【連載第17回】開発者が語るiPhone/iPadゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

Twitterと連携するiPad用対戦ゲーム「Followars」
Route24の西健一氏がiPad用ゲームの可能性を探る!

 世界中でブームを起こしたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしての地位を得た。続いて登場したiPadも、かつてないゲーム体験を生み出す可能性を秘めている。本連載では、iPhone/iPadゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



6月3日 収録


 ついにiPadが日本でも発売され、続々とiPad用ゲームが配信されている。本連載ではこれまでiPhone/iPod touch用ゲームをフォローしてきたが、今回からiPad用ゲームを制作している開発者にもインタビューを行なうことにした。

 記念すべき最初のiPad用ゲーム開発者は、6月16日に配信されたTwitter連動バトルゲーム「Followars(フォロウォーズ)」を開発した有限会社Route24代表の西健一氏と、発売元である株式会社マーベラスエンターテイメントの平田真氏のおふたりだ。

 家庭用ゲームの「牧場物語」シリーズを販売していることでおなじみのマーベラスエンターテイメントから初のiPad用ゲームが配信されることになった経緯と、配信されるまでの苦労、さらに今後のiPad用ゲームの可能性についてもお伺いした。




■ Twitterを使った「バーコードバトラー」風な対戦ゲーム

Route24代表の西健一氏。「スーパーマリオRPG」や「PostPetDS 夢見るモモと不思議のペン」などを手掛けたゲームクリエイター。iPhone/iPod touch向けに、世界中の人々とトライアングルを作るゲーム「geotrion」を開発した
マーベラスエンターテイメント オンラインチームの平田真氏。「PostPetDS 夢見るモモと不思議のペン」の制作にも携わった

――まず、「Followars」はどんなゲームなのでしょうか?

西健一氏: Twitterのアカウントを使って、2人で対戦するゲームです。昔、バーコードを読み取ってキャラクターを召喚して戦う「バーコードバトラー」というものがありましたが、あれと似たようなもので、Twitterのフォロワーをキャラクターとして戦わせます。Twitterの自分のアカウントを入力してゲームを始め、自分のほかにフォローしてくれている人を最大2人まで選び、3人でチームを組んで相手と戦えます。

――選んだキャラクター(自分とフォロワー)の強さはどのように決まるのですか?

西氏: キャラクターのHPや攻撃力などのステータスは、いろいろな要素を反映して算出しています。例えば1日のつぶやき数が多いと、HPが高いといった感じです。

平田真氏: Twitter上級者だと強いキャラクターが誕生するというわけではないので、フォロワー数が少ないTwitter初心者でも楽しめるようになっています。どのフォロワーが強いかは、遊びながら探って欲しいですね。

――なるほど。フォロワーのステータスをチェックするだけでも面白そうですね。

西氏: Twitterのリストを見られる機能もあります。各フォロワーのステータスをチェックしていき、HPが高い人をリストにまとめる、といったこともできます。

――Twitterのリスト機能の新たな使い方ですね。ゲーム中のバトルはどのように行なわれるのですか?

西氏: 戦闘は基本的に自動的に行なわれていきます。ターン制で、キャラクターの素早さによって攻撃する順番が決まり、順番が来ると相手のチームの誰かを攻撃します。たまに「チャンスタイム」が発動して、画面に輪っかが出るので、その時だけタイミングよくボタンをタッチしてやると、相手をタコ殴りにできます。最終的に相手チームを全滅させると勝利となります。

――バトルに勝利するとどうなるのでしょうか?

西氏: バトルに勝つと、ゲーム内で3ポイントがもらえます。このポイントで、ワールドランキングが決まるようになっています。現バージョンではポイントはランキングにしか使っていませんが、今後のバージョンでは職業の概念も追加し、ポイントを使って転職できるようにしようと考えています。遊べば遊ぶほどポイントが貯まっていって、貯まったポイントで自分のキャラクターを強くしていけるような仕組みですね。

――ゲームは面と向かっての対戦プレイのみですか?

