【連載第8回】開発者が語るiPhoneゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

米Apple iPod担当のスタン・イング氏らが来日
年末にかけて配信予定の注目の新作ゲームを4本紹介

 世界中でブームを起こし、携帯電話市場を一変させたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしても注目を集めている。本連載では、iPhoneゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



12月7日 収録


 12月に入って、超大作ゲームのリリースが目白押しのiPhone/iPod touch用ゲーム。株式会社バンダイナムコゲームスからは大人気フライトシューティングゲーム「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion」、株式会社スクウェア・エニックスからはiPodで人気のあったシミュレーションRPGのアレンジ版「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」が配信されたばかり。「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion」にいたっては、セール価格で販売中だということもあるが、配信当初から有料アプリのランキングで1位を連日獲得し続けている。

 ゲームユーザーとしても目が離せなくなってきたiPhone/iPod touch用ゲームだが、今回、米Apple ワールドワイドプロダクトマーケティング iPod担当シニアディレクターのスタン・イング氏と、同iPod担当のショーン・エリス氏から、ホリデーシーズンに配信するゲームを見せていただけたのでお届けする。




■ iPhone/iPod touchは全世界5,000万台、App Storeは10万アプリ以上

Apple ワールドワイドプロダクトマーケティング iPod担当シニアディレクターのスタン・イング氏(写真は昨年のインタビューのもの)

 まずイング氏は、現在のiPhone/iPod touchの状況を説明。「夏にはiPhoneの新型となるiPhone 3GS、秋にはiPod touchの新型が登場し、現在の合計台数は世界で5,000万台になっている。ポータブルゲーム機にも引けを取らない規模のプラットフォームになったといえる。これはゲーム開発者にとって魅力的なことで、大きなプラットフォームでゲームを開発でき、しかも全世界の人に届けられる。コンシューマー用のゲーム開発は有名な会社だけだったが、iPhone/iPod touchでは小さな企業や個人にもチャンスが巡ってきており、アイデア次第でゲームを開発できる。そのおかげで、これまでにないゲームを生み出すことにつながった。これらのことがiPhone/iPod touchのゲームがここまで発展した要因として大きい」と述べた。

 また、App Storeについても数々のデータを披露してくれた。「現在、App Storeには10万本以上のアプリケーションがあり、お客様のダウンロード件数は20億件以上になっている。中でもゲームが最も伸びており、現在は2万本以上にもなっている」という。またApp Storeの利点についても触れ、「App Storeはゲームの入手方法にも影響を与えている。以前はカートリッジやデバイスをお店で買わなければならなかったが、今ではネットからデバイスに直接ダウンロードして落とすのが当たり前となっている。さらにゲームの価格も現在は500円~1,000円が多く、お客様がとても買いやすい値段になっているし、無料ゲームも非常に多くの本数が出ており、気軽にダウンロードして楽しめるようになっている。これらのことが、App Storeの成功につながった」と語った。




■ FPS、レース、フライトシューティングなど多彩なラインナップをアピール

 続いてエリス氏から、iPhone/iPod touch用のゲーム紹介を受けた。現在配信中のタイトルとして、株式会社セガの「スーパーモンキーボール2」、株式会社コナミデジタルエンタテインメントの「ダンスダンスレボリューション S+」の2本、そして年内配信が予定されているエレクトロニック・アーツ株式会社の「ニード・フォー・スピード シフト」、米SGNの「Skies of Glory」、ゲームロフト株式会社の「N.O.V.A.(ノヴァ)」と「AVATAR(アバター)」の計6タイトルを見せていただいた。まずは現在配信中の2タイトルを紹介し、続いて年内配信予定の新作4タイトルを紹介していく。




