

野尻氏: まぁ、藤松にマネージメントを結構ふっちゃったんですけど、結構やってますねぇ。お話を含めたキャラクター、敵の種類、攻撃、AIのフローチャート、アビリティのリスト……(藤松氏を見て)結構全部やってるよね? テキストも一部やってないけど、システムメッセージも書いてたもんね。

藤松氏: そうですね。システムとゲームデザイン、シナリオは全部野尻がやりました。

野尻氏: いや、別にアピールしたいわけじゃなくて、向こうで仕事以外にやることがほとんどなかったんです。仕事をする時間だけはタップリあったので、土日も働いていた感じですね。

藤松氏: クリエイティヴなところでいえば、アート系、デザイン系、サウンド系は、KONAMIのスタッフがメインでハンドリングしていました。サウンドも楽曲をこっち(日本)で作って……共同で作っているんですけど、ハンドリングはKONAMI。キャラクターデザイン、コンセプトアートもほとんど日本側。もちろんコンペや協力したりはするんですけど。野尻の下にアート・ディレクターとサウンド・プロデューサーがいて、そこは日本のKONAMIスタッフ。向こうのディベロッパーと協力してやるっていう。

野尻氏: 私は毎日向こうでやっているので、大喧嘩なんですけど。

編: ……ポジティブな喧嘩ですよね?

野尻氏: 時々はネガティブな喧嘩もしましたよ! 「お前、何いってんの?」、「その言い方は失礼だ!」みたいな。喧嘩っていうのは不思議なもので、口論のスキルだけは物凄く上がりましてね。そのときだけ、英語力が超パワーアップするんですよ!

編: 喧嘩で言いたいことがいえるのが、語学力のひとつの基準とよく言われます。

野尻氏: もう、いえますよ! 「俺は悪口をいっているんじゃない! 事実をいっているんだ! もし間違っていることをいっているなら、いつでも受けてたってやる!」とか。あらゆる言い方をしましたねぇ。もちろん、全員といつも喧嘩するわけじゃないですけど。厭味も言えるようになりましたし。でもメンタリティが違うので、時々効かない厭味がある(一同笑)。喧嘩はしても、私のコントロール下でやる。ただ、時々そうならないこともあるんですけど……できる限り見つけ出して、直させる。なんでそんなことやってんの? みたいな。言ってないなら、向こうが何らかの工夫をしてやらなきゃいけない。これは道理としておかしい話ではないんですが、問題は言及済みだったとき。「なんでそれを変えた?」、「いや、僕はこれがいいと思った」みたいな。

 たとえばA案とB案があって、そのA案を俺が指示した。A案が正しいかわからないけど、正しければ問題ない。間違っていても俺がいったんだから俺のせい。そちらに問題は降りかからない。だが俺がA案といってB案だったとき、B案があっていたら問題はない。だがB案が間違っていたら大問題じゃないですか。ここでリスクを考えろ! と。OK、ダメだったそれぞれの場合。俺のいうとおりにやっていたら、どっちであってもそちらはまったく困らない。ところが、そちらは俺に言われてコレを直させられている。そちらは完全に損をしていないか? みたいな。

編: 物凄く根っこの部分の話だ……。

野尻氏: 実はこれ、うちだけではなく他所でもキーになる話らしくて。オーナーシップという言葉があるんですけど、向こうとしては「自分がやっているプロジェクトは、それなりに裁量が欲しい」と。私としては、その余地をあまり与えず作っているところがあった。以前TVで見て「うまいな!」と思ったのは、嫁さんが旦那をコントロールするとき、まず頭ごなしはNG。でも何もやらせないのは、よくない。ベストは、最悪どっちでもいいA案とB案を残しておいて「どっちがいい?」みたいな。旦那がAといったら「じゃぁ、そうしよう!」っていうと、旦那は自分で決めたと思うらしいんです。

編: どこぞのマネージメント本みたいな話ですね。

野尻氏: でも、それで振り返っても(そのときは)ブレのあるA案もB案もない、みたいな。絶対にA案だった。

編: 今の話にも関係してきますが、野尻さんは今回が海外の制作会社と初めてお仕事をされたわけですよね。海外の制作会社と仕事をして、メリット、デメリットなど、感じられたことがあれば教えてください。

野尻氏: 参考になったのは、彼らは開発者であると同時にユーザーでもある。お客さんを知る、という。凄く気をつけたのは、お客として嫌だっていってるときは、いうことを聞くようにしました。開発者として嫌だっていってるときは「うるさい!」みたいな感じなんですけど(一同笑)。具体的には、恋愛ではないんですけど、ブライスとニキでそういう要素を入れようとしたら、物凄い拒絶反応があった。

