iPhone/iPod touchゲームレビュー

iPhone/iPod touchがダンスステージになる!
人気リズムアクションが新たなハードと融合

「DanceDanceRevolution S」


 iPhone/iPod touchに触れたことがない友人に、「十字ボタンもないのに、まともにゲームなんてできるのか?」と尋ねられた。iPhone/iPod touchのゲームは、タッチスクリーンと加速度センサーを使用した操作で遊ぶように作られている。しかし彼にとって、それはあくまで既存のゲームコントローラの“代用品”にしか思えないというわけだ。

 確かに彼の意見は、未経験のユーザーがTVCMなどの情報から想像するiPhone/iPod touchに対する印象の一例だと思う。百聞は一見に如かず、論より証拠。そこで私はすかさず「DanceDanceRevolution S(DDR S)」を友人にプレイさせてみてから問いかけた。これが“代用品”に感じるかい?


魅力的なキャラクターたちも、本作の魅力の1つミュージックスタート。緊張が高まる一瞬だなんとかステージクリアできた



■ 指先で華麗にダンシング!音楽にのって高得点を目指せ

 「DDR S」は、株式会社コナミデジタルエンタテインメントが配信するリズムアクションゲーム。先に無料版の「DanceDanceRevolution S Lite」がリリースされ、2月25日に有料版のフルバージョンがリリースとなった。

 「DanceDanceRevolution」といえば、大きなゲームセンターには必ず置いてあるくらい人気のある、アーケード用体感ゲームのシリーズだ。日本だけでなく海外市場でも受け入れられており、家庭用ゲーム機にもたびたび移植されている。

 足元に配置された上、下、左、右の4つのスイッチを、画面の表示とスピーカーから流れる音楽に合わせて、ダンスのステップをするように踏んでいく。家庭用ゲーム機に移植される際も、ゲームセンターの機体と同じような専用コントローラの使用を前提に作られている。

 「DDR S」もシリーズの操作方法を踏襲。画面下からスクロールしてくる矢印オブジェが、画面上部のステップゾーンと重なった時に合わせて、タッチスクリーン上のバーチャル方向キーを押せばOK。失敗するとダンスメーターが減少していき、なくなると「FAILED」で強制終了となる。


画面下部分にバーチャルの方向キーが設置されている残念。曲の途中でダンスメーターがなくなってしまったタイミングよく連続ステップが踏めるとコンボになる


フリーズアローと呼ばれる長い矢印オブジェは、押しっぱなしでクリアだ

 「タッチスクリーンを方向ボタンの代わりに使うのだから、やはり十字キーの代用品じゃないの?」。しかし疑問は実際にプレイを始めると氷解する。シリーズに触れたことがある方ならわかるだろうが、ダンスの足さばきをイメージしているため、方向キーを2つ同時に押すという動作が頻繁に登場する。

 例えば「上と下」、「右と左」。そう、この同時押しは方向キーでは実現できない。スクリーン上で2カ所同時のタッチを認識する、iPhone/iPod touchだからこその操作方法なのだ。同じくタッチ操作が可能なニンテンドーDSだが、DSのタッチパネルでは2点同時のタッチを認識できない。現在までDSとPSPにシリーズ作品が移植されていないのが、何よりの答えではないだろうか。


タイミングに合わせて「MARVELOUS(マーベラス)」、「GOOD(グッド)」、「O.K.」などの判定がされるひとつの曲を踊り終えるとリザルト画面に。判定の結果が表示される



■ 個性的で魅力的なキャラクターとクールなダンスミュージックは健在

新たなキャラクターが使用可能に

 それでは「DDR S」の詳細を解説していこう。ゲームをプレイするメニューは、「GAME MODE」と「SHAKE MODE」、「TRAINING MODE」の3種類。メインとなるのは「GAME MODE」で、加速度センサを利用した「SHAKE MODE」と練習用の「TRAINING MODE」については後述する。

 「GAME MODE」を選択すると、キャラクターセレクトに移る。ファンにはおなじみの“アフロ”や“エミ”など、ダンサーたちが3Dグラフィックスで細部まで丁寧に表現されており、ミュージックに合わせて、キャラクターたちが見事なステップを披露してくれる。彼らの個性的で華麗なダンスは、本作の見どころのひとつだ。またプレイ結果に応じて使用できるキャラクターはどんどん増えていき、最終的には10人以上のキャラクターが登場する。


