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「SANABI」ソン少佐を主人公にした無料DLC「SANABI: A HAUNTED DAY」試遊レポート

ショットガンや刀などアクション面も刷新!

【SANABI: A HAUNTED DAY】
発売日未定
価格:無料

 チェーンフックを利用した様々なアクションと、昔懐かしいドット絵風で描かれたサイバーな世界観、そして親子の絆をテーマにした胸を打つストーリーなど、多くのプレイヤーを魅力したインディーゲームの「SANABI」。そのDLCとして現在開発が進められているのが、「SANABI: A HAUNTED DAY」(以下、A HAUNTED DAY)だ。

 この「A HAUNTED DAY」では、本編の主人公(准将)の部下として登場したソン少佐に焦点を当てたストーリーが展開されていく。物語としても、本編の13年前の出来事になっており、前日譚的な展開が楽しめるようになっているのだ。

今回の「A HAUNTED DAY」で描かれるのは本編の13年前の話だ

 リリースに先駆けて、11月9日に開催されたインディーゲームの展示会「東京ゲームダンジョン10」で、この「A HAUNTED DAY」が日本で初披露された。今回出展されていたバージョンは、製品そのままというわけではなく、ポイントとなるエリアをくり抜いて作られたような試遊版だ。こちらの記事では、そこから分かったゲームの特徴やポイントについてご紹介していく。

 また、記事の後半では、本作を開発したWONDERPOTONのCEO兼ディレクターのユ・スンヒョン氏へのインタビューも実施しているので、そちらも合わせてご覧頂けると幸いだ。

「東京ゲームダンジョン10」の中では、比較的広いブースで展開されていた。そうしたこともあり、オープン直後から本作をプレイしようと待ちわびているファンの列ができていた
こちらは来場者向けのキャンペーンでプレゼントされていた「SANABI」のグッズだ

2段ジャンプや剣による攻撃、ステージ上のギミックを利用した移動アクションなどが登場

 冒頭でも少し触れたが、「SANABI」といえば、チェーンフックを利用した移動だけではなく、それを活用した敵とのバトルなど、様々なアクションが詰め込まれたタイトルだった。だが、このチェーンフックは、「SANABI」の主人公だった准将のみが使う技でもある。そこで今回の「A HAUNTED DAY」では、主人公が准将からソン少佐に変わったことにより、チェーンフックがなくなった一方でこれまでになかった新しいアクションがいくつも追加されている。

 まずは、プレイの基本となる移動についてご紹介していこう。「A HAUNTED DAY」では、チェーンフックが使えなくなった代わりに、段差や少し離れた場所へ移動したいときは2段ジャンプができるようになった。ちなみに壁などに捕まっているときは、本編同様そのまま上下に移動していくことも可能だ。

メニューから「外伝」を選ぶことで「A HAUNTED DAY」が遊べるようになっていた
ベースとなる移動テクニックのひとつが2段ジャンプだ。ちょっとした段差などはこれで乗り越えられる

 ステージ全体の作りとしては、今回の試遊版でも徐々にゲーム内でできることがアンロックされていくようなデザインになっていた。そのため、少しずつゲームに慣れていくことができて、かなり親切に作られているという印象を受けた。例えば最初に基本的な移動を学んだ後は、攻撃アクションを使用したいくつかのパターンを学ぶことができる

 ソン少佐のメイン武器のひとつが、剣を振り回して敵を切っていく攻撃だ。攻撃を仕掛けるときは、近づいてコントローラーのXボタン(Xboxコントローラーの場合)を押せばOKである。一撃では倒せない場合が多いが、数回ダメージを与えることでたいていのザコキャラは撃破が可能だ。

 同じように、ステージ用に設置されたスイッチなども、攻撃を仕掛けることで操作することができる。本編と同じように特定エリアの敵を全滅させたりスイッチを押さないと開かない扉が出現するのだが、ゲーム序盤でひと通りのアクションとゲームの基本的なルールを順を追いながら学んでいけるのはありがたい。

敵に攻撃を仕掛けるときのアクション。弧を描くように敵にダメージを与えていくことができる

 ここまでは、本編の「HANABI」を少しでもプレイしたことがある人ならばほぼ迷わず操作していくことができるだろう。だが、ゲームの難易度とは別にステージ上に仕組まれたパズル的な謎を解き明かさないと先に進めないというのも、このゲームの面白いところである。

 例えば、筆者が今回の試遊で最初に躓いたのが中央にライトのようなものがポイントあるだけの場所。その先にある高台に移動したいのだが、どうやっても2段ジャンプだけではたどり着くことができない。実は、こちらは中央にあるこのライト自体がギミックになっており、2段ジャンプした後にライトに攻撃を加えることで勢いがつき、高台の壁にたどり着けるようになっていたのである。

右上のエリアに移動したいのだが……2段ジャンプだけではたどり着くことができない!?

