カプコン、新作オンラインアクション「イクシオン サーガ」インタビュー
「全てが変わった!」小野義徳氏・杉浦一徳氏が語る第2次バトルαテスト


11月25日~28日 第2次バトルαテスト実施予定


 株式会社カプコンは、Windows用オンラインチーム対戦アクション「イクシオン サーガ」の「第2次バトルαテスト」を11月25日から28日まで実施する。

 「イクシオン サーガ」は、最大8対8で対戦するオンラインアクションゲーム。カプコンのPCオンライン専用ゲームとしては、「モンスターハンター フロンティア オンライン」(MHF)に続く第2弾タイトルとなる。同じアクションゲームではあるが、「MHF」は協力型、「イクシオン サーガ」は対戦型と、内容は対極にある。

 本作のプロデューサーは、「ストリートファイターIV」シリーズなども手がける、CS開発統括 副統括 兼 東京制作部長の小野義徳氏。運営プロデューサーは東京制作部 開発運営室長の杉浦一徳氏で、トップ2人は「MHF」と同じ体制になっている。今回はその小野氏と杉浦氏にインタビューし、本作の制作に至ったきっかけやゲームの狙い、また「第2次バトルαテスト」のテストの見所などについて伺った。

 なおGAME Watchでは、11月18日14時から22日14時まで、第2次バトルαテストの開発隊員(テスター)を募集している。1,000名分の専用テスター枠をご用意しているので、こちらの記事からご応募いただきたい。




■ 前回からビジュアルと職種の特徴が変化した「第2次バトルαテスト」

 インタビューに入る前に、まず簡単に本作の簡単な概要と「第2次バトルαテスト」についてご紹介しておきたい。

 「イクシオン サーガ」では、遺跡や洞窟といった3Dマップを舞台に、最大8対8でバトルを繰り広げる。プレーヤーは、剣と盾を持った近接攻撃の得意な「ストライカー」、銃を使って遠距離攻撃ができる「ブラスター」、魔法によって回復や範囲攻撃などを仕掛ける「キャスター」という、特徴の異なる3つの職種から1つを選んで、チームでの勝利を目指す。

 双方のチームにはそれぞれコストゲージが用意されている。相手チームのプレーヤーを倒すことなどで減らせるもので、制限時間内に相手チームのゲージをなくすか、制限時間終了後に相手チームのゲージをより多く減らしていた方が勝利となる。

 8月に行なわれ、本作の初お披露目となった「第1次バトルαテスト」についてはこちらの記事でレポートしているが、「第2次バトルαテスト」では、そこから大幅な修正が加えられている。まずキャラクターはビジュアルから一変。以前はキャラクターの体や装備は「MHF」のものに似た印象が強かったが、今回は全く新しいものに変更され、見た目にも別のゲームのように映る。

 アクション要素としては、前回周囲を巻き込む必殺技として登場した「コンボフィニッシュ」と、体力ゲージのなくなったプレーヤーに引導を渡す決め技「トドメ」が廃止された。これらのアクションをなくす代わりに、3職種の特徴をはっきりと出し、技のバリエーションを増やすことで、アクションの楽しさを追求している。

 各職種の特徴としては、「キャスター」は味方の能力を一定時間上昇させるスキルや、触れるとダメージを受けて吹き飛ばされる障害物を発生させるスキル、遠距離攻撃を防ぐバリアを設置できるスキルなどが追加された。「ブラスター」には罠を設置するスキルが加わったほか、FPSのように主観視点のまま移動や攻撃ができる操作が追加された。「ストライカー」にも、複数の近接攻撃が追加されている。


【スクリーンショット】
画像は上段が第1次バトルαテスト、下段が今回の第2次バトルαテストのもの。「MHF」っぽい、と言われていた前回のキャラクターモデルは一新され、洗練された印象を持つデザインになった職業ごとの戦い方やスキルも大きく変更されている。例えば「キャスター」には、味方ステータス上昇スキル、障害物設置スキルといった特徴がはっきりと加わった



■ 「MHF」でも「ストリートファイター」でもない。チーム連携の面白さ

CS開発統括 副統括 兼 東京制作部長の小野義徳氏
東京制作部 開発運営室長の杉浦一徳氏

――まずは本作の狙いをお聞かせください。

小野義徳氏: 「MHF」も5年目に突入して、また違う切り口でゲームを作りたいと思いました。それは私達が成長するためという意味もありますが、「MHF」などカプコンのゲームを遊んでいただいているお客様に喜んでいただける新しいものを作りたかったのです。「MHF」もアクションですが、CPU相手なので、今回は人相手のものを目指しました。コンセプトとしても、カプコンでおなじみの1人が大勢を倒すものでもなく、「ストリートファイター」でもなく、チームの中で自分の役割を考えながら、全員で勝つか全員で負けるかの面白さを突き詰めたいということは始めに考えました。