 日本だと、ソフトなものは「別にいいんじゃない?」みたいな。向こうは未成年の女の子が性的なものを触発するなんてのは、もう考えられない。「これ、ESRB(欧州のレーティング機構)で問題になるよ!」みたいな話になった。凄い拒絶感で、僕もKONAMIヨーロッパやアメリカに色々ときいてみたら「いやぁ、マズイね、それは」って。そこは凄く勉強になりました。ポルノも思想的に違ってて、隠すものは基本的に何もないけど、犯罪的なものはすべてNG。職業の選択として成人がやっていることは、何も問題ないっていう考え方。たぶん日本のほうが、モザイクも含めて表面的な問題。見えた、見えない! とか。自分を恥じて、浅薄な人間に思えたくらいですね。

編: そこは本当に、恥とかではなく文化的な違いではないでしょうか。

野尻氏: 色々勉強になりました、そこは! たとえば彼女を紹介されたとき、やっぱり褒めたほうがいいじゃないですか。「美人じゃん!」とかいったら、違うんです。「いや、彼女はとても才能にあふれていて……」みたいな、人間性も含めてなんです。

編: 上っ面だけ褒めるな?

野尻氏: それも得点の一部なんですけど、上っ面だけでなく、彼女は凄くしっかりしてて、人として尊敬できるみたいなところを含めて、トータルで総合得点で「いい女!」っていう。日本では、褒めるときに「才能ある彼女じゃん」とか、いわないですもんね! あ、でも「いい奥さんですね」はあるか。

編: 1個人格としての褒め方から入れ、と。

問題のシーン。製品版ではブライスが起き抜けに窓の外の看板をチラ見した程度になっている

野尻氏: そうなんですよね。これ実は、最初のプロットと関わっていたんです。なぜニキが巫女になったのか、みたいなところが今とは違っていた。元々はブライスが奥さんを殺されて、もう誰も愛さない状態に入ってしまった。でも、悪魔側も奥さんの代わりが必要。悪魔側は知っているんですけど、実はブライスが好きになった女性が巫女になる、みたいな謎のシステムなんですよ。ブライスが好きにならないと、次の巫女が出てこない。ニキも因縁があって奥さんの面影が残っている。ブライスは気づいてないんだけど、最初に看板を見たとき、その時点で巫女になるという設定にしたんです。ただ、その話が問題で……。

編: ニキの看板を見て、そういう感情が芽生えたことが問題?

野尻氏: なんの性的表現もないし、そもそも恋愛表現がないじゃないですか。でも、大NGでした。そこはもう完全に削除しちゃいました。

編: 日本だと情緒的に許されますよね。「亡き妻の面影が……」程度なら。そうなってしまったのは、デメリットといっていいんでしょうか。

野尻氏: いや、そんなことはないです。もし僕らが日本で作ったら、そのまま売ってしまっていた。

藤松氏: 知れたことは良かったのかな、と思います。コモンセンスとして海外で受け入れられないとなるのであれば、シナリオもある程度、踏まえたものにしておいたほうがいい。

野尻氏: 向こうでゲームに慣れ親しんでいる人間なんで、お客としていっている場合のほうが、むしろ僕はいうことを聞きます。

編: 生の声、ですよね。本当にリアルな声。

野尻氏: 個人的見解なのかどうかもよくきいて、そのうえで判断します。



■ デイヴ・ムステインがゲームのために書き下ろした珠玉のテーマソング「NeverDead」

テーマソング「NeverDead」は公式サイト内メニュー「TRAILERS」から閲覧可能

編: ヘヴィ・メタルバンド「MEGADETH」が主題歌を提供していますが、どういった経緯で実現したのでしょうか?

野尻氏: うちのビーマニチームの「Des-ROW」っていうのが「やりましょうよ~」って。まず世界観的にあうなっていうのと、「MEGADETHがNeverDeadやったら面白くない?」みたいな。意味が逆じゃないですか。向こうは「めっちゃ死ぬ」で、こっちは「死なない」みたいな感じ。それを(リーダーの)デイヴ・ムステインに話をしたら興味を持ってくれたらしくて。世界観、キャラクター、お話……イメージを送ったんだっけ?

藤松氏: そうですね。その時点でわかるゲームの情報を送って。もう、本当にこのゲームのためだけに曲を作ってくれました。

野尻氏: 僕らは特に「曲名をNeverDeadにしてください」とはいってないんです。

藤松氏: ちょうどMEGADETHがアルバムを作るタイミングということもあったんですけど、そのなかに入れる1曲として事前に打ち合わせをさせていただいて、ゲームの情報を出して、そのうえで曲を作っていただいた。

野尻氏: 歌詞も、完全に一致しているわけではないけど、ゲームに基づいたものにしてくれました。今だから言いますけど……こういうときに頼むって、変な曲が出てきても、飲み込むしかないときがあるじゃないですか。もちろんMEGADETHを知っていてそれをいうな、という話もあるんですけど。アルバムを聞いて、好きな曲と嫌いな曲って、やっぱりある。

編: 直近で出たアルバムは、賛否両論ありましたからねぇ。

野尻氏: 「Endgame」ですよね。どっちがでるだろう? みたいな。一応メロディアスと頼んではいたんですけど、そのまま聞く人じゃないだろうと(笑)。結果、僕らとしては本当に良かった! もう使いまくり。

編: PVを作るときもノリノリだったわけですね?

