2016年7月7日 12:00
プレミアムバンダイで販売されていた、「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」が筆者の所にも届いた。本商品は2013年12月に発売された「METAL BUILD デスティニーガンダム」のカラーバリエーションだ。
「METAL BUILD」は、合金を多用したアクションフィギュアシリーズで、その価格は2万円近い高額商品である。「METAL BUILD」シリーズの理念は、「高価格商品だからこそ投入できる、最高の技術、品質でキャラクター(ロボット)を表現しよう」というもので、ギミックや、スタイリングに強いこだわりを持って製作されている。その中でもデスティニーガンダムは高い人気を獲得した。
今回筆者はそのバリエーションである「ハイネ機」を手に入れ、様々なギミックを楽しんだ。筆者にとって本商品が初めての「METAL BUILD」シリーズである。本稿ではデスティニーガンダムならではの魅力を語ると共に、“最高の商品を作る”というMETAL BUILDというフォーマットの面白さも紹介したい。
“悪魔的”なアレンジに、華やかなオレンジを加えて生まれたハイネデスティニー
デスティニーガンダムは、アニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の主役機の1つであり、主人公の1人、シン・アスカ専用モビルスーツである。シンが番組前半に搭乗していた「インパルスガンダム」で換装によって実現していた能力を統合し、遠距離から格闘戦全てをこなす万能機として、当時の最新技術を注ぎ込んで開発された。
そしてハイネ機は、「デスティニーガンダムは1機ではなく特殊部隊のために少数生産計画があった」として、ハイネ・ヴェステンフルス用の機体として設定されたデスティニーガンダムのバリエーションである。カラーリングがハイネのパーソナルカラーであるオレンジ中心となっているのがオリジナルとの違いだ。
「METAL BUILD デスティニーガンダム」は、デスティニーガンダムを大胆にアレンジ。鋭角的なデザインをさらにシャープに、元のデザインが持っていた“悪魔的”なイメージをより強調した、攻撃性の強いデザインとしている。そのアレンジの方向性などは、監修を務めたアニメーターの重田智氏のインタビューで語られているので、ぜひお読みいただきたい。そしてこの方向性が多くのファンを獲得し、バリエーションである「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」が発売され、さらに光の翼のエフェクトパーツをセットにした「METAL BUILD デスティニーガンダム(フルパッケージ)」の再販へと繋がっていくのだ。
筆者が「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」の購入を決意したのもまさにこのインタビューがきっかけだった。以前から「METAL BUILD デスティニーガンダム」は欲しかったのだが、価格で購入をためらってしまい買い逃していた。しかしインタビューの場で現物の格好良さを見て、重田氏や開発スタッフから商品への想いを聞くと、もう我慢できなかった。オリジナルのフルパッケージ版としての再販も知っていたが、できるだけ早く! という想いでハイネ機を予約した。
「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」はまず2015年10月末に開催されたバンダイコレクターズ事業部のイベント「魂ネイション2015」の限定販売商品として販売された。そこでは開場と同時に売り切れになるほどの人気を博し、その後プレミアムバンダイでの受注販売が行なわれた。ここでの人気も受注システムがパンクするほどすさまじく、3次受付まで行なわれた。筆者が入手できたのはこの3次受付である。いざ入手すると、その商品のクオリティの高さ、プレイバリューの高さ、そしてカッコ良さに大いに満足した。ハイネ機独特のオレンジの配色、スタイリッシュな雰囲気も気に入った。「手に入れて良かった」と思えるアイテムとなった。
それでは実際に商品を見ていこう。まずは翼を外した状態で素体を見ていく。関節、手足の各部など金属パーツが多用されている。塗装はしっかりしており、装甲の分割、マーキング、配色も細かく情報量は非常に多い。プラモデル上級者の凝った作品のようなクオリティを“完成品”で実現しているのがうれしい。