 さらに、その先で頭を悩ませたのが巨大なクレーンがポイントあるだけの場所だ。こちらも右上にある高台のエリアに進んでいかなければならないのだが、どうみても絶対に2段ジャンプではたどり付くことは不可能。赤く点滅している壁は張り付いて登っていくこともできないため、ここでも手詰まりになってしまったかと焦ってしまった。

 実は、こちらもひとつだけステージにひとつだけ設置されていたクレーンがポイントとなっていたのである。クレーンを攻撃すると、大きく左右に揺れ出す。その勢いを利用することで右側の壁に近づき、さらに2段ジャンプを活用することで移動することができたのだ。このように、ステージに配置されたアイテムをうまく活用しながら進んでいくという頭脳プレイが要求されるところも、本編から引き継がれている要素だ。

クレーンに攻撃を加えると、大きく左右に揺れ出す。移動では、こうしたギミックをいかに活用するかが重要となる
初見では頭を悩ませたクレーンを使った移動だが、慣れてくると普通に使いこなせるようになるから不思議だ

攻撃だけじゃない! ショットガンを活用したアクションも楽しめる

 ゲーム序盤では2段ジャンプと剣による攻撃のみというシンプルなスタイルでステージを進んでいったのだが、途中からショットガンが使えるようになったことで、さらにアクション面でも大きな変化が出た。ショットガンは、RTボタンを長押しすると照準が現れ、敵に狙いを定めてボタンから指を離すことで発射することができる。

 ショットガンの面白いところは、エイムの精度自体はさほど重要ではないというところ。多少敵から照準がずれていたとしても、弾が飛び散って飛んでいくためダメージを与えられる。あまり深く考えず直感的にプレイして、敵を倒していけるのが楽しい。

 また、ショットガンは攻撃だけではなく、移動でも活用できる。たとえば敵がいない場所であっても空中で撃つことで、反動を利用して逆方向に移動することができるのだ。これを利用して空中でのアクションを制御したり、あるいは2段ジャンプだけでは届かない場所へも移動できるようになるのである。

黄色く伸びている点線がショットガンの射線だ
ショットガンの弾は複数飛び出していくので、エイムの精度はそれほど重要ではない
攻撃とは別にショットガンを撃つと、その反動で逆向に移動することができる

 もうひとつ、ゲームを進めていくことで敵を貫通してダメージを与えることができる「強力ショットガン」という攻撃が繰り出せるようになる。敵に攻撃を加えていくと、ソン少佐のすぐ側に表示されているゲージが徐々に貯まっていく。これが満タンの状態になったときに「強力ショットガン」を撃つことができるのだ。

 「強力ショットガン」は、特に大型の敵に有効。たとえば、弱いザコでゲージを溜めていきながら、そこそこ大きめな敵を一撃で仕留めていくといったプレイも可能だ。

敵に攻撃を加えると、ソン少佐のすぐ側に表示されているゲージが貯まっていく
少し大きめの敵は「強力ショット」を近距離で放つことで、一撃で倒すことができる

 「強力ショット」と合わせ技で使いたいのが、「バースト」である。こちらもゲームを進めていくうちに使えるようになる技だが、敵がこちらに向けて弾を撃ってきたときに、「バースト」を発動することで自分の周囲をぐるりと回転し敵の攻撃を打ち消すことができる。

 敵の攻撃は、単純に直線で撃ってくるものもあれば砲弾のように山なりに飛んでくるものもある。あるいは、ホーミングで追いかけくるミサイルのようなものもあり、敵の数が増えていくとそれらを避けるのもやっかいになっていく。そんなときに、このバーストを繰り出すことで危機を回避することができるのだ。

 さらに、この「バースト」をタイミングよく繰り出すことで、強力ショットが即チャージされるという利点も用意されている。「バースト」で攻撃をかわしながら、すかさず「強力ショット」で敵を倒していくというコンボを出していくことで、素早く敵を掃除することができそうだ。

バーストを発動すると、円状に攻撃を繰り出し敵の弾を打ち消すことができる

 ちなみに、今回はの試遊版30分プレイさせてもらったのだが、突然本編にも登場した巨大な鉄のミミズが現れたというところで、残念ながらゲームの試遊は終了となった。はたしてこの先はどんな展開が待っているのか。リリース後にたっぷりと楽しみたいと思う。

