先行レビュー
フル3Dで新しく生まれ変わった「ToHeart」先行プレイレポート!あの初恋の記憶が、令和の画面で蘇る。
学園恋愛ゲームの金字塔。当時の思い出と合わせて本作の魅力をお届け
2025年6月20日 12:00
- 【ToHeart】
- 6月26日 発売予定
- 価格:
- 3,080円(ダウンロード版)
- 10,780円(プレミアムエディション)
- 4,378円(通常パッケージ版、Switchのみ)
- CERO:B(12歳以上)
魅力的なヒロインとのハートフルな学園恋愛ストーリーを描いたアドベンチャーゲーム「ToHeart」。PC版、プレイステーション版(PS版)、アニメと様々な形で好評を博し、のちの恋愛ゲームジャンルに多大な影響を与えた。
そんな伝説的作品が、フル3D化およびキャラクターデザインやキャストを一新し、6月26日にNintendo SwitchおよびSteamで発売される。なお、6月19日には体験版の配信もスタートしている。
原作の持つ学園ならではの爽やかな空気感やピュアな恋愛模様を大切にしつつ、現代のプラットフォームにあわせて丁寧にリファインされた本作。
今回は、PC版、PS版、アニメとすべてを追ってきた筆者が、新生「ToHeart」(Steam版)を先行プレイ。かつて夢中になったプレーヤーはもちろん、「名前は聞いたことがあるけど遊んだことはない」という新世代の方々にもぜひ体験してほしい内容になっていた。
本記事では、先行プレイを通して感じた「ToHeart」の魅力を、ストーリーやシステム、原作との違いなどを交えてじっくりお届けする。
ルートガイドや選択肢ヘルプ機能でヒロイン攻略がしやすく!
まずは基本的なゲームシステムについて。「ToHeart」は、ごくシンプルなコマンド選択式のアドベンチャーゲームだ。
休み時間や放課後になるとマップ上にヒロインが表示され、選んだ場所で出会った女の子たちと交流を深めていく。その際に出現する選択肢によってシナリオが分岐し、いずれかのヒロインの個別エンディング、もしくは誰とも結ばれないエンディングを迎えることになる。
今作で追加された新機能のうち、驚いたのが「ルートガイド」と「選択肢ヘルプ」機能だ。これらを利用すれば、お目当てのヒロインを安易に攻略できるようになっている。本作では基本的に攻略したい女の子をずっと選んで、その子が喜びそうな話を続ければいけるのだが、ごく一部、とても難易度が高いヒロインがいるのだ。気付けば誰とも結ばれないエンディングを迎えていた、という悲しい結果にならないよう、今作はその辺りのサポートが手厚い。
「ルートガイド」は、本編開始前に攻略したいヒロインを選択すると、その女の子とのエンディングを迎えるまで攻略を完全アシスト。具体的には、対象ヒロインを攻略するために必要なすべての行き先、会話中の選択肢にハートマークが表示されるようになる。
「選択肢ヘルプ」機能は、ストーリー中に出現する選択肢のうち、対象ヒロインの好感度が最も上がるものを、アイコンで視覚的にわかりやすく示してくれる。なお、「選択肢ヘルプ」機能は「ルートガイド」機能に内包されている形だ。
これらを使用すれば、攻略に躓くことはほぼない。プレーヤーにとって優しいシステムとなっている。そのほか、基本的な機能は以下の通り。
バックログ&ボイスリピート
一度表示されたテキストは履歴から再読でき、ボイス付きのセリフは再生も可能。
テキストモードの切り替え(ウインドウ/ノベル)
本作で追加されたテキストの表示方法。下段ウインドウでの表示のほか、PC版・PS版と同じビジュアルノベル調にも変更できる。
オートモード/メッセージスキップ
オートモードは速度を調節可能。メッセージスキップに関しては、既読のみ、未読含む全てどちらも対応。周回プレイのテンポも良好だ。
学生の日常を緻密に描くからこそ心に響く恋愛シーン
「ToHeart」の舞台は、ごく普通の高校。主人公の藤田浩之は、幼なじみの少女・神岸あかりと共に、春からの新学期を迎えることとなる。
ヒロインたちは、最新型家庭用ロボット(いわゆるメイドロボ)、仲のいい悪友、真っ直ぐな格闘技少女、クールな関西系委員長、無口なオカルトお嬢様、明るい日系ハーフ、おどおど系超能力少女など、バリエーション豊か。彼女たちと交流しながら少しずつ心を通わせ、やがて“恋”が芽生える――それが本作の基本構造となっている。
では、令和になっても愛され続ける理由はどこにあるのか。各ヒロインの持つ魅力はもちろんだが、そのうえで“高校生の日常”や“心理描写”を緻密かつ丁寧に表現されている点を強調したい。
本作の物語は高校1年の3月からスタートし、4、5月までの期間が描かれる(※ヒロインによって異なる)。毎日気だるく歩いた学校までの道のり、友人同士の他愛もない会話、進級時のクラス替えの緊張感、開放感に包まれた放課後、何をするでもない休日……こんな誰もが経験したであろう“日常”を、本作は事細かに描いている。
そんな自身の学生生活を彷彿とさせるノスタルジーさこそ、「ToHeart」の真骨頂なのだ。そしてそこに恋愛という要素が加わることで、これまでの日常が徐々に変化。恋をすることで、ゆるやかに目の前の環境や景色が変わっていく様が味わえる。
何が変わり、何が変わらなかったのか?
