「IV号戦車D型 あんこうチーム プチあんこうチーム付き」レビュー

IV号戦車D型 あんこうチーム プチあんこうチーム付き

楽しいフィギュア付き初心者向けモデル。あえて無塗装のお手軽組み立ててで!

ジャンル:
  • プラモデル
発売元:
  • プラッツ
開発元:
  • ドラゴンモデルズ
価格:
7,992円(税込)
発売日:
2016年6月19日

部品数を大幅減! 作りやすくてフィギュアもついた、IV号戦車D型の第4弾です

 今回ご紹介するのはプラッツのガルパンシリーズ最新作! 短砲塔のIV号戦車D型にパンツァージャケット姿のプチあんこうチームフィギュアが付いた限定版「1/35 ガールズ&パンツァー IV号戦車D型 デフォルメあんこうチーム(パンツァージャケットver.)」です。

塗装済みデフォルメフィギュア付きプラモデル。今回はあえて無塗装で組み立てました。戦車プラモデル初挑戦の人にもオススメのプラモデルです

 プラッツのIV号戦車D型はこれまでに「IV号戦車D型-あんこうチームver.-」、「IV号戦車D型プチあんこうチーム付き限定版です!」、「IV号戦車D型あんこうチーム 模型戦車道、はじめます!」の3種類が発売されています。

 一番最初の「IV号戦車D型-あんこうチームver.-」はガルパンシリーズの第1弾でもある記念すべきキットで、中身はサイバーホビ―/ドラゴンのもの。細部まで再現された、それはそれは精密な超絶キットだったのですが、その反面パーツ数が900点もあり、箱を開けた時にギッシリ詰まったパーツが出てきて衝撃を受けたりしました。

 それが2015年6月発売の制服姿フィギュアが付いた「プチあんこうチーム付き限定版」では90%以上のパーツが新設計され、総パーツ数が1/4以下の200点余りにぎゅぎゅっと凝縮。初心者でも組み立てやすいモデルになりました。全体的に一体化が進められた結果ですが、例えば誘導輪基部は8パーツから構成されていたのが3パーツに減らされています。細かい部品が多いので、製作時間も圧倒的に短くなる感じです。

 続いて2015年11月にはフィギュア無しの通常版である「あんこうチーム 模型戦車道、はじめます!」がリリースされ、同時に本体の成形色が薄いグレーから劇中に近いジャーマングレーに、履帯もベージュから黒に変更されました。塗装無しの素組でも劇中に近い物ができ上がるという事で、ここで一気に敷居が下がったと思います。

 そして今回の「あんこうチーム プチあんこうチーム付き(パンツァージャケットver.)」。フィギュア付きIV号戦車D型のリニューアル版という位置づけで、パーツ数が減り成形色が変更された通常版に、パンツァージャケット姿のプチあんこうチームフィギュアが付いたものになっています。

【パーツ比較】
1番最初のキット。パーツ数は900点
本キット。パーツ数が200点余りと1/4以下になりました
8パーツあった誘導輪基部が3パーツになるなど、大幅な一体化が施されています

 本キットの1番の特徴は何と言っても付属の「プチあんこうチーム パンツァージャケットver.」であること。フィギュアはピットロード製で、一般のフィギュアと同様に塗装済みのPVC製です。もちろん組み立てや塗装の必要はありません。フィギュアの顔を塗るのはプラモ作りに慣れている人でもなかなか難しい作業なので、完成品なのは嬉しい限りです。

 劇中でパンツァージャケット姿のあんこうチームが登場するのは、第5話「強豪・シャーマン軍団です!」で第63回戦車道全国高校生大会に出場した時。ほんの少し前まで戦車に乗った事があるのはみほだけで、他のメンバーは操ることさえままならなかったのに、1回戦の相手は強豪のサンダース大学付属高校でした。戦車保有台数は全国一、戦車道チームが1軍から3軍まであるというリッチな学校です。劇場版では大学の航空輸送部門が保有するC-5Mスーパーギャラクシーなんてモノまで出てくるほどで、学校の規模は半端ではありません。

