ユービーアイ、PS3/Xbox 360「ロックスミス」
肥後直巳リードプロデューサーに直撃インタビュー!
「『ロックスミス』をプレイして音楽の幅が拡がったら嬉しい!」
ユービーアイソフトは、プレイステーション 3/Xbox 360用リアルギターゲーム「ロックスミス」を10月11日に発売した。価格は各8,880円で、CEROレーティング:B(12歳以上対象)。今回は、Ubisoft San Francisco シニアプロデューサーの肥後直巳氏のインタビューをお届けする。
肥後氏は、Ubisoft San Franciscoに2008年入社。Ubisoft名古屋、大阪スタジオの開発プロデューサーとして「Petz」シリーズを担当後、サードパーティータイトルの開発プロデューサーとして「No More Heroes 2」、「Tenchu 4」などを担当。「ロックスミス」は、Ubisoft San Francisco内部開発では初となるタイトル。肥後氏はリードプロデューサーとして本作の開発に携わっている。
全世界100万本以上の売り上げを記録し、今なお数字を伸ばし続けている本作。その日本語版が、ついに10月11日に発売される。興味がある方はぜひご一読いただきたい。
■ ギターをまったく知らないふたりだからこそ生まれた、至高のリアルギターゲーム!
「ロックスミス」リードプロデューサーの肥後直巳氏 |
―― まずは、本プロジェクトの成り立ちを教えていただけますか?
肥後直巳氏(以下:肥後氏):このプロジェクトは、ちょうど私が入社した当時に弊社社長が“あるギターの音を判定できるアルゴリズム”を持つ会社を買収しました。彼らが持っていたのは、ノートひとつずつを判断して何をプレイしたかを正確に判定するものでした。当時、いくつかの会社がそういったものを作っていたんですが、この会社が1番進んでいて、プロトタイプも動いていたんです。
その後、1年くらい寝かされていたんです。なぜかというと、これをどう製品化、商品化するかがあまりつかめていなかったんですね。製品化するために、いい機会を待っていたんです。そして……我々が2009年の秋に「No More Heroes 2」が終わったとき、Ubisoft San Francisco内部で別の企画を立ち上げたい! となりました。初めに私とディレクターのポール・グロスは「次はアクションゲームを作りたい! TPSのアクションゲームを作ろう!」と社長にプレゼンしにいったら、「まぁ、それもいいけど。まずはコレを作ってくれ!」とプロトタイプを見せてもらったんです。
「ギターの何かを開発している」と話はきいていたんですよ。でも個人的にギターを演奏したことはなかったので「ふーん」っていう感じで(笑)。でも、その話が回ってきて、ポールに「ギターをプレイしたことはあるの?」ってきいたら「義兄のギターを1回くらい触ったけど、それくらいだよなぁ」と、本当にその程度だったんです。
「このふたりでいいの?」って社長にきいたら「なんとかしてくれ」って(笑)。ミーティングのあとはふたりでヘコんでいたんですよ。我々はアクションゲームが作りたくて、結構色々な企画を考えて盛り上がっていた。それがミュージックゲームで、ふたりともギターをプレイしたことがないですから。さてどうする? ということで、その後に色々な話をしたんですけど、最終的には「我々がミュージックゲームを作るなら、自分たちのようにまったくギターが弾けない人でもプレイできるようなゲームにしなくちゃいけない。だったら、我々が知らないことは全部ゲームに入れなくちゃいけない」ということで、一から全部考えたんです。
まず、どういうインターフェイスにしようかというところからスタートしました。うちの開発チームにもギタリストがいるので聞いたら、「基本的にはTAB譜(ギター用の楽譜)を使って覚える」と。我々は「TAB譜って何?」と(笑)。「楽譜を簡単に表示して、フレット番号を見てその通りに押さえれば正しい音が出るものだ」と聞いて、一応アルゴリズムのデモとして、そういうものが入っていたんです。オリジナルのプロトタイプでは、TAB譜を横スクロールさせて流すインターフェイスだったんです。
それを初めにプレイして思ったのは、まずノートの番号をフォローして、タイミングよくその番号を弾いたあと、その次に続くノートに追いつけないんです。特に難しい曲だと、猛スピードで動くからソロなんて見えない。気づいたら通り過ぎちゃってる。これでは、私のような初心者はいつまでたってもプレイできない。本気でプレイするなら、止めて、見て、暗記して、それでプレイしなきゃいけない。でも、これだと紙媒体と変わらないですよね。
半透明のネックを裏側から透かして見るという独自のインターフェイス。最初からTAB譜ありきで考えていたら生まれなかったであろう斬新な発想だ |
そうじゃなくて、別のやり方はないのかと我々が考えて生み出したのが、今のインターフェイスです。どう考えたかというと、ギタリストに「曲はどういうふうに弾けばいいの? 1番簡単に説明して」と聞いたんです。その彼が説明したのは「じゃぁ、6弦の5フレット目を押さえて。タイミングをいうから、弾いてね」、「OK」、「はい弾いて」、「(音を出す)」と……これを素直に見せようよということで、ギターのネック裏から半透明に見せたんです。すると6弦が上に、1弦が下にきます。
