インタビュー
「World of Tanks」×山岡晃氏コラボ決定記念インタビュー
「『WoT』サウンドチームと一緒に取り組むことで、何かインパクトを与えられたらいい」
2017年8月17日 00:01
今年の7月に敢行されたWargaming.net主催のミンスクツアーには、ひとつ大きな秘密があった。「サイレントヒル」シリーズ、グラスホッパー作品のコンポーザーとして知られる山岡晃氏がツアーに参加し、ミンスクオフィスにて山岡氏が「World of Tanks」とコラボレーションすることが発表されたのだ。
その具体的な発表は、8月22日より開催されるGamescomで行なうため、コラボの存在はもちろんのこと、「山岡晃氏がミンスクにいること」自体もNDA(秘密保持契約)の対象となり、参加メディアはなかなか難儀させられた。
というのも、山岡氏は今回、文字通り“スペシャルゲスト”としてツアーの全工程に参加し、Wargaming.netのミンスクオフィスで行なわれたプレスカンファレンスに出席しただけでなく、社内見学やミリタリーミュージアム「スターリンライン」の見学、かつてはWargaming.netも入居していたIT企業向けのスタートアップ「ベラルーシハイテクパーク」の視察など、我々と一緒のバスに搭乗して行動を共にしたため、秘匿するのが大変だったのだ。
正直に告白すると、山岡氏、ミンスクレポートに後ろ姿や後頭部という形で、実はすでに出まくっている(参考記事)のだが、ようやく撮り溜めた正面からのショットを使える日がやってきたというわけだ。音楽家、プロデューサーとしてクールな山岡氏だが、スターリンラインでは、日頃なかなか見られない山岡氏の姿を見ることができたので、写真と共にお伝えしたい。スターリンラインのレポートは以前紹介しているので、そちらを参照いただきたい。
本稿では、ミンスクオフィスでのコラボレーション発表直後に実施された山岡氏のインタビューの模様をお届けしたい。今後、コラボレーションについてはGamescomを皮切りに具体的な情報が続々発表される予定となっているので、引き続き注目していきたいところだ。
ベラルーシで人気の山岡氏、「日本とベラルーシの旋律は似ている」
――今回、ミンスク、ベラルーシに来られてどのような印象を持ちましたか?
山岡氏:ベラルーシ3回目なんですが、いつも来る時は冬なんです。初めて遠くが見えるときに来たんで、キレイな街だなということと、10年前に旧ソ連から独立して、そのときはモスクワ、サンクトペテルブルグ経由で来たんですが、そことも全然違う、独立した国として、治安もめちゃめちゃいい感じが伝わって来ました。ミンスクはすごくいい印象ばかりですね。
――楽曲を制作する環境としてはいかがですか?
山岡氏:日本で昔流行った「ザ・ピーナッツ」がこちらで大ヒットしたそうです。「100万本のバラ」もそうですが、日本の音楽と、こっちの音楽って旋律が似てるんですよね。ポーリュシュカ・ポーレとか、テトリスの音楽はまたちょっと違いますが、音楽という面では、日本人の感覚と近いものがあるなというのは、こっちに来るたびに話をします。演歌も、こっちで流行ってますし。
――山岡さんがベラルーシで絶大な知名度と人気を誇るということを知って驚きました。日本のみならず、こちらでも人気なのはなぜなんでしょうか?
山岡氏:というか、僕、日本で全然人気ないですよ(笑)。
――いやいや、そんなことはないでしょう(笑)。
山岡氏:ベラルーシで人気なのはなんでですかね、僕も聞きたいぐらいです。海外はよく行かせていただいてて、コンサートやイベントのゲストとして呼ばれたりもするんですが、なんでだろう、未だに答えがわからないんですよね。
――こちらでは「サイレントヒル」のようなホラーゲームが人気だったりするのでは?
