先行レビュー

感情移入をさせる工夫も巧みな娘育成シミュ「火山の娘」体験版プレイレポート

フルボイスや再ローカライズで娘の魅力がより身近に

【火山の娘(完全版)】
7月30日 発売予定
価格:1,300円
【火山の娘(完全版)体験版】
7月16日 配信
価格:無料

 サイバーエージェントゲーム・エンタメ事業部のColorful Paletteは、プレイステーション 5/Nintendo Switch/Android/iOS/PC用シミュレーション「火山の娘」の完全版を7月30日に発売する。価格はプラットフォームごとに異なり1,300円ほど。リリースに先駆けて本日7月16日より体験版の配信を開始した。

 育成シミュレーションというジャンルは、長いゲーム史の中でも独自の存在感を放ってきた。その象徴とも言える「プリンセスメーカー(ゼネラルプロダクツ)」シリーズは、“娘の人生に関わる”という唯一無二の体験を提示したことで、多くのプレーヤーの記憶に残っている。限られた年月の中で何を学ばせ、誰と出会わせ、どんな経験を積ませるか。その積み重ねが娘の未来へとつながっていく体験は、男女を問わず、プレーヤーに育成の手応えだけでなく、父性にも似た感情移入をもたらしてきた。そうした魅力は、今なお色褪せていない。

 「火山の娘」は、そんなジャンルの王道的なおもしろさを現代的な遊びやすさと濃密なキャラクター描写で再構築した作品であり、2023年にリリースされたPC版でも高い評価を獲得している。原作は中国のEgg Hatcherが手掛けた。

 その「火山の娘」がマルチプラットフォーム展開に向けて完全版として登場する。アニメーションで描かれるオープニング映像の追加、豪華声優陣によるキャラクターたちのフルボイス化、テキストの再翻訳、シナリオの追加など、大幅なコンテンツの拡充が施されており、その一部を先んじて体験できる体験版が公開された。

 今回筆者がプレイしたのはAndroid版の体験版。幼少期の娘と過ごす作中のチュートリアル的な立ち位置にあたるゲーム冒頭となっており、ターン数で言えば残り37ターンの時点で迎える序盤の節目「最初の小鳥の日」までを体験できる。本稿では、その範囲で触れられたゲームの流れや魅力、そして完全版ならではの手応えについて紹介していく。

【『火山の娘』ゲーム紹介PV】

“娘を育てる”面白さが、短時間でしっかり伝わる導入

 本作でプレーヤーが担うのは、娘(デフォルト名はローズ)を育てる父親の役目だ。ゲーム開始時には娘の名前や生年月日だけでなく、血液型などのプロフィールも設定でき、この時点からすでに“自分の娘を育てていく”感覚が生まれる。こうした細かな設定項目は、単なるプロフィール入力以上に、本作へ感情移入するための導入としてうまく機能していた。

育てることになる娘は名前、血液型、誕生日もちろん、父親の名前や誕生日も設定できる

 体験版では、幼少期の娘とともに火山国での日々を過ごしながら、本作の基本を覚えていく。街の住人と会話し、畑に作物を植え、レストランで食事を取る。そうした何気ない行動の積み重ねが、単なる説明ではなく“この世界で娘のローズを育てている”という実感へと変わっていくのが印象的だった。

畑では作物の育成や収穫、それらを料理してアイテムを作成することもできる
レストランでは食事をすることで行動力の回復や、吟遊詩人から物語を聴くことができる

 特に良かったのは、世界観やシステムの提示が丁寧なことだ。育成シミュレーションは、パラメーターや行動選択の意味が見えづらいと、一気に取っつきにくくなるジャンルでもある。その点、本作は「何をすれば、どんな形で娘の成長に繋がるのか」が序盤のうちに掴みやすい。