これについて、ギタリストに「いやいや、これはインターフェイスが逆。TAB譜は6弦が下で、1弦が上なんだよ」と指摘されたのですが、「知らない人にとっては、そんなのどうでもいいじゃん」ということで今の形になりました。ゲーマーにとっては、裏から見たほうがポジションが素直にわかるじゃないですか。何もギターの知識がない人にとっては、こっちのほうが直感的で自然ですよね。でもギターの知識を持っている人はどうするんだ? となったら、オプションでひっくり返すことができますし、左利きの人用に反転させることもできます。
その次は、じゃぁこのインターフェイスで全部のテクニックを見せられるか? そこで色々と悩みました。実は、1番苦労したのは“開放弦”だったんですよ。なぜ苦労したかというと、開放弦ってフレットを押さえないで弾き、TAB譜では0(ゼロ)フレットって書いてあるじゃないですか。はじめはゼロと入れていたんですよ。3Dインターフェイスで、ゼロフレットが1番左(ヘッド側)にあります。上のフレットでプレイしているとき、開放弦が出てくると急にゼロが表示されると「!?」となってしまうため、これは違う方法で見せないといけないと思ったんです。最初は全部(弦全体を)ハイライトさせようと思ったんですけど、それは鬱陶しかったので、最終的にはポジション部分を長いバーで見せることにしたんです。
このゲームは、何も歴史がないんです。他のミュージックゲームは長い歴史があるから、それにそって作らなければいけません。「ロックスミス」は歴史がないので、最初から考えられますから、1番わかりやすい方法で作ってきました。コードを押さえるのもフィンガープリントをそのまま表示して、そこに指を当てておけばコードがプレイできますよと。初心者にとって「コードはどういう形を作るのか」って、そのまま指をおくところを押さえればいいじゃないかと。後々になってみれば「こんなの当たり前だよね」ということも全部最初から考えたので、面白い開発でした。凄く満足感がありましたね。
―― あまりギターに慣れていない方が作られたことが、逆に奏効したのでしょうか?
肥後氏:もちろんギタリストと相談しながら、の話なんですけど。デザイナーのポールはまったく知識がなかったし、新鮮な目で見て考え付きました。
■ 各曲の制作は1番手間暇がかかった!
―― 本作のシステムにあわせて各曲を作るのは、かなり大変だったのではないでしょうか?
肥後氏:今回の開発で1番手間暇がかかっているのが、そこですね。曲を作るのに、まずレベルがいくつ必要なのか。全部曲を作ったあと、他に存在している曲とバランスをあわせなければなりません。たとえばこの曲のレベル4であれば、他の曲のレベル4と似た難易度にしなければいけません。なぜかといえば、このゲームの仕組みとしてプレイ中に難易度が常に調整されているからです。
曲は、コーラス、バース、ブリッジなど色々な部分があります。それが何回もリピートされます。このゲームは各セクションにあわせてレベル設定をしているので、簡単なコーラスラインの曲もあれば、ソロになると凄く難しいものもあります。それを4段階とか5段階に全部あわせるのは不可能だったので、逆にソロで30レベル必要だったら入れるようにしました。
そこでプレイしているうちに自動的にあがっていきます。ミスし始めたらゲームもそれを認識して「これくらいがちょうどいいんだな」とレベルアップせず抑えます。で、慣れるとまたレベルアップしていきます。プレイしている最中は常に自動的に調整されています。
これを作った理由は、いくつかあるんです。ひとつは、一般的なミュージックゲームでイージーで遊んでいると、最後のほうは結構かったるくなってくるんですね。1曲終わるまでに飽きちゃいますよね。だったら、自動的にレベルアップしてあげればいいじゃないかと。でも、そうなると反対にどんどん難しくなってミスし始め、一般的なミュージックゲームはそこで終わってしまいます。
そこで、ミスし始めたらそれ以上(難易度を)あげないようにしました。それでも苦労していたら「レベルアップしすぎたんだな」と1ランク下げます。さっきまでOKだったレベルに戻るから、またプレイできるようになって追いつきレベルアップします。でも、このレベルアップは1度見たものですから、もうちょっとすんなりいくと思うんですね。こういう調整を常にしています。
このレベルアップは“次にプレイする曲”に影響するんです。ただ、たとえばレベル8まで上げたとして、次に同じレベル8でスタートすると「うわ、なんだこれ!」となってしまいます。そこは調整していて、レベル1からスタートするのはかったるいので、同じではなくある程度まで上げるようになっています。曲をマスターして、上手くプレイすることでゲームに「俺、結構できるんだよ!」と証明してあげると、どんどん高いレベルからスタートするようになります。
―― メインモードに登場する曲の順番も、その難易度で変化するのでしょうか?