肩に接続されたブーメラン「フラッシュエッジ2 ビームブーメラン」や、腰のアーマーは特に鋭角的なデザインで、本商品ならではの“ダークヒーロー”らしいシルエットをもたらしている。そして顔のデザインはガンダムの記号を取り入れながらも鋭く小さな目、血涙を思わせる赤い隈取りと、“きつい顔立ち”をしている。胸のダクトも鋭角的で、ボディのパーツ分割も細かい。ディテールをチェックするほど、「スゴイアイテムを手に入れてしまったぞ」という愉悦がわき上がってきて、楽しくてたまらない。
動かしてみると、その関節の多さ、可動の緻密さにうれしさは大きくなる。背をそらすと、胸の突起が大きく上を向き、腹部のコックピットハッチも連動して上に上がる。首は二重関節になっており引き出すことでかなり上を向ける。反対に上半身をかがめると胸とハッチが下に下がり、あごも大きく引ける。太ももも大きく前に曲がるので、かなり背を丸めたポーズもできる。脚は膝が二重関節になっている上に、ふくらはぎの装甲がスライドするので正座をするような角度まで曲げられる。
肩の関節はさらに複雑だ。引き出し関節で楽々と武器を両手で握れ、肩の基部ブロックに上下に動く軸までも仕込まれているので、肩に力を入れたようなポーズもできる。肩の装甲は腕と独立して可動する上に、装甲が開く設計になっているので、装甲が生むラインを崩すことなく腕が動かせるようになっている。腕の分割も非常に細かく、上腕と前腕に回転軸が仕込まれており腕のアームガードを自然な方向にできる。前腕にはさらに関節が追加されているので、武器をより自然に構えられる。後述するが、デスティニーガンダムはほとんどの武器を“腕”で扱う。この腕の高い自由度は、多彩な武器を扱うデスティニーガンダムにさらなるカッコ良さをもたらすのに、大きく貢献している。
そしてディスティニーガンダムといえば“翼”である。黒と赤に光沢の入ったオレンジというハイネ機の翼は、オリジナルのデスティニーガンダムとは大きく異なる華やかな雰囲気ももたらしている。翼の内側には細かいモールドが入り、この翼が高機動をもたらすスラスターの集合体であるうえ、分身を生み出すミラージュコロイドを散布するなど様々な技術が盛り込まれているという設定を納得させる“ケレン味”に満ちている。翼の基部には金属パーツが使われ、一部にロック機構があるので、大きな翼をしっかり支え、自分の思った角度に固定できる。
「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」の魅力の1つはこの多彩な関節にある。様々な武器を構えたポーズ、攻撃時、防御時、見得を切ったポーズなど、様々なシチュエーションを表現するとき、肩のライン、腕の向き、目線、足のつま先まで細部にこだわり、動かすことができる。1つのポーズが決まったかな、と思ってももうほんのちょっと動かしたくなる。どこまでも1つのポーズにこだわれる。動かすのはもちろん、ポーズをとらせるのもとても楽しいアクションフィギュアなのである。
多彩な武器を使う姿をとことんまで追求できる愉悦。「METAL BUILD」だからこそのポテンシャル
そしてデスティニーガンダムの最大の魅力が多彩な武装だ。いくつもの武器をどう構えるかが、本商品の最もポピュラーな“遊び方”となる。デスティニーガンダムは背中に巨大な剣「アロンダイト ビームソード」と、長距離を砲撃できる巨大なビーム砲「高エネルギー長射程ビーム砲」を装備している。この2つの武器はどちらもガンダムの身長よりも大きい“長物”であり、普段は折りたたんで携行している。
この2つの武装も、「METAL BUILD」ならではのアレンジがなされ、ギミックが仕込まれている。特に「高エネルギー長射程ビーム砲」は、アレンジが強く、射撃形態に変形させると、砲身の上下がスライドしメカニカルな内部機構が露出したり、砲の後部もメカ部分が現われる。フレキシブルに可動するウェポンラックにより、きちんと砲撃姿勢がとれる。長い砲身を活かした力を込めた射撃ポーズがとれる。
「アロンダイト ビームソード」はデスティニーガンダムの象徴と言える武器だ。その巨大な剣を両手で構えるときこそ、「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」のポテンシャルを最大に活用できる時といえるだろう。本商品には豊富な“持ち手”が用意されており武器に対応したしっかり構え方ができる。特にアロンダイトに関しては大きく重い剣をしっかり保持でき、角度をつけた剣の構え方もできる。
