先行レビュー

ディートリヒにガチ惚れ! 「ファイアーエムブレム 万紫千紅」先行レビュー

狂気と甘党のギャップ沼。かつてない新システム・新要素は大きな伏線の予感バリバリ

【ファイアーエムブレム 万紫千紅】
発売日:9月17日
価格:
8,980円(ダウンロード通常版)
9,980円(パッケージ通常版)
14,980円(パッケージDagdan Collection)

 9月17日にNintendo Switch2での発売が予定されている「ファイアーエムブレム」シリーズ最新作「ファイアーエムブレム 万紫千紅」。本稿では、序盤における先行レビューをお届けする。

 本作の舞台となるのは、神々が支配する広大な大陸ダグザの地にあるダグザ帝国の首都ダグシオンだ。そこで開催される、優勝すればどんな願いでも一つだけ叶うという「大剣闘祭」を中心に、血沸き肉躍る重厚な物語が展開される。

 今回、多くのファンが待ちわびる本作を先行プレイする機会に恵まれた。限られたプレビュー時間の中で筆者が実際に体験した衝撃的なストーリー構造、勝敗を分ける新機軸のシステム、そしてひと際異彩を放つ謎多き美剣士ディートリヒの底知れぬ魅力について、レポートしていく。

【ファイアーエムブレム 万紫千紅 Direct 2026.8.4】

破滅の未来から5年前へ。斬新すぎるストーリー構造の幕開け

 ゲームを起動してまず筆者を驚かせたのは、そのあまりにも衝撃的な幕開けである。本作の冒頭で、プレーヤーの分身となる真の主人公イシュマールが降り立ったのは、冥界の王たる魔神バロールが復活し、亡者の軍勢によって火が放たれた滅びゆく世界である。

この世界は魔神バロールによって滅ぼされる寸前である
イシュマールは非常に強いので、序章の戦闘は主に戦闘ルールを覚えるためのものだと思えば良い

 圧倒的な力で亡者をなぎ倒すイシュマールだが、運命の女神フォトナから「戦力をそろえぬ限り、バロールには勝ち目がない」と告げられる。そこでフォトナが見出したのが、すでにこの世を去った4人の戦士たちだった。

 イシュマールは彼らの過去に干渉し、共に戦う未来へと変えるため、時を5年前へとさかのぼることになる。そして5年前の世界で、プレーヤーは4人の主人公たちが命を落とすことになった過酷な運命を追体験していくのだ。

1人目の主人公・カイ
2人目の主人公・ディートリヒ
3人目の主人公・セオドラ
4人目の主人公・レダ

 こうしてイシュマールは姿を白い鳥に変えて破滅の未来からさかのぼり、彼らが譲れない信念を胸に集結した帝都ダグシオンの大剣闘祭へと舞台は移る。

 筆者は事前の発表時から気になって仕方がなかった「ディートリヒ編」から物語を開始したが、1人のキャラクターの物語を4章まで進めると、そこから先は他のキャラクターの物語も選べるようになり、同時進行で進めていくことが可能になる。誰の視点からこの世界の謎を紐解いていくか、プレーヤーの選択が非常に重要になってきそうだ。

物語を4章まで進めると、そこまでのプレイデータを維持したまま別のキャラクターのルートへと飛べるようになる

 そして本作の最も恐ろしくも熱いシステムが、最後まで物語をプレイした戦士だけを現代のバロールとの最終決戦に仲間として連れていくことができる、というものである。しかも戦士を1人も仲間にせずバロールに挑むこともできる、というのだ。具体的にどういうシステムになっているのかはまだ不明だが、究極の縛りプレイを公式が用意してくれている事実に、歴戦のプレーヤーたちの血が騒がないはずがないだろう。

天使のごとき美しさと圧倒的強さ。真の主人公「イシュマール」

 ここで、真の主人公であるというイシュマールについて触れておきたい。本作ではキャラクターメイク機能が搭載されており、イシュマールをプレーヤー好みの容姿に仕上げることができる。

