GMO Games、WIN「キノスワールド ~騎士集結~」の開発現場を訪問
最新バーションの体験プレイをレポート


6月18日 収録

会場:Burning Hands Studio


タイトルのロゴも新しくなった

 GMO Gamesが自社開発の国産ゲームとして再開発中の「キノスワールド」は、横スクロールタイプのWIN用アクションMMORPG。前身となった「キノスワールド ~パジャマの騎士~」はサーバートラブルなどに見舞われてサービスを休止した。その後、イラストレーターの平尾リョウ氏が描いたイメージイラストを元にグラフィックスを作り直し、タイトルロゴも一新して「キノスワールド ~騎士集結~」として生まれ変わった。

 この新生「キノスワールド ~騎士集結~(以下、キノス)」を開発しているのが、韓国にあるBurning Hands Studioだ。国産タイトルとして作り直しているはずなのに、どうして開発会社が韓国にあるの? と思う人もいるだろう。Burning Hands StudioはGMO Gamesの開発スタジオで、社長は同じアンディ・クォン氏。つまり日本企業の韓国スタジオというポジションだ。

 今回の取材では、韓国ソウルの河南エリアにあるBurning Hands Studioを訪問して、作業に追われる開発スタッフに話を聞くとともに、最新バージョンを体験して現在までの進行具合を確認してきた。またこの取材では、クローズドβテスト(以下、CBT)や、それ以降のスケジュールも入手できた。同時に行なったプロデューサーのユン・ジェス氏とコンポジションディレクターの吉田哲朗氏のインタビュー記事と併せて読んで欲しい。

 CBT以降のスケジュールについては以下のとおりに発表されている。CBTは2回に分けて5日間ずつ行なわれ、サーバーやプログラムに不備がないかどうかがチェックされる。

【βテストの日程】
・1次CBT …… 7月10日(金)~14日(火) 18:00~23:00
・2次CBT …… 7月24日(金)~29日(火) 18:00~23:00
・オープンβテスト …… 7月31日(金)17:00開始



■ Burning Hands Studioを訪問。開発は日韓の混合チーム

「キノス」開発スタジオは、ビルの4階にあるBurning Hands Studio

 Burning Hands Studioはソウルの南、ベンチャー企業やネットゲームの開発会社が多く集まる河南エリアにある。少し行った場所にはNexonやNCsoftなど名だたるメーカーが林立しており、韓国オンラインゲームの本拠地と言ってもいい。韓国は日本より緯度が高いので、湿気はそれほどでもないのだが、それでも取材日には気温が30度近くあり、開発スタッフもみんなでスイカを食べて涼をとっていた。

 6階にある開発室は、指紋認証システムによる厳重なセキュリティが設けられており、普段は同じ会社の社員でも入ることができない。取材陣が入るのも、今回が初めてなのだそうだ。といっても、ぴりぴりした雰囲気はなく、むしろ少人数らしいアットホームな雰囲気の中で開発が行なわれている。

 スタッフは日韓の混合チーム。グラフィックスチームの部屋に席を置くコンポジションディレクターの吉田哲朗氏は、「キノス」の開発のために韓国に赴任した。お隣同士とはいえ文化の違いから日本人にとっては「あれ?」と思ってしまうような部分を、日本人が納得できるようにするのが吉田氏の仕事だ。「キノス」が国産と呼べるゲームになるのかどうかは、吉田氏が鍵を握っているといってもいいだろう。

コンポジションディレクターの吉田哲朗氏。こちらに来てからずいぶん韓国語が上達したらしい現場の指揮に当たっているプロデューサーのユン・ジェス氏日本で運営を行なう松木善史氏


■ テストサーバー、生産要など参加者が様々な要素を提案

 開発は、企画チーム、プログラミングチーム、グラフィックスチームの3つに分かれ、それぞれの部屋で作業している。企画チームの部屋は、キャラクター設定などのイラストが壁一面にずらりと貼ってある。企画チームのスタッフはシステム周りやシナリオなどを作っている。ゲームバランスの調整も企画チームの仕事だ。


企画チームの部屋には設定画が壁一面に貼ってある

 プログラミングチームの部屋では、4人のプログラマーが作業に当たっている。開発が終盤に向かうほど忙しくなる部署なので、今はまさに修羅場の真っ最中。壁に立てかけられた仮眠用のベッドが過酷さを物語っていた。お邪魔しても悪いので、早々にグラフィックスチームの部屋に。


アートディレクターのチェ・チョンウン氏

 グラフィックスチームは女性が3人いて和やかな雰囲気。背景、キャラクター、アニメーションなどに分かれて仕事をしている。グラフィックスチームを統括している、アートディレクターのチェ・チョンウン氏から話を聞くことができた。

 「リソースの限られるオンラインゲームのなかで、なるべくポリゴンの数を抑えながら平尾さんのイラストを再現するのに苦心しました。平尾さんのイラストは手足が細いので、3Dにするとバランスが悪く見える事があるのです。イラストでは問題なくても、3Dでは手や足が小さく見えすぎるので、できるだけ平尾さんのイラストの雰囲気を壊さないようにしながらバランスを調整するのが一番難しかったです」

 ちなみにチェ氏のお気に入りキャラクターは、1番手をかけたプレーヤーキャラクターで、その中でも特にファイターとアーチャーの男女が気に入っているそうだ。

 他にもスタッフから仕入れたゲームの最新情報は以下の通り。

  • クエストの数は圧倒的に増えている
  • 3カ月から半年ごとに新しいチャプターが追加されていく予定
  • シーズン事にレベルの解放があるかもしれない
  • やりこみ要素として装備集めがある
  • クローズドβテストでは、プログラムやサーバーのテストが中心になる

     


    グラフィックスチームの部屋は女性が多く華やいだ雰囲気


    ■ まだまだ開発途上、でもグラフィックスは着実に進化中!