――今回は完全なオリジナル作品というのも印象的です。

小野氏: これに関しては、コンセプトに合うものがなかったというのが理由です(笑)。もしこれで何かあったら、世界観も入りやすいので使っていたと思います。

杉浦一徳氏: 似たゲームを2作目、3作目と出すと、1作目と同じお客様が流れ込み、元々のお客様を割り振ってしまうだけになります。そのため、協力プレイの「MHF」とは違うゲームを出さない限り、カプコンのお客様が増えないというのは、私が開発チームに対して主張していたことでした。ですから今回のコンセプトは、我々運営チームとしても賛成できました。

――そのコンセプトですが、チーム戦に主軸を置いたのには何か理由があるのでしょうか?

小野氏: 「ストリートファイターIV」シリーズをやっている私が言うのも変ですが、1対1の勝負では「ストリートファイター」には勝てないと思いますし、それはゲームセンターでやればいいんです。多人数で同時にプレイできるというオンラインのメリットと、カプコンのアクションゲーム制作のノウハウを活かし、1回の参加人数を最大限まで増やした団体戦とはどのようなものなのかを考えました。現在は8対8ですが、それならできそうだよねと話し合いました。

――団体戦ならではの面白さは、どの辺りに出ていますか?

小野氏: チーム内での連携でしょうね。決められた自分の役割に対して、次々に起こるアクシデントをいかに回避するかという部分、またそれを全うした時の達成感は「ストリートファイター」とは全く違います。野球などのチームスポーツに似ていると思います。


チームの勝利のためには、自分の役割をきっちりこなす連携プレイが重要になる

――個人ではなく、チームの勝利を目指さなくてはならないと。

小野氏: 「ストリートファイター」はパンチを出したらガード、と攻守がはっきりとしていますが、「イクシオン サーガ」ではその前に罠があるかも知れないし、パンチを出しても後ろからやられるかも知れません。そんな相手に対して、どういった布陣で攻撃を仕掛けるのか考えなくてはなりません。あるいは、「君のスタイルだったら、こっちの役職のほうがいいのでは?」と職業ですら相談の中で決められるかも知れません。それはこれまでとは全く違うものだし、このゲームの特徴だと思います。

――将来的にはギルド機能のようなものも入るのでしょうか?

小野氏: 設定が傭兵部隊なので、1匹狼が集まるという形でもゲームをチューニングしていきますが、最終的にはチームを作れるようにはしたいですね。「MHF」の猟団も同じものですが、そういった所をカバーしていくのが、これからの運営であり、イベントです。ただオンラインゲームですから、1匹狼のプレイよりは、みんなでやったほうが楽しいよ、という方向に持っていきたいとは思っています。




■ 作りかけからプレーヤーに公開し、「開発隊員」としてともに作っていく

テストを何度も重ねていいものを作ろうとするのはカプコンの風土だという両氏

――本作は、「MHF」の開発サービス開始から4年経ってからのスタートでした。4年間も「MHF」に続くタイトルが出なかったのはなぜでしょうか?

小野氏: そんなこと考えている余裕もなかったというのが正直なところです。4年間「MHF」に全員がかかりっきりでしたが、やっとこういうものを作りたいという思いが湧いてきました。

――さらに、テストは1年かけて行なうと発表されています。尋常ではない期間をかけるようですが、これはなぜでしょうか?

小野氏: どうせなら、開発に何年もかけてから公開するのではなく、作りかけの状態から皆様に見てもらって、満足できるゴールを全員で目指したかったからです。そのため、今回はテスターの皆様をテスターとは呼ばずに「開発隊員」と呼んでいます。皆で一緒に最初からやりましょう、ということですね。

――プレーヤーと一緒に作るという主旨で設けたテスト期間だったのですか。

小野氏: そうです。今回、なぜ2回目の「バトルαテスト」をやるかというと、1回目で全部ダメというくらい滅茶苦茶に怒られたからです。2回目でも厳しく怒られるかも知れませんが、そういったことも含めて、一緒に積み重ねていきたいのです。「イクシオン サーガ」はまだ誰もルールブックを書いていません。だったらそれを考えてくれる同志に託して、普段開発でもやっているような意見交換をしながらゲームをよくしようというのが、このテスト期間なのです。


1回目のテストのアンケート結果は公式サイトで公開されている。半数以上が不満となったシビアな意見もオープンにされている

――誰もわからない着地点ならば、全員を巻き込んでしまおうと。

小野氏: そのため1年のテストとしましたが、1年ではないかも知れません。気持ちのいいものにしたいですし、1回やり始めたら「MHF」のように何年も付き合ってほしいので、それまでの行程や状況はお見せしたいのです。その中で、「ここがこうだったらいいのに」という部分は変えられます。相手の性格を変えてからできる、結婚のようなものです(笑)。