キャラクター選択画面。ランダムや、男性(もしくは女性)キャラクターの中からランダム、という項目もある
キャラクターが、画面狭しとエキサイティングなダンスを披露


 キャラクター選択の次は、プレイモードを決定。最初は「STANDARD MODE」、「COURSE MODE」の2つが選択可能で、残りひとつは隠しモードの「ENDLESS MODE」となっている。「STANDARD MODE」は自分で選んだ曲をダンスするモード。3曲までチャレンジできる。まずはこのモードで本作の基本をつかむといいだろう。難易度も自由に選択できるので、自分の得意曲やメロディーやステップが気にいった音楽ばかりプレイするのも楽しみ方のひとつだ。プレイできる楽曲もプレイ結果で追加される。

 「COURSE MODE」は、3曲から5曲で構成されたコースを選んで遊ぶ。遊び方はさらに2つにわかれていて、「NORMAL」はダンスメーターがなくなったらゲームオーバー。「CHALLENGE」は4回ミスをするとゲームオーバー。ゲームに慣れてきたらぜひ「COURSE MODE」も遊んでほしい。特に「CHALLENGE」は上級者でも気を抜けば、即ゲームオーバーになってしまうスリリングさだ。

 ダンスレベルで“AA”を獲得すると遊べるようになる「ENDLESS MODE」。決められた曲をゲームオーバーになるまで続けるモード。レベル1から5と、すべての難易度が混じった“レベルALL”から選んで、延々とプレイができる。自分の限界に挑戦してみるのも面白い。


シリーズの中でも人気の高い「華爛漫 -Flowers-」をはじめ、おなじみの曲や、本作のために新規アレンジされた楽曲を20曲以上収録。画面下端に表示されている部分をタッチして難易度を変更する。筆者は気がつくまで時間がかかった「COURSE MODE」ではテーマ別に構成された10種類以上のコースがプレーヤーの挑戦を待ち受けている「ENDLESS MODE」のレベル選択画面



■ 過不足のない、充実のメニュー。iPhone/iPod touchならではの「SHAKE MODE」に注目!

 メインとなる「GAME MODE」のほかにも、色々と充実したメニューが用意されている。iPhone/iPod touchの持つ独自のインターフェイスを、本作に融合させたのが「SHAKE MODE」。「SHAKE MODE」はタッチスクリーンではなく、加速度センサーを活用する。方向キーを押す代わりに、iPhone/iPod touchを握って、前後左右に動かすことで入力されるというわけだ。本体を顔の前に持ちながら、体ごと動いて実際にステップを踏むような姿をイメージすればよい。同時押しはジャンプで入力される。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、自分のステップにきちんと反応してくれると思いのほか感動する。今までのiPhone/iPod touchゲームにありそうでなかった、新しい遊び方だ。

 もちろん本体を前後左右に振るだけでも入力とみなされるので、大きく体を動かすのが無理なときでも「SHAKE MODE」を楽しむことができる。残念なのは「SHAKE MODE」用の曲が1つしかない点。できればもっとたくさんのの曲を「SHAKE MODE」で楽しみたかった。


タイトル画面の前に、「iPhone/iPod touchを落とさないように」とお願いが表示される「SHAKE MODE」では、ノリのよいDJが遊び方をボイスで指示してくれる小さな動きでは、自分のステップで入力するときは恥ずかしがらずに大きく動くのがポイントジャンプは着地の瞬間が入力のタイミングになる


 「TRAINING MODE」は、徹底的にダンスを練習できるモード。スピードや難易度の変更のほか、ハンドクラップ(手拍子)やメトロノーム等のオン・オフ切り替えもできる。練習後にはプレイを振り返ることも可能だ。

 「RECORDS」では、曲ごとのハイスコアやダンスレベルを確認できるので、自分の弱点がわかるだろう。各種設定ができる「OPTIONS」では、ゲームレベルや「STANDARD MODE」をプレイする時の曲数、グラフィックスの詳細な変更が行なえる。

 「INFORMATION」は、「SHAKE MODE」の遊び方のほか、使用可能になった楽曲やキャラクターなどが確認できる。「TUTORIAL DEMO」はゲームの基本的な遊び方を教えてくれる。説明のデモを眺めるだけだが、遊ぶ前に1度は見ておくことをお勧めする。「Touch KONAMI」を選択すると、iPhone/iPod touch用のコナミのWEBサイトにアクセスできる。配信曲の情報やキャラクター紹介などが掲載されているので、ぜひとも目を通しておきたい。


メニュー選択画面。シンプルで見やすい「TRAINING MODE」の判定チェックをみると、ミスした部分がよくわかる「RECORDS」では過去の成績が一覧表示される
「INFORMATION」の「ゲームプレイ」では、今までのプレイで達成したさまざまな記録が確認できる「Touch KONAMI」では、キャラクターの詳細な情報が紹介されている