山岡氏:「サイレントヒル」が発売されてもう20年くらい経っているにも関わらず、若い小さい子供とか中学生、高校生とかもよく、イベントとかに来られて「好きです」と言ってくれたりします。「サイレントヒル」がきっかけっていうのは大きいでしょうけど、なんでですかね? 僕もそれを知りたいんですよね。
――それでは今回のコラボについて、山岡さんとWargamingの出会いから教えて下さい。
オザン・コチョール氏:我々は社内Facebookみたいなものを持っています。そのFacebookでミンスクの社員数人が、「これから山岡さんがベラルーシに来て、コンサートをやります。みんなで見に行こう」みたいな話がありました。ベラルーシでは「World of Tanks」のペイントが施された飛行機があるんですが、山岡さんがちょうどベラルーシにいた時、その写真を送ってきて、「今ミンスクに居ます。『WoT』の飛行機すごいですね」というメッセージを頂いて、やはりシナジーがあると思って山岡さんに声をかけたんです。「もしかしてミンスクですか? うちの社員も何人かコンサート行きますよ。」と言ったら、山岡さんが「私も『WoT』やってますよ」と言うことだったので、「じゃあ、今度ランチをしましょう」って招待させていただいて、ランチをしたら、山岡さんから「WoT」との出会いとか、「WoT」のプレーヤーとして色んな話を伺いながら、「一緒に何かしませんか?」みたいな話を軽くしたら、山岡さんも「ぜひぜひ」ということでした。その後、東京で何回もお会いして、そこから色々ブラッシュアップしながら、コラボレーションのプランを作り始めましたというのが今の段階です。
――それは、いつぐらいの時期ですか?
山岡氏:2016年末ぐらいです。飛行機の写真をアップしたのが2016年の10月ぐらいですね。
――オザンさんから「何かやりませんか?」って話がきた時、最初どう思いましたか?
山岡氏:「何するのかな?」っていう(笑)。僕もまだTier IIIぐらいで、そこまでめちゃめちゃコアゲーマーではないのですが、ただ「WoT」という、Wargamingというブランドのあるメーカーと、何かやるというのは、自分の中でもチャレンジというか、やったことのないコラボレーションもぜひやってみたいなと1回話はしていたのですね。単に音楽というだけではなくて、何か他の、音楽以外の何でも、一緒にコラボレーションできたらなというのは、僕の中でも思ってはいました。
――現時点(7月4日時点)では、コラボの全容はまだお話できないということですが、どういったコラボが動いているのか教えていただけますか?
オザン氏:全容はまだお話しできません。山岡さんは作曲家であり、ディレクター、プロデューサーでもありますので、色々な形でご協力いただくことになりますが、実は具体的に何をするかといったプランはもう作ってあって、これからロールアウトするところです。今、まず最初のステップとしてオーディオチームと一緒に管弦作りをしています。これから面白いサプライズをプレーヤーさんのために作っている状態ですね。
大事なのはプレーヤーのために、いろんな活動をすることです。音楽づくりもそのひとつですが、それだけではなく他のことも考えています。ご存じだと思いますが、Wargamingはプレーヤーさんに対するサービス、社内ではプレーヤーエクスペリエンスと呼んでいるものですが、プレーヤーのためにいろいろとやっていきたいと強く思っている会社です。山岡さんの才能を活かして、これからいろいろな面白いことをやっていきたいと思います。
――山岡さんはゲームプロデューサーであり、音楽の監督もされていますが、「WoT」のゲームデザインに1枚噛むようなコラボの可能性もありますか?
山岡氏:それはやりたいですね(笑)。単に1曲書きました、1曲何かオーディオチームと一緒にやりましたというのではなくて、そのもう1個先みたいなものをやりたいなとは思います。
――コラボの全体像はまだ調整の余地はあるんですか?
オザン氏:いや、実は結構決まっています。年末までのプランまで出来ています。
――東京ゲームショウ(TGS)あたりで詳細が明かされる感じですか?
オザン氏:TGSは当然ですよね。TGSの前にもGamescomがありますし、TGS以降も年末までに向けてまた色々なイベントがありますので、機会を作って面白いことを一緒にやりたいなと。「World of Tanks」はプレーヤーさんが多いので、プレーヤーさんとどんな風に上手く交流できるかとか、プレーヤーさんと一緒に何かしたいです。
――Gamescomではどのようなことを発表する予定ですか?