藤松氏: (曲と映像を)あわせたとき、こんなにあうものか! と思いましたね。



■ 不死身の主人公を成立させるゲームシステム

主人公の足元をつきまとい、落とした手足、さらには頭まで吸い込んでいくモンスター「グランベイビー」

編: 主人公が不死身というのは、ゲームデザインで最初のハードルになったかと推察いたします。製品では「アルカディアが死ぬ」、「グランベイビーに頭を溶かされる」ことでゲームオーバーになりますが、ほかに何か検討されたシステムなどはありますか?

野尻氏: いや……基本的には、できる限り死なない、と。実はグランベイビーでさえ、ゲームオーバーになるべきではないんじゃないか? という議論さえありました。一切合切、絶対に何があっても進むという形もあったんですけど、失敗の可能性が存在しないとゲームとして成立しない。

編: ダラダラしちゃいますものね。「どうせ死なないんでしょ?」では緊張感がない。

野尻氏: やはり失敗の可能性を含めて作るとなるけど、ゲームオーバーも夢オチという屁理屈にして、基本的には死なないっていう方向でやりました。

編: 逆に、どちらかに絞るという考えは? たとえば死ぬのはアルカディアだけでいい、とか。

野尻氏: そこはバランス的に……あまり死ぬようにするとウザイ。難易度ハードコアだとさすがに結構ゲームオーバーになる可能性はありますが、ノーマルだとそんなに死なない。そこは結構話題になる“ウザイ”という件。色々な例が過去にありましたが、うちは復活させられるところがあったので、なんとかなる。一定時間の猶予がある。

編: 確かに、かなり余裕がありますよね。

野尻氏: グランベイビーのほうが、最初にちょっと……。リスクとして設定したけど、どの程度、どういう難易度調整がいいのか。「NeverDead」は、敵の攻撃力とダメージが難易度に関連しない。他所のゲームだと体力ゲージをもっていかれたとかでわかるけど、うちは(手足が)簡単に取れる。ライフはゼロというか、本当に少ない。

編: ザコに1発で首をもっていかれるとか、ザラですよね。

野尻氏: そういうふうにできていて、取られるのが前提。逆にいうと、そこら辺のダメージ計算、難易度調整っていうのは、あまりない。ファースト・インプレッションで指摘された「グランベイビーがウザイ」っていうのは、あんまり言われなくて……むしろ「あんまり食われないよね? 大丈夫かコレ?」っていう感じ。

編: しょっちゅうバラバラにされますから、私は吸い込まれるたびにイラッとしてました。

野尻氏: そうですか……確かに的確に近寄ってくる気はしますし、食われるときは食われますからね。

編: ザコにバラされて、ステージギミックで跳ね飛ばされて、落ちた瞬間を敵の攻撃でドリブルされて直後に吸われるとか。単に私が下手だからっていうのもあるんですけど、何度かやられると結構くるものありました。

野尻氏: ハードコアでやっていれば結構起きますけどねぇ……いやでも、後半ステージは起こらないこともないか。

藤松氏: たまーに、やっぱりハマっちゃうときはあるんですけどね。

野尻氏: 悪いループっていうのは、ないわけじゃないですね。特に瓦礫の間、物理オブジェクトの間に頭が入っちゃうとき。

編: あと、自分からヘッドモードになったとき、身体がのけぞるような形になるじゃないですか。そのとき、たまたま地形が……。

野尻氏: 高さが足りないんですよね。それは……あります! 普通の高さだとジャンプで届くんですけど「あれ?」みたいな。それは申し訳ありません。

編: でもそれは、オブジェクトの飛散も含めて、物理演算をきちんとやっている証でもあるんですよね。

藤松氏: ほとんどのオブジェクトが破壊可能というのもあって、すべての状態を予測できなくて、なってしまうときもあるんです。

野尻氏: 優先的に動かそうとしても、フィジックスが動いている以上、物理法則が働いてしまう。どうするかというと、質量を下げるか、係数を上げるか、速度を上げるかっていうと、もうそこだけの問題じゃなくなる。それでも調整はかけたんですけどね。物理オブジェクトの下敷きとか、それのせいでバリアになっちゃいけないとか。一応、リジェネレーション(再生。画面右下のゲージがMAXのときにアナログスティックを押し込むと足りない手足がまとめて再生される)という選択肢を残しておきました。