 そんなサンダース戦で、キットのように全員がハッチから姿を現わすのは、サンダースの通信傍受に気付いた時。ルールブックを確認して話し合っているシーンです。

 付属のフィギュアは三頭身ぐらいのデフォルメフィギュアで、ハッチから身を乗り出しているポーズで作られていることもあってエンディングが思い浮かぶと思いますが、実はこのキットの組み合わせのエンディングは存在しません。あんこうチームがエンディングに登場したのは第2話と第7話、第11話の3回。第2話では制服姿で、第7話ではパンツァージャケットを着ているもののアンツィオ戦に合わせて長砲身に換装済み、第11話はH型仕様でした。サンダース戦のあのシーンは貴重なシーンだったんだなと今さらながら気付いた次第です。

フィギュアに合わせてお手軽モデリング。手順を変えることでさらに組みやすく!

 戦車本体の方ですが、デフォルメフィギュアなのにIV号戦車がリアルだとバランスが悪いですし、初めてプラモデルを作る方でも作れるよう、今回は塗装無しのお気楽モデリングにしてみました。これなら模型用ニッパーとデザインナイフ、紙ヤスリ、ピンセット、接着剤があれば十分作れます。

サスペンションに付くC6パーツ。左は穴が浅いのがわかります
転輪はカンナがけをして合わせ目を消しました

 普段はパーツをランナーから切り離した時のゲートの跡は、紙ヤスリの400番で削って、800番で仕上げてサーフェイサーを吹き付けているのですが、今回は無塗装ということでなるべくデザインナイフでカットし、800番、1200番で仕上げています。

 基本的には説明書の通りに作っていけばいいのですが、作ってみて、一部手順を変えたり修正した方がいいかなと思う所がありました。また、穴を埋めたり逆に穴を開けたりという指示があるのですが、パテや穴を開ける道具が必要になるので全てスルーしています。

 最初に「後にすればよかった~」と思ったのは、車体後部に取り付けるA16とA17のパーツです。マフラーが乗っかるパーツなのですが、ここで接着して後からマフラーを取り付けたら隙間ができてしまいました。これはマフラーを接着する時に一緒に組み立てるのがオススメです。

 ちょっと修正したのはサスペンションの所につくC6のパーツ。両側で8個付けるのですが何故か2個だけ穴が浅く、そのまま接着したら少し浮いてしまいました。気になるので一旦剥がしてサスペンションパーツの突部を削りおとして接着し直しています。また、A1とA2は裏の凸部が車体の凹部に合うようにすると、向きが逆になってしまう気がします。内側に傾くようにA1とA2を入れ替えて使いました。

 車体下部の組み立てで手を加えたのは、転輪だけ。金型の合わせ目であるパーティングラインが目立つので、デザインナイフの刃を立てて削る通称カンナがけで綺麗にしました。
 D2の側面にC3を取り付ける穴が開いていますが、一番後ろの穴はふさぐように指示されています。これをやるにはパテを使わなくてはいけないですし、横から見た時は転輪で隠れるので、前述の通り今回はそのままにしています。説明書の3番にある0.8mmの穴を開ける指示もスルー。予備履帯を取り付けるためのものですが、これも道具が必要になりますし、予備履帯の方を加工する方が簡単なので開けませんでした。

 起動輪のベース部分にA47、A48のカバーが付いているのですが、エンディングで起動輪がドアップになっても見えないぐらいのパーツですし、劇中で付いていないように見えるカットもあるので付けませんでした。これはどちらでもいいかなと思います。

【手軽に組み立てても大丈夫】
半円の穴はふさいでいません。あんまり見えないしこのままで
A47、A48は取り付けませんでした

 車体上部は特に問題なく作れます。フィギュアを乗せるので、車体前部のハッチA45とA46は開いた状態で接着しました。砲塔の左右のハッチB2とB6、上部のハッチB7、B11も同じです。

フェンダーの穴をナイフで綺麗に丸くします

 ハッチ類の裏側には、よく成型時にパーツを押し出すためのピンの跡が付いていたりするのですが、このキットのハッチにはそれが全くありません。ピンの跡って結構目立つし、それが見えると一気にオモチャっぽく見えるので、無塗装で作るには超グッドな配慮です。