本作は、1999年に発売されたPS版「ToHeart」がベースになっているが、そのまま移植されたわけではない。実際にプレイしたことで見えてきた、変わった点と変わらなかった点をいくつか紹介していく。
変わった点
ビジュアルの全面刷新
最大の変化は、ビジュアル面のリファインだ。キャラクター、背景などがフル3Dで描かれ、UIも現代的に進化。重要な場面では「ビジュアルシネマシーン」と呼ばれる形で表現され、臨場感のあるアニメーションで物語を楽しめる。また、キャラクターデザインは本条たたみ氏が担当し、令和の今でも通じる可愛さと、1990年代らしさが絶妙なバランスで共存している。これぞ“懐かしいのに新しい”。
ボイスの変更
こちらも大きな変更点のひとつ。全登場人物が新キャストによるボイスで実装されている。今作では主人公・浩之のボイスが初めて追加されたことも大きなポイントだ。PS版で実装されたボイスへの切り替えも可能なため、自分に合う声で楽しむのも大いにアリだ。
操作性の向上
先述の通り、セーブ周りやUIが非常に快適に進化。Steam版ではゲームパッドにも対応していた。
一部シナリオの調整
時代的にセンシティブな表現や冗長な部分については、現在の基準に合わせた軽微な修正が施されている。とはいえ、物語の核心やキャラ設定が変わったわけではないのでご安心を。
ミニゲームの削除
PS版以降に追加されていた「お嬢様は魔女」、「Heart by Heart」、「○△□×」などのミニゲームは、残念ながら開発の関係からカットに。当時、かなりやり込んだ方も多いハズ。またどこかでプレイしたいところだ。
変わらない点
物語の根幹
ストーリー構成やヒロインごとのルート分岐は、基本的にPS版を踏襲。あの頃に感じた“ハートフルな恋の物語”は今もそのまま。
音楽や空気感
「ToHeart」を語るうえで⽋かせないのがBGMだ。キャラクターや場面に合わせた、耳に残る音楽はオリジナル版を踏襲しつつ、リアレンジが行なわれている。
見た目やシステムは変われど、あのときプレイした「ToHeart」がそこにはある。読み進めるごとに、なんともノスタルジックな甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれた。
ちなみに、夜の⾃宅シーンで流れるラジオ番組「ハート・トゥ・ハート」も他のキャラクター同様、新録のものとPS版のボイスで切り替えが可能。特にPS版音源は、久々に聞けて⾮常に嬉しかった。一方で新録ボイスもオリジナル版の雰囲気そのままで熱演されているので、是非注目してほしい。
激推しヒロイン:神岸あかりの話をさせてくれ
今でも思い出す、PS版のパッケージイラストのシンプルな中にある可愛らしさ。そう、筆者は「ToHeart」では「神岸あかり」を激推ししている。いや、今風の“推し”とかではなく、当時は本当に恋をしていたと思う。
神岸あかりは、主人公の幼なじみにして、毎朝迎えに来てくれる献身系ヒロイン。身の回りのお世話をしてくれたり、冗談を言い合ったりしながら、ずっとこちらのことを見ていてくれる、そんな幼なじみキャラクターの完成形ともいえる存在だ。あと犬チック。
しかし、彼女の本当に魅力は別にある。それは、主人公を一途に想い続ける、静かで深い愛情だ。どんなときにもそばにいることが、どれほど特別なことなのか。物語を進めることで、彼女なりの覚悟や心境の変化が読み取れ、なんとも感情が揺れ動かされる。
今作では、フル3D化したことで、そんなあかりの表情や態度から、より鮮明に気持ちが伝わってくる。はにかみながら笑ったり、少し拗ねてみたり。そして、ふとした瞬間に見せる少し寂しそうな表情。その彼女の“感情の機微”がちゃんと描かれているのが印象的だった。
とくに彼女が“変わる”髪型を変えたシーンは……。ここのやりとりは実際にプレイして見てほしい。
彼女はほかのヒロインと比べると、派手さはないかもしれない。しかし、主人公を想う一点に限っては右に出るものはいないだろう。一番近くにいるかけがえのない存在に、ぜひ気付いて頂きたい。
時代を越えて“初恋”を思い出す作品
魅力的なキャラクターたちが織りなす、心に響くハートフルストーリーはそのままに、ビジュアルを一新した本作。"あの頃"の空気感を残しつつ、現代のユーザーにも通ずる形にリファインされ、これまでもこれからも愛され続ける作品であることは間違いない。新旧味わえるボイス、テキスト表示方法の切り替えなど、ユーザーの好みに合わせた楽しみ方ができるのも嬉しい。
あらゆるジャンルの作品が蔓延する今だからこそ、ぜひ「ToHeart」の真っ直ぐな感情表現に味わってほしい。往年のファンも、初めてのプレーヤーも、ぜひ自身の"初恋"を思い出しながら、青春の日々を体験しよう。
(C)AQUAPLUS