 回復するとき、手足を2本くらい取って(ゲージを)加速させてからリジェネレーションをかけたり、リジェネレーションが準備できてからエクスプロシブで起爆に入るとか。あとちょっとで復活するときは、拾わずに(アビリティで手を)起爆して「チャキーン!」ってすぐ生やす! みたいな。そこのマネージメントをどうするか。リジェネレーション中は無敵時間がありますよ。

編: 再生中の無敵時間は、ボス戦で使えるようになると楽しいですよね。

主人公のライバル「アレックス」。声優の若本規夫氏によるボイスが見事にハマっている

野尻氏: アレックスですよね? 1番気に入っているボスがアレックス。ライバルとして戦うところがある。

編: あのナイフ、ヒットしたポイントをちゃんと計算して処理されてますよね。首にあたると、ちゃんと首だけが取れる。

野尻氏: それは今回のポイントで、どこに当たるとどこが取れるみたいな計算はちゃんとやってます。

編: ザコの攻撃も、基本的に首だけ狙ってるわけじゃないんですよね?

野尻氏: 座標的なものが結構関係しています。左から攻撃を受けると左手が取れやすいとか。ただ、ぶっとんだときは、どの部位が取れるとか確率計算が入ります。敵の攻撃は、当たったところが優先して取れます。

編: シックスセンスのスローで「あぁ、俺避けるの間に合わないな」っていうとき、あるじゃないですか。そのとき「首に当たらないで欲しいな。当たっても落ちるのは首じゃなくて、手であってくれ」っていう感じでやってました。

危険を察知したらコンバットローリング。落ちている手足を回収してくっつける手段でもある

野尻氏: その場合、B(○)ボタン押しちゃいますけどね。

編: だいたいそういうときって、コンバットローリングの起き上がりに重なっちゃうとき。「あー、首じゃないといいな」って思うと、だいたい首が落ちてる。

野尻氏: あー、なるほどね! オススメはB(○)ボタン押しっぱなし。次のコンバットローリングが間髪なく発生します。戦闘のコツは、自分の座標。あまり立ち止まらないほうがいいんですよね。もちろん爆発物で巻き込む準備ができてるときは大丈夫なんですけど、立ち止まっているというのは、そんなにいい状態じゃない。

編: そこでジレンマというか。銃を撃っているときは、じっとしていると照準が寄っていくじゃないですか。だから、恐らくプレイされるみなさんは最初ジッとしがちだと思います。

野尻氏: それはあえてやっているんです。移動するか、狙いに入るか。目に見えない“危険ゲージ”というのがあるんですけど、狙いに入るとそれが上がり続ける。たまっているほどやられる可能性が高くなり、どこかで離脱しなきゃいけないんだけど、できれば照準が定まった状態を保ちたいというジレンマ。シックスセンスがそれを助けるのであれば「スローがかかりましたよ。どうしますか。敵の攻撃がもうすぐ到達します」ということを教えてくれる。そのとき反射的にB(○)ボタンを押せばコンバットロールが発動して、敵の攻撃が通過していく。簡単な思考ループでいくと、そんな感じです。

藤松氏: 銃の照準は、アビリティでモノサイト(両手撃ちで本来複数あるものを、最初からひとつにして銃撃効率を上げるアビリティ)にするという選択肢も残されています。スタッフも人によって好みのアビリティが違うんです。モノサイトが好きなのは結構少数派で、違うのに割り振る人が多いですね。

野尻氏: アビリティは、ボス戦などシチュエーションや好みで、色々なものを試してみてください。



■ 違う感じではなく、それでいて意外性を出していく ~ゲームデザインの妙~

総数は少なめだが、そのぶんザコも個別に考えて作り込まれている。マップ構成や出現パターンにも同様のことがいえる

編: キャラクター、悪魔、ステージをデザインするうえで、特に留意した点などがあれば教えてください。

野尻氏: 最初に“不死身”というキーワードがあるので、それをどうやって使うか。それを使ったフィーチャー、車や電車が走る、暗闇、高いところから落ちる、溶岩、あとは火まみれになる理由、ボス戦などのおおまかな構成にとりかかって、その次にプロットをやって、最後はスクリプトのディティールまで入る、みたいな感じです。ゲームを構築したあと、ヒント関連の会話を入れるとか。気をつけたというか……完全に同じじゃないですけど「メタルギア」シリーズのやりかたと似ています。

編: ロジカルにやっていく?