男性、女性のどちらかを選べる
髪型や髪色なども選べる。そこまで細かいキャラクターメイクができるわけではないが、それでもよりプレーヤーの好みに近いイシュマールにはできるだろう

 序幕で操作することになるイシュマールは、まさに圧倒的の一言に尽きる強さを誇り、チュートリアルとは思えないほどの頼もしさで戦場を無双していく。筆者はあえてデフォルト設定のままの、男性のような見た目のイシュマールを選択してプレイを進めたのだが、これがまた素晴らしいデザインなのだ。

 デフォルトのイシュマールは全身が真っ白な出で立ちをしており、まるで天使かのような神秘的な美しさを放っている。後述する血の匂いと狂気を纏う美剣士ディートリヒとはベクトルが全く異なる、神々しいまでの美しさである。キャラクターメイクでデフォルト設定にこだわりがあるプレーヤーには、ぜひこの美しい姿のままでプレイしてみてほしいと強くおすすめしたい。

全て初期設定のままの男性のイシュマールにすると、このような姿になる。美しい

 また、イシュマールは序幕ではほとんど言葉を発しない無口な主人公なのだが、時折プレーヤーに選択肢が提示され、決断を迫られる場面がある。この選択が今後の物語にどのような影響を与えるのか、あるいは全く与えないのか、現段階では謎に包まれている。

1章以降は選択次第でキャラクター同士の好感度に影響を及ぼすのを確認したが、序章は恐らく気にしなくていいだろう

単なる趣味ではない。生存本能として血を求める戦闘狂「ディートリヒ」の悲哀

 さて、筆者が真っ先に飛び込んだディートリヒ編の主人公・ディートリヒであるが、一目見ただけで心を奪われる圧倒的なビジュアルを持っている。イシュマールの天使のような美しさとは対照的に、長く美しい髪を揺らし、涼しげで端正な顔立ちをした彼は、まるで名画から抜け出してきたかのような気品と仄暗さを漂わせている。しかし、その美麗なルックスに油断してはいけない。

ディートリヒ

 プレイアブルキャラクターとして彼を動かしていると、低く落ち着いたトーンの美声で極めて穏やかな口調のセリフが紡がれるのだが、その内容は背筋が凍るほど攻撃的で狂気に満ちている。この見た目の優雅さと内面の恐ろしさのアンバランスさに早くも惹きつけられていた筆者だが、プレイ中にふと差し込まれた彼のセリフに、思わず息を呑むことになった。

 「強敵を相手に闘うことは、飢えや渇きを癒やすことと同じ」。

 彼が持つ戦闘狂としての顔は、決して単なる趣味や嗜好などという生易しいものではなかったのだ。我々人間が生きていくために食事を摂り、水を飲むように、彼にとって強者と命を削り合うことは生物としての生存本能に直結しているのである。

 闘わなければ、自我が干からびて死んでしまう。だからこそ、彼は穏やかな微笑みを浮かべながら、息をするように血を求めるのだ。永遠に満たされることのない虚無感と飢えのサイクルに囚われた彼の背景を想像するに、人には理解できない孤独さのようなものもあるのだろう。そう考えると、ただの恐ろしい戦闘狂が、どこか放っておけない庇護欲を掻き立てる存在へと変わっていくのだった。

恐らく女性陣の人気を搔っ攫いそうなディートリヒ。彼が何故こんなにも渇いているのか、きっとそれもこの先明かされていくのだろう

試合当日と自由行動。勝利へ導く采配と、驚愕の探索ダンジョン

 本作で4人の主人公たちが目指す目標は、ずばり大剣闘祭の試合で勝ち続け、優勝することだ。その勝利の鍵を握るのが、戦場での采配と、試合当日までに自由に行動できる準備期間の使い方の2つである。

 戦闘は、シリーズお馴染みのマス目状に区切られたマップ上で自軍と敵軍が交互に行動するターン制バトルとなっている。刻々と変化する戦況の中で、一人ひとり能力の異なる味方の力をどう引き出すか、プレーヤーの軍師としての手腕が試される。

