インタビュー

「FFXIV: 蒼天のイシュガルド」アーリーアクセス直前インタビュー

夏には早くも「4.0」が始動? 開発スケジュールに関する悩みは尽きない

夏には早くも「4.0」が始動? 開発スケジュールに関する悩みは尽きない

「4.0」の実装スケジュールをどうするかが早くも悩みのタネに
フライングできる環境の構築には1年近い開発期間がかかっている

――2013年に「新生エオルゼア」のβテスト前に実施されたE3インタビューの時点で、「やるとすればフライング」ということをお話されていましたが、その時にはもう「3.0」にフライングを入れるということは決まっていたのですか?

吉田氏: あの時にはフライングマウントを入れるか、水中を冒険できるようにするか悩んでました。パッチ2.1のリリース直前くらいにフライングマウントに決めて、システムも考え始めました。描画側のリソースを分割して、描画レイヤーを何段階かに分けないと、飛んだときにとんでもなく広い描画範囲が見えてしまって破たんするので、そこの新しい描画システムを長期計画に従ってちらほら入れ始めました。当然それが仕上がってこないと新しいフィールドが作れないわけです。「新生エオルゼア」のアップデートの裏で、フライングの仕様に沿ったオブジェクトの一体成型具合などのチェックをしつつ、レベルデザイン班がフィールドの設計に取り掛かってということをやっていました。

――フライングだけでも1年くらいかかっているのですね。

吉田氏: かかってますね。

――今度「3.0」が始まったら、すぐに「4.0」を考えなくてはいけないということですね。

吉田氏: そうですね。ビジュアルワークスから、「4.0のオープニングは、あと何カ月後くらいに発注ですか?」とこの前言われました。オープニングトレーラーは結構な時間をかけてじわじわ作っていくので、とりあえず骨子は決まっているからと、軽く内容を口頭で説明したら、じゃあそのあたりの素材はもう集めますねと言ってました。おそらく8月、9月くらいには発注会議をやるのではないかと思います。

――「新生エオルゼア」は2.57が最後のパッチで、ローンチから約1年半くらいですが、「蒼天のイシュガルド」もそのくらいの期間続くのでしょうか?

吉田氏: 「3.X」シリーズのラストまでのストーリーだったり、コンテンツの実装計画のリストはもう完成しているのですが、それを全部こなしてから「4.0」にするのか、もっと短いサイクルでいくのかは、まだちょっと悩んでいます。今回のフライングマウントでもそうですが、ある程度のボリュームのある拡張パッケージを作ろうと思ったら、運営サイクルを長くしなければなりません。短いほうがみなさんはうれしいでしょうが。そうなると、拡張パッケージなのに、あまり大きな変革を導入しにくくなります。

 これが10年近く続いているタイトルなら、極端に大きな拡張をするよりは、コンテンツだけある程度まとまって、毎年拡張パッケージを出しますねでいいと思うのですが……。「FFXIV」はまだそうではありません。拡張パッケージが来るというのは、新作が1本来るくらいのボリュームで、テンション急上昇というほうが今はまだ良いのかなと。プロデューサーとしては、ゲームのライフサイクルは早いほうがいいだろうと思いますが、作る側として考えると、それじゃあ根本的に大きく変わるものが作れないじゃないか、というところもあって、悩ましいです。

――1年って長いようで短いですものね。

吉田氏: 僕らにしてみたら本当に短い(笑)。3カ月半のアップデートのサイクルですら相当早いので。ちょっとでも考えて立ち止まっていたら、あっという間に時間をロスしてしまいます。計画が少しでも狂うと、今回のように想定していたスケジュールからズレてしまう。ほかのタイトルに比べれば、1カ月という遅れはさほどではないかもしれませんが、MMORPGの場合、やはり印象が全く変わってくるので難しいですよね。短いサイクルだと何か予定外のトラブルがあった場合、それを吸収できる幅がまったくないので、余計にスケジュールがぶれやすくなってしまいます。そう考えると次も同じくらいはかけたほうがいいのかなと思います。

――前回のフライングのように、次の拡張で入れるとすればこれという要素はありますか?