オザン氏:Gamescomではある程度山岡さんにこういうことをお願いしているということは共有したいと考えています。まず、1曲山岡さんに作曲をお願いしています。ゲーム内には日本の戦車もあるし、日本のマップもあるので、日本をテーマにした楽曲をお願いしているということを発表しようと思っています。
先日、ヨーロッパ向けにスウェーデンのメタルバンド「サバトン」とのコラボを発表しましたが、サバトンとも何か一緒にしたいと思っています。それは、サバトンはヨーロッパ側でとても人気があって、Gamescomにも勿論いろいろ関わりがあるので、“山岡さんとサバトン”というアーティスト同士のコラボもしたいと思います。
――作曲については、ベラルーシで生オケで録音したりする予定なのですか?
山岡氏:作曲と言うと、いまオザンさんが仰ったように僕が何かをしてというよりも、さっきも言ったオーディオチームと一緒に何か物を作るということをしたいと思っているのですね。だから「僕だけでこの曲を作りました」というよりは、Wargamingのメンバーと、このオーディオセッションなり、さっきの日本の何かというものを一緒に作るということをやりたいと思っています。だからいまおっしゃったような生オケでの収録もやりたいといえばやりたいとは思いますね。そこも含めてオーディオチームとは、 どんなことができるかを詰めているところです。
――作曲作業はどのくらい進んでいるのでしょうか?
山岡氏:作曲作業でいえば、ほぼほぼ完成しています。今アレンジについて「ここ、こんな風なのがいいんじゃないの?」とか、メロディーの乗せ方とかというのも、ゲームに合わせた形というかフォーマットを、オーディオチームと詰めているところです。
――山岡さんが手がけた曲のテーマというのはどういうものですか?
山岡氏:テーマは、結構好きにやっている感じなんです(笑)。「World of Tanks」はバトルゲームではありますが、それほどアグレッシブな感じではなく、ゲームの邪魔をしない、「World of Tanks」が持っているセンスというか、ニュアンスを汲んだものを、というところだけですね。
――山岡さんらしさみたいな部分はどのあたりで表現されていますか?
山岡氏:日本の感じというのはちょっと意識はしていますね。それもちょっと面白くて、先ほども話しましたが、曲ができて聞いて貰ったときに「これロシアの曲? ロシアの何かをテーマにしてますよね?」と言われたんですよね。「いえ、ロシアのテーマではなくて、日本なんですけど」って(笑)。ロシアの雰囲気と日本の雰囲気ってそこでも同じなんですよね。日本を意識しつつも、別に日本っぽいと言うわけではないが、何か日本人の昔の音楽に何か似てるようなものは意識はしていますね。
――先ほど行なわれた即興演奏も、どちらかというと昔っぽいメロディラインでしたね。
山岡氏:あれ実は、何にも合わせてないんですよね(笑)。演奏の前にガヤガヤ遊びながらやっていたんですが、何も決めていなくて。これ何が始まるんだろうという感じでした。だからあそこで演奏してる人みんなで自然にやったのがあの感じなんですかね。ちょっと日本っぽいっていう。
オザン氏:さっきのは完全にジャムですね。決めていたのは最初の1曲をログイン画面の曲にするということくらいで、それ以外は何も決めていませんでした。そのままの流れで演奏しただけでした。
山岡氏:オザンさんが皆さんの前で喋った時、みんなすごくシリアスで真面目な雰囲気で、「オザン、まずくないかこの雰囲気」とか言いながら、その後にやった演奏ですね(笑)。
――もともとの作曲というか、音楽にはロックから入られたんですか、弾き方を見てなんとなく思ったのですが
山岡氏:ロックは好きでやっていて。
――作曲もギターですか?
山岡氏:ギターだったり、鍵盤だったり、両方ではありますね。
オザン氏:ちょっと補足しますと、「WoT」にロックの曲が入るということは一切ありません。基本的にはオーケストラ的な楽曲がメインです。「World of Tanks」のBGMには、そういうガイドラインがあるので、ある程度世界観や、ゲームのオーディオのガイドラインを守りながらやっていただいている状態です。その上で日本らしく、山岡さんらしく、というのが混ざった形にしていこうと思っています。
それ以外にも、ご存知かもしれないですが「WoWS」の場合は様々なアニメとコラボをやりました。それに合わせてオリジナルサウンドトラックとしてCDやLPなども出したのですが、今回のコラボももちろんそういう展開も考えています。メタルやロックのリメイクをゲーム内に実装することはありませんが、別の展開で行なうことはもちろん考えられます。
山岡氏:僕の理想としては、僕が作曲というよりも、コラボレーションして“このエリアの音楽を作る”みたいな感じで捕えていただけるといいなと思います。僕だけがやっているのではなくて、このエリアなり、日本というものを、僕とウォーゲーミングで何か作るみたいな雰囲気のほうがいいかなと思います。サウンドチームとの共同作業ですね。コラボレーションという感じで、僕が音楽を提供したというのとはちょっと違うかなと思います。
――山岡さんはグラスホッパーのコンポーザーとして、とてもお忙しいと思いますが、なぜWargaming、「WoT」とコラボしようと思ったんですか?
