山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第55回

長年の夢を叶えた結晶なのが判明したりスピードランの世界記録が熱かったり、「ゼルダの伝説」の伝説が今週もいろいろな話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

「ゼルダの伝説」の伝説が、今週もまたひとつふたつ。

まずは米国の大手ソーシャルブックマークサイトRedditから話題になっていったという、こちら。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のクレジットでは、大半が日本人スタッフの名前が並び、たまにアジア系の名前の人がいらっしゃるという感じなのですが、

その中には、WILDLIFE PROGRAMMING担当のCorey Bunnelさんという、唯一西洋系なお名前の人がいます。

このバネルさん、10年前の2007年に翻訳者向けフォーラムサイト「TranslatorsCafe.com」に、

「高校を卒業したがこれからどうするべきかは決めていない。夢は任天堂のゲームデザイナーとして働くことです。この目標のために何をすべきでしょうか?」

という主旨の書き込みをしていた「Corey Bunnel」その人なのではと話題に。

2007年のCorey Bunnelさんの書き込み。そこには「My dream is to live in Japan and work for Nintendo as a game designer.」という夢が語られていました

その後、おそらくその書き込みをしたバネルさんと思われる同名の人物は、立命館大学のYoutube公式チャンネルにて2015年の生徒インタビューに登場しているのが、Redditユーザーによって発見。

そのインタビュー動画では、大学でプログラミングを学び、任天堂でインターンシップをしたことなどが語られています。

そして今年。「ブレス オブ ザ ワイルド」発売直前にサンフランシスコにて開催されたGame Developers Conference 2017の「ゼルダの伝説」セッションにて公開された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」開発チームの写真には、ピンクのシャツを着てチームの一員として微笑むバネルさんの姿が確かにあります!

10年前から夢を追い続けて、それを実現。しかも世界中から絶賛の声があがっている「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の開発スタッフの1人になっていた……ということで、夢を叶えたバネルさんのこのエピソードには、賞賛と感動のコメントが多数寄せられたようです。

ゲームが好きで、いつかゲームを作りたい、ゲームに関わる仕事がしたい!というバネルさんのような人は日本にも多いのではないでしょうか。ぜひ、その夢を諦めずに実現して、いつか“すんげーゲーム”を作ってもらいたいです。そうしたら、僕がレビュー書きますので!

今月に開催されたばかりのGDC 2017にて行なわれた「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のセッションでは最後に開発チームの集合写真が。そこにはバネルさんもいらっしゃいます。記事は「『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が実現した“かけ算の遊び”からどうぞ

さてさて、お次は、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を遊ぶ側の伝説がまたひとつ。

というか現在、伝説更新中。

クリアまでの早さを競うSpeedrun(RTA)が大変話題になっているようです。

Speedrunにもレギュレーションは当然ありまして、その中でもとにかくエンドロールまでたどり着けばいいという無差別級的な「Any%(クリア率コンプ率は問わないという意味)」という種目が過熱しております。

3月22日深夜時点での「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」Any%のクリアタイム世界記録保持者は日本人のすば氏、タイムはなんと47分59秒!

Speedrun.comの「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」。こちらは3月22日になったばかりの深夜時点です。熾烈な争いが繰り広げられております

Speedrunのランキングを集計する「Speedrun.com」では、各タイムの証拠となるプレイ動画のリンクもありますので、本編をクリア済みの人はぜひご覧頂きたいところ。

そこには、ゲーム中の処理時間が結果的に最も速いWii U版でプレイし、カットシーンが最も速く終わるドイツ語に言語を設定、

裸で走り、がんばりゲージが尽きかけると口笛を吹いて走ったままゲージを回復し、

馬に乗ったと思ったら“馬から降りると見せかけてキャンセル”によって馬のダッシュゲージを強制的に回復させダッシュし続けるという、僕らの知っているのとは異なる奇妙な光景が広がっております。

プレイ時間が100時間を越えてもなお、メインが全然進んでいないけど楽しいから別に構わないという人もいれば、Speedrunのように本来のありようとは異なる楽しみ方もできてしまう。

いろんな遊び方ができる幅があって、プレイスキルと発想次第で全然違うプレイになるし、順当に味わっていくプレイでも、もちろんしっかり楽しめる。変な遊び方も受け止めるぐらい間口が広くて、すごくゲームらしいゲームだと思えます。

思えば、初代「バイオハザード」とかもタイムアタックすると「はいはい、ちょっと通るねーごめんねー」みたいな感じでゾンビの横をすり抜けてましたしねー。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」も、今後どこまでSpeedrunの記録が伸びるのか。変な遊び方や楽しみ方が出てくるのか。そういうところも楽しみです。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。