野尻氏: そうですね。ある種、メソッドがあるかもしれないですね。こんな構成でっていうか、細かいところから入って最後はシナリオに落ちるみたいな感じですね。もちろん違うゲームなので同じ設計にはなりませんが、バランス的なものとか。とりあえず、そういう大要綱があればプロジェクトをすぐ始められますので、あとはそれでやっていく。必要に応じてディティールを打ち合わせしますけど。僕、今回はレベルデザインをしていないので、敵やボス戦の仕様とかは、結構書いてますね。

藤松氏: 敵の仕様、ザコ敵の細かいところとかは野尻が考えてます。ひとつひとつのAIや仕様もあるんですけど「これとこれの組み合わせで、こういう戦闘が表現できる」とか考える。そこはロジカルに組み立てたうえで、ひとつひとつの敵を作っていく。

野尻氏: RPGとかと違って凄い種類(の敵)を作れないのが確定している。最初は色違いもヤバイ! っていう話になって。当然、戦闘はそれぞれ違うタイプじゃなくちゃいけない。飛行、ロングレンジ、クローズドレンジ……逆にいうと、デザインはそれにあう感じのを、あとから付ける。なかなか難しかったのは、意外性というのを必要とするので……弾を撃つからって人型の敵とか作ってんじゃねーよ! 言われたとおりにやってんじゃないよ! みたいな。それはチームに大変だったみたいですね。

編: ベタ厳禁?

野尻氏: そうなんですよ。それは、僕が教わってきたとおりやってるところがありまして。スタッフとして働いているとき「いわれたとおりを、そのままやってどうするんだ!」というところがあったんですね。違う感じではないんだけど、意外性を出していくよう務めて作った感じなんですけど、イギリス人にはまったく理解できなかったみたいですね。

藤松氏: ティピカルというか「力強い奴は、こうだろう」、「飛行するといえば、こうだろう」っていう。ディティールは細かくてクオリティも高いんですけど「みんなが想像するこういうもの」をあげてくることが多くて「そこじゃない」っていう指示がいく。これに関しては日本のスタッフも同時に頭を悩ませました。それが納得できるんだけど、他にはないとか。

野尻氏: コジプロ(小島プロダクション)でそんなこといってると「つまんねー男だな、おめーは!」みたいな感じになっちゃうんですよね。だからといって相反するものを出せばいいわけでもなくて。なかなか難しいけど「なるほどね、その手があったか!」という感じを出していくのが大事。よく言われることですけど、あちらはアイデア出しに慣れていない。それが良いことか悪いことか、わかりませんけど。

編: 海外はわかりやすさを取っている、ということかもしれません。

野尻氏: そうかもしれないですね。意外性については、ないわけじゃないんですけど……時々クレイジーな作品が生まれますから。「テトリス」とか、どうやって考えたんだ!? みたいな。「シムシティ」、「ポピュラス」など(発想が)違うところにいる人間はいるな! と。あとFPSも、最初期はスプライトで描いているから、ある意味ちょっと頭おかしいですよね! 押し並べてどう、っていうことはないと思うんですけど、うちのプロダクションのトップもある種ぶっちぎれてるというか、時々「何をいっているんだ?」みたいな(一同笑)。そういうところに長けている。

編: 何かあるんだろう、と?

ヘッドモード状態では、頭に手足をくっつけられる。イギリス人の開発チームには大不評だったという

野尻氏: 本人が言っている以上、何かバリューがあるだろうっていうのがあって。やってみると、他所にはない唯一無二のものが存在している。そういうものを、今回あまり感じなかったですね。頭に手足がついてゴロゴロ転がるのを、イギリス人は凄く嫌がって……。

編: たまたま手足がくっつくこともあるじゃないですか。シュールですけど、生理的な嫌悪感なんでしょうか。

野尻氏: 凄いヤダ! って言われて。エキセントリックなことを、わりと嫌がる傾向がある。ただ、あれはふざけるためにやっていたわけじゃなくて、単に機能的にボディからくっつかないとダメだとウザイからなんです。頭が首の部分でしかくっつかないというのも、別に障害があったわけではなくて、何回か話をしたんですけど「まぁいいか、みんなできるし」みたいな感じで終わっちゃった。QAからも、こなかったんですよ。

編: 発売後、そう感じるのは私だけじゃないと信じたいんですが……お尻のところでB(○)ボタンを押して首と胴体がくっついてもいいじゃない! って。まぁ、最初は単に「頭がくっつくのは首の部分じゃないと、リアルじゃないだろう」っていう理由かなと思っていました。

野尻氏: 逆にいうと、そんなポリシーは特になくてですね、わざとやったわけでもない。「みんなできるよね」みたいな話にならなかったっけ?

