レビュー

「DOOM: The Dark Ages」レビュー。原点回帰と進化の融合

硝煙と臓物にまみれた新たな戦場へ

【DOOM: The Dark Ages】
5月15日 発売
プラットフォーム:PS5/Xbox Series X|S/PC
※Game Pass対応
価格:
スタンダードエディション 9,700円
プレミアムエディション 13,800円
コレクターズバンドル 34,800円
CEROレーティング:D(17歳以上)

 「DOOM」は、FPSというジャンルにおいて金字塔と言えるシリーズである。id Softwareによって開発された初代「DOOM」から始まり、その歴史は数々の革新と共に刻まれてきた。2016年の「DOOM(2016)」、そして「DOOM Eternal」は、現代的なゲームプレイと圧倒的なスピード感、そしてシリーズならではの過激な暴力表現をもって、プレーヤーに衝撃と興奮を提供してくれた。

 そして今、最新作「DOOM: The Dark Ages」が我々の前に姿を現わす。本文でじっくりと紹介していくが、まず伝えたいのはシリーズファンも、本作で初めて「DOOM」に触れようと思っているプレーヤーも、安心してほしいということだ。それは、今作もまた、新鮮な体験と、決して色褪せることのない“「DOOM」らしさ”を両立させた、新たな作品として仕上がっているからだ。

 本稿では、筆者が体験した「DOOM: The Dark Ages」の魅力を余すところなく紹介していきたい。

【DOOM: The Dark Ages | Developer_Direct 2025 ゲームプレイ(4K) | 2025年5月15日発売予定】

根源的な快感を追求する「DOOM: The Dark Ages」

 まず改めて、「DOOM」というゲームを振り返ろう。DOOMは、id Softwareが開発したFPSだ。プレーヤーは伝説の戦士ドゥームスレイヤーとなり、眼前に次々と現われるデーモンたちを多種多様な武器や手段で木っ端微塵にしながら進んでいく……という非常にシンプルなゲームだ。

 このシンプルさこそが、「DOOM」の面白さの根源だ。銃を撃って敵を倒すというFPSの原始的な楽しみ、デーモンが肉塊となって吹き飛ぶ過激なゴア表現、重厚な銃声、デーモンの断末魔。これらのサウンドが生み出す血と硝煙のハーモニーの中にプレーヤーが身を投じること、そこに本作ならではの強烈な魅力が存在している。

 戦闘面においては、「厳しい状況ほど積極的に攻める」という楽しさが健在だ。体力が減少している際に敵を倒すと回復アイテムがドロップし、近接攻撃を決めれば弾薬が手に入る。つまり、弾薬が尽きれば敵陣に突撃して近接攻撃を仕掛け、HPが危険水域に達すれば、さらに敵を殲滅して活路を見出す必要がある。

体力が厳しいときに敵を倒すと青色の回復アイテムをドロップする
炎上させて攻撃するとドゥームスレイヤーのシールドを回復する緑色のアイテムもドロップする

 後方に下がり、物陰に隠れて体力の自然回復を待つような消極的な戦法は、ドゥームスレイヤーには似合わない。我々プレーヤーもまた、彼にそのような軟弱な戦いを求めてはいないはずだ。

 呼吸を忘れ、口は半開きになり、喉がカラカラ。そのような我を忘れて没頭する白熱の体験こそが「DOOM」らしさであり、「DOOM: The Dark Ages」で体験できる濃密なプレイ体験なのだ。

 「DOOM」のもう1つの楽しみは、戦術の幅広さだ。本作にも多数の武器が登場する。近距離で絶大な威力を誇る「コンバットショットガン」はシリーズの象徴だし、アサルトライフルのような連射可能な「シュレッダー」という武器も登場する。エネルギーシールドに有効なエネルギー兵器「サイクラー」や、広範囲を薙ぎ払うことができる「パルヴェライザー」など、その種類は多岐にわたる。

 これにより、プレーヤーは敵の種類、広い場所か狭い場所か、敵の配置などを考慮しながら武器を瞬時に切り替え、立ち回りを変化させていく必要がある。この運用こそが、シンプルに銃を撃ちまくる楽しさに、戦闘の奥深さを生み出している。

多様な武器を使い分けて戦うのも「DOOM」の楽しさの1つだ

戦術の幅を広げる「シールドソー」にも注目

 そして本作には、非常に興味深い新要素として「シールドソー」が導入された。このシールドソーは外側にノコギリがついた盾で、単に敵の弾を防ぐだけでない、多彩な役割を担う新兵器となっている。

 まず防御面では、敵の攻撃を弾き返し、カウンターダメージを与えることが可能だ。特定の敵の攻撃(緑色で表示される)をタイミングよくシールドで受け止める(PC版では右クリック)と、攻撃を敵に跳ね返すことができる。これにより敵は大きなダメージを受けたり、スタンすることもある。そこには大きな隙が生まれるため、強力な攻撃を叩き込むチャンスだ。