 UIも見やすく調整されており、スマートフォンでのタッチ操作も軽快。ロードもスムーズで、遊び始めてからゲームの世界に入り込むまでがとても早かった。

UIのテキスト周りも再翻訳されたことでわかりやすくなっている

「授業」と「行動ポイント」で、1カ月ずつ娘の未来を積み重ねる

 本作の育成の基本は、授業を選択して各種パラメーターを伸ばすこと、そして行動ポイントを消費して街でさまざまな行動を行なうこと、この2本柱で成り立っている。

散策では複数の場所に行動力を消費するポイントがあり、各種実行することで特定のステータスを伸ばすことができる
自宅では授業を組み立てることで娘を成長させると同時にターンが進む

 授業は、いわばローズの成長方針を決める土台だ。どの能力を伸ばしていくのかを考えながら選ぶことになるため、ここにプレーヤーの方針が色濃く表れる。一方の散策パートでは、住人たちとの交流や日常的な行動を通じて世界を知り、娘の体験を増やしていく。パラメーターを数字として伸ばすだけでなく、その数値の裏側にある生活や思い出を感じられる作りになっているのが本作の面白いところだ。

 また、ステータス項目には攻撃や防御といった戦闘用の数値も用意されており、育成の先に戦いの要素も控えていることがうかがえる。ただし、今回触れられた幼少期の範囲では戦闘そのものは体験できなかった。あくまで今回は、本格的な育成が始まる前の導入として、娘をどう見守っていくゲームなのかを理解するための内容が中心になっている。

授業内容や会話できる住人などは娘の成長に合わせて選択肢がどんどん増えていく

 セーブ周りも親切だ。基本は月初めのオートセーブだが、手動セーブで別枠を作ることもできるため、特定ポイントで育成方針を変えるといった柔軟な遊び方にも対応している。こうした仕様は、将来的に周回プレイを重ねていくうえでもありがたいポイントだろう。

「小鳥の日」で見える、本作らしいミニゲームと成長の楽しさ

 体験版のクライマックスとなる「最初の小鳥の日」では、「親子算数競技」というミニゲームをプレイできる。内容は算数問題に答えていくもので、正解数に応じて受け取れる報酬(くじ引き券)の枚数が変化する仕組みだ。

「親子算数競技」では開始前に難易度選択ができ、難易度によっても入手できるくじ引き券の枚数が変化する

 このくじ引き券は、そのまま「両親からプレゼント」と表記されているパネルを開ける回数に繋がっており、開いたパネルの内容によって基礎ステータスが成長していく。ただミニゲームを遊んで終わりではなく、その結果がきちんと育成に還元されるのが気持ちいい。親として頑張ったことが、そのまま娘の成長につながる。こうした“イベント体験”と“パラメーターの成長”が自然に結びついている点は、本作の育成シミュレーションとしての手触りの良さをよく表している。

 しかも、演出そのものがかわいらしく、結果を見る時間さえ楽しい。ローズの成長を見守るゲームだからこそ、こうした節目のイベントにしっかりご褒美感があるのは大きい。体験版はまだ幼少期までだが、それでも「この先、どんな形で娘が育っていくのか」を十分に想像させてくれる内容だった。

小鳥の日の最後ではくじ引き券の枚数だけパネルを開いて贈り物を入手できる

フルボイス、OPアニメ、再ローカライズ。完全版の手応えは確かにあった

 今回の完全版で特に印象に残ったのは、物語への入りやすさが大きく底上げされていることだ。

 まず、冒頭のアニメーションOPが非常に良い。かわいらしい映像と、主題歌を担当するaonさんの歌声が作品の雰囲気によく合っており、ゲームを始める前から「これからローズの物語が始まる」という期待感を高めてくれる。プレイ後には、この映像が思い出を呼び起こすものにもなりそうで、映像面からも作品の空気感や感情をしっかり掴ませてくれる、味わい深い演出になっていた。

