【連載第40回】大人による大人のための洋ゲー連載

Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」

銃撃戦がこんなに面白いものだったとは!
PS3最高のクオリティを誇るFPSが遂に登場!!
「Killzone 2」

  • ジャンル:FPS
  • デベロッパー:Guerrilla Games
  • パブリッシャー:Sony Computer Entertainment
  • プラットフォーム:プレイステーション 3
  • 価格:59.99ドル
  • レーティング:ESRB:M(17歳以上推奨)
  • 発売日:2月27日(英語版)

 プレイステーション3プラットフォームの2009年のキラータイトル第1弾はなんといっても「Killzone 2」だ。このフランチャイズ、日本ではほとんど存在感がないタイトルだが、海外ではプレイステーションプラットフォームを象徴する1本と言えるもので、PS2時代に登場した初代「Killzone」の衝撃をPS3でも今一度、という期待感をパブリッシャーとユーザー双方から受けているタイトルだ。

 2007年のE3で初めて発表されてから2年近くの歳月を経て登場した「Killzone 2」はPS3のスペックを遺憾なく活かしたFPSに仕上がっている。ゲーム自体は同ジャンルとしては王道を行くシンプルなデザインだが、豪華な演出と32人までサポートしているマルチプレイは抜群の出来映え。既に欧米では高い評価を得て、着々とプレーヤー数を増やしている本作を今回はレポートしてみたい。

【お断り】
 当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
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■ プレイステーションを代表するFPSの日本再上陸計画が進行中!!

本編の主人公トーマス・セブチェンコ(セブ)
ヴィサリの側近あらわる!?今度の敵も手強そう

 Guerrilla Gamesと言えば、「Killzone」シリーズをプレイステーション 2、およびPSPで展開してきた硬派な開発スタジオとしてプレイステーションファンから抜群の知名度を誇っている。オランダ・アムステルダムに拠点を置く同社は、もともとロストボーイ、オレンジゲームズ、Arjan Brusseeなどいくつかの独立スタジオと個人が集まってできたスタジオだ。特に本作のデベロップメント・ディレクターを勤め、同社の創業メンバーであるArjan Brusseeは、その昔「Jazz The Jack Rabbit」という「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」ライクな横スクロールアクションゲームを手がけている。

 「Jazz The Jack Rabbit」は、「Unreal」シリーズや「Gears of War」で今や誰もが知っているメーカーにのし上がった米国のEpic Games(昔はEpic Mega Gamesと言った)が発売していたシェアウェアで、「DOOM」などと同じように1エピソードだけ無料でプレイでき、続きは有料というスタイルで販売していた。シェアウェア版自体はコピーフリーで配布形態を問わなかったため、日本でも株式会社P&Aが正規代理店として取り扱い、当時のDOS/V系PC雑誌の付録CD-ROMなどに収録されていたため、古参の海外ゲーマーであれば、妙に味のある顔のウサギが活躍するアクションゲームを覚えている方もいるだろう。

 そしてGuerrilla Games結成後に最初にリリースしたのがEidosから発売された「Shellshock NAM ' 67」だ。同シリーズはベトナム戦争を題材にしたFPSで、最近も別のデベロッパーにより続編が発売されているが、Guerrilla Gamesが手がけた本作は今ひとつあか抜けない出来で、音楽はなかなかセンスの良いものを持っていたが、その他は映画「ハンバーガーヒル」に影響でも受けたのか、ベトナム戦争映画の上っ面をなぞったような薄っぺらい演出と、PS2やXbox時代からみてもショボいビジュアルと、起伏の無いプレイ感で正直なところあまり良い思い出がない作品だった。

 「Shellshock NAM ' 67」の失敗で、一躍“イケてない”スタジオリスト入りを果たしたGuerrilla Gamesだったが、再びゲームファンの注目を集め出したきっかけとなった作品が、2004年に発売されたPS2専用FPS「Killzone」だ。PS2のパフォーマンスを限界まで使い切ったビジュアルは当時多くのゲーマーが衝撃を受けた。当時、Xboxでは「Halo」シリーズが同プラットフォームの看板タイトルとして衝撃的なデビューを遂げ、プレイステーションの対抗馬がまさに「Killzone」だったわけである。

 「Killzone」は、主人公らが所属するISA(Interplanetary Strategic Alliance:惑星間戦略同盟)と、軍事国家ヘルガストとの戦いを描いている。敵となるヘルガスト軍兵士がまとう戦闘スーツの赤いスコープが特徴的であり、「Halo」のマスターチーフ同様に「Killzone」のイメージを印象づける存在だ。

