インタビュー

TVドラマ「FFXIV 光のお父さん」ゲームパート監督山本清史氏インタビュー

外出先でも4Kで。撮影を支えたモンスターノートPC

撮影中は5kg近くあるPCをずっと持ち歩いていた
山本氏が使っているPCの最新モデル「NEXTGEAR-NOTE i7901」シリーズ。GPUはGeForce GTX 1080に刷新され、さらに高速になっている

――今回、撮影にG-TuneのノートPCを使われていますが、どういう経緯でこのPCを使って作業をすることになったのでしょうか?

山本氏: そもそも僕の持っているPCは全部Macなんです。だから、最初はMac版でプレイしようかとも思ったのですが、どうせドラマにするなら、4Kで撮りたいなと思ったのと、性能の良いGPUが必要になるなと思ったんです。HDMIから外部のレコーダーに出して、それで録画するというシステムを考えていたので、Macだとマシンパワー的に太刀打ちできない。それができるPCを、できれば持ち運びで使いたかったのです。というのは、エオルゼアにログインできる時間帯は夜の9時以降と決まっていたのですが、その時間に家にいるか、仕事場にいるか、どこか別の場所にいるかはわからなかったので、デスクトップだと困るなと。だから「ノートで、無茶苦茶良い奴にしてくれ」と渋谷さんにお願いしたら、「では、ちょっとG-Tuneに話してみますよ」と。

渋谷氏: 山本さんがG-Tuneを指定してきたのです(笑)。もともとマウスさんに頼むつもりでいたら、「G-Tuneで」と言われたので、これは渡りに船だと思って。それでマウスさんに協力していただくのが確定したんです。

――最初話を聞いたときに、なぜデスクトップではなくわざわざノートなんだろうと思ったのです。やはり、性能はデスクトップの方が高いですからね。でも、どこからでも「FFXIV」にログインするためだったんですね。

山本氏: そうです。どこでも仕事ができるようにしたかったのです。他の現場にいる可能性もあったので。

――今回の作業は、全てこのPCだけでやったのですか?

山本氏: このPCだけです。

――PC以外の機器は?

山本氏: ATOMOSというメーカーが出している「SHOGUN」という機材を使いました。モニター兼レコーダーで、4K/30pで収録ができるんです。

――そのPCに搭載されているGeForceでもキャプチャできますが、それではダメなんですか?

山本氏: 場合によってはその方法でもキャプチャーしますが、「SHOGUN」を使うと、SSDにProRes 422 HQで録れるので、劣化がないのです。編集作業でカラコレしたり、エフェクトをかけまくったりするときにも、劣化がないのですね。GeForceで収録する場合はMP4なので、帯域はかなり上げられますけれど、所詮はH.264なのでカラースペースが少ないのです。4.2.0というカラースペースなので、ちょっとエフェクトをガッツリかけた時に、簡単に破たんしてしまうのです。

――破綻といいますと?

山本氏: 色の破綻です。例えば、偽色が出やすいとか、暗部があがらないとか、ハイが飛んでしまうとか、細かいところなんですけど。実写の方は凄いカメラで撮っているので。それに合わせるためにも、こちらもそれなりのコーデックにする必要があったのです。

アップやトリミングが必要なシーンの撮影で、4Kが威力を発揮した

――もうひとつ、4Kキャプチャにこだわった理由はなんですか?

山本氏: 4Kでなければいけないというのは、最初から思っていました。

4Kで撮影すれば、クロップで顔のドアップが使える、と山本氏

――ゲーム上のパフォーマンスを重視するなら、4KではなくフルHDの方がいいと思うのです。そこをあえて4Kにこだわった理由とは?

山本氏: ビジュアルというよりも、ギミックのためです。UIは消せるのですが、場合によっては、チャットしながら撮影することもあると思ったので。チャットウインドウが下の方に出ていても、4Kの場合はそこからクロップできるので。それに「FFXIV」でできるアップはバストアップくらいですが、クロップしてしまえば顔のドアップが可能になります。グループポーズや景観カメラで撮影すれば、寄った絵も撮れますが、時間がない時には、自分の目線で撮影してクロップするしかないという時が結構あったんですね。

――つまり、全体をざっくり撮っといて後で一部分を切り取って使うというイメージですね。

山本氏: そうです。そうすると4K以外に方法はないなと。

――でも4Kだと撮影中はフレームレートはそれほど出ないですよね?