肥後氏:そうですね。全曲に対して最高レベルをあてがい、曲にランクをつけています。ゲームは、今のレベルにふさわしい曲をリストアップするようになっています。あと、必要なテクニックも表示されます。チョーキング、ハンマリングオン、プリングオフなど……そういうテクニックをまだプレイしていないのに突然出すのは難しいですから、それもちゃんとテクニックの習得状態をチェックして出しています。最終的にすべて出したあとも、ミスをしていたら「あぁ、このテクニックはわかっていないんだな」とおすすめレッスンを表示します。レッスンはプレイの仕方をビデオで見せて、練習用レベルがあって、何回も練習したあとに曲がおすすめされるという仕組みになっています。
―― どれくらいの項目がチェックされているものなのでしょうか?
肥後氏:ギター、ベースともに全部のテクニックをチェックしています。ミスが多い場合は新しいレッスンがおすすめされます。
―― 曲の難易度は、DLCにも当然設定されているわけですよね。たとえば、まっさらの状態でゲームを始めるとき、はじめる前に好きなDLCを片っ端から入れておくのとでは、最初にリストアップされるおすすめ曲が異なる場合もありえるのでしょうか?
肥後氏:そうです。DLCも全曲難易度がバランス調整されています。たとえば、凄く難しいDLCを買ってまだそんなにプレイしていない場合、おすすめとしては出てきません。ただ、「SONG」メニューで直接選択してプレイはできます。
「ロックスミス」の遊び方って、いくつかパターンがあるみたいなんです。発売後の調査で気づいたことなんですけど、人によってはレッスンをそのままプレイされているようです。「ロックスミス リコメンズ」というおすすめ曲が3つ表示されるんですけど、それを常にプレイしている人もいます。自分の好きな曲を選んで、それが100パーセントになるまで遊び続けている人もいます。
どちらかというと、1曲をマスターしようとするプレーヤー……特にギタリストではなく一から始めている人で“ミュージックゲーム感覚でプレイしようとする人たち”は、ちょっと苦労する傾向があるようです。なぜかというと、曲によっては凄く難しいテクニックが要求されるからです。まだプレイしたことがないのに、それを初めから要求されても、なかなか上手くできないようなのです。
そうやってプレイすると壁に当たってなかなか進めなくなります。そこでおすすめの曲をプレイし始めると、指の動かし方ですとか、違うテクニックが要求されるます。それをプレイすると指の動きも変わるし、スタミナも上がります。そうなるとやりたかった曲に戻ったとき、プレイしやすくなるんです。壁に当たっていたところを、乗り越えやすくなるんです。そういう意味では「ロックスミス リコメンズ」をフォローして、「おすすめレッスン」をやっていけば上達が早くなるんじゃないかなと思います。でも、それをユーザーに強制はしたくなかったんです。ですから、自由に曲を選んでくださいというスタイルになっています。
―― 「ロックスミス」のゲームディスクには51曲が収録されています。最初に収録曲を見たとき「ずいぶんとまた幅広いラインナップだなぁ」と、若干のとまどいを覚えました。一般的なミュージックゲームは、いわゆる“ベストヒット”的な選曲になりがちですが、そうされなかった意図はなんでしょうか?