 さらに、攻撃を弾き返すことで近接攻撃用のゲージが素早く回復し、連続攻撃へと繋げることもできる。つまり、防御的なイメージの強いシールドが、攻撃の起点としても機能するのだ。

 また、シールドをデーモンに投げつければ、突き刺さって一時的に動きを封じ込めることもでき、その隙に集中砲火を浴びせられる。さらに、金属製のオブジェクトや敵の装甲に対しては、銃撃で加熱させた後にシールドを当てることで、破壊することもできる。こういった銃とシールドを巧みに連携させる戦術が生まれる。

緑色の攻撃ははじき返せる。守りだけでなく攻撃にシールドソーを使うのだ
シールドソーを投げつけてデーモンをスタン

武器の使い分けが重要! 能動的に戦うゲーム体験

 敵のAIが驚くほど賢いというわけではないが、何よりもその物量が脅威だ。1体1体はそれほど手強くないデーモンも、集団で押し寄せてくれば瞬く間にドゥームスレイヤーを追い詰める。さらに、雨のように弾丸を降らせてくる中型のデーモンや、桁外れの体力を持つ大型のデーモンは、まさしく脅威そのものだ。

 近距離でショットガンを数十発叩き込んでも、近接武器で何度も殴りつけても、なかなかダウンしない大型のデーモンも存在する。そのような強敵が前線に立ち、横からは無数の雑魚デーモンが絶え間なく銃弾を浴びせてくる。この連携攻撃を生き残るのは容易ではない。

 だからこそ、的確な状況判断に基づく立ち回り、そして武器の適切な使い分けが重要なのだ。シールドで攻撃を防ぎ、攻撃をパリィで弾き返し、隙を突いて反撃する。

 戦闘中にプレーヤーに多様な選択肢を提示し、能動的なアクションを促す。これこそが、物陰に隠れてチクチクと撃つような退屈な戦いとは一線を画す、本作ならではのゲーム体験なのだ。

敵の1体1体のAIが脅威というわけではないが、なんといっても物量がその脅威となる

 また、本作には、「アトランメック」や「メカドラゴン」という巨大な乗り物のようなものが登場する要素もある。これらは特定のステージで乗り込むことになり、「DOOM」の世界観に新たなスケール感をもたらしている。

 個人的には、これらの戦闘はやや冗長に感じられ、「DOOM」特有のハイスピードな撃ち合いとは相性が良くないと感じた。もちろん、ゲームプレイの緩急という意味合いや、息抜きと捉えることもできるため、この点はプレーヤーによって好みが分かれる部分だろう。

「アトランメック」や「メカドラゴン」といった巨大な乗り物に乗るシーンもあるが、正直少し冗長に感じた。この辺りは好みが分かれそうだ

シークレットエリアの探索や、難易度を上げてプレイすればやりこみ要素はマシマシ

 リプレイ性に関しては、やはりシークレットエリアの探索が大きい。目的地へと向かうルートの横道などに貴重なアイテムが隠されており、そこにはゲーム内で使えるスキンや、装備を強化できるゴールドなどが手に入ったりする。まっすぐ進んでいけばいいところを、進行方向から逆走すると見つかりにくいところに小部屋があったり、壊せる壁が巧妙に隠されていたりし、一切訪れなくてもゲームは進められるが、探していくとより効率よくゲームが進められる。

 この全ての隠し要素を発見しようとすれば、相当なプレイ時間になるだろう。

 また、難易度選択も豊富に用意されており、項目ごとに細かく調整することも可能。これにより、プレーヤーは自身のスキルや好みに合わせたプレイができる。

 筆者はPC版を下から2番目の難易度「手加減無用」でプレイしたが、シングルプレイFPSを時折嗜み、前作も同程度の難易度でクリアした身としては、まさに歯ごたえのある、それでいて理不尽ではない絶妙なバランスだと感じた。

 もちろん、上の難易度に挑戦して己の限界を試したり、スピードランに挑んだりすることも可能だ。

単純な難易度設定だけでなく、細かなカスタマイズもできる。これにより遊び方は大きく増している

 今回、筆者はマウス+キーボードというPC標準のスタイルでプレイしたが、操作性は非常に直感的で遊びやすかった。マウスでの精密なエイミング、WASDキーでの移動というFPSの基本操作に加え、近接攻撃やシールドソーに割り当てられたEキーやRキーなどもWASDキーの近傍に配置されており、操作ミスを誘発することもほとんどなかった。