山本氏: 30fpsです。でも、実写の方の収録がそもそも24fpsなので、それで全然OKだったんです。

――ゲームプレイもこのPCのみですか?

山本氏: そうですね。他のPCやPS4は使ってないですね。

――外出先でもプレイをするためということですが、例えば、どういったところでプレイされましたか?

山本氏: 現場ですね。別の現場っていうか(笑)。

――重さは約4.8kgもありますから、持ち運ぶといっても大変ですよね。

山本氏: そうです。さらにACアダプタが約1.2kgあって、これがまた重いんです(笑)。

――合計6kgぐらいの機材をどうやって持ち運んだのですか?

山本氏: カバンを買って持ち運びました。どこかに行くとなると、持っていきました。

――このノートPCはもともと持ち歩きは想定していなくて、せいぜい家の中で動かす程度だと思うんです。実際持ち運んで使ってみていかがですか?

山本氏: 重いことは重いです。久しぶりにPCを運んでるな、という感じはしました。昔を思い出しましたね(笑)。

――いつぐらい昔の話ですか?

山本氏: 僕がこの仕事始めたぐらいですね。当時は重かったですものね。ACアダプタも大きかったし。

大きいとはいえ、ハイスペックデスクトップと同等の性能を持ち運べるのは大きなメリット

――でも、4Kモニタ込みで、フルスペックのPCが持ち運べるのは、新しい時代が来たという感じがありますよね。

山本氏: 正直、編集が1番楽でした。ゲームも色々と試しましたが、4Kで30fpsというのは、違和感はないけれど、ちょっとカクカクするなという感じじゃないですか。1080pで60fpsでやれば、ああ綺麗に出るなーって。そういう感動はもちろんありますけど、なによりいいのは編集なのですよ。編集はPremiere Proを使っているのですが、凄く速いですよね。このPCに搭載されているGPUはどちらかと言えばゲーム用ですけど、全然映像編集もできるなと。僕らの世界だとGPUはGeForceではなくてQuadroですからね。でも、GeForce GTX 980Mぐらいあればいけるぞと、思いましたよね。Macの方でも編集しましたけど、体感が違いましたね。レンダリングの赤の出る数も全然違いましたし、楽ちんでした。

渋谷氏: 途中でWindows 10も意外にいいなあと言い出しましたからね(笑)。

山本氏: After Effectsも、めちゃくちゃ速いですから。

――撮影の大事な右腕として、このPCを使ってみて、どういった感想をお持ちになりましたか?

山本氏: 結構ゲーミングPCにハマりましたね。ゲーミングPCも、映像編集に使えると聞いてはいたんですけど。思っていた以上に使えました。しょうがない部分としては外付けの電源ですね。できれば、もちろんなしで動けばいいのですが、なしにしてしまうと機能が落ちますから。バッテリーだけで4Kにすると、かなりカクつきます。早く技術革新がこないかなという感じです。性能面では、デスクトップに匹敵するので、そのあたりの不満はないです。広げて使ってしまえば、速いし、作業が楽です。

――熱はどうでしたか?

山本氏: 熱は「FFXIV」を4Kで何時間かプレイしていると、結構熱くなりますね。あとはファンがかなり回りますね。ファンの近くにチョコレート系のお菓子を置いておくと溶けます(笑)。

――「FFXIV」を4Kで遊ぶというのは、普通はノートPCでやらないですからね。

山本氏: 普通にやっちゃってますからね(笑)。この間、思いついて、1080pで4面使ってみたのです。キャラが何人かいるので、別のキャラでマルチログインしてみて。例えばお父さんのキャラはこちらと、何人かでやって。4面出したら、ちゃんと動きました。例えばこちらのメインキャラを自動歩行させておいて、こちらでそれに会いに行くとか全部できました。

――4画面出せるだけのパフォーマンスを備えているということですね。

山本氏: ただ、そうすると、4キャラいけるということは、と結構いろいろ考えてしまいましたね。これに気付くのが遅かったなと。もしかしたら、このキャラを別のキャラで見ることもできたなと。エモートもマクロを組んでしまえば、発動する秒数を変えられるので、こちらのカメラで撮影した後切り替えたら、スイッチングができるかなと。いろいろ試したいことが増えましたね。機会があれば。例えばキャラクターが4人いて、1人で全部できるかもなとか(笑)。