■ iPhone/iPod touchだから生まれた操作感。無意識に指先が疾走する楽しさ

 本作は2本の指を両足に見立ててタッチスクリーンを押すわけだが、まるでiPhone/iPod touchというステージの上で、本当にダンスを踊っているような感覚になってしまった。これは入力がタッチスクリーンであることが大きく関係しているように思う。

 「キーを入力した感触がないために、操作感が悪い」ともいわれるタッチスクリーンの弱点だが、それゆえに平らなフロアの上で、ステップを踏む錯覚が得られたのではないだろうか。もしこれがボタンを押しこむインターフェイスだったら、ダンスではなくモグラタタキのような“ゲーム的”な動作になってしまうだろう。

 あわせてiPhone/iPod touchのサイズも、本作のフィーリングを高めることに貢献している。程よい大きさが指のサイズとマッチし、ダンスステージのような感覚を作り出している。


途中で何度かリズムが変化する楽曲もある難易度で「OPTIONS」を選べば、スピード変更できるほか、矢印オブジェが途中で消える「HIDDEN」、最初から表示されない「STEALTH」などでも遊べる


 プレイスタイルについても少し言及しておこう。iPhone/iPod touchの持ち方だが、筆者は色々と試した上で、外出時にはボディを両手で持ち、両手の親指を使ってプレイし、室内ではデスクなどの上に置き両方の人差し指でタッチするスタイルに落ち着いた。特に人差し指でのプレイは、指がクロスするようなステップもやりやすいのでおススメ。

 余談だが、本体を左手で支え、右手中指を右足、人差し指を左足に見立てたスタイルにも挑戦した。しかし複雑な部分に対応しきれず、手首をねん挫しそうになった。気をつけて、けがのないようにプレイしていただきたい。

 クールなダンスミュージックが流れる中、次々と出現する矢印オブジェに従って操作していると、ちょっとしたトランス状態になってくる。無心になってプレイしているうちに、まるで指先が勝手に意志を持ったように動き出す瞬間が訪れた。最初はとても無理だと感じるような動きも、目と指が直結したように指がステップを刻み、見事に切り抜けクリア。この感覚がたまらない。

 難しいからこそクリアしたときの達成感は大きいのだが、難易度の調整に若干の疑問が残る。中級以上から急激に難しくなるように感じた。筆者には最難度レベルの「EXPERT」は、相当練習してもクリアできなかった。シリーズ経験者にしてみれば、「なにを今更……」と思うことかもしれないが、対象プレーヤーが“熟練者寄り”に少し偏っているのではないだろうか。


ダンスのレベルは「BEGINNER」、「BASIC」、「DIFFICULT」、「EXPERT」の4段階。「EXPERT」ともなると、ダンスしているキャラクターが見えないほど矢印が出現メニューのオプションで、ゲームレベル等を変更することは可能だ



■ 美麗なグラフィックスと、ハイクオリティサウンド。ハードの魅力を引き出した、お手本のようなゲーム

 実際にプレイしていると、完成度の高さに驚かされる。バックでダンスする3Dキャラクターなどグラフィックスのレベルは高く、サウンド面もさすが「DDR」といえるクオリティの楽曲が、iPhone/iPod touchならではの高音質で流れる。個人的には楽曲数に物足りなさを感じるものの、価格から考えればただのわがままかもしれない。ハードの特性にピタッとはまる作品で、まじめにかつ冷静に、制作者がiPhone/iPod touchというハードと向き合っているように感じとれる。

 おまけ的な「SHAKE MODE」にも感心させられた。iPhone/iPod touchを持って動く、もしくは振るという動作がゲーム性とうまく融合しているために、不自然さを感じさせず、新たな面白さを生み出している。家庭用ゲーム機の専用コントローラとマットでプレイしたような感動が味わえるのに、1曲しか遊べないのが残念で仕方がない。

 多くのゲームファンに対して、今後iPhone/iPod touchが持つ魅力を広めるには、本作のようなハードの真価やポテンシャルを引き出すゲームがどんどん配信されることだ。iPhone/iPod touchゲームが目指す方向を本作が示しているように思う。

 冒頭に述べた友人はプレイ後、無言で筆者のiPod touchを突き返してきた。そして「お気に召さない?」と様子をうかがっていた筆者に「今から買いにいく」と言い放った。彼の行動が正しかったのか、本作をプレイして読者諸兄にもぜひ確認していただきたい。


【プロモーションムービー】


(C)2009 Konami Digital Entertainment

(2009年 4月 9日)

[Reported by 山科明之進 ]