★ PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
火星の建物を壊し、爆破し、そして直せ!
驚異の”破壊と修復”シューティング
「 レッドファクション:アルマゲドン」
ジャンル:
  • TPS
発売元:
  • スパイク
開発元:
  • Volition
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
価格:
7,140円
発売日:
2011年6月9日
プレイ人数:
1~4人
レーティング:
CERO:D(17歳以上対象)

 「レッドファクション:アルマゲドン(Red Faction: Armageddon)」は、2009年8月に発売された「レッドファクション:ゲリラ」の続編にあたり、前作の50年後の世界を舞台としたサードパーソンシューティング(TPS)だ。本シリーズは火星を舞台としており、今回、全く新しい戦いが展開する。

 本作の最大の特徴は、前作から引き継ぐオリジナルのゲームエンジンにある。本作では人工建造物は、ほぼ全てバラバラに破壊できるのだ。谷に架かる橋や、高くそびえるビル、巨大な工場すら、武器と時間があれば完全に破壊できる。当然建物内部で戦えば、周囲の物はボロボロに崩壊していく。さらに面白いのは「ナノフォージ」という特殊能力で、これを使用すると瞬く間に修復が可能なのだ。この能力を使って道を造ったり、壁を修復させて隠れたりできる。

 前作はオープンワールドタイプのゲームだったが、今作はステージクリア型のTPSとなった。この変更には大きく驚かされたが、「破壊と修復」のギミックが「レッドファクション」シリーズならではの面白さをもたらしている。ゲームジャンルは変わったが、より洗練され、面白いゲームになったと感じた。「レッドファクション:アルマゲドン」ならではの楽しさを紹介していきたい。


■ 前作からゲーム性は変わったが、全てが破壊可能なゲームエンジンは健在

主人公ダリウス・メイソン。前作の主人公の子孫だ
救世主を名乗るアダム・ヘイル。火星に大きな被害をもたらす
謎の遺跡を壊してしまったことで、大きな災厄が解き放たれる

 「レッドファクション:アルマゲドン」は、テラフォーミングによって入植可能になった火星が舞台となる。50年前、火星を支配していたEDF(地球防衛軍)は倒され、火星の人々は自由と平和を手にしたのもつかの間、救世主を名乗るアダム・ヘイルと、彼を崇拝するマローダーと呼ばれる部族の狂信者達が、火星の支配を狙った。

 ヘイル達は市民軍レッドファクションの前に敗れつつあった。しかし彼等は、ある目的を果たすために火星に地球同様の天候をもたらす「テラフォーマー」の破壊計画を企てていた。レッドファクションは計画を阻止するために立ち上がる。主人公ダリウス・メイソンはレッドファクションの一員としてヘイル殺害作戦に参加するが、結果としてテラフォーマーを破壊されてしまう。火星の地表では、人々が生活できなくなり、地下生活を余儀なくされてしまう。

 数年後、採掘やゴミあさりなどの“何でも屋”を営んでいたダリウスはマローダーの古い寺院の採掘を請け負うが、その仕事で謎のシャフトに古から封印されていたエイリアンを目覚めさせてしまう。エイリアンは爬虫類と昆虫を掛け合わせたような醜悪な怪物で、様々な種類がいる。彼等は至る所に巣を作り、瞬く間に増殖し、人類を襲いはじめた。

 ダリウスはテラフォーマー破壊を阻止できなかったこと、そしてエイリアンを目覚めさせてしまったこと、2つの大きな罪の意識を背負う事になる。人類は危機に瀕しており、レッドファクションは生き残りを賭けて戦う。火星に住む人々の未来は、ダリウスとレッドファクションにかかっているのだ。

 虐げられた人々の蜂起という“革命”をテーマにしていた前作から一転、「レッドファクション:アルマゲドン」では、醜悪なエイリアンと戦うTPSとなった。システムもオープンワールドタイプの自由度の高いものから、ステージクリア型となり、戦闘にフォーカスされた。最初は全く違うゲームのように感じたが、「レッドファクション」ならではのゲームエンジンによる「破壊と修復」が楽しい。前作のプレーヤーはもちろんシリーズ初挑戦の人も大きな魅力を感じるだろう。

 まず破壊については、巨大な、そして強固な建物が、徹底的に壊れる。建物は鉄骨にコンクリートという現実的な構成でできているが、ダリウスはハンマーでたたき壊したり、当たったものを分解するナノライフルで分解させたりと、様々な方法で建物を壊すことができる。建物は物理エンジンで重力に従って倒壊する。ゲームに熟練すると破壊のツボがわかってくる。効率よく建物が破壊できると大きな爽快感がある。積み木を一気に崩すような、原初的な楽しさだ。