 フェンダー部分に開けられている穴は、滑り止めのモールドでつぶれ気味になっていたので、ナイフをぐるりと1回転させて綺麗にしました。

 車体前面に取り付ける予備履帯は、取り付け用の穴を開けていないので4本のピンをカットして接着しました。予備履帯はその名のとおり修理に使う予備の履帯です。戦車道においては履帯をやられただけなら修理して試合復帰が可能ですし、好き勝手な装甲強化は認められないので、追加装甲としての役割も持つ予備履帯は結構重要な部品なのではないかと思います。

 装甲といえば、IV号戦車は元々支援戦車的存在だったため、火力も装甲も強力とは言い難い設計でした。ガルパンの劇中でもアンツィオ戦からは長砲身のF2型仕様になりましたが、実際、D型の短砲身ではなかなか厳しかったみたいです。

 装甲が軽いぶん機動力に優れてはいたようですが、さすがにもうちょっと厚くないとヤバいんじゃないということで、D型では前面や側面の装甲が強化されています。もし大洗女子の倉庫にあったのがA型だったりしたら、もっと撃破されていたかもしれないですね。

 ちなみに、IV号戦車はV号戦車パンターやVI号戦車ティーガーに比べると一般的な知名度が低く、プラモの人気もイマイチでした。それがガルパンで一気にメジャーになり、新しいキットも続々出たりして、まさにガルパンさまさまです。

【予備履帯へのこだわり】
予備履帯にある取り付け用ピンはカット
予備履帯はこのあたりに接着します

 車体後部の組み立てで、A26を取り付けた後にカットする指示になっていますが、先にカットしたほうが簡単です。とても小さい部品になるので無くさないように注意しましょう。また、マフラーを取り付けた後で接着しようとしたらやりにくかったので、マフラーは最後にした方がいいと思います。

 そのマフラーですが、ここで最初に接着しなかったA16とA17を一緒に取り付けます。マフラーの上につくA36、A49はスモークディスチャージャー。煙幕をもくもくと張るための装置です。パーツに掘られた溝にマフラーの固定金具モールドがはまるようにすると、モールドをまたぐようになり説明書にある取り付け後イメージのイラストとは異なってしまいますが、ここもそのままにしました。車体右側面の四角い穴を埋める指示がありますが、これも修正が大変なので開いたままです。

 第11話にでてきたモクモク作戦では煙幕を張っていましたが、H型仕様なのでここにスモークディチャージャーは付いていません。でも後部からもくもくと出ていたので、あの時だけこのあたりに取り付けていたのかもしれないですね。

【車体後部の組み立て】
A26はカットしてから取り付けます
マフラーと一緒にA16、A17を接着

初心者でもレッツトライ! デカールを貼ってみよう

 付属のデカールは3種類。砲塔に「六」と書かれた「発見時/聖グロリアーナ女学院戦時」とあんこうマークだけの「本戦時/サンダース大学付属高校戦~アンツィオ高校戦時まで」、OVA「これが本当のアンツィオ戦です!」で対アンツィオの練習のため仮想敵としてP40役をやった時の「ぴよぴよ」が付く「アンツィオ戦練習時」が選べます。

デカールを切り取り、水に入れて10秒待ちます

 前述のとおり、パンツァージャケットを着てD型に乗っているのは対サンダースの時なので、あんこうマークのみを選びました。他の2つを選ぶ場合は、ハッチオープンの状態だと貼れないので、ハッチを接着する前に貼ってください。

 「ぴよぴよ」はハッチを接着せずに閉じた状態にして、貼った後ハッチのフチのところでカットするといいと思います。

 デカールなんて貼った事ない! という方もいらっしゃるかもしれないので、簡単に説明を。

 まず「あんこうマーク」とか「大洗マーク」など、貼りたい物を1つだけ切り取ります。切ったマークを、適当な器に入れた水に印刷面を上にして浮かべます。10秒経ったら水から出して、ティッシュやキッチンペーパーの上に置き、少し水気を取ってあげます。