藤松氏: 開発中、テスターも含めてそんな話は出なかったんですけど、完成後に何人かに言われたくらいですね。



■ キャラクターよもやま話 ~女性のモデリングでまたも大揉め~

若かりし頃と500年後のブライス。約5世紀という歳月は、人格はおろか骨格まで変えて……

編: 登場人物のモデルになった人物はいますか? この人を見てイメージした、とか。

野尻氏: 絵的にはありますね。主人公のブライスは、ブルース・ウィリスです。若い頃は、オーランド・ブルーム。これね、イギリス人と大揉めしたんです。「骨格が違う!」と(一同爆笑)。お前、つまんねーこといってんじゃねーよ! みたいな大喧嘩です。ここ、ふざけるところだったんですよ。ゲーム中でも「俺、昔は超ハンサムだったんだよ」といっても誰も信じない、みたいなネタのためにある。昔は超美形で、性格も正反対じゃないですか。それが500年間でこんなふうになっちゃった、みたいな。それを「骨格が違うのはおかしい!」といって……。

藤松氏: 「同一人物ではない!」と、またもや大喧嘩(笑)。

野尻氏: 気づいてない、って思われるのは勘弁ですけど。「骨格が違うことくらい、最初から知ってるよ!」みたいな。

編: アルカディアは?

野尻氏: 名前は覚えてないんですけど、僕が「ヴィクトリアズ・シークレット」のCMを一生懸命見てて、気に入ったモデルさんがいて……めっちゃ可愛かったんですよ、これが! そこで彼女の写真を送って「この人で頼む!」ってお願いしたんです。これも日本人がこだわったところで……。これは僕がいまだに理解してないんですけど、外国人が作る女の子のモデリングって、最近でこそ可愛くなってきたんですけど、ねぇ?

編: いわんとするところは、よくわかります。要は「なぜマッシヴな方にいく」という。

野尻氏: いきますよねぇ! あれは僕、いまだに解明できないですよ! たとえば僕ら、ハリウッドの女優さんは全然OKじゃないですか。可愛いなぁって。確かによく考えたら“強そう”なのかもしれないですけど。結構揉めましたねぇ。よくいわれるのは「チアガールみたいなのをゲームに出してどうする?」みたいな話。

 結局、最後までよくわからなくて。KONAMIヨーロッパも巻き込んで話をしてるんですけど。「ミニスカートで戦場にいるのはどうだ?」に対して、うちはうちで「いや、一緒にいて嬉しいキャラにしなくてどうする」みたいな話なんです。イギリス人の開発メンバーと飲みにいって「お前さ、同僚として選ぶならどっちだ?」、「こっち(可愛いほう)だけど、戦闘をするなら生き残らなきゃいけないから、勝てるほうを選ぶ。彼女は彼女で家に置く」とか。「えっ、意味がわかんない! 家に置く彼女とか作らないんですけど!」みたいな話をして。

編: それは本当に意味がわからない(笑)。

逞しさ、可愛らしさ……女性のモデリングでまたもや大喧嘩

野尻氏: これは結構大事な話で(笑)。結局それは通したんです。ミニスカートも理由がないわけじゃない。ゲーム序盤は、オフィシャルには悪魔はいないとされる状態。アルカディアは元々覆面捜査官じゃないですけど、表向きは衛生局の職員で鉄砲とか持っちゃいけない。「それで彼女はミニスカートなんだ!」と。そのときはやたらパワーを割いて僕らの好みにした。

藤松氏: アルカディアとかベースのモデリングは日本で日本人がやっているんです。ニキに関してもそう。もちろんディベロッパーのほうで実装してるんですけど、ベースのモデリングは日本で日本人がやっている。目標として、我々が見ても可愛いし、海外のお客さんが見ても綺麗、可愛いと思うモデリング。

野尻氏: でもやっぱり、あれは正解だよねぇ?

編: その確認や同意を求めるような口ぶりはいったい……。

野尻氏: いや、僕らも不安を持ったままやったわけですよ。凄い反対を受けて。「可愛い女がパートナーとか嫌だ」とか。日本とは、ちょうど真逆。僕たちは「可愛くない女がパートナーは嫌だ」みたいな話をして……。

編: スタジオ内はどうだったんですか?