 そして修復だ。ダリウスは先祖(前作の主人公)から「ナノフォージ」という能力を受け継いでいる。ナノフォージは破壊された物体を瞬時に修復することができる。一見進行不可能な場所でも、ナノフォージを使うと破壊された通路が修復されたりする。敵の攻撃の回避のために壁を修復したり、破壊された施設の修復などもできる。建物のほぼ全てが破壊可能で、さらに修復までできるのが面白い。エイリアンとの激戦で建物がガタガタになっても、全滅させた後に足場をきちんと修復させ先に進む、ということもある。「破壊と修復」が激しい戦いに独得の駆け引きを加えているのだ。

 世界観の“描き込み”もいい。ダリウスを補佐する人工知能のS.A.M.とのやりとりや、テラフォーマー、マローダー寺院、地下世界のマーケットなど、ステージから火星の社会が垣間見える。そして人間社会を浸食するエイリアン。様々な情報が溢れている。さらにステージの至る所に「オーディオログ」が残っている。さまざまなキャラクターのボイスメモが録音されていて、ダリウス以外の視点で状況が語られるため、世界観に厚みが出る。すでに「バイオショック」などで使われている手法だが、楽しい。難点としてはゲーム中には字幕が出ないことだが、翻訳ログが日本語化されているため、後からきちんと確認できるようになっている。


マローダーの狂信者との戦い。建物の破壊や、ナノフォージでの修復など、基礎を学べる
突然襲いかかってくるエイリアン。彼等との共生は不可能だ。人類の生き残りを賭けた戦いが始まる
ダリウスは過酷な戦いに飛びこんでいく。オーディオログではダリウス以外の人の話も聞ける


■ 多くの変種、独自の生態を持つエイリアンにさまざまな武器で立ち向かえ!

さまざまな場所にあるエイリアンのポッド。すぐに破壊したい
当たった物を焼き尽くすプラズマビーム

 本作は思う存分エイリアンと戦える作品だ。敵は群れをなして襲いかかってくる。エイリアンの身体能力は非常に高く、高速で動き、ジャンプし、プレーヤーの視界を横切って死角から狙ってくる。最初は彼等の動きに翻弄されてしまうだろう。

 見事だと思ったのはTPSならではの演出だ。エイリアンは死角から来るのだが、このときわざわざエイリアンの手や足をカメラに映り込ませるのだ。キャラクターを後ろから見ているTPSならではのチラチラと見える敵の影がパニックを誘発する。思わず銃を乱射したくなる恐怖が楽しい。

 エイリアンには様々な種類がいる。最も一般的なエイリアンは口から粘液を吐いたり、鉤爪で攻撃してくる。赤いとげの生えたエイリアンは銃弾のような強力な遠距離攻撃と、接近戦が脅威だ。青いエイリアンはプラズマの様な光球を発射してくる。さらには大きな体を持った敵や、巨大な触手、そして「ベヒモス」という超重量級のエイリアンも登場する。ベヒモスはその場にとどまると、連続でダメージを食らってしまう酸を吐きかけてくるので、常に動いて戦う必要がある。

 この他、エイリアンを生み出し続けるため、真っ先に破壊しておきたいポッドや、地面から突然生えてきて、周りのエイリアンに力を与える「モノリス」なども登場する。また建物に蛹のような物をベタベタと貼り付け浸食してしまう。生理的嫌悪感を覚える“キモさ”がナイスだ。見ただけで共存できない存在だと直感させられる存在だ。

 この敵にダリウスは多彩な武器で立ち向かう。アサルトライフル、ショットガンといった標準的な武器の他、強力な拳銃バンシー、敵を識別できるスナイパーライフルのレールドライバー、当たった物体を分解するナノライフル、ブラックホールを生み出す重力キャノンなどもある。面白いのが、マグネットガンだ。この銃は最初に撃った物体を次に撃った物体にぶつけることができる。うまく使いこなせば建物の破壊や、エイリアンにも有効だ。前作から受け継ぐハンマーは、振りが大きいため敵にはちょっと使いにくかったが、建物の破壊に有効だ。

 ダリウスは1度に4つの武器を持ち歩ける。エイリアンは遠くから撃ってきたり、いきなり接近戦を挑んできたりと縦横無尽だ。状況に合わせて素速く切り替えるようにしよう。4つの武器を活用すると戦いはかなり有利になる。この他、右スティックを押し込むと格闘攻撃を行なう。敵は四方八方から襲いかかってくる上に、距離もまちまちだ。ダリウスのポテンシャルを引き出せなくては勝つことは難しいだろう。


エイリアン達は目の前を高速で飛び回る。最初は動きについていくのがやっとだ
左からエイリアンに力を与えるモノリス、巨大エイリアン・ベヒモス、地面から生えてくるテンタクル
エイリアンは建物を侵食することも。中央は物を任意の方向へ動かせるマグネットガン、右は建物の破壊に最適なハンマー
プラズマキャノンで建物を木っ端みじんに。至近距離の戦いに使いやすいショットガン。ターレットを使うことも可能だ


■ アップグレードで能力を強化、ロボット兵器に乗り込み無敵気分を満喫!

