【連載第63回】韓国最新オンラインゲームレポート

NHN、MMORPG「TERA」第2次クローズドβテストレポート
韓国で今年1番の期待作の仕上がりをチェック!


10月30日~11月2日βテスト実施


 韓国NHNは10月30日から11月2日まで、MMORPG「TERA」の第2次クローズドβテストを実施した。参加人数は3,000人限定で、負荷を分散させるため1人当たり最長20時間の時間制限ルールで行なわれた。

 「TERA」は、韓国の新生デベロッパーBluehole Studioが開発しているMMORPGだ。Bluehole Studioは「リネージュ II」の元開発者たちが集って結成されたメーカーであり、彼らのデビュー作が「TERA」となる。ゲームエンジンには「Unreal Engine 3.0」が採用され、開発費用に320億ウォン(約25億円)が投入された、韓国では2008年12月にリリースされたNCsoftの「AION」以来となる大作MMORPGである。

 「TERA」はバトルシステムに大きな特徴があり、従来のようにモンスターにターゲットを固定して1対1ないし多対1の戦闘を行なうシステムではなく、アクションゲームのように特定のモンスターにターゲットせずに、不特定多数の敵と自由にバトルを展開できる「ノンターゲッティングシステム」を採用している。同じようなバトルシステムを採用しているゲームとしてコーエーの「真・三国無双 Online」があるが、「TERA」はインスタンス方式ではなく、オープン型のMMOフィールド上でそれを可能にしているところに大きな違いがある。

 NHNグループ待望の大作ということもあるためか、日本での展開もすでに発表されている。運営元は子会社のNHN JAPAN。韓国でもまだクローズドβテストの段階で、正式サービスの開始時期やビジネスモデルも明らかになっていない状況だが、今回、韓国にて行なわれた第2次クローズドβテストに参加できたので、その模様をお伝えしたい。


【ヴァルキリー連合に加盟する種族】
ヴァルキリー連合に加盟する種族が、プレーヤーキャラクターとして選択できる種族となる。左上から順に「ヒューマン」(男性)、「ケスタニック」(女性)、「アーマン」(男性)、「ポポリ」(男性)、「バラカー」(男性)、「ハイエルフ」(女性)。人型も居れば、「ポポリ」のように熊をモチーフした獣人種族もいる。性別は固定で、この6パターン以外の種族は選択できない


■ 異界の侵略者から世界を守るために結成された種族連合「ヴァルキリー連合」のストーリー

 「TERA」は、ゲームの舞台となる“アルボレアー”の種族連合「ヴァルキリー連合」が、モンスターや異界の種族たちに対抗していく物語を描いた作品だ。「ヴァルキリー連合」はプレーヤーキャラクターとして選択できる種族「ヒューマン」、「ケスタニック」、「アーマン」、「ポポリ」、「バラカー」、「ハイエルフ」の6つの種族による連合で、プレーヤーらが所属する「ヴァルキリー連合」と、NPC種族との対立が描かれる。プレーヤーは世界各地に派遣されるエクスペディションの1人としてスタートする。

 本作は、不特定多数のユーザーが同じエリアを行き来できるオープン型のMMOフィールドの構造を採用している。ゲームの最初は「黎明の庭園」の「黎明の船着場」エリアから始まり、クエストを通じて次々とマップを移動していく。たとえば、船を襲うモンスターの退治を依頼されたり、様々な地域のモンスターを退治していく流れになっている。最大5人によるパーティプレイが可能で、基本システムは非常にオーソドックスだ。

 クラスは2本の剣を操る「ウォーリアー」、槍と盾を使う「ランサー」、大検を使う「スレイヤー」、斧を使う「バーサーカー」、魔法攻撃を使う「ソーサラー」、弓を使う「アーチャー」、回復魔法を使う「プリースト」、精霊魔法を使う「エレメンタリスト」の8種類に分かれている。


プロローグでは異界の種族「アルゴン族」との戦いの様子が描かれる
最初の地域「黎明の庭園」。本作の舞台は大きく「ヴァルキオン保護領」、「ベリーカ直轄領」、「アルカニアガード」、「ポポリアガード」、「東部ガード」の5つに分かれており、「黎明の庭園は「ヴァルキオン保護領」の中に位置する
本作はゲームエンジンにUnreal Engine 3.0を採用し、色鮮やかで美しい風景が広がっている。その上に、キャラクターたちの線がくっきりとしたデザインで、若干、シャープ過ぎる印象はあるが、スキルのエフェクトやキャラクター同士は見分けやすい



■ オープン型フィールドに投入された「ノンターゲッティングシステム」に注目!