平田氏: 今のところ、オンラインプレイには対応しておらず、1人では遊べません。アップデートで1人でも遊べるようにしようと思っております。

――今後のバージョンアップで予定している内容を教えてください。

西氏: 職業の概念以外にも、バトルのエフェクトをもっと派手にしていこうと考えています。地震の魔法を使ったら背景がバリバリと地割れするなど、戦いを盛り上げる演出を入れていきたいです。

平田氏: Twitterと連動しているので、キャラクターがピンチの時に「ピンチなう」などのようにツイートすると、それに対してのリプライやリツイートが増えるとキャラクターの力が回復していくような、某マンガの元気玉のようなシステムなんかも妄想していますが……どうでしょう(笑)。

西氏: ほかにも、離れた場所にいる人とも楽しめるオンラインのリアルタイム対戦などを考えたのですが、平田さんから、自分のパーティーを専用サーバーにアップしておいて、あとは他の人が勝手に戦ってくれる非同期型の方が面白いと提案されたので、非同期のバトルシステムを検討しています。

平田氏: ソーシャルゲームによくある作り方なのですが、自分が寝ている間に誰とどう戦ったかの戦績が出て、そこでポイントが入る非同期型の方が楽しいと思いますね。

――非同期型のバトルは面白そうですね。今後も、いろいろな楽しい要素もどんどん追加されていくようで楽しみです。


自分のTwitterアカウントを入力してゲームを始める。バトルには1チーム3キャラクターまで参加できる。戦うキャラクターは、ズラッと並んでいるフォロワーのアイコンで選ぶバトルは自動で展開し、どちらかのキャラクターの体力が全員0になるまで続けられる。やられた瞬間には、直前につぶやいたツイートが表示されるバトルに勝利するとポイントを獲得できる。またバトルの結果を自分のTwitterにツイートできる




■ Twitter連動したゲームになった経緯

――Twitterと連動するゲームを作ろうと思った経緯を教えてください。

西氏: 単純に僕自身がAppleファンであり、Twitterにハマっていたこともあり、これを連動させてゲームを作れないかと思ったのがきっかけです。それを、以前DS用のゲームで一緒に仕事した平田さんに相談したところ、平田さんもiPadに興味を持っていて、ゲーム内容を話す前から「何でもいいからやりましょう!」という流れになりました(笑)。

――開発はいつ頃から始まったのですか?

西氏: 平田さんに相談したのはiPadの発表直後で、そこから企画が動き出し、3月の頭から開発に取りかかりました。開発はスムーズに進んで、一気に作りあげました。「よっしゃ、ローンチに間に合った!」と思っていたら、リリース直前にいろいろと問題が発生し、米国のiPad発売日に配信できませんでした。

――何が原因だったのですか?

西氏: 初めてのプラットフォームでの開発だったので、想定外の問題がたびたび起こってしまいました。開発環境のシミュレーターでは動いていたのですが、実機で試したところ、動きませんでした。米国のローンチ前から開発していて実機で確認できなかったので、どうしようもないトラブルでした。米国で発売されたiPadを入手して検証したところ、実機とシミュレーターとではメモリ管理などで違いが見つかり、そのために動かなかったことがわかりました。

――iPadの発売前に開発していたからこそのトラブルですね。

西氏: トラブルの原因となっている部分を直すとともに、処理を軽くするチューニングも行ないました。

平田氏: 今(インタビュー時点)もAppleとやり取りを続けていて、アプリの修正作業をしています。早くユーザーの反応を見てみたいです。

西氏: 僕はリリースされたら、すぐにバージョン2に着手しようと思っています。

――マーベラスエンターテイメントさんは、これまでiPhone/iPod touch向けのアプリを出されていません。その状態でiPadを手がけることになったのは、西さんからの話がきっかけだったのですか?