吉田氏: そうですねえ、月にも行きたいし、どうしようかな(笑)。まだそこまで具体的ではないですが、いくつかパターンがある中でどれにしようかなというところです。

――夏に発売になるWindows 10への対応はどうなりますか?

吉田氏: ベーシックな動作検証はもうやっているので、普通に遊べると思います。チェックはしていますよ。

――スクウェア・エニックスがDirectX 12のテックデモを発表しましたが、今後「FFXIV」のグラフィックスはどう進化していくのですか?

吉田氏: 少なくとも「4.0」までの間にDirectX 12に対応することはないと思います。DirectX 11のいいところがDirectX 12では使えないものもあります。どちらにもメリットデメリットがあるという状態で、僕らがDirectX 11対応をしているタイミングでDirectX 12が発表されたのですが、やはりまだパフォーマンス面で気になるところもあり、テックデモならいいのですが、製品にしようとした場合まだこなれていない。だから今回はDirectX 11を選択しているのであって、これからDirectX 12がDirectX 11の上位互換でアル、というぐらい差が出てこない限り、僕らにとって対応するメリットがないのです。DirectX 12対応のグラフィックスカードが、どのくらい一般的になるのかを見ながら考えていこうと思っています。

 後はそれだけのクオリティを出そうと思ったら、グラフィックスリソースにも手を入れていかなくてはいけないので、そこの期間もきちんと取らなければなりません。やるとすれば次の拡張パッケージとか大きなタイミングになると思います。僕らもDirectX 12がどう進化していくかを見ているので、プレーヤーの皆さんもDirectX 12に注目しながら。「吉田、そろそろいいんじゃないの」というタイミングがあればフィードバックをください。

――来年にかけてMorpheusやOculus RiftなどVRヘッドセットが発売されますが、そういったものへの対応はどう考えていますか?

吉田氏: 僕自身、新しいテクノロジーは大好きなのでテストはすると思います。しかしもし「FFXIV」でOculus RIFTを被っているプレーヤーがいたとすれば、「なんかあのタンク動きがおかしいぞ、大丈夫か」って言われそうですよね(笑)。

 1人称視点でのプレイと今のゲーム視点はまったく違いますし、インターフェイスもそれ専用でなければ、遊べないと思います。イベント的にやるには面白いと思いますので、機会があればそういった経験もできるようなデモはやってみたいですね。

 VRはテクノロジーとしては面白いですが、やはり専用のゲームを作るべきだと思っています。どうしても既存のゲームを動かそうとすると、専用化を徹底できずに“酔い”ます。60フレームで動作させた場合でも、酔う人はすごく酔う。120フレームくらいが適正だと思いますし、やはり特化しないと楽しめない、しかしそうなるとビジネスとして難しい。「FFXIV」の場合、単純にウォークスルーするだけだったら、すごく楽しいと思うのですが、バトルとなるとなかなかしびれますね(笑)。

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

吉田氏: このインタビューは少し前に収録しているのですが、きっと明日からアーリーアクセスが始まると思います(笑)。大混雑になるとは思いますが、ぜひ心穏やかにスタートしていただけると嬉しいです。ログインとか、サーバーの人数制限に引っかかる方もいると思いますが、僕や室内、開発チーム、運営チーム一丸となってリアルタイムに問題解決の努力をしていきますので、ぜひ生暖かく応援していただきつつ「蒼天のイシュガルド」を楽しんでいただければと思います。アーリーアクセスの盛り上がりを見て、この波に乗ってやるぜという方は23日が正式発売です。オールインワンパックもありますので、まだ触れたことのない方もぜひ触ってみて、楽しんでいただけたらと思います。

――ありがとうございました!

(石井聡)