肥後氏:そういう選択も考えて設定はしているのですが、ベストヒットが必ずしもギターに向いている曲かというと、全部が全部そういうわけではないんです。もうひとつの問題は、ギターには色々なチューニングがあるじゃないですか。たとえば「『Nirvana』のこの曲、凄くいいよね! でもこれはEフラットだ」と。もちろんEフラットにチューニングすることは可能ですが、1曲プレイしたあとにスタンダードEに戻すなら、全部チューニングしなおさなければなりません。
特に初心者にとってチューニングは、凄く難しいことじゃないですか。1曲1曲変えさせるのは、あまりにもストレスを与えてしまいますから、絞ろうということになりました。スタンダードEが1番王道なチューニングですから、まずそれに合わせてもらいます。その次は、ドロップDだったら6弦だけ落とせばいいので、ある程度はやりやすいと思うんです。DLCはもうちょっと幅を広げましたが、ゲームディスクに収録している曲はそのふたつに絞りました。
そこから、このふたつのチューニングに相当して、我々がサポートするテクニックに対応する曲……たとえばスライドギターは、スライドバーをつけてプレイすることになります。これは別に道具が必要になってしまいます。そういうものは避けたかったんです。1曲だけ入っているのですが、それはスライドバーがなくてもプレイできるように変えてあります。
それ以外だと、カポタスト。買わなければできないというのもダメですし、チューニングしたあとに着けるのも面倒ですよね。これも避けようということになりました。なるべく素の状態のギターでプレイできる曲にするようにしたら、また曲のリストが減ってしまったんです。さらに他のサポートできないテクニックがあるもの……ペグとナットの間にある弦を押さえてベンディングするとか、それを最初から初心者に教えるのは難しいかな、というのがあっりました。
そういった曲をリストから落としたあと……基本的に2,000曲くらいあったんですけど、そこからベストヒットであり、プレーヤーとして理解しやすい、曲を教えていきたい順番ってあるじゃないですか。そこからビギナー、インターミディエット、ハードに大別して、さらに絞って最終的に200曲くらいのリストにしました。
そこからライセンシーに持っていって、1曲クリアすると「はい、これをクリアした! ということは、この穴が埋められた。次はこの穴を埋める曲だ」と1曲ずつ交渉していったのです。いずれかの曲のライセンシーがおりなかった場合は「この曲はダメだったか。OK、じゃぁ、これに似たような曲はこれとこれだから、こちらの曲を確実に入れよう!」というふうに、いつも優先順位を変えながらクリアしていきました。
最終的に、ギリギリまでリストが決まらなかったんですけど、凄く幅広いジャンル……モダンなもの、クラシックロック、1990年代のグランジなど幅広く入れて、できるだけ多くのユーザーに楽しんでもらえるものにしたかったんです。
―― 洋楽ということもありますが、一般的な日本人には、ゲームディスクに収録された51曲になじみがない人が多いかもしれません。
肥後氏:そこは結構難しかったですね。我々としても色々考えて……10数曲、多少はご存知かもしれませんけど、それ以外は「あまり記憶にないな」とかあるかもしれません。でも、重要なテクニックが入っているとか、この曲を覚えたら音楽知識やジャンルが広がるからぜひ入れたいものが色々あったんです。この場合「知らなくても、まずプレイしてもらおう! プレイしたら絶対に好きになってもらえるから」と考えて選曲しました。
面白いことに、ちょっとマイナーなアーティストが入っている場合、たとえばYouTubeのコメントを見ると「『ロックスミス』でこの曲が気に入ってきました」というコメントが書いてあったんです。それを見ると、嬉しいなぁって思いました。その人の音楽ジャンルがちょっと広がったんじゃないかなって、個人的に嬉しく思っています。
■ ターゲット争は初めてギターを触る人?
―― 本作を購入されたユーザーさんは、このゲームで初めてギターに触れられた人が多かったのでしょうか? それともすでにギター経験がある人のほうが多かったんでしょうか?
肥後氏:ゲーム発売後にアンケートなどで調査したのですが、7割以上のユーザーは初めてプレイしたか、まだ自分を初心者レベルと評する人が主でした。基本的には、大半のユーザーが初めてプレイするか、1年以下のギター知識だったようです。
ちょうどターゲット層としてはあっていると思うんです。このゲームの狙いは、ギターを弾いたことがない人でも楽しめる、ギターを弾いたことがなくても弾けることを目的としたゲームです。もちろん上級者にとっても面白い要素はあるんですけど、基本的には初めてプレイする人、ちょっと触ったことがある人……数年前に買ったけどあきらめちゃった人とか、そういう方々に遊んでいただきたいゲームなんです。
―― 肥後さんも上達されましたか?
