★DSゲームレビュー★

シリーズ初の通信対戦を実現!
「桃太郎電鉄20周年」

  • ジャンル:ボードゲーム
  • 発売元:株式会社ハドソン
  • 開発元:株式会社ハドソン
  • 価格:5,229円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(2008年12月18日発売)
  • プレイ人数:1~4人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)

 昨年株式会社ハドソンから発売された「桃太郎電鉄20周年」(以下20周年)。ニンテンドーDS向けとしては前作「桃太郎電鉄DS~TOKYO&JAPAN」に続く2本目となる。「20周年」は、シリーズ初となる通信対戦を実現し、「桃太郎電鉄TOKYO & JAPAN」と比べ、最大プレイ人数・プレイ年数・駅数などが増え、ゲームとしても正当進化を遂げている。シリーズを重ねると、フィーチャーが増え、複雑化してしまいがちだが、「20周年」では、シンプルでわかりやすい作りに徹して制作されている。ちょっと遅くなってしまったが、レビューをお届けしよう。



■ 待望の通信対戦を実現した過去最高の「桃鉄」

目的地に1番乗りすれば、援助金がもらえる。所持金を増やして、より多くの物件を買いたい
駅にある物件を1人で買い占めれば、予想収益が2倍に跳ね上がる。所持金が許すなら、なるべく買い占めておきたい

 ご存知の方も多いとは思うが、あらためて「桃太郎電鉄(以下桃鉄)」シリーズとはどのようなゲームなのか簡単に説明しよう。すごろくのようなルールが特徴のボードゲームで、1人で遊んでもいいが、多人数で遊ぶと楽しいタイトルだ。

 ゲームを始めるとまず、目的地となる駅が発表される。これは各プレーヤー共通のもので、最初に目的地に着いたプレーヤーに援助金が支払われ、その時点で目的地から最も遠いプレーヤーに悪影響を及ぼす貧乏神がつく。そしてまた、次の目的地発表となる。

 基本となる移動は、1~6までのサイコロを振り、出た目の数だけ進むことができる。

 各駅では物件を購入することができる。物件を購入すると毎年3月末の決算時に各物件の収益金がもらえる。こうして資産を増やしていき、制限年数以内に、所有物件の総額・所持金・収益金を合計した総資産が1番多いプレーヤーが勝利となる。

 さて、「20周年」の特徴は、シリーズ初となる通信対戦を実現したこと。これはニンテンドーWi-Fiコネクションを使ったもので、友人や全国の知らない人とも対戦が可能となっている。

 最大プレイ人数は4人、最大プレイ年数50年、駅数212駅と、前作から比べて大幅なパワーアップを遂げている。新たなカードやイベントなども追加されている。通信対戦を意識してか、シンプルでわかりやすく、テンポの良い作りになっている。息抜きに遊べるミニゲームが実装されており、簡単ながらもハイスコアを目指すのが楽しい。




■ より便利に遊びやすく進化し続けるゲームシステムと新要素

 サイコロを振った時に目的地までの最短コースを示す矢印、移動できるのが残り1マスの時に次の駅が何色か示してくれる矢印と、代を追うごとに便利になり、進化し続けていく「桃鉄」シリーズ。評価の高い「いけますよ!」機能は本作でも実装されている。どこに行けるかがひと目でわかり、選択すれば自動的に移動までしてくれる。特に急行系などのサイコロの数が増えるカードを利用した際に役立ってくれる。近年発売された「桃鉄」シリーズをプレイしていない人は、あまりの便利さに驚くだろう。

虫メガネを使って物件が買える駅を覗いてみると、物件の価格など全てがわかるサイコロを振ってから虫メガネを出すと、行ける場所が光ってくれるので、一目瞭然光っている場所は「いけますよ!」機能により、選択するだけで自動的に移動してくれる

 「桃鉄」に欠かせないのがカードの存在。新カードとして、独占できる都市まで飛んで買い物ができる「物件飛びカード」や持ち金がマイナスの時に、マイナス分がそのままプラスとなり所持金になる「起死回生カード」など、多くの新カードが追加された。状況に合ったカードさえあれば、ドン底状態からの復帰や逆転が可能なので、諦めてはいけない。

