インタビュー

「World of Warships」プロデューサー柳沼恒史氏インタビュー

「はいふり」コラボの詳細から、加賀の価格、武蔵の登場時期まで聞いてきた

4月7、8日収録

インタビューに応じる柳沼氏

 4月8日、「World of Warships」とアニメ「ハイスクール・フリート」のコラボレーションの詳細が日本と台湾で同時発表された。実機デモや、仕様の解説まで行なわれたのは日本だけで、台湾では「World of Warships」APACプロデューサーの柳沼恒史氏から、APACのファンに向けて、今夏より「はいふり」コラボが行なわれることが最新トレーラーと共に報告された程度だったが、台湾ファンの反応は驚くほど大きく、「はいふり」コラボにより「WoWs」がまた一段と盛り上がることが期待できそうだった。今回は、発表のために台湾を訪れていた柳沼氏にインタビューする機会を得たので、ステージでの発表内容も合わせてまとめてお伝えしたい。

【「World of Warships」ステージ】
「World of Warships」ステージで「はいふり」コラボを発表する柳沼氏。来場者からは拍手喝采で、台湾でも「はいふり」は人気アニメのようだ

「はいふり」コラボについて

「はいふり」コラボの基本内容

「五十六(いそろく)」というネコの艦長と、プレミアム艦として晴風(HSF HAREKAZE)、アドミラル・グラーフ・シュペー(HSF GRAF SPEE)を追加する。五十六は、ミッションをクリアすることで獲得でき、日本艦艇の艦長として使える。晴風、アドミラル・グラーフ・シュペーには専用ミッションも用意される予定。

「はいふり」コラボの大きな特徴

「WoWs」で初めてネコが登場するところ。見た目は可愛いのに、声はオッサンというところまで含めて、五十六のようなキャラクターもしっかり持ってくるということがとても大事だと私も畑井スペシャリスト(畑井翔「も思った。「五十六」ゲットミッションについては、現在畑井スペシャリストが企画しているところ。「アルペジオ」コラボに近い「チャレンジ」という形になると思う。

晴風、アドミラル・グラーフ・シュペーの基本仕様について

晴風は陽炎級、アドミラル・グラーフ・シュペーは実装済みの同名の艦艇をベースに、アニメの設定にできるだけ忠実に再現する。兵装や性能は若干変わる見込みで、それに応じて最大Tierが±1変更される可能性がある。価格はTier相当で、コラボだから高くなるということはない。ビジュアルについてもまだ確定ではなく、今後変更される可能性がある。

晴風、アドミラル・グラーフ・シュペーの特殊要素について

いくつか検討されており、すでに発表されている要素の1つがマルチボイス。晴風は艦長 岬明乃、副長 宗谷ましろ、アドミラル・グラーフ・シュペーは、艦長 テア・クロイツェル、副長 ヴィルヘルミーナと、それぞれ2人分のボイスが収録されており、2人1組による掛け合いが楽しめる。同じシーンでも複数のボイスをそれぞれ収録しており、ランダムで艦長→副長、副長→艦長と掛け合い方が変わる。

そのほか、アニメの世界観を忠実に再現した要素を導入したい。現在色んなアイデアが出ており、ゲームバランス的に問題のない形で変更を加えたい。たとえば、晴風はその回避性能の高さをカモフラージュ的な処理で高めるとか。いずれにしても非常にユニークな船になる。また、ビックリマークを「はいふり」風にしたり、東京ゲームショウの時に無償配布した旗のような追加要素も現在検討している。

【晴風】
晴風の基本性能
艦長 岬明乃、副長 宗谷ましろ

【アドミラル・グラーフ・シュペー】
アドミラル・グラーフ・シュペーの基本性能
艦長 テア・クロイツェル、副長 ヴィルヘルミーナ

晴風の対空兵装について

1番大事なのはゲームバランスで、ゲームとしておもしろくないとダメ。「はいふり」の世界は対空兵装が不要な世界だが、実際には機銃は積まれており、ないことはない。アニメの設定をできるだけ忠実に再現しながら楽しめるものにしたい。

