韓国ゲーム業界、ちょっとした裏話
連載第4回
テレビCMと共にひもとく韓国ゲーム史。プロゲーマーからメーカー創業者、セクシー女優まで登場する華やかな世界……なのか!?
2019年5月14日 00:00
本連載を始めて4回目になるが、早くもGAME Watch編集長から「ネガティブな話題が続いているから、もう少しポジティブな話はないだろうか」という相談があった。そもそもが裏話なので、「連載の主旨からするとポジティブな話なんて無理でしょう?」と言い返したくなったが、言ったところでこの新しい編集長が「はい、そうですか」と納得するわけないので、すぐ諦めた。ちなみに新編集長の中村氏は極めて頑固な性格をしているが、本人はそれを一切分かっていないから困りものだ。
「はてさて、韓国ゲーム業界のポジティブなところね……」と少し考えて今回取り上げようと決めたのは、韓国ゲームの歴代CMについてだ。韓国はオンラインゲームやeスポーツの歴史が長いだけに、日本では流れないような韓国特有のCMも多い。我々韓国人にとっては普通だが、日本の皆さんにとっては面白いと思うので、歴代CMをカテゴリー別に分けて紹介しようと思う。少し韓国ならではのユーモアセンスやニュアンスがあるので、日本の読者さんには理解に苦しむものもあると思うが、編集長からの圧力に屈してこうなってしまったため、少し大目に見ていただければと思う。
1980~90年代の韓国コンソール市場とその広告
韓国の80年~90年代はまだ日本文化に対する規制が厳しく、据え置き型ゲーム機は韓国の大手家電メーカーを通じて韓国固有の製品名で販売されていた時代だ。例えば、任天堂のスーパーファミコンはヒュンダイ電子が正式輸入し「ヒョンダイ コムボーイ」として発売されていた。
そのTVCMは、奇怪なラップに合わせてファミコンゲームに登場するゲームキャラクターたちが踊っているという内容。今になってみてみると、怖いぐらいの気味悪さを感じてしまう歌と踊りだ。ちなみに、この曲を歌ったのは、今は亡くなった韓国の人気ロック歌手シン・ヘチョル氏で、広告内容は「ゼルダの伝説:神々のトライフォース」の広告から影響を受けたという。
アメリカで93年に発売された「3DO」を韓国の金星電子(今のLG電子)が正式ライセンスを締結し作った「3DO ALIVE」は、韓国の有名俳優イ・ジョンジェ氏が熱演した広告で有名だ。イ・ジョンジェ氏が宇宙服を着てゲームをする内容で「うわっ!これは映画なの?ゲームなの?」と「1秒も油断できない」というセリフがネット上で名セリフとして扱われている。
なお、イ・ジョンジェ氏は2015年にロケットモバイルの「ゴースト」の広告モデルとして起用された。この時、ロケットモバイルは、“イ・ジョンジェ氏、初めてのゲーム広告!”という内容のプレスリリースを出してしまい、コンソールゲームファンたちからツッコまれて、「3DO ALIVE」の広告が再び大ブレイクした覚えがある。
イ・ギソックからFakerまでプロゲーマーのTVCMたち
韓国で、最初のプロゲーマーとして名前が知られたのはシン・ジュヨン氏だ。1998年にBlizzardが主催したシーズン3のLadder Tournamentで優勝し、アメリカのPro Gamer League(PGL)で名前が登録されたことで“韓国初のプロゲーマー”として知られるようになった。
その後、元々「Command & Conquer: Red Alert」の有名なゲーマーだったが、「Starcraft」では1999年から名前が知られるようになったイ・ギソック氏は、当時の韓国で一番大きい大会だったKPGLを2回優勝し、Blizzard Ladder Tournamentでも優勝したことで、シン・ジュヨン氏を超える認知度を誇るようになった。その人気のおかげで、韓国通信(現、KT)のブロードバンドサービス「Kornet」のTVCMの起用されるようになった。
なお、「Stacraft」のプロゲーマーの中で最も人気の高いイム・ヨハン氏は、イ・ギソック氏の活躍ぶりをみてプロゲーマーの道を選んだという。
そのイム・ヨハン氏は複数のTVCMに出演した。まず、当時自分のスポンサーだった東洋オリオンのチョコバーTVCMから、LG TelecomのTVCMで韓国最高の人気を誇った女優ジョン・ジヒョン氏と共演、IntelのTVCMで少女時代のユンア氏と共演、またスポンサーであるSK TelecomのTVCMなどに出演した。
ゲーム企業の創業者自らが広告モデルに出演
韓国では、ゲームやIT企業の創業者たちは公の場に姿を現わさないことで有名だ。社長やCEOという“浮世の肩書”は誰かに任せて、自分は取締役会の議長やCSOなどの肩書で活動している。なぜそうなのかについては面白い話があるのでこれに関しては、今後取り上げたい。
さて、そんな韓国の特殊な文化の中でもゲームの広告に自ら熱演した創業者たちがいる。まず、日本では「ラグナロクオンライン」の開発者として有名なキム・ハッキュ氏だ。彼がまだGravityの社長だった2000年に開発していた「ARCTURUS」の発売延期の広告に自ら出演した。当時、共同開発パートナーだったSonnoriのイ・ウォンスン社長も共同出演した。
また、2017年には「リネージュM」のTVCMにNCSOFT創業者のキム・テクジン氏が出演した。「リネージュM」の2つの広告に出演して大きく話題を呼んだが、キム・テクジン氏の義父が殺害される事件が起きたことから自粛の意味でまもなくTVCMの放送を中断した。
現在は芸能人がゲームのキャラクターになる時代。1番人気はセクシー女優とセクシー男優!?
そして現在はどうなっているのか。ゲームの広告モデルにアイドルや俳優といったタレントを起用することは珍しくないが、一部のゲームは広告モデルになった芸能人のキャラクターモデルを販売して話題を呼んだ。この方面では、NEXONがパイオニアである。
まず、「サドンアタック」は、2008年に“レイン”を始め、現在性接待疑惑で話題を集めているBIGBANG、女性アイドルグループのKARA、Jessica Gomez、TWICE、篠崎愛などなど、数十人以上の芸能人キャラクターが登場した。モバイルゲームでは同じくNEXONの「英雄の軍団」で、A-PINKとのコラボを実施、「OVERHIT」ではPRODUCE48という新人アイドルとコラボを実施した。
ちなみに韓国では、いわゆるアダルトビデオは、存在自体が違法で、撮影から販売、観覧、全てが禁じられているが、オンラインゲームの広告塔としてなぜかセクシー女優と男優の人気が高い。
その人気に便乗する形でセクシー男優のしみけん氏やセクシー女優の小倉由菜氏は韓国Youtubeで活動しているぐらいだ。広告モデルとしては、2010年にLiveplexの「ドラゴナ」の広告モデルとして蒼井そら氏、2017年にEfunの「三国志Live」の広告モデルとして明日花キララ氏が起用された。
また、先日事前登録を開始したU.LU Gamesの「ARKA」は広告モデルとして、しみけん氏が起用した。とりわけしみけん氏は、YouTubeのフォロワー数は日本より韓国の方が多いぐらいで、韓国の方が稼いでいるのではないかと言われるほど。なぜこんなに人気なのかは正直筆者もよくわからないが、韓国では禁じられれば禁じられるほど人気が高くなる傾向がある。
今回紹介したCMはほんの一部だが、いずれも日本ではありえないものばかりだろう。しかし、これが日常なのが韓国ゲーム業界なのだ。