 特に今回は、チェーンフックではない新たなアクションが登場するということで、どのようにゲームが変化するのか気になっていた。だが、本編の魅力でもあったパズルを解いていくようなマップの探索や、バトルなどのアクションについては概ねその魅力が引き継がれていると感じた。むしろ、ショットガンや剣を使った攻撃など直感的なプレイができるため、より親しみやすくなったといえるだろう。

 「A HAUNTED DAY」自体はあくまでもDLCということで、最低でも本編のソフトを所有していないと遊ぶことはできない。しかし、本編の価格も1,520円と比較的安いことに加えて、このDLCもリリース後は無料で遊べるので、まだ遊んだことがない人はこの機会に挑戦してみてはいかがだろうか?

見覚えのある巨大な鉄のミミズが登場したところで、今回の試遊は終了!

マリを主人公にしたDLCも準備中!? WONDERPOTON CEO兼ディレクターのユ・スンヒョン氏インタビュー

 本編の「SANABI」を開発していた頃は、まだ大学生だったというWONDERPOTONのCEO兼ディレクターのユ・スンヒョン氏。今回のDLC「A HAUNTED DAY」では、どのようなところにこだわったのか、お話を伺ってきた。

ユ・スンヒョン氏

――今回のDLCで力を入れたポイントはどちらでしょうか?

スンヒョン氏:今回は主人公も本編とは異なっており、ゲームプレイも異なっています。そうした中でも、本編と同じような雰囲気が感じられるような感覚を足していくことを考えて作りました。

――チェーンフックを使ったアクションから、今回は剣とショットガンを利用したアクションに変わりました。こうした新しいアクションはどのように生み出されていったのでしょうか?

スンヒョン氏:アイデアはすぐに閃くものではありません。チェーンフックを使ったワイヤーアクションは、本編でやり尽くしたので、DLCを作るにも新しいものはありませんでした。それならばどうすればいいか話し合っていたときに、DLCは戦闘を中心に作ろうということになったんです。

 しかし、空中で繰り広げられるスタイリッシュなアクションは活かしたい。そこで、ショットガンを使った空中アクションならばいけるんじゃないかということを話し合って決めました。

――現在は絶賛開発中だと思いますが、特に製作で苦労したポイントはございますか?

スンヒョン氏:最初にデモを作ったときは、30分程度で遊べるものでした。そこから、これが足りない、これを入れたい、ラスボスを追加したいと色々やっていったのが、結構大変でしたね。なによりも、ゲームをプレイしていて爽快感や面白く感じられるという部分を、どのようにすれば極めることができるか悩んだのも大変なところでした。

――本編では、親子の絆をテーマにしたような、心温まるストーリーが描かれていました。今回の「A HAUNTED DAY」では、どのような物語が体験できるのでしょうか?

スンヒョン氏:今回は、本編ほどプレイ時間が長いわけではありません。そのためストーリーも本編ほど長くありませんが、今回はソン少佐と本編主人公の准将が出会うお話になっています。ふたりが出会い、その後起きる奇妙な出来事について描かれていきます。

――本編では他にもペグ大佐やマリなど魅力的な人物が登場しました。今回のソン少佐のように、こうしたキャラクターたちを取り上げたDLCなどのご予定ではございますか?

スンヒョン氏:現時点でお話しできるのは、マリの過去の話を短編的に今回のDLCのような形で作ろうと考えています。ただ、他のキャラクターについては準備が必要です。今回のDLCを作っているときに思ったことですが、物語を作ることも大事ですが、それよりもどうやって面白く見せるかというところがすごく重要です。そこに、かなり時間が掛かることが分かったので、現時点では他のキャラクターに関しては、ちょっと準備が必要ですね。

――そちらもお楽しみにという感じですね!

スンヒョン氏:早くお見せできるように、一生懸命頑張ります(笑)。

――「A HAUNTED DAY」を発表後、ユーザーからの反応で気になったところはございましたか?

スンヒョン氏:今回のDLCはそれほど長くないということもあり、みなさんで楽しんで頂ければと思います。そのなかで。アクションについて皆さんがどう感じるのか聞きたいと思っています。また、すでに発表している「楽園工房」もアクションゲームとして作っています。今後「WONDERPOTONの作品は戦闘も面白く作れる」というユーザーからの声も聞きたいですね。

――最後に本作のリリースを楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いいます。

スンヒョン氏:ファンの皆様には感謝の言葉しかありません。今後も一生懸命ゲームを作っていきますので、ぜひ楽しんで頂ければと思います。