能力のアップグレード。ストーリーを進めるとより強力になれる
エクソスケルトンに乗り込む。無敵気分を満喫できる

 武器以外にも、ダリウスは能力をアップグレードすることができる。アップグレードには建物を破壊したりして得られる「サルベージ」が必要になる。サルベージは建物の隅に大量にあったりもするのでこまめな探索を心がけたい。

 アップグレードは多彩だ。ナノフォージ能力「ショックウェーブ」は敵集団を一定時間浮き上がらせ無防備にすることができる。銃の集弾率や装弾数を増やしたり、敵の体力を表示したり、体力を上げたりとさまざまなパワーアップが可能だ。アップグレードの項目はゲームが進むにつれ増えていく。またアップグレードは次のニューゲームに持ち越すことができ、後述するオンラインでもアップグレードデーターは引き継がれる。

 この他に乗り物もいくつか用意されている。エクソスケルトンは3m程のロボット胴体に乗り込むことで、弾数無制限のマシンガンと、ロケットランチャーが使える。無敵気分を満喫できる兵器だ。しかし攻撃を受けすぎると破壊されてしまうので、注意が必要だ。ショルダータックルも強力で、並み居る敵をまとめて粉砕したり、建物を粉砕することが可能だ。

 スカウトウォーカーはクモのような形をした乗り物。エクソスケルトン以上に強力で、敵が占拠している場所も無人の野のように進める。遮蔽物を貫通するチェーンライトニングビームと、大爆発を起こさせる集束レーザーを搭載している。また敵を浮かび上がらせる「ターゲット視覚化モード」にも切り替え可能で、敵を逃さない。

 「レッドファクション:アルマゲドン」では乗り物に乗れるステージは限られているが、いざ乗ってみると自分の力が何倍にもなったかのような爽快感があり、その強力さに酔いしれてしまう。それでも、何も考えず突っ込めばやられてしまう。ここでもゲームエンジンの破壊の爽快感は健在だ。エクソスケルトンのショルダータックルで壁はめりめりと崩れるし、スカウトウォーカーは歩くだけで建物を削り取ってしまう。まるで、怪獣になったような楽しさだ。

 「レッドファクション:アルマゲドン」のストーリーモードでは、次々と提示される困難な状況に打ち勝っていくのが楽しい。エイリアンがうじゃうじゃといる場所を突っ切ったり、ガタガタの建物を修復しながら進んだり、巨大な敵と対峙したりと、現実だったら絶望しそうな状況を、己の力で切り開いていく。武器を的確に切り換え、ナノフォージを活用し、オブジェクトを破壊と修復して活用する。前作の自由度とは違った、フォーカスされた面白さを持つ、エキサイティングなゲームだと感じた。


ナノフォージ能力のひとつ、ショックウェーブ。敵を一定時間空中に浮かすことが可能。アップグレードすれば敵の体力表示も可能となる
エクソスケルトンは強力だが、敵に包囲されたときは要注意。弾数無制限の武器を活用したい
さらに強力なスカウトウォーカー。右が敵を浮かび上がらせる「ターゲット視覚化モード」だ
エキサイティングな戦いが連続する。敵を倒し前に進む強い爽快感を感じられる


■ ゲームエンジンを活用した「サバイバルモード」と「スクラップモード」

本編以外にも本作ならではのゲームモードが用意されている

 本作は、ストーリーモード以外にも「サバイバルモード」、「スクラップモード」というマルチプレイモードを搭載している。「サバイバルモード」は最大4人でプレイできるモードで、生き残ることが目的の「サバイバル」と、拠点を守る「ディフェンス」がある。

 特に面白かったのは、ナノフォージを使って拠点を修復する「ディフェンス」だ。今回は発売前にプレイしたためソロでしかプレイできなかった。サバイバルモードは4人でわいわい言いながら遊びたいモードだ。役割分担も重要だろう。

 スクラップモードは本作ならではのゲームモードだ。一定時間内に、目の前の建物を何処まで破壊できるかにチャレンジする。うまく破壊するとタイムが増える。このモードでは使う武器は全てが弾数無制限だ。高得点を得るにはどうするか、どう壊せば効率が良いか、試行錯誤が楽しい。

 スクラップモードには時間を気にせず破壊できるフリープレイも用意されている。スコアはランキングに登録されるので、世界中のプレーヤーと競える。スクラップモードは特にうまいプレイを見てみたくなるモードだ。多くのプレーヤーの攻略に期待したい。

 本作「レッドファクション:アルマゲドン」はFPS、TPSファンにオススメできるゲームだ。そして、本作が気に入ったなら、前作「レッドファクション:ゲリラ」もプレイして欲しい。「レッドファクション:アルマゲドン」と違い、前作は荒削りなゲームだが一緒に楽しむことで、「レッドファクション」シリーズのゲームエンジンの可能性、面白さを改めて感じられると思う。


生き残りを賭けて戦うサバイバルモード。最大4人で協力プレイができる
壊しまくりのスクラップモード。うまい人のプレイを見てみたい


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(2011年 6月 9日)

[Reported by 勝田哲也 ]