●「スーパーモンキーボール2」(セガ)

 iPhone3Gと同時に発売され、好評を博したアクションゲーム「スーパーモンキーボールの新作。本体を傾けながらボールの中に入ったおサルをうまく転がしてゴールを目指すゲームシステムは踏襲しつつ、今作では最大4人まで同時に対戦できるマルチプレイが搭載された。マルチプレイでは、友達と競い合いながら誰が先にゴールできるかを競い合うので、より白熱したゲームが楽しめた。実際、イング氏とエリス氏が対戦したのだが、デモンストレーションにも関わらずお互いが歓声を上げるほど熱中していた。ちなみにエリス氏によると、操作自体も滑らかにできるよう改良がほどこされ遊びやすくなっているそうだ。


本体を傾けておサルを転がすシンプルなゲームながら、対戦はかなり白熱する
(C)SEGA



●「ダンスダンスレボリューション S+」(KONAMI)

 リズムアクションゲームでおなじみの「ダンスダンスレボリューション」シリーズの最新作。本作ではiPhone OS 3.0で追加されたシステム、In App Purchase(アプリ内課金)を使って楽曲の購入が可能になり、プレーヤーの好きな曲を追加購入できる。さらに加速度センサーを使ったシェイクモードについてもシェーン氏が披露してくれた。本体を前後左右に動かしてダンスをするように楽しめる。これはiPhoneのテクノロジーをうまく利用したゲームで、これまでにない遊びが楽しめるのもiPhoneならではという。本シリーズは、日本だけではなく米国でも大人気だそうだ。


シンプルなゲーム内容から、米国でも人気だという「ダンスダンスレボリューション」シリーズのiPhone/iPod touch版
(C)2009 Konami Digital Entertainment



●「ニード・フォー・スピード シフト」(エレクトロニック・アーツ)

 既にコンシューマー向けに発売されている人気のレースゲーム「ニード・フォー・スピード シフト」のiPhone/iPod touch版で、12月18日に配信予定。BluetoothやWi-Fiを使ってのマルチプレイや、In App Purchaseを使った機能が搭載され、iPhoneでできることをすべて盛り込んである。グラフィックスもOpenGL ES 2.0に対応(OpenGL ES 2.0は、iPhone 3GSと新型iPod touchが対応している)し、非常に美しくなっている。

 シングルプレーヤーモードをプレイさせてもらったところ、加速度センサーを使って端末をハンドルに見立てた操作で快適に遊べた。操作はビギナーとエキスパートによって異なり、ビギナーではシフトチェンジが自動になり、エキスパートではスクリーン上で指を上下にスライドさせるとシフトチェンジできる。またブレーキは画面のどこかをタッチするだけでかかる。カメラモードも3種類あり、ゲーム中にアイコンをタップすることで車載カメラやクルマの背面から見た画面に切り替わる。

 特筆すべき点は、ドリフトの操作だ。車がカーブに進入したときに、曲がりたい方向にクイックに本体を回すとドリフトができる。あとは本体を左右に回して微調整させて操作する。iPhoneではこれまでにないハンドルの操作感で、本当にドリフトしているような感覚が楽しめ、運転していて非常に気持ちよかった。レースゲームファンには注目のタイトルだ。


コンシューマーでもグラフィックスの美しさには定評がある「ニード・フォー・スピード」シリーズの最新作。iPhone/iPod touch版は加速度センサーによるドリフト操作がリアルで快感だ



●「N.O.V.A.(ノヴァ)」(ゲームロフト)

 今年の9月に米国で行なわれたプレスカンファレンスで発表され、東京ゲームショウのステージイベントでも紹介された注目のFPSが、ついに12月中旬に配信される。人間が住めなくなった未来の地球を舞台にSFストーリーが繰り広げられ、地球の近くにやってきた宇宙船を探索するところからゲームが始まる。

 操作はバーチャルパットでプレーヤーが移動し、スクリーンのどこかをタッチして上下左右にスライドさせると視点が動く。右下のボタンで銃を発射し、矢印のボタンでジャンプして障害物を乗り越えていく。武器はプラズマ銃やショットガン、ライフルなど、計5種類が用意されており、変更は画面右上部分の武器アイコンをスライドさせて行なう。全部で12ステージが用意されており、クリアしていくのにパズル的な要素が盛り込まれた謎解きのあるステージも用意されている。