肥後氏:まだ習い中ですけど(笑)。決して上手いとはいいませんが、2年前はまったく弾けなかったのですが、弾けるようになってきました。これは個人的というか“ギタリストになるための旅”のなかで気づいたのは、今までギターというか、楽器そのものに対して縁がなかったんです。小学生の頃にサクソフォンを2年間習ったくらい。音楽を聴くのは好きなんですけど、特に自分で弾きたい! と思ったことはあまりありませんでした。
でも、このプロジェクトをやっていくうちにギターを学びプレイしていくうちに、100パーセントでプレイできるようになってくると“新しい世界”が見えてきたんですね。音楽の聴き方も全然変わりました。今までは、音楽って全部まざったものをきいて「ああ、いい曲だね! 楽しい曲だね!」その程度で終わっていました。でも、このゲームをプレイして楽器を弾くようになると、聴いていて「このギターライン、凄くいいなぁ! あっ、この曲がなんでいいかというと、このベースがいいんだ!」ってわかったきたんです。
たとえばヘヴィメタルとかも以前は全然興味がなかったんですけど、聴いていると「なんでこんなに正確に弾けるんだろう!?」とか、新しいジャンルが好きになってきました。ブルースの良さもわかってきましたし、ヘヴィメタルの正確性やスピードにも凄く感心して「いつか、こういうふうに弾けるようになりたいな」とかなりますし。今まで考えたことがないようなことに目覚めました。楽器に触れたことがないユーザーの方々も、たぶんそういうふうになっているんだろうな、と思っています。
あと、自分のギターそのものに対する知識も相当増えました。時々他の人にギターの説明をしながら「なんでこんなことできるようになったんだろう? 2年前は、こんなこと全然知らなかったのに!」って(笑)。まったくプレイしたことがない人でも、こういうふうになります。
―― ベースは演奏されるようになりましたか?
肥後氏:ギター優先でベースはまだ本格的にやっていないんですけど、一応は触りました。何も知らない人にいわせると「ベースなんて簡単だよ! ギターとベースを比べたら、ギターのほうが全然難しいね!」ということだったんで頭のなかでなめていたんですけど、実際弾いてみると「ギターとまったく違うものなんだな!」ということがわかり、凄く面白いと思いました。ベースは、もうちょっとギターが上手くなってから挑戦したいなと思います。
■ 楽曲の収録は大変!!
―― DLCの日本向け配信スパンは、北米などと同じものになるのでしょうか?
肥後氏:最終的には一緒になります。日本の曲も今後入れていきたいという意向はあります。
―― Twitterキャンペーンでリクエストを募集されていましたが、それが反映される可能性はありますか?
肥後氏:ライセンスなど色々と難しいところはありますが、ぜひやっていきたいです。ただ、曲もテクニックとか色々なハードルがありますので、それを全部クリアしたものから選んでいくという形ですね。
―― 楽曲はライセンシーの塊ですから、このあたりは本当に難しいですよね。
肥後氏:これについては1日くらい話ができますね!(笑)。今までライセンシーに関わるプロジェクトは、やったことがなかったので……。RPGや格闘ゲームのテーマ曲は(数が少ないから)簡単じゃないですか。でも、これだけの楽曲を全部クリアしようとすると……本当に! どれだけライセンシーが奥深いものか、今回勉強になりました。
―― しかも“曲単位”ですものね。
肥後氏:曲単位に対して権利を持つ人が、ものによっては20人くらいいる。それを全部クリアしないとライセンスしてもらえない。場合によっては、残り1パーセントを誰が持っているかわからないという話もある。その人が亡くなっている場合は、その人の家族に確認して契約書を見つけ出したり、そういう長いものまで本当に大変なんです。
凄く欲しい曲でも、残り1パーセントだけクリアできなかったものもあるんです。本当に泣けますよね!
―― 見切り発車は絶対できませんからね……後から「俺は許可してない」なんてことになったら大変ですから。ちなみにゲームディスク収録の51曲で1番大変だったものはなんでしょうか?
