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「SANABI: A HAUNTED DAY」プレビュー。「ソン少佐」の過去に迫る無料DLC

ブレード&ショットガンで“敵を一掃する快感”が持ち味に!

【SANABI: A HAUNTED DAY】
11月27日 配信予定
価格:無料(プレイには本編が必要)

 NEOWIZはSteamで配信中のアクション「SANABI(サンナビ)」において、スピンオフDLC「SANABI: A HAUNTED DAY」を配信した。DLCの価格は無料。「SANABI」は、NEOWIZが2023年11月9日に発売した、“サイバーパンク朝鮮”の世界観で繰り広げる横スクロールのアクションゲームだ。

 元軍人の主人公が復讐を果たすために、謎の存在「SANABI」を追って、巨大コングロマリットが支配する大都市の秘密に迫っていく。「2024 INDIE GAME DEVELOPMENT AWARD」にて「Best Action Adventure Game」を受賞しており、名実ともに高いを評価を獲得していることでも知られている。

 今回配信されたDLCは、本編より“13年前”の過去の時系列にて物語が展開されていく、スピンオフとなっている。さらに本DLCではプレイアブルキャラクターが主人公ではなく、作中に登場するキャラクター「ソン・イスン」(以下、『ソン少佐』)を使用することになる。

 本稿では、DLCの配信直前に先行プレイする機会に恵まれたので、実際にプレイした上での感想をお届けしていきたい。なお、「SANABI: A HAUNTED DAY」はスピンオフDLCという位置付けだが、本編がナラティブ性の高い作品であるため、クリア後にプレイするのが推奨されるところではある。それに伴い、本稿でもゲーム本編が未プレイの読者に考慮して、物語のクリティカルなネタバレは避けている。

【SANABI [Indie World 2022.11.10]】

武器を活用した爽快感溢れるゲームプレイに!

 DLCの内容に触れるにあたり、ソン少佐について簡単に触れておこう。ゲーム本編でも登場するソン少佐は、「SANABI」の主人公にとって元部下だ。若くして高い実力を持つ女性で、主人公を敬愛する後輩の1人として描かれている。

 登場回数こそ決して多くはないキャラクターだが、序盤から終盤にかけて度々登場しており、シナリオ的にも非常に印象深い人物だ。DLCのシナリオは彼女の過去に焦点を当てつつも、主人公との出会いが語られるエピソードとなる。

 物語は、無許可の人工知能技術を秘密裏に運用しているとされる攻撃ロボットの廃棄場を調査するため、現地へ訪れた義禁府第12室所属のソン少佐が、廃棄場の強制捜査を行っていくという内容。昇進を間近に控える腐り切った上司の部下として、日々不満を抱えながら今回の捜査にも励むソン少佐。しかし、事態は当初想像していたものから、予想だにしない方向へと発展していく……。

こちらは本編のソン少佐
本DLCでのソン少佐
舞台はどことなく胡散臭い廃棄場
ゲーム中は副官とソン少佐の会話パートが度々挿入される

 そんなソン少佐がプレイアブルとなるDLCは、巨大な「チェーンフック」で縦横無尽に移動しながら敵を屠る本編と、コンセプトからして異なっている。「SANABI」は、ストーリーテリングの秀逸さと併せて、このチェーンフックを活用したスピード感溢れるゲームプレイも醍醐味だ。壁や天井、あるいは敵に向けてチェーンフックを発射し、道中に設置された無数のトラップを避けながらステージ最奥を目指す爽快感は堪らないものだ。こうしたワイヤーアクションの疾走感が「SANABI」を象徴するゲーム体験の一つと断言できるだろう。

 だが、DLCで操作するソン少佐は、「超高熱ブレード」による接近戦と、「ショットガン」の高い制圧力を生かしたアクションが主体。チェーンフックこそ扱えないが、代わりに二段ジャンプによる空中戦が可能だ。また、軍人というには荒々しく、それでいてパワフルな戦い方も特徴的。機動性を我が物とした本編のゲームプレイと比較し、強力な武装で敵を一方的に制圧する攻撃性が体験の主軸というわけである。

ゲーム本編の主人公
「チェーンフック」を用いたアクションはシンプルながらに奥深いものだった
「超高熱ブレード」
「ショットガン」

 ソン少佐は、アクションギミックも実に多彩。例えば、「強化ショットガン」。これは攻撃を一定回数当て続けるとゲージが蓄積し、次に使用するショットガンが強化されるという要素だ。強化ショットガンは弾丸が敵を貫通する上、大型の敵に対してさらにダメージが上昇する。ちなみにショットガンは強化前、強化後に関わらず、発射時後ろに下がる反動を利用して、ジャンプの飛距離を稼ぐといった動作もできる。これを強化ショットガンに応用し、1度に多くの敵を倒しながら高所の足場へ飛び乗るといった芸当もできる。反動を回避に転用できる発想は中々面白い。