 全都道府県に物件が購入できる駅が追加されただけでなく、カードを1枚だけコピーできる「ダビング駅」や急行系カードを必ず1枚もらえる「急行駅」など、新種の駅も追加された。

移動や妨害など、様々な効果を持つカード。カードによっては、不利な状況からあっさりと抜け出せることも。ピンチの時は、目的地を目指すことをやめてでも、カードがもらえる黄色いマスに止まり続けて、欲しいカードを入手する作戦も悪くない

 プレーヤーに嫌がらせをしてくる貧乏神にロシアンボンビーを追加。6体に分かれたマトリョーシカから1体を選択させられる。マトリョーシカの中には「-***億円カード」が入っている。「-***億円カード」は、書かれた金額を返済しないと、1年後に10倍の金額を支払わなければならなくなる恐ろしいカード。なるべく、低い額のカードを引きたいものだ。

 特定の駅を買い占めることで、坂本竜馬や織田信長など、その土地に縁のある歴史キャラが仲間となり、プレーヤーを手助けしてくれる新システムを搭載。手助けの内容は、お金を集めてきてプレーヤー全員に配ってくれたり、他のプレーヤー1人のカードを数枚叩き割るなど、歴史キャラにより様々だ。

「桃鉄」といえば、貧乏神の存在は欠かせない。今回も小さなイタズラから、凶悪なものまで、様々な嫌がらせをしてくる特定の駅を買い占めれば、歴史キャラを味方につけることができる。対戦相手への妨害から、自分の利益を増やしてくれるものなど、効果は様々。なるべく、多くの歴史キャラを味方につけて、有利にゲームを進めたい


■ ニンテンドーWi-Fiコネクションを使ったシリーズ初の通信対戦

とうとう実現したニンテンドーWi-Fiコネクションを使った通信対戦

 なんといっても本作の目玉はシリーズ初となる通信対戦。1人でCOM相手とばかり戦っていて、物足りないと感じていたプレーヤーにとって朗報だろう。

 本作は、ある程度のプレイ時間が必要なだけに、途中で抜けるプレーヤーやネットワーク接続が切れてしまった場合などの配慮もしっかりされているのが嬉しい。

 気になる通信対戦の紹介だが、まずは全国の知らない人とランダムに対戦する「全国の誰かと対戦!」から。このモードは人数が4人揃ったらゲームが始まる。選べるゲームは「桃鉄3年決戦!」という短期決戦のみ。通信対戦での事故が想定されていて、1カ月5分、5分を越えたら次から3分という制限時間があり、制限時間を過ぎたらCOMが自動で動かしてくれる。切断された人が出ても、そのキャラクターをCOMが動かしてくれる。

 通信対戦相手とのコミュニケーションはブーイング・メッセージというものを用いる。ブーイングという名前から、悪いイメージを浮かべてしまう人が多いとは思うが、デフォルトのメッセージを見ても、さほど悪い印象を受けそうなものは見当たらない。知らない人との対戦となる「全国の誰かと対戦!」では、デフォルトのメッセージしか使用できないので安心して欲しい。登録したフレンドとの対戦では、自由に編集した言葉を使用できるので、挨拶など、コミュニケーションで使えそうなものを登録して使うといいだろう。

 次は、桃鉄フレンドとして登録されたプレーヤー同士で対戦する「桃鉄フレンドと対戦!」。フレンド登録してあるプレーヤーとの対戦だけに自由な部分が多い。ゲームは、リーダーとなったプレーヤーが「いつもの桃鉄」、「桃鉄3年決戦!」の2つから選択する。「いつもの桃鉄」の場合は、最大50年まで選択可能。「全国の誰かと対戦!」のような時間制限がなく、ブーイング・メッセージも登録したものが使用可能。誰かが切断してしまうと、全員切断となるが、全員がデータをロードすれば、自動的に接続して再開できるようになっている。