 10秒ほどすると指でマークをずらせるようになるので、そっとスライドさせてみてください。動かないようならもう5秒ぐらい待つと動くはずです。スライドさせたらマークの端を台紙から少しはみ出させて所定の位置に貼り付け、台紙を横に滑らせるように動かして外してやれば綺麗に貼れます。

 指先で水を少し着けてやれば位置の調整も可能です。場所が決まったら、綿棒などで水気をそっと吸い取れば完了。たまに薄いデカールがあって、油断をすると破けてしまったりすることがあるのですが、このキットに付属するデカールは割と丈夫なので、そう簡単に切れてしまう事はありません。でもそんなに強いものでもないですから、丁寧に扱ってくださいね。

【デカールは怖くない!】
ティッシュで水気を取りながら、また10秒待ちます
スライドさせて貼り付けます

ある意味主役!? フィギュアを乗せるには工夫が必要

車長の西住みほは砲塔上部のキューポラに接着。両手の手のひらに接着剤を塗っています

 本体ができ上がったらフィギュアを固定します。そのまま入れただけでは中に落ちてしまいます。ワタシは瞬間接着剤で固定してしまいましたが、外して楽しみたいという方は、車内に厚紙などで箱を作って、そこに強力な両面テープで貼り付けるのがいいかなと思います。

 前回のパンターG型もそうだったのですが、パッケージの底は簡単なジオラマベースになっています。せっかくなので組み立ててみました。単に底の紙を二つ折りにしただけの物なのですが、デフォルメフィギュアにはなんだか凄く似合ってて、結構お気に入りです。

【フィギュアを乗せてみよう!】
通信手の武部沙織は前部右側。お腹のあたりを接着しました
通信手の武部沙織は前部右側。お腹のあたりを接着しました
装填手の秋山優花里は砲塔右側のハッチ。右手の先端を接着しています
操縦手の冷泉麻子は前部左側のハッチ。両袖を接着しました

 パーツの一体化が進みエッチングパーツもありませんが、細かいリベットやフェンダーのスベリ滑り止めなど、かなり精密に再現されています。特に砲塔上面はこれが一体パーツとは思えません。ただ、砲塔側面の吊り下げ用フックはモールドが甘く、上面、側面、背面が一体成形になっているので、さすがにフックの形に抜くのは無理だったみたいです。
 素組みで組んでみてこれはいいなぁと思ったのは、ハッチの裏面。丸い押しピンの跡があったりすることが多いのですが、このキットでは全く見当たりません。今回のように無塗装で作るには超グッドなのです。

 また、底面もしっかりモールドが施されていて、360度どこから見ても鑑賞に堪える感じです。

【完成です!】
無塗装でも原作の雰囲気をきちんと味わえます

【さらに色んな角度で!】
台紙を背景にして撮影
各部のアップ。底面もしっかりモールドが施されていて、360度どこから見ても鑑賞に堪える感じです

 というわけで無塗装無改造の素組みでしたが、これなら初めて作る方でも1日あればできちゃうんじゃないかな。友達と集まって、ワイワイ言いつつお菓子でも食べながら作ったりすると楽しいですよ。

 あとは例えば、転輪のフチをつや消しブラックで塗り、木の部分をウッドブラウン、予備履帯とジャッキを黒鉄色でちょちょっと塗ってあげると、いい感じになりそうです。工作に慣れている方なら、穴埋めと塗装をしても2日あれば完成すると思います。ミリタリーモデルというと汚し塗装という感じですが、このキットはあまり汚さず、オモチャっぽく仕上げたほうが似合いそうですよね。

 どうせオモチャっぽくするのであれば、ハッチのヒンジ部に穴を開けて真ちゅう線などを通し、開閉可能にしても面白そうです。その場合はフィギュアを簡単にセットできるよう、足に真ちゅう線を付けて、差し込むようにするといいかもしれません。

 プラモデルを作った事の無い初心者の方も、ベテランモデラーの方も楽しめるこのキット。あまり細かい部分は気にせず、お休みの日に作るには最適かなと思います。ぜひお試しを!