 本作にはリロードが存在しないため、一般的なリロードに使われるRキーを他のアクションに割り当てられる自由度も大きいと言えるだろう。

ストーリーは難解で理解しにくいが、カットシーンや吹き替えのクオリティは高い

 ストーリーでは、「DOOM (2016)」と「DOOM Eternal」の前日譚にあたる物語が描かれる。正直なところ、カットシーンやストーリー展開を注意深く追っても、一度ですんなりと理解するのは難しい部分があった。これは、ストーリーを重視するプレーヤーにとっては少々ネガティブな点かもしれない。

 しかし、筆者個人としては「DOOM」に深遠な物語性を強く求めているわけではないため、大きな問題とは感じなかった。ガンガン敵をなぎ倒し、カットシーンで何となく雰囲気を察する。それで十分なのだ。

 ちなみに、カットシーンは日本語に翻訳されており、吹き替えのクオリティも非常に高い。ストーリーが理解しにくいのは、翻訳の問題ではなく、世界観や登場人物に関する説明や深掘りが、ゲーム単体では不足しているためかもしれないということは補足しておきたい。

カットシーンは美しく、フル吹き替えで、日本語翻訳のレベルも高い。だが、ストーリーが少し難解なのも事実だ

血と臓物さえも美しく描くグラフィックスと、没入感を生むヘヴィメタサウンドが楽しめる

 グラフィックスに関しては、驚嘆の一言に尽きる。本作は最新のidTechエンジンを採用しており、近景から遠景まで、あらゆるデーモンの質感、金属の光沢、ドゥームスレイヤーが手にする武器のディテール、そのすべてが息をのむほど美しく描かれている。

 そして特筆すべきは、「DOOM」の代名詞とも言えるゴア表現だ。血飛沫が舞い、手足が吹き飛び、臓物を引きずり出して握りつぶす。そういった強烈な暴力描写もまた、この最新エンジンによって、磨き上げられている。

 この過激さ、激しいゴア表現こそが「DOOM」の魅力のひとつであり、ドゥームスレイヤーのデーモンへの凄まじい憎悪を表している。これこそが、「DOOM」ファンが求めているものだろう。モニターに映し出される残虐な光景は、プレーヤーの心にもデーモンへの憎しみをより強く刻み込むことだろう。

デーモンへの憎しみで遠慮なく飛び散る肉体などはさすがの表現だ

 サウンド面にも触れておこう。「DOOM」といえばヘヴィメタルサウンドが象徴的だが、戦闘中のBGMは、むしろ控えめな印象だ。派手に鳴り響くのではなく、静かに背後でプレーヤーの感情を高ぶらせる程度に留められている。

 戦闘中のサウンドの主役は、ドゥームスレイヤーの放つ銃声、デーモンの弾幕が空気を切り裂く音、金属が砕ける音、そして体力の危機を知らせる警告音である。これらが織りなす「憎しみが奏でるハーモニー」こそが、プレーヤーのアドレナリンを放出し、戦いへと駆り立てるのだ。

 一方で、カットシーンや戦闘がない部分では、重厚なギターリフが唸るヘヴィメタル調の楽曲が使用され、陰鬱でダークな世界観と、ドゥームスレイヤーの内に秘めた強大な憎悪を効果的に演出している。ビジュアル、効果音、BGM、その全てが一体となり、本作ならではの高い表現力を形成しているのだ。

サウンド、グラフィック、表現。それらが全てあわさって本作ならではの“デーモンへの憎しみ”を強く表現している

単なる爽快感ではない。「DOOM: The Dark Ages」体験の核心にあるもの

 我々が「DOOM」に求めているのは、単なるトリガーハッピーな爽快感ではない。一発一発の銃撃の重み、デーモンへの揺るぎない憎悪を体現したドゥームスレイヤーが、デーモンを駆逐しながら前進し続けるその姿なのだ。

 デーモンに対する一切の慈悲はなく、ただ純粋な憎悪を力に変え、銃弾の嵐を浴びせ、そして敵を文字通りぐちゃぐちゃに破壊する。それこそが「DOOM」の根源的な楽しみであり、他のゲームでは味わえない唯一無二の体験なのだ。

 昨今、新作のリリースも少なく、やや盛り上がりに欠けるシングルプレーヤーFPS市場において、本作は間違いなく一筋の光明となるだろう。シングルプレーヤーFPSのファン、そして何よりも「DOOM」シリーズのファンにとって、本作は絶対にプレイすべき1本だと感じた。

 さあ、ドゥームスレイヤーとして、再びデーモンへの憎悪をその身に宿し、この忌まわしき存在を殲滅する時が来た。引き金を引いた瞬間に響き渡るデーモンの呻き、怒涛に押し寄せる敵の群れ、そしてアドレナリンが沸騰するような激しいゲームプレイは、我々が忘れかけていた脳の奥深くを刺激し、数時間があっという間に過ぎ去るほどの熱中をもたらしてくれる。

 「DOOM: The Dark Ages」は、そのような至高のFPS体験を我々に提供してくれる作品なのだ。