猛然と湧き上がる土煙、唸りを上げるエンジン音。スピード、テクニック、タフネスのすべてが試されるラリー競技。アメリカのラリーマスター、ケン・ブロック氏が監修する本作「DiRT3」は、オフロードレーシングゲームの決定版と言えるタイトルだ。
国内では8月25日の発売が予定されている本作は、レースゲームの老舗、英Codemastersの大黒柱的な存在である「DiRT」シリーズの最新作。今作ではラリーやレースのみならず、ジムカーナ(コース上にパイロンなどを設置し、様々な運転技術を競う競技)も搭載し、タフな車両で繰り広げる各種のチャレンジを網羅する作品となった。本稿では日本語化されたプレイステーション 3版をプレイした内容から、本作のファーストインプレッションをお届けしよう。
【「DiRT3」日本語版トレーラー】 |
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開発スタッフが「DiRT3」の魅力を紹介。ラリーの実写映像を交えつつ、登場車種や各種ロケーションといった本作の豊富なコンテンツをプレビュー。本作のポイントはリアリティと手軽さの絶妙なバランスにあり |
■ 様々な新要素を搭載。ラリーカーで挑戦する車両競技を幅広く網羅
本作を監修したラリードライバー、ケン・ブロック |
長いコースでスピードを競うラリー競技 |
運転技術を競うジムカーナ |
ラリー競技をフィーチャーし続ける「DiRT」シリーズの最新作として、本作では様々な新要素が搭載されている。ひとつひとつ挙げていくとキリがないほどだが、特に大きな物を挙げるとするならば、天候要素の導入、雪上でのレース、そしてジムカーナだ。
また前作「DiRT 2」からの大きな変化として、ユーザーインターフェイスが簡略化され、よりサクサク遊べるようになった。前作「DiRT 2」ではパドックの内外で“バーチャルツアー”のような格好で各種メニューを選択する形だったが、本作では各種メニュー項目やレースを直接選択する形になっているので、“やりたいこと”に素早くアクセスできるのだ。
その上で本作では、ラリーカーで挑戦する幅広い競技を網羅。大別すると種目はラリー、レース、ジムカーナで、それぞれに複数の派生競技が含まれている。メインゲームモードの「DiRT TOUR」では様々な競技大会を連戦していくほか、シングルプレイモードで任意の競技をプレイすることもできる。もちろんマルチプレイモードも搭載。同時8人で各種競技をプレイできる。
コースロケーションはシリーズ初のものが揃い踏みだ。アメリカ各州、ケニア、フィンランド、ノルウェーといった国々のコースを収録し、30以上のコースで100種類以上のレースに挑戦できる。北欧のコースでは積雪のある路面を走り、アメリカやフィンランド等のコースでは雨が降ることも。天候が変われば路面状況は劇的に変わり、それに応じて同じコースでも異なる走りが要求されることもあるのだ。
登場車種も新顔が多い。1960年代から現代まで年代別カテゴリーで多数の車種が収録されているほか、極めつけはケン・ブロックのためにFordが制作した“Ford Fiesta”のジムカーナ仕様車。この650馬力のパワーを持つ4WD車両は、0-100km/h加速が2秒というモンスターだ。ケン・ブロックのファンならいちどはゲーム内でも操縦してみたい車両なだけに、本作への収録は非常に嬉しい。
ちなみに本作のローカライズは音声部分のみとなっており、ゲーム内のテキストは英語のままとなっている。しかし、レースゲームということもあってゲーム中に使われている英単語は極めて限られているので、プレイに困るようなことはないだろう。音声についてはコパイロットのナビゲーション音声も吹き替えされているが、これは好みが分かれる部分かもしれない。なおコードマスターズによれば、英語音声は搭載されていないとのことだ。
【収録ロケーション】 | ||
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前作にはなかった様々なロケーションを収録。フリー走行を楽しめるジムカーナのプレイグラウンドもある |
■ パワフルに地を蹴るラリーカーの迫力と繊細さを表現。ジムカーナは非常にテクニカル!