 ちなみに日本でも「Killzone」は発売されたが、なぜかパブリッシャーはSCEではなくセガから発売され、マルチプレイ機能も当時のPS2海外タイトルではありがちだったが、バッサリカットされていた。なぜSCEから発売されなかったかは謎だが、図らずも約4年の歳月を経て、PS3にプラットフォームを移し、同機種を支えるキラータイトルとして復活を遂げた。ただ、支持層という点では、欧米諸国では厚いファン層が構築されているのに対し、日本ではブランドの認知すらおぼつかないレベルであり、盛り上がりという面で前作からしっかり種まきをしてこなかったツケが今響いている感は否めないところがある。

 海外ではPS2版のその後を描いたPSP版「Killzone: Liberation」が2006年10月に発売されている。こちらもPSPのスペックを限界まで使ったのではないかと思える力作だった。国内ではこれら2タイトルがほぼ「無かったもの」として扱われているため、多くのユーザーが今回紹介する「Killzone 2」で同シリーズの世界観を体験することになるだろう。しかしヴィサリ率いるヘルガストとの戦いは既に2回行なわれており、話もそれなりに前作から引きずってることを念頭に入れておいていただきたい。


ヘルガストの兵士は女にも容赦がない!!赤いスコープが印象的なヘルガストの兵士
主人公の相棒・ガーザとの二人三脚で戦闘をこなす降下艇に乗り込むアルファチーム。とても危なそうな……
シートベルトもなしにいきなり急降下!!最大32人までの対戦もサポートしている


■ ヘルガストとの戦い三たび。ようやく敵の本拠地までやってきた!

倒し方にコツがいる敵も登場する
敵の本拠地だけあって激しい戦闘が続く

 前置きが長くなったがようやく本題の「Killzone 2」である。話は前作からそのまま引き続いた体裁になっている。「Killzone」はISAの植民地 惑星ヴェクタに突如現れたヘルガストを撃退するストーリーだったが、続編となる「Killzone 2」ではヴェクタでの戦いに成功したISAがヘルガストの本拠地である惑星ヘルガーンに直接侵攻するという展開となる。

 プレーヤーは軍の精鋭アルファチームの隊員トーマス・セブチェンコ(通称セブ)として、チームメイトと多くの戦友と一緒に惑星に降下する。何となく「Quake 4」の設定を思い出してしまうシチュエーションだが、プレーヤーに待ち受けているのはグロいエイリアン達ではなく、赤いスコープが特徴的なヘルガスト軍とのガチバトルだ。

 ゲームデザインはFPSとしてはまさに王道の内容で、手持ちの武器はプライマリとセカンダリの武器が1丁ずつと手榴弾のみ。体力は自動回復方式。演出面ではゲーム中ほとんど全てのシーンにNPCのバディが付き、多くのシーンにおいて敵味方同士のNPCが戦っている点で「Call of Duty 4」の系譜を受け継いでおり、FPSユーザーにとってはプレイしやすい作りになっているのがありがたい。

 本編となるシングルキャンペーンは全9ステージで、各ステージはいくつかのシーンにわかれている。各ステージのビジュアル面もSFならではの戦闘で荒廃した都市・宇宙船・砂漠など多彩な風景がプレーヤーを圧倒させるが、注目したいところは、秀逸なレベルデザインだ。全体的に暗めの各ステージは、裏道や階層など複数の進行ルートが用意されていることが多く、敵も気づけば後ろから襲われたりとトリッキーな攻撃を仕掛けてプレーヤーを驚かせたりすることもあれば、強い武器でランボーのように敵を片っ端から一掃するシーンもあり、戦闘の起伏が実に富んでいるため、プレイしていて全く飽きが来ないところが何気にスゴイ。

 Guerrilla Gamesは、敵との戦闘をいかに盛り上げるかという点について、かなりマジメに考えたようで、淡々とストーリーを追う面クリア型のゲームで終わらせず、ステージ中には単に撃つだけでは倒せない敵をどうやって倒すか頭をひねったり、波状攻撃をかけてくるヘルガスト兵をどうやって倒すか必勝パターンを見つけるといった、プレーヤーの技量を問うチャレンジ要素がふんだんに盛り込まれており、1ステージのクリア満足度が高い点も特筆したい。

 乗り物もいくつか用意されている。戦車や2足歩行のワーカーマシンなどを駆使するステージがあり、どちらもなかなかいい味を出している。特にワーカーは強力な兵器で普段は手こずるヘルガストの兵士達を片っ端からチェインガンで倒せるため、爽快そのもの。ステージの合間をつなぐオマケ的要素は強いものの、軍の精鋭兵士である主人公らしい活躍を楽しめる。