杉浦氏: 海外から買ってきたオンラインゲームをローンチする場合、クローズドβテストもオープンβテストもやりますが、それはプロモーションの意味合いが強かったり、サーバー安定のためだったりします。しかし、私たちはゼロから一緒に作るというテストで、そもそも考え方が違います。だからこそ、意見を募る掲示板も設置しますし、アンケート結果もオープンにします。前回の結果は散々でしたが、今回はそれを直しています。最近のオンラインゲームの大型タイトルと言われているもので、1年かけてテストし、開発初期から情報を公開して、そこにプレーヤーも参加して進められる所からスタートしているというのは、自慢になると思います。

――プレーヤーの意見が多岐に渡って、いつまでもゲームの方向性が定まらない、といった不安はありませんでしたか?

小野氏: カプコンは昔から、アーケードゲームでロケテストを行なっていました。オンラインゲームでは無料で参加できるテストですが、ロケテストは100円を入れてもらわなければなりません。テストなのに100円を入れるということは、恐らく相当な覚悟があるはずです。そして、そのお客様から罵倒されます。100円出しているから罵倒していいわけですよ。そういう積み重ねを何回もして、いいものができあがったら製造出荷するという流れがあります。ですから我々がテストを何度もやることに関しては、会社的にもチーム的にも違和感はないですね。

――むしろ、自然な流れのようですね。

小野氏: 「ストリートファイターIV」などで、今でもそういったテストをやります。そこで猛烈な批判も浴びますが、その中から意見を取り入れようとする風土があるので、嫌でもないですし、あまりすごいとも感じないですね。

杉浦氏: 私はカプコンに中途で入って来ましたが、思っていた以上にお客様の意見を聞く会社だなと感じました。たった1人や2人の意見でも、それが大事なものだとスピーディに動くので、それはいい企業風土だなと思います。




■ 経験から来る驕りが裏目に。未知の部分を実感した前回テスト

――本作の制作にあたり、「MHF」での経験はどこに活かされているでしょうか?

小野氏: 言われたことをすぐ直すということですかね。「MHF」でわかったのは、開発側が気持ちいいだけではなく、開発がいいと思ったことをお客様もいいと思ってくれるようなシンクロがないといけない、ということです。このシンクロがずれていた時は、間違いなくお客様側に合わせるのですが、ただ寄り添って合わせるのではなくて、サプライズで合わせていったほうがお客様にも喜んでいただけると思います。そこがクリエイティブな部分です。そういう作り方や考え方は、「MHF」での経験が活かされていると思います。

――小野さんは「ストリートファイターIV」のプロデューサーでもありますが、同じアクションゲームとして、そこでの経験は何か活かされていますか?

小野氏: 過去のアクションゲームにはいろんな切り口がありましたが、その切り口が1回目のテストでは災いしたところがありました。こんなキャラクターだったらこういう動きをするだろうと考え、自由度を削いで、こちらからルールと動きを縛りすぎてしまったのです。そのあたりは、そのままオンラインゲームには持って来られないなと思わされました。

――経験が逆に作用してしまったということでしょうか?

小野氏: 未知の部分があったということです。前回のテストで、これまでの経験があるからこそ違う切り口にしなければならないとわかってきました。

――これは意外な答えでした。

小野氏: 私達も、「ストリートファイターIV」の経験が活かせると思っていました。でも、それは驕りでしたね。

――これまでのカプコンとはまた違った切り口のゲームが見られるのでしょうか?

小野氏: カプコンの社員が作っているので、カプコン的な部分は残るとは思います。ただ、今までのタイトルからお客様を引っ張ろうとは全く思っておらず、このゲームをやりたい人を集めたいために作っています。ですから、そこはあまり意識していません。

杉浦氏: オンラインアクションの中でも、PvPというものをカプコンが作ったらこうなるよ、という切り口にはなると思います。


【スクリーンショット】
1回目のテストによってオンラインアクションの未知の部分を思い知り、「第2次バトルαテスト」への修正に活かしたのだという



■ 全てを変えた「第2次バトルαテスト」。今後のスケジュールは結果次第

「第2次バトルαテスト」では、ビジュアル、ゲームシステム、各職種のアクションと全ての面を変えたという

――では、まもなく開始される「第2次バトルαテスト」の見所を教えてください。

小野氏: 「バトルαテスト」は、チーム戦の醍醐味を味わえるものを作るために行なっているものです。今回のテストでは、そういう醍醐味を味わいたい人に参加してもらって、味わえないなと感じるところを聞かせてほしいですね。チーム戦が好きな方、興味がある方はプレイして、一言でもいいのでご意見をいただければなと思います。