本作にはコンディションというシステムが投入されている。コンディションは時間が経つと徐々に落ちていくが、それに伴いプレーヤーの能力値も低下する。街にあるキャンプファイアに当たると、コンディションは徐々に回復する

 冒頭でも紹介したように、「TERA」では、アクションゲームのようにキャラクターのスキル範囲内に敵が居れば、攻撃がヒットする「ノンターゲッティングシステム」が導入されている。「真・三国無双 Online」をイメージしてもらえればわかりやすいだろう。

 ただ、「真・三国無双 Online」や他のアクションRPGと大きいな違いは、そのバトルを人数限定のインスタンス方式のフィールドではなく、人数無制限のオープン型のMMOフィールドにおいて、それを実現しているところが最大の特徴だ。周りを見ると、どのタイミングで回避し、どのタイミングでどういう攻撃をしていくのかといった他のプレーヤーの戦闘の模様がリアルタイムで確認できる。

 自分の攻撃を複数の敵に当てることもできるし、逆に他のプレーヤーと戦闘しているモンスターの攻撃にこちらが巻き込まれることもある。従来のMMORPGでは、モンスターは1人ないし1パーティーが“占有”し、その戦いの内容は、外部に影響を及ぼさないというのが暗黙の了解だったが、本作はそんなルールは一切なく、モンスターの攻撃は、その範囲内にいるプレーヤー全員にダメージを与えるようになっている。

 この占有権のないシステムは、プレーヤー同士でのモンスターの取り合いや、この特性を悪用したMPK(モンスターにプレーヤーを殺させる行為)は避けられず、最終的にどのような形で実装されるかは未知数だが、MMORPGとしては非常にユニークなシステムと言えるだろう。


多数の敵を一気に倒していく爽快さもそのままだ。ドロップアイテムが地面に散らばる様子もだ


■ 攻撃タイプによって異なるインターフェイス。治癒魔法もプレーヤーの腕次第!?

移動はW、A、S、Dキーで、その他は自由にカスタマイズできるショートカットキーとなる。シンプルな操作体系だ

 本作の操作はキーボードとマウスで行なう。W、A、S、Dキーで移動、マウス右クリックで通常攻撃、マウス左クリックに攻撃スキル、スペースバーが回避スキル、ファンクションキーにスキルやアイテムを登録して随時使用するスタイルとなる。

 本作の操作はクラスの攻撃タイプによって大きく接近型と遠距離型の2つに分かれている。「ウォーリアー」、「ランサー」、「スレイヤー」、「バーサーカー」といった接近型のクラスは、画面上に何の表示もなく、接近して手持ちの武器で敵に攻撃を加えていくのが基本的な戦闘動作となる。

 「ソーサラー」、「アーチャー」、「プリースト」、「エレメンタリスト」といった遠距離のスキルを使うクラスは、画面の真ん中にクロスヘアー(十字線)が表示され、さらに、自分がターゲットしたモンスターとの距離がクロスヘアーの右下に表示される。各スキルには有効距離があり、それを測るためのものだ。

 全てのスキルが「ノンターゲッティングシステム」になっているため、「プリースト」の治癒魔法の使用も他のプレーヤーを有効距離内でクロスヘアーをターゲットしてから、使用しなければならない。ターゲットがズレると、魔法の使用はされるが不発になってしまう。コントロールに自信のない「プリースト」から治癒魔法を貰うために、不自然に身動きを止めるというシチュエーションがそこかしこで見られた。

 筆者は「ウォーリアー」と「ソーサラー」をプレイしてみた。まず、「ウォーリアー」は基本攻撃は4回まで連打できるコンボ攻撃で、連打の回数が多くなるほどダメージが増加していく。スペースバーによる回避スキルも持っており、敵の攻撃パターンを読みながら、回避と攻撃をしていくタイプだった。レベルを上げると前方の敵に強力な連打攻撃を行なう「追い討ち」を覚えるが、スキルの発動時に敵をヒットできないと、そのまま空振りになってしまう。