野尻氏: スタジオはもちろんイギリス人ですので、大反対です。

編: 四面楚歌ですね。

野尻氏: 四面どころか、五面、六面。よく会議室に呼ばれて「真太、今君以外の全員が、これを嫌だと思っている」、「そうかわかった、じゃぁ俺のいうとおりやってくれ!」と(一同笑)。

編: 向こうにも言い分があるんですよね。“みんな”がそう思っている、っていう。

野尻氏: 会議室の件は女の子じゃなくて、頭に手が生える件。「これをどうしても(仕様から)とりたい。ウェスタンマーケット向きではない」と。

編: 根拠も述べてくると。

野尻氏: 僕も言い返したんです。「ウェスタンマーケットで、頭に腕がついてるゲームが存在して、それが拒絶された事実を知らないから、持ってきて! そうしたら考える。早く、今! ナウ!!」って、凄く怒ってました(笑)。

編: へ、屁理屈だ……。

野尻氏: いやいやいや! でも前例がないことをやっているのに、ねぇ。もちろん「嫌いだ」ってことに関しては、問題ないんですよ。うちのチームでも「よくない」っていうことは、言わせるようにはしている。ただ、その後の決定については「言うとおりやれよ!」みたいな。

編: そこは大人なんだから、っていう話ですよね。

結局は“慣れ”ということか。結果オーライなのだ

藤松氏: ただ、作ったあとで遊んだら、わりと……。

野尻氏: 話をきいたんですよ。「お前、まだこれ嫌いか?」ってきいたら「ん? 慣れた」って(一同笑)。「お前さぁ、会議室に呼んで色々いってなかったか?」っていったら「そうだっけ?」って。奴らも口が減らないんですよ。「今は未来のことを考えるべきだ!」とか(笑)。

編: 今また「海外スタジオとやれ」といわれたら、どうしますか?

野尻氏: 今回はイギリス人だけですから、ねぇ。最初は外国人でひとくくりでしたが、アメリカ人とイギリス人というだけでも、えらい違いだと思います。むしろ、日本の良さを再発見した感じですね。向こうは電車が遅れるのも当たり前ですし。

藤松氏: 今回、メインのディベロッパーはイギリスの会社なんですけど、白組さんとか日本の会社とも色々一緒に作っていたりもするんです。やはり“阿吽の呼吸”というのが日本の会社だとあるんですけど……。どちらが優れているというのではなく、明らかに違う。海外とやるときは、それを言葉や文章にして正確に伝えないと難しいところがあるんだな、というのは今回やって勉強になりました。

野尻氏: こういうふうにいってますけど、当初、彼らは戦いが得意ではないので……。

編: 向こうは、強くハッキリ物をいってきますからね。

野尻氏: そういうイメージで、逆に何でもいっていい、というわけでもないんです。それなりに謙虚さも必要だったりする。ただ、うちのチームの悪いところは「直接いわない」みたいなのがあって。それは「わかった、わかった。俺にいって」と。僕ら的には戦いは当たり前なので「そんなことより、お前(直接)いってこいよ!」と。「結局のところ製品に反映しなかったらしょうがないんだから、ごちゃごちゃ言って最後に入らなくて、言い訳するのか? だったらさっさといって、今から大喧嘩してこいよ!」みたいな話をして。最終的には、好戦的なチームになっちゃいました。

藤松氏: それで喧嘩の絶えないやりとりになって。最初は、それをしながら開発を進めていくというか、理解を深めていく。

編: そういう喧嘩をしないと、わからないことってありますよね。

野尻氏: それは結構大事だと思います。お互いに違いを認めていかないでいくと、結局のところ最後でよくない。



■ 「NeverDead」 ~真摯に作り込まれたストイックな作品~

ネタ要素も多いが、土台は極めてストイックに仕上げられた作品といえる

編: 今回、ストーリーはシーケンシャルに展開されていきますが、分岐やマルチエンディングは検討されませんでしたか?

野尻氏: しなかったですねぇ。特にしちゃいけないとかではなく、単に“不死身”のことに集中しなくちゃいけなかった。それはそれで面白いと思うんですけど、少なくとも初めの1個目で何もかもは難しい。なんでもかんでもできるわけじゃないってことで、そこは自分のやり方がわかる範囲でやった、というのはあります。

編: 奇抜な設定から、本作を「ネタゲー」、「バカゲー」と捉えているユーザーさんも少なくないと思いますが、実際プレイさせていただくと、ザコの強烈な攻撃など「これぞ洋ゲー!」といったストイックさが随所に感じられます。

野尻氏: そうなんですよね。ふざけているだけと思われるのは心外ですけど、首だけになる、手足が取れるという話にはなってくる。ただ、絵的な話だけではなく、新しいロジックを使うようなゲームではあるというのをできるだけ伝えたい……まぁでも説明するときに「手が取れるやつです」っていう。現在のブライスのキャラクターとも関係してて、彼が絶望しているがゆえに、あんな感じになっちゃってる。見た目がふざけているのは、不死身の条件がああなっているからというだけの話で……と言い訳しているんですけど(笑)。まぁバカゲーに見えることは否めません。

編: うまく両方でプラスに作用していくといいですね。

野尻氏: ちょっと(今は)バカゲーのほうが強いですね。パッケージもバカゲーじゃないように作っているんですけど。

編: ブライスも、実際やっていくと最初から素直にカッコいいキャラクターだな、と感じられます。

野尻氏: そこも意図的に、最初バカで押し出してからシリアスで埋めていくって作戦に出たんですけど、いまだにバカの部分は消滅してないのかもしれませんね。とはいえ、最近また公式サイトの「48手」でバカなことやっちゃったので……。

編: その言葉の響きだけで……。

野尻氏: 48手は元々相撲の技なので、もしそれで何か違うことを想像された場合は、心が汚れている(笑)。技名も別に、鉄が落ちるので“鉄葉崩し”というだけの話ですよ?