ラリー競技の醍醐味は、スピードとテクニック、そしてクソ度胸?! |
舗装路ではタイヤの食いつきが大幅に変わる。オフロードとの境界を跨ぐ際に細心の注意が必要だ |
車両を“正確にスピンさせる”技術は、ジムカーナならではのもの。できるようになるまで練習また練習だ |
レーシングゲームの要点はなんといっても“走りの楽しさ”だ。その点本作の車両挙動、ドライビングモデルは、ラリーならではの面白さをふんだんに表現してくれている。オフロードでは車両が容易に滑り、ドリフトしながらの繊細な制御を要する一方、直線では思い切り加速してスピードに乗り、ダイナミックに駆け抜ける。時折出会う舗装路面ではトラクションが一気に向上し、ドリフトは控えめにしつつも荷重移動を意識し、ハイスピードなコーナリング。こういったメリハリがゲーム内できちんと息づいている印象だ。
基本的にレースゲームではしっかりとタイヤで地面を捕まえながら走ることが好タイムの条件となるが、オンロードレースに比べてオフロードでは敢えて車両を滑らせることも必要だ。そのため、ハンドリングと同時に細かいアクセルワークも必要となってくるため、本作のドライビングは全般的にテクニカルな雰囲気。さらに今作で新たに搭載された各種の天候条件(降雨、積雪)ではさらに滑りやすくなるため、車体の向き、荷重、運動ベクトルをしっかりと管理する必要があるのだ。
このように書いていくと“難しそう”と思われてしまいそうだが、ご安心を。シリーズ伝統のドライビングアシストシステムのおかげで、初心者から上級者まで幅広くカバーする操作性が提供されている。ラリーやレースをゲームパッドでプレイする場合は、ABSやトラクションコントロールシステムなどのアシストを選択的にONにしておいてもいいだろう。もちろん、Codemastersのレースゲームではおなじみの“フラッシュバック”機能も搭載。ちょっとしたミスで走りが台無しになっても、任意の地点までさかのぼって再チャレンジできるのだ。
ハンドルコントローラーでプレイするなら、全アシスト機能をOFFにすることで“ガチ”の走りを楽しめる。フォースフィードバックによる路面情報の伝わり方も秀逸なので、環境が許すならぜひハンドルコントローラーの使用をオススメしたい。
そして本作で新搭載されたジムカーナはさらにテクニカルだ。ジムカーナ仕様車ではより低いトラクションが得られ、容易にスピン状態に入ることができる(リアル同様につるつるのタイヤを履いているのだろう)。これを利用してステージ内に配置されたパイロン他様々なオブジェクトの周りを定常円旋回(ドーナッツ)したり、車庫に高速で突入、中でスピンして1回転しつつそのまま脱出、なんてトリックを決めるわけだ。
そのジムカーナに関しては、スピン状態を使うトリックを各種組み合わせていくという性質上、各種のアシストシステムは有って無いようなものになっている。スムーズなトリックのためにギアチェンジはマニュアルが適切だし、ハンドブレーキを使って意図的にスピンに入り、絶妙の切り角&トルクを維持してグルグル回り続けるような運転は、トラクションコントロールシステムの存在と相容れないためだ。
このため人によっては、ラリーやレース競技で好成績を収めても、ジムカーナはうまくいかずサッパリということになる恐れはある。ジムカーナで駆使する各種のトリックやスタントは、“どれだけ早いか”よりも、“できるかできないか”という面がまずハードルになるためだ。まずは狙った大きさの定常円を描けるようにひたすら練習するのがオススメ。何度車を破壊しても再チャレンジできるゲームならでは、納得いくまで腕を磨ける。
だからこそ本作でフィーチャーされたジムカーナは、レースゲームファンにとって面白くやりごたえがある。練習の結果、それまで全くできなかったことが突然できるようになる瞬間がやってくる。その時、やったぜ、と思わずガッツポーズしてしまうような達成感が味わえるのだ。本作のおかげで、筆者もこのプロセスを大いに楽しむことができた。
このように「DiRT 3」は、パワフルな車両で挑戦する幅広いチャレンジが網羅され、盛りだくさんの内容で楽しめる作品となっている。挙動も気持よく、多くのレースゲームファンが満足できることだろう。8月25日の発売日をお楽しみに!
【スクリーンショット】 | ||
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(2011年 6月 20日)