★ Xbox 360ゲームレビュー★
パンチ、キック! 1試合終わると汗をかく臨場感
実際に体を動かすKinectならではの格闘ゲーム
「 ファイターズ アンケージ」
ジャンル:
  • 格闘ゲーム
発売元:
  • ユービーアイソフト
開発元:
  • AMA Studios
プラットフォーム:
  • Xbox 360
価格:
5,880円
発売日:
2011年5月26日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 「ファイターズ アンケージ」はKinectを使った格闘ゲームである。プレーヤーは全身を使って主人公・サイモンを操作し、実際にパンチやキックを繰り出すことで、対戦相手をボコボコにしていく。

 画面のキャラクターを“自分の手”で殴り飛ばしたい、というのはプレーヤーの夢の1つだ。Kinectと本作でそれがついに実現される。しかも簡単な動作で、回し蹴りなどの大技も自由自在だ。現実にあったらビビってしまいそうな屈強な大男を、パンチや蹴りでたたきのめせる。1試合終わったときの心地良い疲労感もリアルな感触をもたらす。Kinectによる格闘ゲームはどのようなものなのか紹介していきたい。


■ 拳を振り回してフック! 足を上げてキック! 体を実際に動かして闘う格闘ゲームが誕生

主人公サイモン。父の負債を免除させるため、裏の格闘大会に挑む
父のスパーリングパートナーも務めたコーチ

 「ファイターズ アンケージ」の主人公サイモンはプロボクサーを父に持つ。父に教えられたフリー・ファイトの技術により、サイモンもまた熟練のファイターとなった。ある時、父は意図せず裏社会の中心人物に多額の借金をしてしまう。父の負債を免除させるため、サイモンは裏社会の格闘大会に出場することになる。

 Kinectの前に立ち、拳を前に突き出すストレートを放つと、画面のサイモンも実際にストレートを放つ。「ファイターズ アンケージ」は実際に戦っていてる感覚を味わうことができる格闘ゲームだ。相手の隙をついて足を振り、ローキックを決めたり、敵の攻撃を頭を振ってかわし、即座に手を前に突き出してカウンターを決めるなど、実際に自分の肉体を使って戦う感覚が楽しい。

 プレーヤーは最初はコーチに教わり技を学んでいく。拳を突き出すストレート、横から振り回して拳を当てるフック、つま先でキックするストレートキック、弧を描いて攻撃するラウンドキック……実際に体を動かすとその通りに技を出るのが新鮮で、面白い。また、後ろに拳を振ると画面では全身を回転させてスピニング・バックフィストを放ったり、足を後ろに引き交差させると、スピニング・ヒールキックになったりと、派手な技も小さなアクションで繰り出せる。

 攻撃と同じくらい重要なのが防御だ。両手を前に構えるガードを基本として、上半身の時は頭を後ろにそらすドッジ、そして蹴りの時は右膝か左膝を上げるブロックで攻撃を防御する。また上半身への攻撃はかがんでかわすダッキングも有効だ。敵が攻撃してくるときは、事前に攻撃の部位が青く光り、そしてアイコンが表示される。敵の攻撃を素早くかわしたあとは攻撃のチャンスだ。かわしてから当てることでカウンターとなる。

 敵の攻撃をかわしたり、ガードしたり、カウンターを決めるとスーパーストライクゲージが上昇し、このゲージが一杯になったときに攻撃を繰り出すとスーパー・ストライクを決められる。初心者でもゲージが貯まりさえすれば相手に大ダメージを与えられるため、実際に鋭いパンチを繰り出せなくても十分に闘うことができる。

 一方、上級者向けにはコンボが用意されている。左ラウンドキックがガードされたら、左ハイラウンドキック、左ラウンドキック、左ハイラウンドキックと、左足を連続して振るだけでコンボが決まる。コンボのフィニッシュは特別なモーションとなる。このほかにも、敵のオーバーハンドを交わしたら右フックでカウンター、左フック、右ストレート、左ストレートと言ったようにいくつものコンボがある。当てるのは難しいが、決まると爽快だ。

 こうした戦いの基本テクニックはコーチから学べる。パンチとキック、そしてドッジとガードさえ覚えればいい。そこからよりかっこよく、スマートに勝つために様々な技を学んでいく。相手の弱点を狙ったり、距離を取ったり、敵の隙をついたり、駆け引きも楽しめる作品となっているのだ。1試合が終わると、結構汗をかく。実際に死闘を繰り広げたような心地良い疲労感も、本作品の大きなセールスポイントだろう。


コーチの指導で戦い方を学ぶ。実際に体を動かすのが楽しい。結構汗もかく
攻撃をかわすのは重要なテクニックだ。コンボを意識して戦うと、より効率的にダメージを与えられる


■ 様々な敵が立ちはだかる。コツをつかみ、技を使いこなし、弱点を攻めて勝て!