肥後氏:1番難しかったのはどれだろう……実は、1番最初にとれたのは「Nirvana」なんですよ。あれは凄く嬉しかった。そのおかげで他の曲がクリアできたというものあったんです。なぜなら、その後に他のライセンサーにアプローチを取るときに「Nirvanaも入るんですよ」というと「あぁ『Nirvana』が入るんだったら、我々も」ということがあった。あと「The Rolling Stones」も結構早い段階でクリアしました。
―― 大御所ほど苦労しそうなイメージがありますが、あながちそうでもないんですね。
肥後氏:マネージャーさんとかと直接ミーティングして、実際に弾けることを見せると「あぁ、これだったらぜひ」といっていただけた。こういうゲームは過去にも企画段階でいくつもあったみたいで、最初にミーティングしたときライセンシーの方々は「こんな企画、もう何回も聞いたよ。どうせなくなっちゃうんでしょ!?」、「実際そんなふうに機能しないんでしょ?」という方もいたんですけど、実際にお見せしたあとはご理解いただけてライセンシーをクリアしてもらえました。
―― 今後、ぜひ違う楽器バージョンも見てみたいですね。
肥後氏:発売後も色々なリクエストがありましたね。アンケートで「次はどんな楽器が欲しい?」ときいたとき、2番目に出たのがやっぱりベースだったので、まずは対応しようとしました。次はなにがいいかなぁ……。
―― オルガンとか?
肥後氏:キーボードは個人的にもあっていると思うので、ぜひやってみたいものですね。ドラムもぜひやりたいんですけど、難しいところはありますね。まず叩く音がうるさいじゃないですか(笑)。ギターやベースは抑えて弾けばそんなにうるさくないじゃないですか。でもエレキドラムって結構……本物に比べたら全然うるさくないんですけど、アパートでプレイしたら絶対に隣人から苦情がきますよね。でも、ドラムにも興味があるので今後も考えていきたいです。
―― DLCは今後も継続的に続けていかれるのでしょうか?
肥後氏:もちろん続けていきます。企画段階でたくさん出す予定でした。DLCだとさらに幅広いジャンルを提供できますので、ゲームディスクに収録するには抵抗があるものも、DLCで出してみたら……たとえばブルースなどは「ためしに出してみよう」という形だったんですけど、意外とヒットして凄く好評だった。「今後ブルースも時々足していこうかな」とか。そういったゲームディスクに収録されていないものも試せる、っていうことでは面白いですよね。
ヘヴィメタルも「Megadeth」、「Judas Priest」などを出したんですけど、今後も「Lamb of god」などいくつか。そういう曲は個人的に「一生練習しても弾けないだろうな」というのがあるんですけど(笑)。すんなりマスターしてる人もいますからね。このあいだYouTubeで見たのは「Megadeth」の「Hanger18」をほぼ100パーセントでプレイしている。でも、その人はゲームを買って初めてギターをプレイし始めた。1年以内でこの曲をプレイできるようになったって、恐ろしいですよね!
うちのスタッフのなかでも、アシスタントプロデューサーがそう。彼はそれまでギターを弾いたことがなく、初めQAで関わっていたので毎日2~3時間必ずプレイしていた。そのおかげで、今はほぼそれくらいのレベルでプレイできるんですよ。うちのギタリストたちにきくと「彼はたぶん、7~8年プレイしている人のレベルでできている」と。1年ですよ! 凄い猛スピードでスキルアップしてますよね。それはもちろん毎日練習しているのと、その人の素質があったと思うんですけど。
―― 「ロックスミス」からギターを初めて、将来ロックバンドで活躍する人が出てくるかもしれませんね。
肥後氏:出てきて欲しいですよねぇ! それは個人的にもチームの夢でもあるんです。たとえば10年後「どういうきっかけでプレイしたんですか?」、「『ロックスミス』というゲームがあって、それをプレイした」とか、そうなったらいいなぁ。
―― バンド名も「ロックスミス」とか。
肥後氏:いいですねぇ!(笑)。
―― そして新しく「ロックスミス」に楽曲を提供する側になったりするといいですよね。
肥後氏:それくらいになったら、さらに面白い話ですね! 「ロックスミス」でプレイするようになった人の曲を収録しました! って。いつかそれが叶うのを楽しみにしています。
―― 最後に、発売を心待ちにしているユーザーの皆様にメッセージをお願いします。
肥後氏:このゲームは開発チームが本当に色々な考えを込めて、できるだけ多くのユーザーに楽しんでもらえるよう、ギターを触ったことがない人でもプレイできるようになるよう試行錯誤した作品です。本当にすんなり、いつの間にか気づいたらギターがプレイできるようになるので、ぜひ試してみてください!
―― 本日はお忙しいところを本当にありがとうございました。
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(2012年 10月 11日)