実装時期について

畑井スペシャリストが発表した6月というのはあくまで目標。もう日本では言ってしまった(編注:台湾では夏としか言っていない)ので間に合わないと怒られてしまうが、時期はまだ調整中で後ろにずれる可能性もある。

機関長や航海長などその他キャラクターのボイスについて

今のところその予定はないが、ユーザーのフィードバックを見てから考える。大事なのはどれだけユーザーが受け入れてくれるのか。日本や台湾ではアニメのコラボは比較的ウケがいいが、同じアジアでもオーストラリアやシンガポールでは反応が全然違ったりする。また、現時点で、アジア限定ではなくなりそうで、アニメ好きが多いアメリカにも展開しそう。「はいふり」コラボはグローバル展開になるかもしれない。そこでのフィードバックも見てから決めて行きたい。

その他のコラボについて

「はいふり」以外にも様々なコラボアイデアがあって、9月までに新たなコラボを発表したい。選択肢の中にはアニメもあるし、アーティストとのコラボもある。「World of Tanks Blitz」の大河原邦男氏とのコラボのような展開もあるかもしれない。コラボをやるためには本社の承諾が必要だが、世界的に有名であればあるほど理解が早いのでやりやすい。

2016年に「WoT Blitz」リリースされた大河原邦男氏デザイン戦車「O-47」

新艦艇について

フランス巡洋艦について

フランスの巡洋艦ツリーの準備を進めている。特徴は長い射程、最大射程の長さと砲の強さ、それを活かしたアウトレンジ戦法が基本戦術。今試験的に導入を進めているが、特に高Tier帯のバランスが取れていない、ハッキリ言えば使い物にならないと感じている。TierVまではかなり強いと言えるがそれ以上のTierはやや弱い。同Tierの巡洋艦と比べて戦力として見劣りがする。自身でも使用しているが、フランス巡洋艦は砲弾がレーザービームのように低い弾道で、砲門も多く、弾速も速い。その特徴を活かした調整を今後やっていって、多くの人が使ってみたいと思えるような仕上がりにしていきたい。

フランス巡洋艦ツリー

加賀について

現在テスト中で、4月中にも本サーバーでテストする予定。価格は調整中で、TierはVII。TierVIIにはSaipanという優秀な空母がいるので、そこに見劣りがしない性能に調整したいが、ちょっとまだ満足できる内容になっていない。ただ、BelfastやSaipanなどがそうだが、プレミアム艦艇がやや有利な状況になってしまっている。これはWargamingの「Free to Win」の価値観と開きがあり、今後、イギリスの戦艦Hoodの販売も予定しているので、全体としてバランスが取れるように調整していきたい。

日本正規空母加賀

武蔵について

「WoWs」は日本のユーザーが一番多いため、アップデートの基本方針は日本のユーザーにまず満足して貰うことが大事。飽きられないようにするためには日本のツリーを充実させることが必要不可欠だが、頻繁にツリー構造を変えるわけにはいかない。「武蔵」はTierX戦艦大和の姉妹艦で、我々としても出したいし、要望も多いが、仮にTierXのプレミアム艦として武蔵を出しても誰も得しない。

そもそもTierXのプレミアム艦を出すことが妥当なのかということに加えて、武蔵が好きなビギナーが購入して、最上級のTierXバトルに参戦してきても、有効な戦力にならないだろう。このため「武蔵」のようなスペシャルな艦艇は、「World of Tanks」のような大会の優勝賞品として提供する形を検討している。現在大会を準備しているが、それの賞品が武蔵になるかもしれないし、実際に北上はそういう形で提供する準備を進めている。

「はいふり」トレーラーに登場し、魚雷を浴びる武蔵(実際は同型艦の大和)