 「バースト」と呼ばれるアクションでは、敵の弾丸を広範囲に打ち消せる。打ち消しタイミングが良いと、ショットガンの強化ゲージが一気に蓄積し、すぐさま強化ショットガンを発射可能となる。加えて、バーストで3つ以上の弾丸をタイミング良く打ち消せると、ソン少佐が一時的に「過出力状態」に移行する。

 分かりやすく言えば“強化状態”であり、全ての近接攻撃の強化とソン少佐の移動速度が飛躍的に向上する効果を得られる。この状態ではブレード攻撃に燃焼エフェクトが加わり、視覚的な見栄えと爽快感が大きく増す。「SANABI」は今回のDLCによって、武器を中心に苛烈な戦闘を展開していくゲーム性をも備えたと言えるだろう。

「強化ショットガン」は発射時に画面揺れのエフェクトが発生する
「バースト」で一度に多くの弾丸を防げるとアクションの上手さを錯覚する
「過出力状態」ではバーストにもダメージ判定がある。攻防一体の強力な技に
「過出力状態」の稼働時間は短いが、発動中はなんとも言えない全能感に支配される。ライフに要注意だ

ソン少佐だからこそ。ステージ攻略アクションに横スクロールの奥深さを体感!

 ステージがリニア式の構造であるのは本編と同じ。だが、ワイヤーアクションを駆使する主人公と比べて、移動面での制約を受けているソン少佐では、ステージ進行のプロセスに“独自のアプローチ”が求められてくる。

 そこには前述した二段ジャンプやショットガンの反動、さらには空中攻撃を当ててジャンプの回数をリセットするなど、ややテクニカルな操作を要求する場面が多々見られた。しかし、それがかえって本編と違った意味での奥深さとなり、これまでにない新しい「SANABI」を垣間見れたようでもあった。一見難しく思えてきそうなテクニックも、直感的に攻撃アクションを繰り出せる操作性とテンポの良さが、習熟する感覚を掴みやすくしている。

 ゲーム中、便利そうなワイヤーアクションを使うでもなく、武器だけを巧みに用いるところにソン少佐のキャラクター性が反映されている気もした。豪快な戦う姿に見る、敵を倒すためだけの無骨さが、DLC冒頭でも言われている通り“人間兵器”的でカッコいい。

 ソン少佐の動きにアクションを魅せるための飾り気は一切なく、全ての攻撃に純粋な殺意が徹底して込められているのが、ドット絵ながらに伝わる。「SANABI」のドット絵キャラクターはわずか2~3頭身ほどのデフォルメデザインを採用しているはずなのに、表情豊かでアニメーションの躍動感も白眉だ。

 本DLCは、プレイ時間およそ2時間ほどでエンディングに到達できるボリューム感で構成されている。クリア後は、ステージ攻略とボスバトルのタイムアタック「スピードランモード」を楽しむことも可能だ。

 なお、DLCを最後まで遊び通しても、ゲーム本編の核心部分に迫るネタバレなどはない。あくまでソン少佐という人物の過去について描かれているエピソードだ。ただ、スタッフロールでは彼女の人柄をより分かりやすく知れる、ちょっとした"サプライズ的な演出"なども盛り込まれていた。本稿冒頭で、DLCは本編クリア後を一応の推奨としたが、逆にDLCクリア後に初めて本編を遊ぶことでしか得られない、特別なカタルシスもあるかもしれない。

 本作を開発するワンダーポーションは、今年9月8日公開した開発者ノートにて「線形的なゲーム構造の中で、プレイを拡張することが難しい状況」と前置きしつつも、投稿の締めには「多くの時間と努力を費やした分、皆様のゲームプレイが新しく楽しいものになれば幸いです」としており、本DLCがもたらすゲーム体験は、実際その通りであることを裏付けたように思う。

 「SANABI」はゲーム本編だけで物語が完結を迎えるシナリオ構造のため、バトルスタイルもキャラクターのバックボーンも異なる、全くの別人をプレイアブルキャラクターに据える必要があったとされる。そんな中で生まれた「SANABI: A HAUNTED DAY」は、既存キャラクターにスポットを当てながら、ゲーム本編でのソン少佐の見え方に、新しい視点を加えてくれたものだと言える。既に「SANABI」をクリアしたプレーヤーも、あるいはまだ未プレイという方も、この機会にDLC込みで、ゲームを遊んでみてもらいたい。

主人公とソン少佐の出会いとは、いかようなものだったのだろうか
衝突する場面も...!?