山岡氏:ゲーム業界でゲームの音楽だとかゲーム作りをやってきて、ミンスクという土地やベラルーシに来る機会は多かったんですが、実はWargamingがベラルーシの会社だということは知らなかったのです。Wargamingってベラルーシの会社なんだ、「World of Tanks」ってあそこで生まれたゲームなんだと。良く訪れていた場所だけに、そこでの親近感というか、繋がった感みたいなところで、あそこの国にある、あそこのゲーム会社の人たちと何か一緒に作ったら面白いかなみたいなと思ったんですね。
自分へのチャレンジじゃないですが、自分でもこの後何が生まれてくるのか、どんなふうになっていくのかも、まだわかっていなくて、一体どんなものができるのかという楽しみがあります。ただ単に、「音楽を1曲作曲して下さい、以上。」だったらあまり面白くないかなと思いますが、ミンスクに来させていただいて、オーディオチームや他のメンバーと会って、こんな風にやっていきましょうという話もしつつ、そういうものだったら楽しいなと思いましたね。
――山岡さんはゲーマーとしても知られていますが、ゲーマーとして「WoT」を遊んでみて、どの辺りが気に入っていますか?
山岡氏:僕は、Bungieが「Halo」の前にリリースした「Marathon」というシューティングゲームを当時Macでプレイしていて、日本代表というと語弊があるんですが、イベントでTシャツを貰ったことがあるくらいシューティングが大好きなんです。
PCだけじゃなくてコンシューマーのPS4などでも遊んでますが、RTS(リアルタイムストラテジー)も好きで。昔、入院した時に、友達が僕がRTS大好きだって言うのを知っていて、ノートPCに「Age of Empires」だの色んなRTSをインストールして持ってきてくれて、そんなにいらないよって(笑)。
それで、「WoT」ってシューティングともとれますが、タンクで影に隠れてシュッシュと撃ったりはできないじゃないですか。ある程度、戦略的な動きも必要になるという。知識とかはそこまでないですが、そこの遊びが上手くミックスされた独特な遊び感というのが「WoT」しかないなということで、「WoT」でしか味わえない面白さとして、そういうというところを気に入っています。
――モチーフとしての戦車にも興味はあるんですか?
山岡氏:ありますよ。小学校の時からラジコンで戦車を作っていたぐらいで。さっきもWargamingのスタッフに、「PS4だったら左右のアナログスティックを右キャタピラと左キャタピラに割り当てて、両方前に倒したら前進できるようにできない?」って言ったら、「確かにそうだけど、そうすると砲塔が回せないよね(笑)」とか、そんな話です。小学校の時ずっと遊んでいたので。中高の時に「大戦略」とか、戦車だけじゃないですが、戦争物は大好きで遊んでいました。
――最近注目されているゲームミュージックは何かありますか?
山岡氏:ゲームミュージックではないですが、「Inside」のサウンドは凄いなと思います。「Inside」の音楽は“"これはないわ”と膝を打つというか、音響やサウンドデザインがハンパないなとは思いますね。
――それはどの辺りで?