編: その言い分は、恐らく通用しないと思います(笑)。それでは最後に、本作に期待しているユーザーの皆様にメッセージをお願いいたします。

野尻氏: 今いったことなんですけど、バカゲーじゃないっていうところがあります。“肉を斬らせて骨を断つ”という戦い方には、わりと幅があります。すべての攻撃を受けきって敵を全滅みたいな、そういう新しい戦い方が味わえるんじゃないか。バカには見えるんですけど、パッケージは一応シリアス! ジャンル「シリアス・シューティング」にすれば良かったかなと後悔してるんですけど、それくらいシリアスにゲーム性を追求した作りになっています。ぜひ、そこを見てもらいたいなと思います。

藤松氏: 結構“洋ゲー”テイストっていわれることもあるんですけど、インタビューのなかでも答えさせていただいたとおり、キモの部分は日本人がゲームデザインをして、アートもからんで、サウンドもしっかり見ているところなんで、そこもチェックしていただけばと思います。

編: 本日はお忙しいところを、本当にありがとうございました。



■ オマケ ~ゲームシステムの根っこの部分のお話~

“ボールは友だち!”よろしく“爆発物は味方!”といったところか

 冒頭でも触れたが、実は今回のインタビュー、本題に入る前に野尻氏から「いや、実はちょっと説明させていただきたいことがありまして……」と切り出された。ファースト・インプレッション記事で、筆者が誤解している部分があるというのだ。誤解というのは、ステージ内に散乱している“爆発物”のこと。ただ、両氏のお話をうかがった後に記事を修正すると“ファースト・インプレッション”ではなくなってしまうので、ここにまとめさせていただいた次第だ。

 アラフォーの筆者は頭が固く発想の柔軟性が失われているというか、本作を一般的なアクションシューティングをプレイする要領でクリアした。剣と銃メインで戦うとき、ステージ内にある爆発物をひっかけるたび「ああもう! なんだよいちいち!」とイライラし、さらには「お掃除がてら、敵を巻き込んで先に吹っ飛ばしてしまおう」とやってしまった。予備知識なしにプレイされるユーザーの方々も、もしかすると筆者同様のスタンスで最後までプレイされるかもしれないし、その可能性は少なくないと思う。

 ところが、野尻氏によれば「それはそれでいいんですが、本作は“自分を巻き込みつつ、爆発物でまとめて敵を倒す”のが基本的な戦闘スタイル」になるという。ステージ内の爆発物を確認したら、なるべく多くの敵をひきつけて剣を振る。敵はもちろん自分も吹き飛ばされるが、飛散中にアナログスティックで姿勢制御できることを利用し“爆発後の展開”を想定。いい着地ポジションをキープしてバラバラになったパーツを効率よく回収し、次の爆発へとつないでいく。これが重要なポイントになるという。

 このとき役に立つのが、画面右下のアイコンとゲージがMAXのときにアナログスティック押し込むと全パーツをまとめて再生できる“リジェネレーション”というシステム。手足などのパーツをくっつけるたびにゲージが一気に加速するため、爆発して飛散する直前に“次の合体・再生パターン”を想定しておけば、フィールドに合体アイテムがなくても素早い再生が可能となる。近接戦闘は、これでオーケー。飛行タイプなどアウトレンジが前提の敵は、素直に銃で倒せばいい。爆発物はトラップではなく“限り有る貴重な武器”というわけだ。

 ただ、この基本戦術にはいくつかの前提がある。まず、最低でもマップ内にある爆発物の場所を一定数覚えておくこと。爆発物は数に限りがあるため、アドリブなどで失敗を繰り返していたら最後には尽きてしまう。次に、ザコを吐き出すジェネレーターの存在。放っておくと無尽蔵にザコを補給してくるので、最優先で倒さなければならない。途中で地面から沸いて出るジェネレーターもあるので、それらの出現パターンも踏まえておく必要がある。慣れるまで少々てこずるかもしれないが、苦戦していた方々はぜひ1度お試しいただきたい。「ランボー」や「コマンドー」で血肉をたぎらせる脳筋の筆者には少々厳しかったが、型にとらわれない柔軟性を持った人ほど、本作は楽しめるものになるはずだ。



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(2012年 2月 2日)

[Reported by 豊臣孝和 ]