――前回から比べると、ビジュアル面でも大きな変化がありますし、各職種に特徴のあるアクション要素が加わるなど、ゲームシステムの面でも違いが感じられます。

小野氏: これはもう、全て変わりました。前回プレイした方には、この「全て」という言葉を嘘偽りなく言えます。前回とは全ての面で違う回答を示しています。職業についても、はっきりと特徴をつけました。各職種の嫌だという所はなくしましたし、入れてほしいという所は入れています。

――1回目のテストではアクションの重要なポイントだった「トドメ」と「コンボフィニッシュ」が、今回のテストではなくなっているのも驚きました。

小野氏: あれは、私達が勝手に想像していたレールでした。アクションゲームたるもの、最後のキメがないとね、と思っていたら違ったのです。それを取り払う代わりに、今度は職種ごとの特徴を活かして、いかに相手チームのコストゲージを減らすかという耐久戦の面を重視しました。また、バトルの部分を注目してほしいので、破壊すると相手チームのコストゲージを大きく減らせる「ユニット」と、一定条件で相手チーム全員を一気に倒せる「アルマ砲」は取り除いています。

杉浦氏: カジュアルな部分では、見た目の変化がわかりやすいと思いますが、ディープに遊んでいた方には、ゲームシステムががらっと変わっていることがわかると思います。前回のテストで少しだけ遊んでやめた方も、かなり遊んでくれた方も、全ての方が必ず変わったことを認識してもらえると思います。

――職種の特徴という点では、「ブラスター」と「キャスター」には、罠や障害物といったフィールドに設置するタイプのスキルも追加されていますね。

小野氏: 罠や障害物も全員が勝つための駆け引きに使えます。ただ、睨み合いになってもしょうがないので、最後は戦いが楽しいアクションにしたいと思います。

杉浦氏: 単調な戦いになるのが、運営としては怖い所です。戦闘中にドラマが生まれるようにしておきたいのです。もしかしたら、また「要らない」と言われるかも知れませんが、その時はその時です。

――ちなみに、前回のテストで最も多かった意見は何でしょうか?

小野氏・杉浦氏: (2人声を揃えて)「つまらない」(笑)。

小野氏: もちろん、具体的なご意見が色々書かれているのですが、最後には「つまらない」と書いてありました。それらを1つずつ見て、ご意見をまとめて、ああしよう、こうしようと直しました。山のようにダメ出しをされましたが、いいご意見だったと思います。プレーヤーがプレイしたくない理由を言ってくれたということですから。

――テストは今後、何回重ねることになりそうですか?

小野氏: もっとプレイしたいと言われたらすぐにでも次に動きます。まだだねと言われたら、またやります。

杉浦氏: 私たちも次があると思って手を抜いているわけではなく、今回のテストも、開発チームは必死に考えてシステムを用意しています。ただ、前回のようにお叱りを受ける部分というのは当然出てくると思いますから、お叱りを受ける量、褒めていただける量というのを見て、最終的なタイミングは小野に判断してもらいます。3回目、4回目があるかも知れないし、もうβテストに入るかもしれないし、そこはやってみないとわからないという状況です。

――では最後に、今後のスケジュールとプレーヤーへのメッセージをお願いします。

小野氏: スケジュールは今申し上げた通り、今回のテスト次第ですね。テストに1年という目算は、前回のテストでここまで叩かれないだろうという私たちの驕りから来ている数字なので、申し訳ありませんが、これは今回のテストを見てから決めさせてください。それでも挫けずにメッセージをいただいた開発隊員の皆様には、本当に感謝しています。カプコンが返せる限りの回答をこの期間で出し直したので、もう1度ご覧になって、この先数年間付き合っていける内容になったのかどうかを見てほしいなと思います。

杉浦氏: 1回目のテストでは、相当コテンパンにされるご意見を多数いただきました。そこからの奮起を形にしたので、いいと思えるなら褒めてほしいと思います。2、3カ月でここまでできるのかというスピードも見ていただきたいですね。1回目のテストで嬉しかったのは、掲示板にほとんど荒らしがなかったことです。皆様の熱い思いがいっぱい書かれていて、私達からすれば、そういったものが今回の結果に繋がっています。また次のテストの機会もあると思いますが、そこではさらにゲームをよくしたいと思うので、開発隊員の掲示板やブログを見て、書いていただいて、積極的に一緒に作っていただけたらと思います。

――ありがとうございました。


【プロモーションムービー】


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(2011年11月18日)

[Reported by 安田俊亮]