 最後は、合言葉を決めて、その合言葉を知っている人同士で対戦する「合言葉で対戦!」。フレンド登録が面倒だったり、不特定多数が閲覧可能な掲示板などで対戦相手を募集する場合に重宝するモードだろう。遊べるゲームは「桃鉄3年決戦!」のみ。制限時間やブーイング・メッセージはデフォルトのものしか使用できないなど、「全国の誰かと対戦!」とルールは基本的に同じだ。

 もちろん、DS本体とソフトを人数分用意して楽しむDSワイヤレス通信や1台のDS本体を回しての多人数プレイにも対応している。

人数分のDS本体とソフトを用意して遊ぶワイヤレス通信プレイでは、誰か1名がリーダーとなり、その他の人はメンバーとなって参加する自由に編集できるブーイング・メッセージは5種類。それぞれ10文字まで登録可能。フレンド登録した知り合い同士の対戦でのみ使用できる1台のDSで複数人の対戦も可能。家族などで1つ購入してもみんなで楽しむことができる


■ 3種類のミニゲームが楽しめる桃太郎ランド

それぞれのミニゲームは最高記録が自動保存される

 本作では、簡単なルールで楽しめるミニゲームを遊ぶことができる。ちょっとした息抜きに遊ぶといいだろう。

 ミニゲームは、「プープーオナラマン!」、「貧乏神の超瓦割り!」、「ぐるぐるJAPAN!」の3つがあり、それぞれ初級・中級・上級と3つの難易度が用意されている。

 上級はかなり難しいので、初級からプレイし操作方法やルールに慣れてきたら、階級を上げていくのがいいだろう。


 「プープーオナラマン!」は、タッチペンをスライドさせて、畑に埋まっているさつまいもを空に投げ、オナラマンに食べさせるゲーム。普通のさつまいもは2点、金色のさつまいもは5点、うんちはマイナス5点で、制限時間30秒での最高得点を目指す。オナラマンやうんちなど、「桃鉄」らしいミニゲームだ。

地面に埋まっているさつまいもをタッチし、オナラマンのいる上画面に向けてスライドする。うまくオナラマンに食べさせられればポイントが得られる。急いで多くのさつまいもを投げたいが、掘ったものがうんちの場合もあるので注意しよう

 「貧乏神の超瓦割り!」は、その名の通り、貧乏神が瓦を叩き割るゲーム。パワーゲージをタイミング良くタッチし、次に瓦をタイミング良くタッチする。その結果、200枚の瓦が何枚割れるかを競う。

上下するパワーゲージを見極めて、なるべくパワーがたまった段階でタッチ。次に左右に揺れる瓦が真っ直ぐに並ぶようにタッチ。あとは何枚割れるのか結果を見届けよう

 「ぐるぐるJAPAN!」は、出題された町を探して制限時間内にタッチするゲーム。正解の町をタッチするごとに制限時間が延びていくものの、どこに町があるのか把握していないと難しい。上級をクリアするには、地図と町の場所を記憶しておかなければ無理だろう。

初級のみ地方が選べる「ぐるぐるJAPAN!」。出題された町を探して制限時間以内に全てタッチしていく。クリア時の残り時間が記録として保存される


■ 最後に

 今までは誰かの家に集まらなければ一緒にプレイできなかった「桃鉄」。DSでプレイできるようになり、集まるところがあればどこでもプレイできるようになったものの、友達と遊びたくても、なかなか都合が付かず遊べないこともあっただろう。だが、本作があれば、家にいながらにして、友人と「桃鉄」が遊べる。友人でなくとも、対戦相手が自動で見つかるのも嬉しい。これは「桃鉄」好きにはたまらないだろう。

 しかし、せっかく友人とプレイしているのに、コミュニケーションがブーイング・メッセージだけなのが少し残念なところ。筆者は、パソコンでのボイスチャットを利用して、ダラダラと喋りながら友人とのプレイを楽しませてもらった。こういった手段を活用してみるとさらに面白いかもしれない。

 本当の意味で、1人でもみんなでも楽しめるようになった「桃鉄」。プレイしてみてはいかがだろうか。


(C)2008 HUDSON SOFT

(2009年 4月 8日)

[Reported by 木原卓]