みてください。うちの娘かわいすぎませんか。と口にだしたくなるほどかわいい我が子が映し出されるOP映像

 さらに体験版では、ローズのボイスだけでなく、ナレーションやキャラクター同士の会話でも音声を楽しむことができるため、場面の賑やかさや感情の動きが伝わりやすくなっている。会話に思わず聞き入ってしまう瞬間も多く、ストーリーを“読む”だけでなく“耳でも楽しめる”作りになっていた。音声は日本語と中国語から選択可能で、テキストは日本語、英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語に対応している。

中原麻衣さんをはじめ、井上麻里奈さん、伊東健人さんなど豪華声優陣によってフルボイスで紡がれる物語

 そして、ローカライズの改善も体験版の手応えとして大きかった。少なくとも今回触れた範囲では、ゲーム内テキストやUI表記で引っかかる箇所はほとんどなく、全体的にかなり自然に遊ぶことができた。文章に違和感があると、育成シミュレーションのようにテキストをじっくり読むゲームでは没入感が大きく削がれてしまうが、その点で今回は安心して物語に入り込めた印象だ。

 原作はSteamにてリリースされているということもあって既に完成したゲームになっている。このため、今回の完全版はボイスやアニメーションなど各要素の追加やローカライズのクオリティアップなど、日本向けのアップデートといった印象も受ける。ゲームプレイそのものには大きく手を加えず、より遊びやすくするためのアップデートといった側面が強いようだ。

気になったのは、周回前提の作品ならではの“操作量”

 完成度やキャラクターの魅力はかなり高く、UIもわかりやすい。それでも、あえて気になった点を挙げるなら、周回プレイを前提とした際の操作テンポだ。

 会話スキップは可能ではあるものの、本作は細かな演出や日々の積み重ねが魅力のゲームであるぶん、授業の設定や散策など、毎月求められる手動操作は比較的多い。初回プレイではそれが丁寧さや楽しさにつながる一方で、周回して別の育成方針やエンディングを狙う段階になると、人によっては少し作業感を覚える可能性はあるだろう。

 また、パラメーターを上げるための行動や、多くのキャラクターとの親密度を上げるための会話イベントも、繰り返しの中では単調に感じられる場面が出てくるかもしれない。もっとも、これは育成シミュレーションというジャンルそのものが抱えやすい課題でもある。本作が持つキャラクターの魅力や演出のかわいらしさ、新シナリオなどが、その反復をどこまで楽しいものに変えてくれるかは、製品版でより重要になってきそうだ。

娘の成長を見守る楽しさを、より遊びやすく味わえる体験版

 完全版「火山の娘」の体験版は、短いプレイ時間の中で本作の魅力をかなりわかりやすく伝えてくれる内容になっていた。授業と行動ポイントで娘を育てていく基本ループ、街での交流がもたらす生活感、節目のイベントで感じられる成長の手応え。育成シミュレーションとしての面白さが、幼少期までの範囲でもしっかり見えてくる。

 加えて、今回のリリースにあたってはベースとなるゲームプレイ部分の良さは残しつつ、フルボイスやアニメーションOP、改善されたローカライズやUIといった要素によって作品への入りやすさを高めていた。体験版では新規シナリオなどの追加要素までは確認できなかったが、それでも「この作品が、より多くの人に届く形へ整えられている」ことは十分に感じられた。

 娘育成シミュレーションが好きな人はもちろん、このジャンルに初めて触れる人にとっても、本作はかなり有力な入口になりそうだ。まずは本日◯◯より配信が始まった体験版で、娘との時間を味わってみてほしい。

なお、今作では新コンテンツ「双影の路地」が追加予定。ストーリーやスチルも新たに加えられるようだ

サービス基本情報

タイトル :火山の娘
対応機種:iOS/Android /Nintendo Switch/PlayStation 5
発売日:7月30日
価格:約1,300円
ジャンル:マルチエンディング美少女育成シミュレーションゲーム
開発:Egg Hatcher/Colorful Palette
メーカー:Colorful Palette

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