購入時はちょっと持ち手と腕の接続がきつい。腕のはめ込みは前腕の関節もあってなかなか難しい上、腕を壊してしまわないか心配になる部分もあるが、しっかり部品を手で押さえ、グリグリとねじ込むようにはめていくことできちんと固定できる。また、アロンダイト ビームソードは握り部分が外れ、握り手パーツを通しやすくなっている。まず本体に握り手パーツをはめ、そこにアロンダイトの握り手を通してポーズを作っていくというのがオススメだ。
アロンダイトは振りかぶったり、見得を切ったり、何をさせてもカッコイイ。ロボットが人間のように大きな剣を持ってポーズを決められる、というのはヒーローロボットのお約束ではあるが、ロボットのデザインを再現したフィギュアの場合、両手で剣を持てるほど“動く”商品は多くない。まして、アニメの決めポーズのようなカッコイイ構図を実現できるようなものは滅多にない。「METAL BUILD デスティニーガンダム」はそのこだわりのポーズがきちんととれるのだ。
肩にはめ込まれた1対のブーメラン「フラッシュエッジ2 ビームブーメラン」は“ブーメランとしてのビーム刃”、“ビームサーベルとしての刃”の2種のエフェクトパーツが付属している。体を大きく曲げブーメランを投擲するポーズ、素早くビームサーベルを振る動きのあるポーズなどをとらせるのが楽しい。大きなアロンダイトとは異なる、素早さを活かした戦い方をイメージさせたポーズをとらせたい。そういった活躍の場を想像しながらポーズを模索するのが楽しい。“隠し武器”としても使える手のひらの「パルマフィオキーナ」は専用の手首パーツが用意されている。
“ガンダムの基本武装”といえる、ビームライフル、シールドもデスティニーガンダムは装備している。シールドは両手で武器をふるうことを意識してかかなり小さなものだが、劇中同様展開して面積を増やせる。スライド機構ではなく場所を動かしてはめ込む形なので、開いた形でもしっかり形を保持できる。さらに手甲のパーツを差し替えることでビームシールドを展開した状態も再現可能だ。
ビームライフルはスコープが丸く、初代ガンダムのライフルを想起させる。前のグリップが可動し初代ガンダム風の射撃ポーズを取れるところもニヤリとさせられる。今回はスタンドを多用したため干渉してしまったが、ビームライフルを劇中通り腰の後ろにマウントできるのもうれしいところだ。
筆者はゲームなどでデスティニーガンダムを知り、その多彩な武装の“万能感”に惹かれてこれまでもいくつかの商品を購入したのだが、翼部分が重すぎて安定しなかったり、大きな武器の保持が甘くポロポロ落ちたり、うまくポーズが取らせられなかったり、「イメージとしてのディステニーガンダム」に手に持った立体物を近づけられなかった。
しかし、「METAL BUILD デスティニーガンダム」は違う。翼や肩、足のつま先が生む鋭角的なライン、肩の自由度、胴体や首の付け根まで細かく仕込まれた関節、体中の細かいマーキングとディテール表現により、イメージを超えたポーズ付けが可能なのだ。自分で形を作っていながら、商品のクオリティに圧倒される。そして可動部分が多いからこそ、「もう少し肩を、背面の装甲を動かしてみよう」という感じで際限なくいじってしまう。この、どこまでも理想が追求できるポテンシャルは、最高の品質を実現しようという「METAL BUILD」だからこそといえるだろう。
「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」はファンにとって値段以上の価値を持つアイテムであるのは間違いない。本商品、そして再販された「METAL BUILD デスティニーガンダム」もプレミアムバンダイの受注商品であり、受注が終了している現在、このレビューで興味を惹かれた人が入手するのが難しい状況ではある。しかし、“高コストだからこそ実現できる高い品質を実現しよう”という「METAL BUILD」の今後の展開には、注目して欲しい。次はどんなロボットがこのフォーマットで立体化されるのだろうか。
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