 ステージの合間にはムービーも挿入されゲームの雰囲気を盛り上げる。キャラクター個々のインパクトは残念ながら「Halo」や「Gears of War」に匹敵するものではなく、主人公のセブもアルファチームの仲間も今ひとつ印象が薄いのは否めない。ムービーから伝えられるストーリーも、これといって奇をてらったシナリオではないものの親切丁寧で、世界観の把握がしやすい。メカも細部まで描きこまれており、世界観は相当綿密にやっているものと推察されるが、プレーヤーが十二分に「Killzone」の世界に浸れ切れないのは残念だ。

 前作の惑星ベクタでの戦いから直結するストーリーになっているためヘルガストを束ねる男・ヴィサリの存在やISAによるヘルガーン侵攻がゲームの冒頭で語られるところは、多少のフォローはあるものの、やや突発すぎて前作を知らないプレーヤーが本シリーズの世界観に理解を深めるには不利な状況にあるのは否めない。これを機会にSCEからPS2「Killzone」の廉価版をリリースしてもらえると良いのだが……。


正面から戦っても倒せないなら…!?ヘルガスト兵にはいくつかのタイプが存在する
受けたダメージは自動回復するCoD4方式NPCとの会話シーンは重要な要素
暗闇に光る赤いスコープが恐ろしげだ多くのISA兵士が共に戦っている!!


■ 古そうで新しい武器デザインに要注目、SIXAXISの使い方もグッド!

手榴弾は投げると軌跡が出るので見逃すな
多彩な武器が用意されている

 最近のFPSで注目されるポイントのひとつが武器のデザインだ。「Killzone 2」の舞台は未来世界だが、武器は現代兵器をうまくアレンジしたものになっていて、どれもカッコイイ。特にアサルトライフルはISA、ヘルガスト共に主力火器でそれぞれの陣営に専用のものが用意されており、敵の兵器でも使う事ができる。銃弾の発射音は乾いた感じの音が爽快で、銃撃戦になるとかなり心地よいシューティングが味わえる。

 武器の性能についても他のFPSタイトルに比べるとかなりしっかり差別化されている。ライトマシンガンは連射を少ししただけで精密射撃は難しくなり、ショットガンは遠距離の敵にはほとんど効果がない。火炎放射器は威力が強いもののリロードが長く、リロード中に敵に襲われるとひとたまりもない。状況に合わせた組み合わせが重要だ。

 PS3ゲームの宿命でもあるSIXAXISの使い方だが、本作の場合は爆弾の設置やゲートをあける際のハンドル操作などに使われている。ゲーム展開的には違和感なく非常にスンナリと組み込まれており、あたかも本当に爆弾を仕掛けて起爆スイッチを入れるような体験ができる。慌てるとうまく動かないので落ち着いてコントローラをひねるのがコツだ。

 敵および味方NPCのAIに関しては、少なくともシングルキャンペーンにおいては、欧米における高い評判ほど賢いAIとは思えなかった。敵よりも戦闘中に味方NPCの存在が希薄すぎるのが気になる。ほとんどのシーンに誰かしらのNPCはいるが、彼らが積極的に戦っているかというと決してそうではない。勝手に突っ込んで戦死することも多いし、いまひとつ賑やかし以外の効果が見えてこないのが惜しいところではある。

 また、最近のFPSのトレンドになっている協力(CO-OP)プレイをサポートしていないため、なおさらNPCの活躍が演出面において重要になってくるはずなのだが、主人公とその他登場人物とのインゲーム内における絡みをもう少し見たかったところだ。ほか、いくつか論評したいことはあるが、ネタバレになるので、興味のある方は実際に確かめてみてほしい。


爆弾の設置はSIXAXISを使って行なう爆破シーンはド派手&大迫力
当然、乗り物も登場する一方的な攻撃力に酔いしれよう
チームメイト同士でいさかいが発生!?悲嘆にくれるセブ。ストーリーもしっかり堪能するべし


■ PS3史上最高のクオリティを実現したマルチプレイモード

世界中のホストからお好みのゲームを選ぶ
昇進すれば使える機能が増える

 それではお待ちかねのマルチプレイモードを紹介しよう。シングルプレイキャンペーンをクリアしただけでは「Killzone 2」の魅力全てを体験したとは言えない。本作の真の醍醐味はマルチプレイにあると言っても過言ではない。最大32人までの対戦をサポートしたマルチプレイモード「Warzone」の面白さは、現在あるPS3のマルチプレイゲームの中でもベストと言って差し支えない出来映えなのだ。