    レイチェルなどNPCのキャラはまだ旧作のまま
    女ファイターのスキル技、周囲の敵にダメージを与える回転切り
    イラストが公開されていたサソリは砂漠ステージの敵だ

     体験プレイは、会議室にパソコンを設置して行なわれた。プロデューサーのユン・ジェス氏と、コンポジションディレクターの吉田哲朗氏が横について説明してくれた。現在、開発は80~90%の進行度だという事だが、体験プレイしたバージョンにはまだ反映されていない部分も多かった。背景などもすべて差し替えるという話だが、このバージョンでは旧作のままで、オープニングのゴリラが走ってくる演出もそのまま残っていた。だが、この演出もすべて新しくなるそうだ。「去年とは全く違うものが見られると思います」とユン氏は語った。

     体験できたのは、ゲームを始めて最初に行くチュートリアルのマップと、既に発表されているサソリのモンスターが登場する砂漠マップだ。画面を見ると右下に旧作と同じメニューが残っているが、これらも完成時にはすべて差し替えて、デザインなどもさらに使い勝手のいいものに変更する予定だそうだ。背景の差し替えもまだで、ちょうど新バージョンと旧バージョンが入り交じっている状態だった。「ゲージなどもすべて差し替えます」と吉田氏。

     チュートリアルでは、操作方法がアイコンで表示されているところは旧作と同じだが、モンスターは既に差し替えが終わって平尾氏がデザインした新しいものになっている。「モンスターは強くなるほどに、だんだん大きくなっていきます。時間が経つにつれて大きい敵が登場したり、小さい敵が合体して大きくなったりします」(ユン氏)。敵の配置も、プレイしやすいように変更されている。新しいボスモンスターも見せてもらった。デザインはもちろん平尾氏だ。ストーリーに関わるようなボスは、ぽんとそこに沸くことはなく、演出と共に登場することになるらしい。

     体験プレイでの女ファイターの装備は、実際のゲームではかなり後に出てくる強い装備らしいが、今回はテストバージョンということで強いまま1面へ。キーボードの「X」ボタンで攻撃、「C」ボタンでジャンプ、という基本的な操作方法は変わっていないが、操作したときのアクションアニメーションはかなり派手になっている。今回使えたスキル技は2種類で、周囲の敵をなぎ倒す回転切りと、敵に向かって突撃していくロングレンジの貫通技だ。どちらもダイナミックなアクションで、なかなかに爽快感があった。

     NPCやボスのボイスも聞かせてもらった。NPCのボイスは複数の種類が用意されていて、話しかけるといくつかのボイスがランダムで再生される。また、プレイの進行度に合わせて、プレーヤーに対する態度が変わってきて、それに連れてセリフも変化していくらしい。最初はどこのだれともわからない相手なのでつっけんどんだが、クエストをクリアしていくうちにNPCからの信頼が深まっていくという感じだ。

     「サーバーやデータベースの部分は完全に作り直していて、大きく改善しています」(ユン氏)ということなので、過去にあったようなクライアントの不安定さに悩まされることはなくなりそうだ。バランス調整はこれからという事なので、どんなゲームになるのか今回の体験プレイだけでは把握できない部分もあった。だが全てを日本人向けのゲームとして作り直すという目標に向かって、着実に開発が進んでいるという部分は伝わってきた。


    体験プレイのバージョンは、少しずつ進化しているまっただ中といった雰囲気だった



    ■ 進化した「キノス」をぜひその目で確かめてみて

    手取足取り体験プレイの説明をしてくれたユン氏

     体験プレイではグラフィックスが差し替わってない部分もあり、まだまだ開発途上なのではと思わせる部分もあったが、これには開発の方針が影響しているという。なるべく無駄な作業を省くために、作業が終わってから統合するという方式を取っているために、作業の進行具合が反映されるまでにタイムラグがあるのだそうだ。背景も、最終的にはもっと色調を抑えて、キャラクターにマッチした雰囲気に仕上がることになるらしい。今後は完成したグラフィックスや、シナリオ、ボイスなどを統合する作業に入るので、プログラマーはまだしばらく睡眠不足の日々が続きそうだ。

     大きく進化した形でのサービス再開は、前作のサービス休止からずっと再開を待っていたファンにとっては感慨深いものがあるだろう。また今回から新しくプレイしてみようと思っているユーザーは、国産タイトルを作るという思いがどの程度作品に反映されているかをぜひその目で確認してほしい。


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  • (2009年 7月 1日)

    [Reported by 石井聡]