 本作もグラフィックスは緻密かつ美麗で、背景の滝の流れまでもが描かれている。さらに、最大4人でのマルチプレイも可能で、FPSならではの銃撃戦の醍醐味を味わえるという。


SFを題材にした本格派FPS。とにかく画面の美しさに驚かされた



●「AVATAR(アバター)」(ゲームロフト)

 日本では12月23日に公開されるジェームス・キャメロン監督が手がけた超大作SF映画「アバター」を題材にした公式ゲーム。本作のストーリーは映画よりも20年も前の話になっており、映画とは全く同じ内容ではないが、地球から遠く離れた先住民Na'vi(ナビ)族と人間の戦いを描いている。

 プレーヤーはアバターとなって、人と会話をしながら冒険を進めていく。バーチャルパットでアバターを操作して、シーンに応じた武器を使って敵と戦う。武器のボタンを押したままにすると、自動的に連続攻撃が発動する。3Dアクションゲームのように、ステージを動き回って敵を倒しながら謎を解き、ゴールを目指していくステージもあれば、バンシーという飛行動物に乗って空を飛び、強制スクロールするシーンで敵を弓で撃ち落としながら進んでいくステージも用意されており、1つのゲームながらバリエーション豊かな内容となっている。


映画を題材にしたゲームながら、映画よりも前の世界を描いており、映画のストーリーを補完する意味も持っている



●「Skies of Glory」(SGN)

 プロペラ飛行機の空中戦バトルを楽しめるフライトシューティング。開発元のSGNはジェット機のゲーム「F.A.S.T.」などを開発している米国の企業で、最初はFaceBook向けのゲームを作っていたが、2007年からiPhone OSに魅力を感じてiPhone/iPod touch用ゲームを作り始めたという。

 飛行機の操縦は加速度センサーを使っており、本体を上下左右に傾けてプレイする。少し左右に動かしたい場合は画面下にある左右ペダルを押して調整することも可能。今回はシングルプレイモードで、CPUを含めた4対4でのチームバトルをデモンストレーションしていただいた。8機が入り乱れ敵機に近づき機銃で撃ち落としていく空中戦は迫力があった。本作もOpenGL ES 2.0を使って開発されており、美しいグラフィックスも特徴といえる。

 銃弾を受けた効果音などもリアルに再現されていて、完成度の高さを感じた。しかも本作は、アプリを無料でダウンロードでき、もっと高性能な飛行機やほかのステージで遊びたい場合には、In App Purchaseを使って購入できるようになっている。Wi-Fiで最大8人のマルチプレイが可能で、さらに今後はサーバーを介して世界中の人たちと対戦ができるようになる予定だという。


オーソドックスなフライトシューティング。ビジュアル・サウンドともにクオリティが高いが、これが無料で遊べてしまう



 今回のデモでは、3Dグラフィックスのクオリティが一段と向上していたのが印象的だった。これについてイング氏は、「OpenGL ES 2.0で開発できるということもあったが、開発環境が出てから1年半以上が経過して、開発者が経験を積んできたことも大きい」と語っている。また今回のデモでこの6タイトルを選んだのは、「iPhone/iPod touchでこれだけ幅広いジャンルのゲームが楽しめることをお見せしたかった」という理由だそうで、実際には他にも様々なゲームが用意されていると感じられた。

 iPhone/iPod touchでユニークなゲームが出ている背景には、iPhone/iPod touchならではのテクノロジーがある。3.5インチのマルチタッチディスプレイや加速度センサー、優れたグラフィックス機能、BluetoothやWi-Fi、In App Purchaseなどを利用した面白いゲームが続々と増えてきている。今後もiPhone OSの機能や本体の進化とともに、これまでにないゲームが登場することを期待せずにはいられない。


(2009年 12月 8日)

[Reported by 川村和弘]