平田氏: そうです。弊社では現在、ブラウザゲームの「みんなで牧場物語」など、コンシューマーゲーム機向け以外の分野も手がけていくという計画があります。そのうちの1つがiPad用「Followars」です。コンシューマーゲーム機と比べて開発費を抑えられるので、1度やってみることにしました。今後もiPadやiPhone/iPod touch用ゲームを開発していくかは決まっておらず、「Followars」の調子次第といったところです。ただバージョンアップは行なっていきますので、楽しみにしていてください。




■ テーブルに置いてみんなでゲームを楽しめるiPad

iPadは「みんなで囲んで遊べる」のが魅力という西氏。「Followars」はまさにそれに則ったアプリだ

――iPadのゲームを開発してみて、iPadの今後の可能性はどこにあると思いますか?

西氏: 僕はiPadの大きさを見たときに、昔、ゲームセンターに置いてあったテーブル筐体に戻ったと感じました。昔のアーケードゲームは、筐体を挟んで座り、見合いながら遊ぶスタイルで、その感覚に近い形でゲームを楽しめると思っています。今の対戦ゲームは、特にDSやPSPなどの携帯ゲーム機だと、みんながそれぞれの画面を見ていて、絵的にあまり面白そうには見えません。しかしiPadで1つの端末を取り囲んで遊ぶスタイルだと、みんなが一緒に遊んでいるのが楽しそうに見えてきます。iPadならそんなスタイルの遊びが可能なので、そこに期待を寄せています。

――なるほど! みんなでワイワイ楽しめるのは、iPadならではの特長かも知れませんね。

西氏: iPadのスクリーンは視野角が広いので、これを中心に円陣を組んだとしても、全員で見られます。何かを中心に人が輪になっているのって、絵としてとても楽しそうで、幸せそうな感じがあります。それがiPadで実現できるのが素晴らしいです。

――新しいゲームの可能性が広がったという感じですか?

西氏: 明らかに広がっています。その上、タッチインターフェイスや傾きセンサー、Wi-Fiなどを使ったゲームが作れるので、これまでにないタイプのゲームも出てくると思います。

――iPadはゲーム業界を変えるものになると思いますか?

西氏: iPhone/iPod touchで、個人がゲームを開発して世界に向けて配信できるようになったことで業界にインパクトを与えましたが、iPadの登場で、さらにゲーム内容や遊び方のスタイル、開発環境、流通など、いろいろなことが変わってくると思います。画面の大きさや視野角の広さを活かして、みんなで楽しめるゲームがもっと出てくると思いますし、個人による新たな発想のゲームもたくさん出てくるかと思います。「Followars」もネットに繋がりテーブルに置いて対戦するのに最適な大きさのiPadだからこそ、誕生したゲームです。

――なるほど。参入障壁の低いApp Storeと、iPadという端末の革新性が、新たなゲームの可能性を広げるわけですね。

西氏: 最近はPCや携帯電話で楽しむソーシャルゲームの人気も高く、iPhone/iPod touch/iPad用ゲームと同様にどんどん勢力を拡大していますが、その一方で1人で40~50時間も遊べるコンシューマーゲームも残っていくと思います。ゲームの楽しみ方の選択肢が一気に広がっている時期なのでしょう。

――では最後に、読者に向けて「Followars」のアピールをお願いします。

平田氏: 「Followars」は、現段階ではシンプルなバージョンですが、評判に応じてどんどんバージョンアップしていこうと思っていますので、よろしくお願いします。

西氏: 自分でiPadを購入して、Twitterのアカウントも取って遊ぶというのは敷居が高いかも知れませんが、周りにiPadを持っている人がいたら「Followars」を1度遊ばせてもらってください。フォロワーによって、「この人、意外に強い」とか「この上司やっぱり強いんだ」とか、そういう意外な発見があって面白いです。まずはそうやって遊んでもらって、面白ければご自分でもお買い求めください。アップデートをガンガンしていきますので、ご期待ください。

――本日はありがとうございました。


(c)2010 Marvelous Entertainment Inc. / Route24 Inc.

(2010年 6月 23日)

[Reported by 川村和弘]