1マス1マス区切られているマップを移動しながら、敵を倒していく

 さらに今回は主人公たちが使える特別な技「ブレイズアーツ」や、武器の耐久値を消費して繰り出す「戦技」といった要素も絡み合い、いかに戦局を有利に運ぶかという緻密な戦略性がたまらない。

ディートリヒのブレイズアーツ「影渡り」。障害物を無視して瞬間移動する特殊な技だ

 そして戦場以上にプレーヤーを悩ませ、熱中させるのが自由行動期間である。この期間は、施設を利用したり人物と交流できる拠点ダグシオンと、移動のたびに時間が経過するワールドマップを行き来して、万全の準備を整えていくことになる。

 拠点であるダグシオンでは、週替わりで内容が変化する訓練を受けて技能レベルを高めたり、兵種の資格試験を受けたり、お目当てのキャラクターを仲間にスカウトしたりと大忙しだ。さらに村人からのクエストの解決や、神々への謁見、仲間との交流など、やりたいことが多すぎて時間がいくらあっても足りない。

宿屋では、仲間との食事で交流を深めることができる。誘える仲間は主人公を除いて2人まで。誰との交流を深めたいか、メニューもよく考えて選ぼう
食事がうまくいくとその分好感度も上がるようだ

 一方のワールドマップに遠征すれば、ならず者や魔獣の討伐、新たなスポットの発見などが待ち受けている。ここで特筆すべき新要素が「探索できるダンジョン」の存在だ。

ワールドマップを一定距離歩くと、その距離に応じてシーケンスが進む

 ダンジョン内ではプレーヤー自身でキャラクターを直接操作して内部を走り回り、ウロついている敵のシンボルと接敵することでバトルへと突入する。このバトルは「クイックバトル」と呼ばれており、普段とは異なるコマンド選択式のターン制バトルがプレイできる。

 「攻撃」「連携」「戦技」などが選択でき、普段のシミュレーションバトルとはまた変わった感覚の体験となっている。また自動進行の「おまかせ」もあるほか、+ボタン長押しで決着までスキップも可能だ。

 なお、クイックバトルでは残りHPは戦闘を終えても変化しない。消耗したHPは道中にある休憩所を利用するか、一度宿屋に戻って寝るなどしないと回復しない。適度に休憩しないと痛い目を見るような、リソース管理の緊張感が生まれている。

ワールドマップのなかにはダンジョンが存在する。ダンジョンは経験値やアイテム稼ぎに最適なので必ずクリアしておきたい
RPGのように敵がそこらへんをウロついているので、攻撃ボタンで斬りつけよう。体当たりをすることでもバトルが始まるが、先制したほうが有利に進む
+ボタンを押しっぱなしにすれば、オートでバトルを終わらせてくれる(もちろんオートでもHPは減る)

 また、自由行動期間中に他のルートの主人公と出会うこともある。もちろんスカウトはできないのだが、話しかけることは可能だ。ダグシオンをひたすら歩き回って色々なキャラクターを探し、誰がどんな反応をするのかを楽しんでみてもいいだろう。

 どこでどう時間を過ごし、どのような采配を振るうか。まさにプレーヤーの選択がすべての勝敗と運命を左右するのだ。

たまたま街中でレダを見かけた。今回はディートリヒのルートだけを進めているが、他のキャラクターでも、4章で大剣闘祭に集ってくるものと思われる

 ただし、メインクエストの期限までに目的地にいないとタイムオーバーとなって章の最初からやり直ししないといけないパターンもある。くれぐれも注意したいところだ。

メインクエストが進行するまでに必ず目的地に着いておこう
メインクエストの目的地がダグシオンの場合は、必ずしもダグシオンに留まっている必要はない

絆がディートリヒを変える。「ダーリン」と呼ぶヒロインと、仲間への感情の変化

 物語を追うごとに、ディートリヒに関する驚きのパーソナルデータも次々と判明していく。筆者が特に注目したのが、プロフィールの「好きなもの」の欄に記載されていた「『美しい』と感じるもの、猫などの可愛いもの、甘い物、妹」というもの。彼は重度の妹好きであり、あろうことか大の甘党なのである。