山岡氏:ゲームサウンド担当というところで考えると、僕はずっとゲーム音楽のなかで音楽的に良いものを作ろうとは全然思っていなくて、音楽を聴いたときにゲームが面白くなる、ゲームが演出的に良くなる、あくまでもゲームををより良くするための補助的な役割だと考えているのです。それを徹底的に「Inside」はされているなと思います。もちろん音楽ゲームではないですが、ゲームの遊びにサウンドがすごく活かされている。遊びとしてもそうですし、演出もそうですし、マッチングの仕方は半端ないと思っていて。
それで先ほどの話まで戻るんですが、「WoT」に僕がもし作曲で入っていたら、多分ゲームとしては面白くないというか、単に僕がやったみたいな形で終わると思うんです。ちゃんとそこで演出ではないですが、こちらのチームとも一緒に何かを作るという形で何かコラボレーションをやれば、もっと面白くなると思います。インサイドは特にそのはしりというか、サウンドとしてこれがゲーム音楽なんだろうなみたいには凄く思いました。
――システム的なところのサウンド作りというところも検討はされているんですか? 例えば、「WoWS」だったら、バイタルを抜かれたときにドックンドックンっていう音が聞こえますが、ああいうのが「WoT」に入るのかなという。
オザン氏:今はそういうのは特に入りません。
――ちなみに今回のコラボというのは、グラスホッパーの山岡さんとして?
山岡氏:そうですね。そうです。
――今1番お忙しい仕事って何ですか?
山岡氏:今だと「LET IT DIE」の運営があって、忙しいっていう言い方はちょっとおかしいですが。それがメインですね。
――アップデートに合わせて山岡さんが新曲を書いているんですか?
山岡氏:「LET IT DIE」は、今回は作っていないという言い方はおかしいのですが、楽曲を外部のコラボレーションでやっているので、そこで新しいアーティストの参加はありますが、特に僕のほうでスタジオの作業をしているわけではありません。
――では「WoT」のコラボに集中できる環境ではあるわけですね?
山岡氏:そうですね。でも、「LET IT DIE」もありますし、時間があったから、というよりも面白いから一緒にコラボしようよというところだけです。
――ただ、グラスホッパーでこれまで作られてきた楽曲と、「World of Tanks」のサウンドには、結構距離がある感じがするんですが、その辺りはどうですか?
山岡氏:実はそんなに感じないんですよね。オーケストラでの収録も、ゲーム以外のアニメとかTVドラマとかでも作ってはいますし、「WoT」の中で流れている音楽にもそれほど難しさというか、「これ、俺、全然できないわ」っていうというのも全然なかったので、そこはあまりハードルは感じていないですね。
――今回、オーディオチームとの共作ということを強調されていますが、ミンスクのオーディオチームとコミュニケーションを取っていて、カルチャーの違いは感じますか。
山岡氏:最初は海外の方とのコラボって、いろいろ言語の言葉だったり、クリエイティブ面で衝撃はありましたが、もう結構色々なところで海外の方とはコラボレーションをやらせていただた経験があるので、今日もWargamingの話をしたりとかしていて、それほどハードルは感じませんね。
――音楽を作ると言う意味においては、世界共通の言語がある?
山岡氏:そうですね。変なハードルみたいなものは感じません。
――彼等に対して何かオーダーしたり、されたりとかというのは?
山岡氏:なんとなく骨子みたいな、音楽的にピシッとなっていなくても、1回渡して、乗っけてもらって、「こんなふうなアレンジにしたよ」とか、「ここはこんなふうにした方がおもしろくない?」とかというのはありました。そこでの自分の気づきというか。音楽という1個の作品ではなくて、「そんな風に考えていたんだ」、「そんな風に思っていたんだ」とか「その意見おもしろいよね」というのはいろいろありましたね。
オザン氏:やっぱり日本のマップとか音楽を作るためには、ミンスクで作られるよりも、本物の日本人にお願いした方が、リアルで良いものができあがるんですね。当然そういう気持ちがあって。文化的な背景からみても、単純に日本の音楽と分化を理解しているのはこちらのオーディオチームではなくて、山岡さんですので、それを生かすためにも自由にさせたいという気持ちは強くある。ただ、ミンスクのオーディオチームが、ゲームにどういう風に実装させるのか、作られた音楽をどんな風に上手く埋め込むのかは、彼らの仕事で、今のお話を聞いていると、良い関係にたどり着いたのかなと私は思います。
――オーダーのバランスとしては、日本風なテイストのものを、なんとなく入れて欲しいというオーダーはありましたか?