 ゲームはISAかヘルガストどちらかの陣営にわかれて争われる。ゲームルールは「ボディカウント」、「アサシネーション」、「サーチ&リトライブ」、「サーチ&デストロイ」、「キャプチャ&ホールド」の5種類が用意されており、それぞれキル数や時間を設定することで、1ゲームを通して複数のルールで戦えるように構成されている。

 「Warzone」で操作するプレーヤーキャラクターは、「BattleField 2」以降のFPSで一般的になった、階級があがることでカスタマイズ性が広がる成長要素を持たせている。階級が上がり昇進すると様々なアビリティや武器が解除され、ゲーム中で更に活躍する機会が増えるようになっている。

 アビリティや武器の解除を進めることで、単純に戦闘力を高められるだけでなく、倒れた友軍のプレーヤーを復活させたり、BOTのタレット(自動的に反応して敵を攻撃する機銃)を設置できたりなど、プレーヤーキャラクターが所属する味方チーム全体の戦略を左右する存在になっていき、それがゲーム自体の奥深さに繋がっている。なお、武器とアビリティは、その組み合わせに一定の制約があるものの、ゲーム中の切り替えも可能だ。

 なお、戦闘中に発生する特定の条件を満たすと対戦終了後にリボンを得ることができる。このリボンを一定数得るとメダルが取得でき、メダルを集めることで例えば手榴弾の携行数が増えたりなど、レベルアップとは別のアップグレード要素も持っている。戦えば戦うほど他のプレーヤーより確実に強くなれるゲームデザインは「Call of Duty 4」のようにアビリティを組み合わせるタイプとはまた異なる切り口でプレイスタイルの多様性を追求することに成功している。

 序盤の階級では能力的に物足りないものがあるため、経験値の入りやすいチーム制デスマッチ「ボディカウント」を繰り返しプレイして階級アップを狙うプレーヤーは多い。まずは先任軍曹あたりまで階級を上げて、接近戦に強いショットガンか連射の効くサブマシンガンを装備できるようにしておいた方が撃ち負けないで済むはず。また、アビリティで味方を復活させたりしても経験値が加算されるため、むやみやたらに戦うのではなく、自分なりの戦闘スタイルを身につけることもチーム全体の勝利には重要であり、より楽しめるだろう。

 本作のマルチプレイでぜひ活用したい要素としては「分隊制度」を挙げておきたい。各陣営は最大で4人×4組の分隊を組むことができる。メリットとしては分隊全員のステータスがわかるため、仲間が倒れた際に咄嗟の対応が取りやすく、分隊長が生きていればその位置をリスポーンのポイントにできるため、迅速に最前線に兵力投入が可能になる。分隊結成をしても、必ずしも分隊メンバーそろって組織だった行動を求められる訳ではなく、その辺は各プレーヤー任せになっているため、お手軽に参加したり招請できるのが嬉しい。

 対戦用マップデザインも、なかなか秀逸だ。デフォルトでは全部で8つのマップが収録されており、32人対戦に必要な適度な広さと複雑さが、偶発的な戦闘による緊張感などやり込みがいのあるものに仕上がっている。特定のポイントで大銃撃戦が展開されるように設計されているのか、両陣営による力押しが必ず発生するため、ハデな戦闘が楽しめるのも醍醐味だ。

 この力押しはプレーヤー個々のテクニックや戦略により均衡が崩れるが、ルールによっては制限時間も加わるためゲーム中の白熱度合いはかなりのもの。マルチプレイはシングルゲーム以上にバランスが重要だが、「Killzone 2」のマルチプレイの絶妙さは、以前のGuerrilla Gamesのタイトルからは想像できないクオリティを実現しており、PS3ユーザーにとっては大いに待たされただけのことはあるというもの。

 開発のGuerrilla Gamesは今後対戦用マップの追加ダウンロードを予定しており、マルチプレイは長く楽しめる内容に仕上がりそうだ。日本版発売まで約1カ月ほど時間はあるが、ストーリーまでじっくり楽しむことを考えると英語版に手を出さずに待つという手もある。PS3専用ゲームとしては「アンチャーテッド」以来の名作に出会えた。FPSゲームファンは必ずゲットして欲しい1本だ。


戦闘でリボンを一定数ゲットするとパワーアップ5つのルールが時間と勝敗で消化されていく
分隊を組めば迅速な戦線復帰が可能になるチームメイトとは可能な限り一緒に行動したい
固まると敵の手榴弾の餌食になりかねない損害を恐れず敵の弾に撃ち負けるな!!

KILLZONE 2 (C) Sony Computer Entertainment Europe. Publisherd by Sony Computer Entertainment Inc. Developed by Guerrilla Games.