パンアジアの艦艇について

過去に実装されたLoYang(洛陽、TierVIII駆逐艦)、AnShan(鞍山、TierVI駆逐艦)のような形で、アジア諸国の艦艇を増やし、パンアジアだけのツリーを年内に完成させたい。

パンアジアツリーには台湾の艦艇も登場するようだ

その他のアップデート計画について

コメンテーター募集について

「WoWs」では、公式大会、それに準じたユーザー大会の支援について準備を進めており、その一環としてコメンテーターをAPAC地域で近日中に募集する。コメンテーターとは、大会放送の実況解説などを行なう人で、報酬は出ない代わりに、自身の顔が艦長の顔として採用されたり、ボイスとして採用されたりする。

公式大会について

まだ統一的なルールも存在しない状態なので、公式大会の実施はまだ先になる。ただ、コミュニティベースでの大会は結構開催されており、Wargamingとしても積極的に支援している。そこでユーザーの意見を聞きながら、公式大会実施に向けて距離を縮めていきたい。個人的にはまずはTierVIIIぐらいで7対7、9対9ぐらいがいいのではないかと考えている。

クランシステムについて

現在はクラン名が付くだけのクラン機能だが、年内に新しいクランシステムに刷新する。よりチームとしてゲームを楽しんで貰えるように、新たなシステムと合わせて導入したいと考えているので期待していただきたい。

クランシステムは具体的な計画については話して貰えなかったが、公式大会実施に先駆けて着々と準備を進めているようだ

「WoWs」のモバイル/コンソール展開について

まず、モバイル版については、「WoWs」は1プレイに時間が掛かるゲームなので、モバイルでのプレイに向いていない。モバイル版を出すとすれば、デザインを根本的に変えて、ルールも仕様も別物にする必要があると思う。実際、「WoWs」を模倣したモバイルゲームが存在するが、短く遊べるように設計されている。モバイルでは、早い試合ペースで進める必要がある。たとえば、途中でやられても、そのままずっと試合を眺めてる人はいない。だから、すぐやられても継続して遊んで貰えるように、生き返ったりする考え方が必要だと思う。

コンソール展開も同じことで、セグメントとして、PC版のゲームの完成度が高まった段階でリリースされ、コンソールの特徴を活かしたゲームになっている。モバイルにしたとき、あるいはコンソールにしたときに、何ができるのかが大事。現時点で具体的なプランはないが、先行している「World of Tanks」から学べることはたくさんあるので、学びながらゲームをデザインしていきたい。

Project R復活について

去年実施したWEBベースのミッションProject Rについて、近いうちにパワーアップバージョンを実装しようと考えている。タイトルは「Clash of Element」、日本語訳がどうなるかわからないが、元素の戦い。プレーヤーのグループが2つにわかれてポイントを競う、勝利すると良いリワードが貰える、報酬はまだナイショだが基本的には船になると思う。前回のProject Rはアジアでホントに多くの方がプレイしてくれたので、今回もより多くの人に遊んで貰えればと考えている。最終リワードは同じにならないようにユニークなものにしていきたい。内容については前回よりもインタラクション性を強化しており、協力して目標を達成するようなものになっている。実装時期についてはゴールデンウィークぐらいに遊べればいいなと考えている。

ゲームバランスについて

私自身、3,400戦、勝率65.4%ぐらいの結果でプレイしている。常にユーザーがどう感じているか、ユーザーに近い視点でプロダクトを見ていたいと思っているため。現在は、マッチメイキングの要望が多い。1艦でもAFK(席を立って不在の状態)の人がいるとバランスが崩れしまう。また、「WoWs」の場合、初動でほぼ勝ち負けが見えてしまう。このため、まずはこう動こうという開始前のコミュニケーションがしっかり取れるようなコミュニケーションツールの実装を検討している。それによって基本的な挨拶や、侵攻ルートの共有、救援要請など、チーム戦において必要不可欠なアクションが起こせるようになる、実装時期は今年半ばから後半に掛けてになると思う。