 「ソーサラー」の場合、基本攻撃に「ファイアボール」、スペースバーに「アイスアロー」が位置していた。「ファイアボール」はダメージこそは弱いがディレイがなく使え、「アイスアロウ」は敵の移動速度を少し遅らせ、ダメージもそこそこだったがディレイがあった。レベルを上げると覚えられる「ライトニングボール」はマウス右ボタンを押しているとチャージするタイプで、チャージ時間が長くなるほどダメージが大きくなっていくスキルだった。限界までチャージして発射すると大きい球型が発射されて、敵に大ダメージを与えることができた。

 モンスターも一癖あり、序盤からモンスターがグループを組んでくる。多い場合で10匹以上が群れをなしていることもあり、1匹の能力はそう高くないため、1人でもなんとか撃退できたが、何度も攻撃を食らってしまった。グループモンスターとの戦闘は、こちらもパーティーで望み、範囲攻撃を有効に使うのがポイントだった。

連打攻撃が特徴の「ウォーリアー」。「ウォーリアー」は回避スキルも持っており、1対1なら無傷で敵を倒せた

「ソーサラー」の基本攻撃はディレイが無く、TPSゲームをするようなプレイ感覚で敵を攻撃できる


■ MMOアクションを実現するためには今後のサーバーの強化が必要不可欠か

「TERA」ではフィールドの上でPvPが可能。パーティ同士の戦いで、相手のパーティに決闘を申し込むシステムになっている

 「TERA」は見た目こそオーソドックスなMMORPGだが、「ノンターゲティングシステム」によってまるでアクションゲームのようなゲーム性を実現している。なぜ今までそういうオンラインゲームがなかったのかというと、クライアント/サーバー間のトラフィックが指数関数的に向上して、クライアントとサーバーに高負荷が掛かってしまうからだ。「TERA」はその課題に真っ正面から取り組むために、水面下で多大な努力を払ったようだ。

 オーソドックスなMMORPGの場合、ターゲットを固定して戦闘を行なうため、ネットワークの不具合にある程度対応できるシステムだが、アクションゲームの場合、少しの不具合でも当たり判定がズレてゲームプレイに大きく影響を与える。MMOタイプのFPSの実現がなかなか難しいのはそのためであり、「真・三国無双 Online」がインスタンス方式にしたのもそのためだ。

 「TERA」は大人数を行動を一緒に処理するため、サーバーの負担が大きく、βテストが始まる前から業界の専門家たちからの心配も大きかった。関係者によれば、実は本作のクローズドβテストは2009年7月に予定されていたが、当時、この問題が解決していなかったため、第1次クローズドβテストを8月22日に延期し、参加人数をたったの200人に絞って実施した。

 幸い今回の2次テストでは、高負荷の問題は解決したようで、快適にプレイできた。当たり判定もしっかりしており、プレイにストレスを感じなかった。強いて言えばゲームエンジンにUnreal Engine 3.0を採用しているため、ハイスペックのPCが要求されるところだろうか。サーバー側はメンテナンスが頻繁にあったぐらいで、プレイ上の問題は無かった。しかし、あくまで参加人数が3,000人の少人数のテストによるもので、数万人が集まるオープンβテストにも対応できるかはまだ未知数である。

 「TERA」は当初不安視されたシステム的な不具合は見当たらず、サーバーも安定して稼働するなど、オンラインゲームとして高い完成度を見せていた。プレイしたユーザーたちもバトルシステムの斬新さに気に入り、時間制限の20時間を満たすユーザーも多かった。なお、本作は韓国のゲームショウ「G-Star 2009」での出展が予定されている。「G-Star 2009」で公開される新情報も含めて今後の展開に期待したい。

モンスターグループには範囲攻撃を有効に使うのがポイントだ。マップの所々に激しい戦いが行なわれて、その情報を全て1つのサーバーで処理するため、負担が大きい

Copyright NHN Corp. All rights reserved. TERA IS A TRADEMARK OF BLUEHOLE STUDIO INC. COPYRIGHT(c) 2007-2009 BLUEHOLE STUDIO INC. ALL RIGHTS RESERVED.

(2009年 11月 6日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han]