山岡氏:日本といっても三味線だとか琴とか尺八みたいな、日本の昔の楽器だったり、音楽だったりもあります。実際「WoT」の中で流れる日本の音楽というのを考えた時に、楽器は確かにそういう日本っぽい楽器が合うのかも知れませんが、それって何だろうな? ってなった時に、オーディオチームと話して、日本の音楽はベラルーシの音楽と似ていて、さっき言ってたようなザ・ピーナッツの音楽が好きみたいな感じから始まって、じゃあ日本の音楽っていうところで、そんなにザ日本、日本、日本みたいなところを意識しなくてもできるかなあと。
ベラルーシの音楽を聴いていると、「ああ、日本っぽいよね。」っていうような感じはありますね。先ほどもスタッフと、「ロシアの民謡みたいだよね、ロシアの民謡ってこうでさ、ああでさ」みたいな話はしてました。言っていることは日本の音楽と変わらなくて、そこもおもしろかったです。日本日本って言わなくても、ロシアの音楽をやっていれば、日本になるのかもしれないって。
聞いていると、僕もミンスクとかベラルーシ、モスクワとか来てるときに、日本ぽい音楽と言わなくても、同じモノが旋律とかセンスにあるので。これが、メキシコとか北米だと、多分通じない感じなのかなとは思いますね。これって、ベラルーシならではなんだろうなみたいなのは感じますね。
オザン氏:せつなくて懐かしくて。昔の日本の子供の音楽、ひな祭りとかの曲、実はちょっとせつない感じがしませんか? そういうのは、日本にもベラルーシにも、響きとしてはよくあるようなフレーズがあるんです。曲とかここで、オーディオチームのものを聴いた時に、あれなんだか聴いたことがあるような。実はもうザ・日本向けという曲なんですね。
――たとえば、歌曲の「カチューシャ」の旋律は日本人はグッときますが、あんな感じですか?
山岡氏:ああ、そうですね。そういう感じですよね。
――大きな質問なんですが、今回のコラボによって山岡さんは世界の「WoT」ファン、それからゲームファンにどのようなインパクトを与えたいと考えていますか?
山岡氏:僕だけで、僕が音楽を1曲作って、それが「WoT」というゲームの中に入りましたと言ったときのインパクトではなくて、僕がWargamingのオーディオチームやPR、マーケティングなどいろいろなチームと何か会話をしたり、「こんな風なあんなことをしようよ」というような、1曲を書くだけではなくて、そこに一緒に入り込んでやることで生まれてくるモノが、相当インパクトのあるものになればいいなと思います。
それは自分の口で言うのもおこがましいですが、僕がここの会話に入らなかったら生まれなかったであろう、みたいな。その力添えをして新しいモノを生み出したいなと思っています。それは日本人のなんとか、という意味ではなくて、僕はずっと戦争ゲームを作ってきた訳ではないし、ホラーゲームをバカバカやってきたわけではないですけど、自分の持っている感覚だったり、考え方だったりというものを話したりしながら、そこで生まれるモノがなんなのか? 僕もまだ何かわからないですが、それが今まで「WoT」に今までなかったものとして、何か影響を与えられたらいいなという。それは奇をてらったものでは無いと思うので、それが自分なりに出せるいい結果として生まれればいいなというのを願ってる感じですよね。
オザン氏:私が1番やりたいのは、今までゲーム業界でやったことのないぐらいのレベルのものを実現することです。もうプランがあるんですが、それを是非Gamescom以降には詳しく説明したいと思っています。
――今回のコラボに期待を寄せるゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
山岡氏:これは全然関係ないのですが、数年前に「World of Tanks」で美術教室をモチーフにしたTVCMがあって、僕はあの女の子と友達なんですよ。それで彼女から連絡がきて、「山岡さん、私、ゲームのCMに出るんですよ。」、「あーよかったね。『WoT』って凄いじゃん」っていってたら、2年後にに自分がこういう仕事をしているという。いろんなご縁を感じましたよね。
自分でもこういう縁があって「WoT」というゲームをもっと知るようになりましたし、僕自身も何か新しい、僕が何かPRや宣伝塔じゃなくて、僕がオーディオチームに入ったり、日本のウォーゲーミングの方と一緒に何かをすることで、何か新しい形を提案できたり、作れることがあって、それが日本のユーザーさんにも楽しんでもらえるようなものになればいいなと、そういう風には思っていますね。
――ありがとうございました。期待しています。