試合前は、対戦相手がパフォーマンスを繰り広げる
アイコンが表示されたらすぐに防御だ

 「ファイターズ アンケージ」では様々な敵がサイモンの前に立ちはだかる。太った体のパワーファイター「ライダー」は、ギャングのチーム内のボスとしての地位と威厳を取り戻すためこの戦いに挑む。細身の「ラットフェイス」は神経質そうな甲高い声が弱そうなイメージを抱かせるが、鋭い攻撃でこちらを追いつめる。

 戦うときには画面右側に表示される「フォーカスゲージ」に注目したい。これは敵の集中力を表わし、青では冷静、黄色で怯え、赤で怒りとなる。冷静な状態(青)ではこちらの攻撃を良くかわすが、怯え(黄色)で当てやすくなり、怒り(赤)では攻撃が積極的になる代わりに、こちらの攻撃もさけなくなる。また、敵の体力が30%以下になると、カウンター攻撃がヒットしやすくなる。

 敵にはそれぞれ得意なファイティングレンジがある。ファイティングレンジは接近戦のクロース、中距離のミディアム、遠距離のロングの3種類がある。クロースレンジではエルボーやニーが有効で、中距離ではバックフィスト、ローラウンドキックなどが当たる。レンジの移動は技がきっかけになる。ミディアムレンジから頭突きを繰り出せばクロースに、膝蹴りでクロースからミディアム、ストレートキックでミディアムからロングになる。他にもいくつか間合いが変化する技が用意されている。

 またいくつかの技は、敵に状態変化を起こさせる。ローラウンドキックは連続して当てることで「足の痛み」を引き起こし、離れた距離で無防備となる。また、エルボーストライクは近距離で無防備となるブラインデッド、ローフックで押しのける程度しかできなくなる「息切れ」になる。状態異常を利用して有利に戦いたい。

 「ファイターズ アンケージ」での戦いは、“敵の攻撃を避ける”のが重要になっている。敵の攻撃の際は、攻撃を知らせるアイコンが表示されるので、これに反応して敵の攻撃を避けたりブロックしたりして、直後にカウンターを当てる。これが戦いの基本となる。ともすれば敵の攻撃を待つという単調な駆け引きになってしまう場合もあるが、敵の弱点をつき、コンボを狙い、有効な技を模索しながら戦うことで、駆け引きは奥深さを増す。ただ勝利を求めるだけでなく、自分なりの戦い方、勝ち方を目指すことで、このゲームはさらに楽しくなる。


最初の敵ライダー。力任せの戦い方をするファイターだ
鋭い攻撃をしてくるラットフェイス。甲高い声とのギャップが楽しい
しゃがみ込み攻撃を仕掛けている事が多いエル・ルチャドール。パンチも得意だ
敵の攻撃をかわせばカウンターのチャンスだ。敵に状態異常を引き起こせられれば、有利に戦える。右は、コンボの特別な攻撃


■ まだまだ荒削りなところがあるが、コンセプトの強い魅力に注目

ハイスコアを更新して、クラウンを集めていく
スローモーションになるスーパーストライク

 「ファイターズ アンケージ」では敵キャラクターに勝つとスコアが提示される。スコアは残り時間や残り体力から計算され、敵別のハイスコアを上回ることで“クラウン”というポイントを入手できる。このクラウンが一定数貯まると、より上のリーグに挑戦でき、新たな敵と戦うことができる。

 最初はリーグ3からのスタートだが、リーグ2では3人、リーグ1ではさらに3人の挑戦者が待ち受けている。リーグが上がっても以前のキャラクターと対戦は可能で、ハイスコアを目指すことができる。リーグが上がると以前の敵でも攻撃力が上がっており、注意が必要だ。

 全身を使った格闘ゲームという魅力的なテーマに挑んだ「ファイターズ アンケージ」だが、ちょっと荒削りな部分を感じることが多い作品だった。パンチやキックを出す感触そのものも、自由に出ると言うより、敵とのやりとりや、技のモーションの関係なのか、どちらかというと「コマンドを出す」感じになってしまっていて、実際に画面内のキャラクターを殴り飛ばすというよりも、「技を出させるために体で指示を出している」というところがある。また、キックを出そうと身体を振るとパンチと認識されてしまったり、判定部分でもう少し煮詰めて欲しいと感じる部分もあった。

 敵の攻撃をかわすのも頭を後ろに振るうドッジばかりだし、敵の攻撃をかわしてカウンターをたたき込むというのが有効すぎるため、どの敵と戦っても展開が似たり寄ったりになってしまうところは、もう少しだと感じた。キャラクターもムサイ男ばかり、というのは日本の格闘ゲームファンのツボとは違うところの気がする。もっともっと現実には有り得ないくらい差別化しても良かったのではないか。

 昔ファミコンゲームで「パンチアウト!!」というゲームがあった。このゲームの敵はかなりクセが強く、ラッシュをうけきると大きな隙を見せたり、強敵だが1度ダウンすると起き上がれなかったりとユニークな駆け引きがあった。本作の敵もそのくらい思い切ったデザインでもいいと思う。プレーヤーキャラがサイモンのみで、オンライン・オフラインの対戦がないのも残念な点だ。

 とはいえ、荒削りの点も多い作品だが、Kinectで格闘したいという夢を叶えてくれた最初のゲームであり、技が決まったときの爽快感、1試合終わった後の心地良い疲労感など本作ならではの楽しさも間違いなくある。やり込み派のプレーヤーは、コンボや弱点を攻める戦い方など「美しく勝つ」事にこだわった戦い方を目指せる。チェックする価値のある作品である。


ジョーブレーカーはその凶悪な外見通りの鋭い攻撃をしてくる
パワー溢れるカハールー。足が弱点なので、効果的に攻めたい
眼帯をしているジャッカルは、エルボーに弱い。接近戦が有効だ


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(2011年 5月 23日)

[Reported by 勝田哲也 ]