 もしかすると彼は、血を求める耐え難い渇きをごまかすために、手っ取り早く脳を満たしてくれる甘いものを口にしているのではないだろうか。食事のシーンで美味しいスイーツを前にしてふっと表情を和らげる可愛らしい瞬間があるのだが、それはスイーツこそが、彼を血に飢えた獣から人間へと引き戻してくれるギリギリの防波堤なのかもしれないと想像する(ただの推測です)。

 そして何より筆者の胸を熱くさせたのは、彼が仲間たちと共に過ごす中で放った、このセリフである。

 「ファビオ、エスメラルダ、ミカエラ。おまえたちには感謝している。おかげでこの世界の見え方が変わってきた気がする」

 飢えと渇きに支配され、他者を“戦いの衝動を鎮めるための相手か、それ以外”と認識していたであろう彼が、仲間との絆によって明確に世界の見え方を変え始めているのだ。戦闘狂の奥底に、これほどまでに純粋で真っ直ぐな感謝の念が隠されていたとは。

とある場面でディートリヒが不意に放ったひとこと

 特にディートリヒ編におけるヒロイン枠と思われる女性キャラクター、エスメラルダの存在感は際立っている。彼女はなんと、底知れぬ狂気と冷たさを纏う絶世の美男子(ディートリヒのことです)に向かって、臆面もなく「ダーリン」と呼びかけるのである。

エスメラルダ
最初にディートリヒが出会うことになる宣教師ファビオ

 飢えに支配された美しき獣に一切の恐怖を見せず「ダーリン」と呼びかけ、対等な関係を築こうとする彼女の心臓の強さ。エスメラルダをはじめとする仲間たちは、彼にとって極限の戦いの中で満たされていた闘争の渇きを、愛情や絆という全く別の感情で満たしてくれる唯一無二の希望なのかもしれない。

彼らのやり取りを見ているだけで、不覚にも序盤にして既に泣きそうになってしまった。いや、こんなんガチ惚れしてしまうやろディートリヒさん

王道ファンタジーに交差する異質なテクノロジー!? 一部ルートで姿を現すSF要素と「風花雪月」の影

 最後に触れておきたいのが、本作の世界観である。中世ファンタジーの趣が強かった従来のシリーズから一転、本作はルート次第でSF的な要素が物語の鍵を握ることもある。

 キャラクターが装備する武器のなかには、分類自体は「籠手」となっているものの、その見た目はどう見ても近未来のレーザーガンだろうというものもある。さらに物語を進めると、かなり文明が進んだような謎の施設まで登場する。旧来の「FE」ファンであれば意表を突かれるようなアプローチが差し込まれるルートもあるのだが、これが不思議とダグザ帝国の退廃的な雰囲気とマッチしており、世界の謎を解き明かしたいという知的好奇心を猛烈に刺激してくる。

分類は「籠手」なのだが、これはさすがにレーザーガンに見える
かなりハイテクノロジーな文明の遺跡に見える
魔法なのか? 科学なのか? その謎はまだ解けない

 そして筆者を驚愕させたのは、この世界観の中に「FE 風花雪月」で絶大な存在感を放っていた、あのソティスが登場することだ。フォドラからやってきたと語るディートリヒ、彼が振るう英雄の遺産の一つに数えられる魔剣アンスウェラー、そしてソティス。この世界と「FE 風花雪月」の世界が一体どのような関係にあるのか、気にならないファンはいないだろう。

ソティス

 仲間との出会いで少しずつ人間らしさを取り戻していく美しき戦闘狂ディートリヒをはじめとする魅力的なキャラクターたち、手強いダンジョン探索、奥深い拠点での事前準備、そして謎が謎を呼ぶSF全開の世界観。今回触れた範囲はまだ序盤の段階だが、この後の展開にも大きく期待できるし、我々の予想をさらに裏切ってくるような予感もする。そのとき「ファイアーエムブレム 万紫千紅」は、きっと期待を大きく超えてくる傑作になるはずだ。

イシュマールは鳥の姿で主人公たちと交流できるが、その時にディートリヒはこんな笑顔を見せてくれる。倒れそうである